エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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さくマガでは仕事のヒントを得るために、さまざまな方にインタビューをしています。今回は、画家・現代美術家として活動をしている、杉田陽平さんにお話をうかがいました。
男女問わず人気を博す恋愛リアリティ番組「バチェロレッテ ・ジャパン」。バチェロレッテを含め魅力的な出演者が多かった中で、特に人気だったのが “杉ちゃん” こと杉田陽平さんではないでしょうか。
杉田さんが紡ぎ出す言葉や行動に、勇気と感動をもらった人はきっと少なくないはず!
そんな杉田さんのアーティストとしての価値観や考え方、そしてそれらがどのようにして生まれたのかを語っていただきました。
1983年10月28日生まれ。三重県出身。画家・現代美術家。Amazon Prime Videoで配信中の、恋愛リアリティ番組「バチェロレッテ ・ジャパン」に出演。”杉ちゃん”の愛称で出演者、視聴者からの人気を集める。活躍は本来の画家としての活動のみならず、最近ではSNSやYouTubeを活用することでアートのファンを増やす活動を積極的におこなっている。杉田陽平公式サイト YouTube:杉ちゃんのカラフル日記 Twitter:@sugitayouhei Instagram:sugitayoheiart
目次
さくマガ:
本日はよろしくお願いします。まずはじめに、杉田さんの普段のお仕事について教えてください。
杉田:
ざっくり言うと、画家をしております。
ただ、画家のみならず、絵を描く以外の活動も積極的におこなっています。社会にとってアートとはどんな役割なんだろうとか、絵を描くこと以外に絵を広めたり買ったりする喜びだったりとか。
例えば、日常の中にアートがあれば潤滑油のようになって、楽しくてうまく回り出すような気がしてるんですよね。そういったことを伝えていけたらいいなと思っています。アーティストの仕事って、日常の中にあるなにげない事柄や事象にスポットを当てて、輝かせることだと思っています。
例えば、デートしたときに雨が降ったとします。一般的に雨ってなんか悲しいし、晴れてるほうがいいですよね。だけど、雨が降ったからこそ素敵なデートになる。そんなふうに考えられるようになったらいいですよね。
「普通に考えたら失敗のようなことが特別なものになる」
それがアートなんです。
杉田:
僕は叩き上げの画家なので、最初からスーパープロデューサーがついて、シンデレラボーイのように売れたわけじゃないんです。画廊に来てくださるお客さん一人ひとりとお話して、作品の良さを伝えていきながら少しずつ売れるようになっていきました。
対話を通じてお客さんが何に感動して、何に不満を持つのかを理解していたので、言葉のキャッチボールをして、種まきしながらつぼみにしていった感じです。
どんなに優秀で絵が上手な人でも、世間では絵で食べていくことは難しいと言われています。でも本当にそうなのかな?って思うんです。
お客さんと会話をすると「アルバイトをしてる場合じゃない、1枚でも多く絵を描いたほうがいいよ」ってみんな言ってくださいます。実際に絵を欲しがってる人は世の中にいっぱいいるんですよ。
画家は絵が売れないって言うけど、実際に展覧会で作品を飾ると1日100人とか200人のお客さんが来ます。でも作家さんは飾るだけ飾って、売るのはスタッフに任せきり。
だけど、僕は毎回在席していて、どんな人に対しても作品のことを丁寧に説明します。そうすることで、お客さんと共犯関係になれるんですよね。
さくマガ:
作品ができあがるまでのストーリーに共感して買うことはよくあります。
杉田:
まさに、そのとおりだと思います。
例えば、特殊なジーパンを売ってるお店があったとします。商品の魅力をかいつまんで販売員さんが説明してくれるのと、そのジーパンを作った職人さん自らが商品に対する想いや、製造の工程を語るのとではまったく違います。
