年金を5%OFFで納付!?前納×クレカ還元×付加年金でおトクに備えよう
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2019年、話題となった「老後2,000万円問題」。
2019年に金融庁の金融審議会が公表した「平均的な高齢夫婦世帯で老後資金が2,000万円不足する(※)」というこの試算に、ショックを受けた方も多いのではないでしょうか。
しかし、あの「2,000万円が不足」という金額は厚生年金に加入している会社員の話であって、個人事業主の場合だと2,000万円どころか「4,500万円足りない」なんて試算も……。
「じゃあもう無理では?」と真顔になってしまう気持ちもわかりますが、そんなこと言っていじけてるわけにもいかないのが現実。
そこで今回は、「国民年金を5%OFFにする支払い方」や、個人事業主だけが使える「2年で元が取れる超おトクな付加年金制度」について紹介したいと思います。
「いや…そもそも年金とか払うほうが損じゃね……?」と思う方もいるかも知れませんが、年金って、65歳以降の老齢年金だけではなく、障害年金や遺族年金など、明日の自分が受給するかもしれないくらい人生に紐付いた制度なんです。
ということで、年金アンチの人も、ぜひ読んでみてください!!
就職しないまま大人になってしまったライター。大学卒業1年後に開業届を提出し、それから個人事業主としてゆるく令和をサバイブ中。代表作に「図書館の資料修復技術を駆使してカピカピになったポイ捨てエロ本を蘇らせる」(X:@shugou17)
目次
2019年に金融庁の金融審議会が公表して話題となった「老後2,000万円問題」。金額のインパクトが大きすぎて、試算の内容を詳しく把握していないという人も多いのでは?
ということで、まずはこの「2,000万円」という数字がどのように算出されたのか見てみましょう。
金融審議会の報告書では、次のような「平均的な高齢夫婦世帯」がモデルケースとして想定されています。
世帯構成:夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦
収入:無職(年金をおもな収入源とする)
住居:持ち家
出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
そして、試算では「月の収入(約21万円)から支出(約26.5万円)を差し引くと毎月約5.5万円の不足が生じる」という結果が推計されました。
この毎月5.5万円の赤字が30年間続くと仮定すると、「5.5万円 × 12ヶ月 × 30年 =1,980万円(約2,000万円)」の資金が不足する――というわけです。
これが「老後2,000万円問題」の内訳ですが、注意したいのは「モデルケース」と実際の我々との違い。
この試算では、年金による収入(※)は「19万1,880円」と設定されています。
※厳密には「社会保障給付」の金額ですが、モデルケースの場合は「ほぼ年金」と解釈しても差し支えないため、わかりやすく「年金」としています。
対して、厚労省の調査による年金の平均受給額は以下の通りです。
- 厚生年金:月額 約14,6000円(国民年金+厚生年金)
- 国民年金:月額 約57,000円
おわかりいただけたでしょうか……
振り返りますが、「老後2,000万円問題」の試算は夫が厚生年受給者、妻は国民年金受給者の家計で試算されているのです。
つまり、「19万1,880円」は会社員の夫の厚生年金に頼っている部分がでかく、国民年金(個人事業主に多い)だけだと、不足額は2,000万円では済まないことに……。
たとえば、夫も妻も国民年金受給者の場合、2人合わせて12万円程度の給付額にしかならず、「老後2,000万円問題」の想定年金収入(約19万円)よりも約7万円も少ない形に。
こうなるともう、老後2,000万円どころか老後4,500万円ほどが不足する計算になってしまうのです!
※不足分12.5万円 × 12ヶ月 × 30年 = 4,500万円
しかも「老後2,000万円問題」のモデルケースは持ち家となっており、毎月の住居費はたったの「13,656円」に設定されているので、家賃がかかる場合はさらに赤字額が増えることに……。
「つまり無理ゲーってこと?」と思う気持ちもわかりますが、実は個人事業主だけが利用できる将来のための制度があるんです!
