WebVRの可能性:WebVRクリエイター・Or Fleisher氏インタビュー

DESIGNER

本記事は、優良企業で働く最も優秀な人材にインタビューをし、彼らの失敗談や成功体験、素晴らしいXRプロダクトを作り上げるまでの学びなどを共有するものです。

今回インタビューをするのは、WebVRコンテンツクリエイターのOr Fleisher氏。ニューヨークに拠点を置くディレクターであり、クリエイティブ開発者、アーティストでもあります。

▲3DCGでモデリングされたOr Fleisher氏

−− デジタルの世界に入るきっかけはなんだったのでしょうか? 簡単な経歴と共に教えてください。

幼少期にクラシックピアノやドラムを学び、音楽の世界にはまっていきました。その後、ミュージックスタジオで働き始め、レコーディングとミキシングへの情熱も芽生えました。そして、Future Rhythmでサウンドデザインを勉強し、Tel Aviv universityで映画を勉強をしました。

映画学校に通い始めてからは、こうした経歴や情熱が全てまとまり始めました。オーディオへの情熱、映画への愛、ストーリーテリングの新しい実践に関する興味を全て合わせてた結果、テクノロジーを使用したビジュアルとオーディオの組み合わせにハマりました。それが、私が現在に至るまで取り組んでいることです。

アニメーション、プログラミング、アート技術などを学習し、これらを使った実験的な試みをしてみたり、コーディング、アート、ストーリーテリングを組み合わせたインスタレーション制作も行いました。

その後、Ronen Tanchum、Guy Fleisherと共に、ビジュアルエフェクトとインタラクションデザインスタジオであるPhenomena Labsを創業します。現在はニューヨーク大学のアートスクールで、インタラクティブテレコミュニケーションプログラムの修士課程を受講中です。

−− デジタルクリエイティブ領域は現在、効率性ばかりが重視されているように私は思うのですが、Fleisherさんは今後どうなっていくと思いますか?

私は楽観的な人間なので、将来的に良い方向に進んでいくと思っています。

現在行なっているプロジェクトのほとんどは、世界中の他のスペシャリストたちのおかげで成り立っています。オープンソースのクリエイティブな考え方は日々広がっています。このオープンソースの精神が、デジタルクリエイティブ領域の未来を明るくしていると思っています。

「効率化ばかりが重視されている」と仰いましたが、効率化自体はネガティブなものではないと思っています。私自身、コーディングやテクノロジー、クリエイティブを融合して仕事をしているので、効率化は重要ですね。

モバイルデバイスのためのコンセプトアートを作るプロセスを例にとりましょう。経験上、効率的なコンセプトを求めることは、より焦点の合った一貫性のあるアート作品に繋がります。また、昨今はデジタル領域へ参入する敷居が低くなっています。そのため、より多くのアーティストやクリエイティブが、それほど多くを学ぶことなくデジタルの世界に飛び込むことが可能であり、より早く、よりクリエイティブな作品を生み出すことができるのです。私自身、コンピュータサイエンスのバックグランドを多く持っているわけではないので、参入障壁の低さには助かっていますね。最近では、学習したスキルを実戦で使用するスピードも以前より早くなっています。

−− WebVRフィルム作品“LIVYATANIM: Myth”のアイデアはどのように生まれましたか?

‘LIVYATANIM’(ヘブライ語でクジラ)は、Aviv MeshulamとTomer Baruchによってプロデュースされたバンドです。アルバムを作成するのに時間がかかったのですが、Avivのスタジオのコーヒーブレイクの時間にこのWebVRのアイデアは生み出されました。

Myth(神話)というコンセプトは私とAvivで1ヶ月ほどで生み出したのですが、それにあたり、宇宙、オーディオに反応するアート、VRなど自分たちが興味があるトピックを話し合いました。ガイドラインをスケッチしたのち、フィルムとして見た目やコンセプト、物語などを発展させていったのです。

▲LIVYATANIM: Myth

−− どのような過程で作成していったのか、それぞれの段階ごとに教えていただけますか?

最初の段階として、このフィルムの基礎となる技術的な基盤を築くことからはじめました。私はサウンドの経験があったので、私の手がける多くのプロジェクトにおいてサウンドは重要な役目を果たしています。’LIVYATANIM’でもそれは同じでした。ここではアニメーションをコントロールし、それに合わせてリアルタイムでMIDIノーテーションに合わせてエフェクトを生成するアイデアが生まれたのです。

やりたかったのは「MIDIをアニメーション化する」ことですが、オーディオ分析に合わせてビジュアルが反応するというフォーマルなコンセプトに、さらに少しひねりを加えようとしました。私と開発を先導していたYannis Gravezasは、音楽とオーディオについての意見を共有していたので、この部分をまず最初に手がけることにしたのです。WebVRも初期の段階で展開する必要がありましたね。後でもできたことですが、望ましい方向性に向けて段階的に評価をしながら作り上げていくことが重要でした。

初期の基盤が出来上がってからは、フィルムの一つひとつのシーンに取り掛かりはじめました。アニメーションを統合し、シェーダーとMIDIノートを合体させ、フィルム上の特定の要素をコントロールする作業です。まずはじめに、音楽によって操作されながらレールの上を走る映像を思いつきました。ソニックとビジュアルの世界を連結させることで、フィルム上でサウンドの世界へ全面的に没入することが可能になります。

プロジェクトの初期段階で、このフィルムを出来るだけ多くのデバイスで再生出来るようにしようと決めたのですが、そのためには効率的にリソースを制御し、ガイドラインに沿ってアートのコンセプトを最適化させる必要がありました。グリッチが良い事例ですね。フィルムに雰囲気を加え、異なるシーン同士でビジュアルの一貫性を保つのに役立ちました。

−− プロジェクトの過程で苦労したポイントはありますか?