販売員さんはわからないことがあった場合に無責任なことが言えないから、伝えられる言葉の数が少ないわけですよね。そうなると、買い手としてはその説明にハマる人しか購入に至らない。だけど職人さんが説明した場合はリーチが広いので、結果的に種をまける幅が広いんです。
さくマガ:
お客さんと対話をしながら作品を作るとのことですが、アーティストとして作りたいものと、お客さんのニーズとの間で葛藤が生まれることはないのでしょうか。
杉田:
そこは大事なところですね。展覧会で「大きい絵は飾りにくいから、小さい絵がいい」とか「昔のこのタイプがよかった」って言われることはよくあります。
その意見に合わせると「売りやすい作品を描きたいのか」「食うために作品を描いていくのか」となりがちなんですね。
それで嫌になって、創作をやめてしまう作家さんって多いんです。
でも僕が言ってるのは合わせるってことじゃなくて、超えていくってことなんです。
自分のことをよく知ってるのって他人なんですよ。自分だけで考えていると、思い込みや願望が先走ってしまうことがあるので、他人の言葉をヒントに分析して、自分なりの仮説を立てて、プラスアルファのアプローチをしていく。その結果、あっと驚く解答を生み出していく。
バチェロレッテに出演することが決まった時もそうでしたね。バチェロレッテは公開までのプロモーション期間が長かったこともあって、仲間内ではいろいろ茶化されたこともありました。
ただ、その話をしてる頃は収録も全部終わっていたわけで……。僕は心の中で「結構頑張ったんだけどな~」と思っていたわけです (笑)。当初は「なんで恋愛リアリティ番組に出演するの?」なんて言われたけど、いまとなっては「すごい勇気だね」って言ってもらえるんです。これも相手の想像を超えていますよね。
出演がきっかけで、最近では「アーティストってなんか素敵だね」って言ってもらえるようになったり、作品を買ったことがないような人から問い合わせが入ったり、アート業界にいい流れが生まれつつあるようです。
作品というのは一種の株みたいなものなので、アート業界にスポットが当たることで、作品が注目株になるのはお客さんにとってもうれしいですよね。
杉田:
小さい頃は手先が器用で、近所のおじいちゃんがやっている小さな絵画教室に通っていました。
そのおじいちゃんが僕の両親に対して「この子は才能がある。将来楽しみだから絶対こっちの方向に伸ばしたほうがいい」って言ってくれたんです。その時の僕は「そんなもんなのかなぁ」と横で聞いていました。
ただ単に描くのが好きというより、あっと驚くような表現方法をしてみたりして、周りの人の期待を超えられた時はうれしかったですね。昔から、僕が絵を描く目的の先には必ず他人がいるんだと思います。
小学校1年生の時に写生大会があって、校庭に生えている大きな木を描くことになりました。僕はその木の下に潜り込んで枝を見上げた時の木漏れ日がきれいだと感じたから、そこからのアングルで描きたかった。
だけど、先生がやって来て「そこから描くのはすごく難しいから、木全体が紙におさまるように描きなさい」と言われました。その時に「自分の描きたいものを、正直に自由に描く」のはすごく難しいんだということを小さいながらに実感しましたね。
大人は木漏れ日を描くことが難しいとわかっているから、良かれと思って「離れた場所から描いたほうがいいよ」ってアドバイスをくれる。大人が子どもに失敗させたくないっていう気持ちもわかるじゃないですか。だから、自分が自由に描くためには、なんとかして周りを説得していく必要があるんだと、小さい頃から思っていました。
杉田:
5年ほど前、デッサンの学校で講師のアルバイトをしていたのですが、その時にパースの授業がありました。パースというのは「遠くのものは小さく、近くのものは大きく」という原則に従って遠近感を出す技法のことです。生徒30人くらいが部屋の真ん中にある壺を囲んでデッサンしていくんです。