ということで、老後資金が不足しやすい個人事業主はぜひとも活用したい「おトクな年金制度」について紹介します。
厚生年金と比較して、年金支給額が低い国民年金。
国民年金に加入している個人事業主の方は「頼りない……」と思っているかもしれませんが、実は国民年金には、超おトクな「付加年金」という制度があります。
付加年金は、通常の国民年金に「付加保険料」を上乗せして納付することで将来の年金受給額を増やせる制度なのですが、
「月400円でOK」「2年で元が取れる」「3年目以降は完全にプラス」
といった具合に、とにかくお手軽に始められるうえ、超おトクな制度となっています。
具体的な金額は以下のとおりです。
- 付加保険料(通常の年金に追加する額)……月400円
- 将来追加される金額(年額)……200円 × 付加保険料納付月数
毎月の年金に400円上乗せするだけで、「200円 × 納付月数」が毎年の年金支給額に加算されます。つまり、年金を受給し始めてから2年で元が取れ、3年目以降は完全にプラスの状態に!
私は23歳から付加年金を払っているので、59歳までの37年間支払い続けた場合、付加年金総支払額(手元から出て行った金額)は17万7,600円となります。
対して、将来追加される年金は年額88,800円。受給が2年を超えると支払額を上回り、3年目以降は毎年88,800円、ただ追加でもらっている状態に……!
仮に65歳〜平均寿命である81歳まで、17年間年金を受給した場合、トータル133万円ほど得する計算になります。
しかも付加年金保険料は「社会保険料控除」の対象となり、所得から差し引けます。個人事業主はぜひ活用したい制度です。
あまりにもおトクすぎる制度なので、さかのぼって支払いたくなるものの……過去分の支払いはできないのが残念なところ。気になる人はできるだけ早く年金事務所に問い合わせましょう。
ちなみに、メリットだらけの付加年金ですが、「国民年金基金」との併用はできないので、その点は気をつけてください!
付加年金は「将来」得する制度ですが、国民年金では「いま」得できる制度もあります。
実は国民年金保険料、一定期間の保険料をまとめて前払い(前納)できるのですが……前払いすると、けっこうな割引が適用されるのです!
前納の種類や割引額を詳しく見ていきましょう!
令和7年度 前納の種類・納付額・割引額
- 毎月納付 17,510円(割引額0円)
<納付書・クレカ払い>
- 6カ月前納 10万4,210円(割引額 850円)
- 1年前納 20万6,390円(割引額 3,730円)
- 2年前納 40万9,490円(割引額 15,670円)
<口座振替>
- 6カ月前納 10万3,870円(割引額 1,190円)
- 1年前納 20万5,720円(割引額 4,400円)
- 2年前納 40万8,150円(割引額 17,010円)
前納には、「6カ月前納」「1年前納」「2年前納」の3種類があり、支払い方法は「納付書・クレカ払い」「口座振替」の2種類があります。
例えば口座振替で2年前納をした場合、向こう24ヶ月分の国民年金を納付することになります。2年分なので当然金額も大きく、令和7年度の場合は40万9,490円を支払うことに……。
とまあ、一気にバカでかい金額の請求が来るのですが、代わりになんと17,010円もの割引が受けられるんです!
つまり、まさかの年金4%OFFが可能に。年金、意外にも値引きしてくれるんですね。スゲッ。
割引率は前納期間が長いほど高く、また「納付書・クレカ払い」よりも「口座振替」のほうが高く設定されています。
つまり、「口座振替の2年前納」が最もおトクになりそうです……が!!
「口座振替 2年前納」「納付書・クレカ払い 2年前納」の割引額は1,340円しか変わりません。そして、「納付書・クレカ払い」なら、高還元率クレカで支払えば大量のポイントがゲットできます!!