前述したように、プラットフォームに敬意を払いながらコンセプトアートをデザインするのは、ひとつの挑戦でした。技術的な面で苦労したのは、開発そのものですね。多くのデバイスでテストとでバギングを繰り返し行いました。また、stereo VRをデスクトップとモバイルベースのヘッドセットにレンダリングする必要があったため、このプロジェクトではWebVR-polyfillを使用したのですが、これは非常に実験的な挑戦でした。ディベロッパーの視点からいうと、このようなことはプロジェクトでは当たり前のフェーズですし、むしろプロジェクトの重要なプロセスのひとつと捉えられるべきですけどね。

−− プロジェクトにはどのような人たちが関わりましたか?

まず、非常に美しい音楽とアルバムを作ったAviv Meshulamには、フィルムのコンセプトとアートを作りだす際に多く手伝っていただきました。コンセプトができた後は、私と他2名でチームを作り、フィルムを世に生み出すために取り組みました。ちなみに彼らとは「一目惚れ」の関係でしたね。コンセプトを彼らに紹介し、フィードバックを聞いてすぐに、彼らと仕事がしたいと思いました。

開発を引率していたのは、美学への情熱を持った優秀なディベロッパーであるYannis Gravezasです。モデリングや「野生のクジラが泳いでいる」ビデオをYoutubeで参照する作業は、3DスーパーバイザーのTomer Roussoに任せました。私自身はフィルムディレクター、ディベロッパーとしての役回りでしたね。他にも、このフィルムを作るのに多くの人々の助けがありました。彼らにはとても感謝しています。

−− VRが映像作品にもたらすものは何でしょうか?

VRによって、フィルムの世界に没入することができ、両者を区別することなくその雰囲気を感じることができます。フィルムをVRで体験することで、ユーザーは境界を感じたり邪魔をされることなく、この“Myth”の世界に全面的に入り込めるのです。

−− VRのインタラクティヴ性をどう定義しますか?

簡単にいうと「バーチャルリアリティのスペース上での出来事をコントロールする力」ですね。VRのインタラクティブ性は、多くのレベルでのコントロールを可能にします。基本的なレベルでのVRのインタラクティブ性は、ヘッドの向きとカメラのローテーションにかかっているでしょう。近年では、VR体験中にハンドトラッキングを可能にするためにリープモーションコントローラーをOculusのヘッドセットに導入するなど、さまざまなデータセンサーの組み合わせが増えてきています。このような技術の組み合わせやツールは、VRにとっても、インタラクティヴ性にとっても、非常に興味深い未来を切り開きつつあります。

−− VRのUXを発展させるにあたり、特定のプロセスはありますか?

VRコンテンツ作成には多くのアプローチ、ツール、手法があるので、全てに共通するルールを設けるのは難しいです。VRコンテンツやストーリーテリングは、現在は非常に実験的な段階にあります。

なお、UnityやUnrealなどの主要なプレイヤーサポートや、Three.js、Stack.gl、Reglなどのオープンソースプロジェクトのカウンターバランスによって、VRコンテンツ作りに一定のアクションルートをアドバイスすることはできるでしょう。一方で、面白いアイデアが既にあり、冒険をしたいのであれば、特定のプロセスに従うことなくとにかく試してみることをおすすめしますね。

−− WebVRは今後、スタンダードなものになっていくと思いますか?

はい。VRコンテンツ消費の民主化は個人的に非常に刺激的だと思っています。消費者の視点からいうと、数多くのアプリやダウンロード、そしてフォーマットの違いから、ただ単に「何かを経験する」というのは難しくなっています。アーティストの視点からいえば、最低限の修正で複数のVRヘッドセットをレンダリングできる経験を作り出すことは重要なのです。

ダウンロードをすることなく、インターネット接続し、ヘッドセットを装着すれば誰でも簡単に楽しめてしまうということが、WebVRが今後有望といえるひとつの理由といえるでしょう。

−− 人々はWeb上でもっと3Dのコンテンツを見たいと思うでしょうか?

私のところにくるWeb 3Dのプロジェクト数を見ると、答えはイエスですね。3DのWebレンダリングシステムが向上するにつれ、オンライン上でより高度なイメージをレンダリング可能になり、今まではオフラインのみで再生されていたものが、Webかつリアルタイムで経験できるようになるはずです。また、リアルタイムの3Dコンテンツは昨今より簡単にプロデュースできるようになっており、異なるデバイスでより多くの作品がオープンに公開されるようになっています。こうした流れをみると、Web 3Dの領域は今後も発展していくと私は思っています。

−− いま注目している新しいテクノロジーはありますか?

ストーリーテリングと3D開発における機械学習の可能性には注目しています。とはいえ、私にとってはテクノロジーそのものよりも、それをどのようにクリエイティブに使うかが重要ですね。

−− 最近はどのようなことに取り組まれていますか?

ここ数ヶ月は、Volumeというツールの開発に取り組んでいます。Volumeは、2Dイメージあるいはビデオから、3D空間を開発するためのツールです。Volumeは機械学習により、たったひとつのイメージから3Dのアセットを生み出せます。今はまだ開発中ですが、誰でも簡単に3Dアセットを3D環境で使えるようにするためのものです。VR、MRのプラットフォームで簡単にVolumeが使用できるように、特別なテンプレートも用意する予定です。

(著者:Dror Spindel 翻訳:Mariko Sugita)

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