だけど、あるひとりの子が描いている絵には壺の輪郭がなくて。よくよく見たら、壺の表面に反射して映った教室を描いていたんです。その発想は僕にはなかったので「完成が楽しみだよ」と声を掛けました。だけど僕以外の先生には「これはパースを描くという課題に合わないから、もう一度描き直すように」と促されていたんです。
授業後に講師が集まった時に「あの作品を褒めると、他の講師や生徒が困ってしまう。今回はパースの授業だから、その辺をうまく描けるように指導をしなくてはならない。学校のカリキュラムがあるからそれに従ってください」って言われました。確かになぁと思って……結局講師をやめたんですよね。
さっきの木漏れ日の話もそうだけど、十人十色の発想があるのに、そこに管理側や大人が介在することで、可能性を二色ぐらいに狭めてしまうことがあるということをずっと思っています。
とはいえ、きちんと課題通りに作品を仕上げている人も、もちろん大切だし称えるべきです。そのあたりはすごく難しいですよね。一番いいのはルールを理解したうえでポジティブに捉えて、その中で”これだけ遊べるんだぜ!”っていう行動をとれること。そんな人はすごいなと思います。
杉田:
実は、絵を描くのが好きで好きでたまらないタイプじゃないんです。暇さえあったらとにかく描くこと以外をする理由を探してますよ。寝たり、YouTube見たりとか(笑)。
絵というのは答えがないので、売れたらいいってものでもないんですよ。いろんな価値とかゴールが複合的に集まったのがアートなので、常に身近にあって考える職業なんですよね。だから描くのってすごく疲れるんですよ。
人の言葉に聞き耳を立てつつ、自分の心にも聞き耳立てる。どちらも尊重しながら、浮かび上がってくるものを拾い上げて何とか作品にしていく。
それでも描いた作品は、以前の作品と比べられちゃうんです。だから、なにげなく「才能が枯渇してきたね」とか「昔のほうが好きだった」って言う人って多いんですよ。
もちろん、いまのほうがいいって言う人もいますけど、変化がないから飽きて去っていく人もいる。どこかでチャレンジしなきゃダメなんです。だけど、自分の持ち味を失わないでチャレンジをしないと駄目なので、そこがすごく難しいんですよね。
だから、いつもイチかバチか、トライの繰り返し。ドキドキハラハラしながら「これでいいんだろうか?」と自問自答の連続なんです。
杉田:
画家にとって、感覚的な部分とロジカルな部分と両方が大切です。こうしたほうがロジカルであると頭で理解していても、本能的にどうしてもこれをやっちゃうということはあります。僕はどちらかというと「どうしてもこうやりたい」っていう気持ちが強いので、こういうタイプの人はロジカルな部分を鍛えたほうが、作品が良くなってくるんじゃないかと思います。
最近、経営者の人たちとお話する機会があるのですが、画家と似てると感じることがよくあります。
世の中の流行に対して仮説を立てて、その逆をやっていくとか。例えばみんなが手を出してないビジネスの領域に攻め込んでいくとか。アートの世界と近いですね。いつもセンサーを張り巡らせて世の中の事象だったり、成功例・失敗例に反応して自分だったらどうするかをシミュレーションしていく。
さくマガ:
作品作りに悩んだ時、誰かに相談したりすることはあるのでしょうか。
杉田:
まったくないですね。
自分のことって人に置き換えられないじゃないですか。他人のゴールと自分のゴールは違うので、一番大事なことは自分で考えて、勘を信じて黙って決断します。
学生の時に若手画家のブームがあって、何を描いても売れる時期があったんです。外国のオークション会社の人がアトリエにやって来て「杉田くんの作品だったら何千万とかの金額で売れるから、ぜひ出品して欲しいんだ」って言われたこともあったんですね。
僕の知り合いの優秀な作家は、軒並みオークションに出品してました。確かに何百万、何千万で売れたりもしてましたが、買っているのは外国のオークションで買うのが好きなコレクターでしかないから、本当のファンじゃないんですよね。日本で展示会をしても、その人が来て買ってくれるわけじゃないから、結局売れなくなって続けられなくなった。そういうのも “勘” なんですよね。
僕はその間、オークションには出さないで、コツコツと10万、20万の価格の安い作品を売ってきたから、いままで続けることができたんだと思っています。
さくマガ:
杉田さんが最近取り組んでいる新たな挑戦はありますか。
杉田:
最近は、企業さんと一緒に企画をすることが多いです。例えば百貨店さんだったり、ベビー用品をアートに変える仕事だったりとか。
先日お話をしたのは、コンセプトカーを作っている会社でした。僕の作品の中に樹脂で作った立体のものがあるんですけど、それを2、3メートルにしてみたらどう? みたいな話もしました。企業さんとコラボすることで、自分だけでは不可能だったことがどんどん可能になっていきますよね。アーティストと社会とのコラボで、世の中や価値観を拡張していきたいです。
この前、オークションでライブペインティングをやったんですよ。1日で作品を描いて夕方に販売するようなやつですね。
昼休み中にちょっと席を外して戻ってきたら、自分のブースの描きかけの作品の周りに人だかりができているんですよ。みんな黙って作品を見ていると思ったら、目の見えない人たちだったんです。なので、僕は「作品を触っていいですよ」って声を掛けたんです。僕の作品って厚みのあるマーブル模様の作品なので、ボコボコしてるじゃないですか。
それを触った彼らは「杉田さんの作品は色が見える」って口々に言うわけですよ。
僕はうれしくて作品のストーリーを丁寧に伝えたら、その人たちが夕方の落札のときに入札をしてくれたんです。アートって特権階級の人たちだけのものじゃなくて、幼稚園児だったり、目の見えない人たちにとってもアートなんだよなって改めて思いました。いままでそういう人たちのためのアートってないなと思ったんですね。
それで思いついたのが、真っ白な画集です。触るとゴツゴツしてる。つまり目の見えない人たちのための画集を作ったらどうかなと思って、プロダクトデザインの人に相談しているところです。
目が見えないことにハンデを抱えているという見方があるけど、その見えない人が真っ白な画集を体験して、それぞれの風景を感じ取って絵を楽しむ。それを知った目の見える人も目が見えない世界が知りたいなって思えるような逆転現象があったらいいですよね。
こういったことは絵を描く以外の仕事ではあるんですけど、この社会においては有意義だと思います。
現実的なコストとか流通を考えると僕1人じゃとても難しいことも、いまはいろんな人が協力しようとしてくれているので、いままでよりも100倍やれることが広がっているんですよ。本当にありがたいし、これからがとても楽しみです。
さくマガ:
杉田さんが今後やりたいと思っていることを教えてください。
杉田:
日本では美大に行く人や美術館で働く人って多いんですけど、プロの人はとても少ないです。それはきっとアートの仕事に対する誤解が多いからだと思うので、その誤解を解いていきたいです。
僕はこんなに素敵な仕事はないと思っています。だってマイノリティが強さですからね。みんなが考えなかったことを考えることが優秀なんですよ。
ピカソだったりバスキアもそうですけど、みんながやっていないことをやったからこそ、その作品が何十億、何百億円という価値になります。
だけど少数派の人の考え方とか、モノの見方っていうのは、世の中では生きづらいわけですよね。そういう人だからこそ、アーティストになった時に良い作品が生まれるんじゃないかな。それが値段になったり、充実に繋がる。少数派が強さになる、そんな仕事って他にないんですよ。
日本の99.9%のアーティストはパートタイムアーティストといって、作家活動の傍らで別の仕事をしながら生活をしています。だから僕は、作家活動だけで食べていけるフルタイムアーティストを増やしていきたいです。
なので、僕自身がそういうモデルケースになって「杉田さんがこんなふうに充実してるから、自分も何かできるんじゃないか」と勇気を与えることができる存在になりたいですね。
さくマガ:
杉田さん、素敵なお話をありがとうございました!
(執筆:福島 あゆ美 編集:川崎 博則 提供元:さくマガ)