よって、「高還元率クレカ」&「2年前納」が最もおトクに年金を支払える最強デッキとなります。やったぜ。
例えば私の場合、令和6年度の国民年金を「クレカ払い」「2年前納」で支払いました。支払い金額は40万7,840円で割引額は15,290円だったのですが、2%が還元される高還元率クレカで支払ったため、一気に8,200円分のポイントをゲットできました。
会社員じゃないから国民年金自分で払ってるけんだけど、少しでもお得にするため2年前納&クレカ払いにしてるから、毎回一気に41万円の請求が来て一気に8,200ポンタポイント貯まって毎回感情おかしくなってる。 pic.twitter.com/H4Xx0bRRii
— シュゴウ (@shugou17) October 22, 2024
割引額の15,290円と、ポイントの合計は23,490円。 約6%もの割引を受けられた計算になります。
令和7年度はクレカの割引額がよりアップしているので、仮に還元率1%のクレカで支払ったとしても21,091円もおトクに。年間で1万円以上を浮かせられます。
ちなみに、付加保険料も前納による割引の対象なので、付加保険料を払っている人はさらに割引の恩恵を受けられちゃいますよ!
「なんかおトクに払えるとか、多めに受給できるとか書いてるけどさ~~。そもそも年金払うとか損じゃね?」
そう思った事あるよ~って人、多いんじゃないでしょうか?
私も正直「年金制度、大丈夫そ…?」と思うこともありますが、年金制度は国民一人ひとりが支え合う制度。損とか得とか考えること自体が間違っており、当たり前に私達国民が義務として払うべきものなのです。
…………………………
………… そうだよね!!
そんなキレイな御託なんざ知らないよね!!!
自分が払った分が返ってこなかったら、普通に最悪だよね!!!!
ということで、普通に道徳とか無視して損得目線で「払うべきかどうか?」を考えたいと思います。自分が払った分が返ってこなかったら普通に最悪なので。
年金=「年取ったらお金もらえるヤツ」と認識している人は多いと思いますが、国民年金は年を取ったらもらえる老齢基礎年金に加え、以下のような給付種類があります。
- 老齢基礎年金……一定の年齢に達した場合に給付される年金
- 障害基礎年金……被保険者に障害が発生した場合に給付される年金
- 遺族基礎年金……被保険者が死亡した場合に遺族に給付される年金
「年金損得論争」ではこの中の老齢基礎年金の給付だけを見て「払ったほうがいいか」を語る人もいるのですが、実際にはこのように障害基礎年金や遺族基礎年金といった給付種類があり、いずれも私達の人生にめちゃくちゃ深く関わっています。
「年金は年を取るまで関係ないから若いうちは払わなくていい」と考えていると、明日怪我や障害を負った際、障害基礎年金を受け取れない事態にもなりかねません。
特に個人事業主は一人親方なので、自身の身体になにかあっても自分でなんとかするしかありません。「障害基礎年金なんかなくても、なんとかなる!」と言い切れる人以外は、生活保障の意味でも年金を払うことをオススメします。
「年金を支払うよりも自分で投資したほうがいい」と考える人もいるかも知れませんが、投資の利益には税金が課せられる一方、国民年金保険料は全額が社会保険料控除の対象となり、節税につながります。
しかも、2年前納で納付した場合、「支払った年に全額控除するか」「分割で1年ずつ控除するか」を選べちゃいます。
つまり、特定の年だけ所得が大きくなりそうでヤバい場合、その年に合わせて2年前納をすることで節税効果を大きくできるのです。
2年前納、調整弁としても活躍してくれるなんて…好き……。
実は国民年金の財源はその半分が国庫負担(税金)によって賄われています。
つまり、私達が普段払っている消費税などの一部は国民年金の支払いに使われているわけですが、国民年金を未納のままにしていると、年金が受給できない=税金の払い損になりかねない……という考え方もできるわけです。
将来的にどうなっているかは誰にも分かりませんが、半分が国庫負担でまかなわれているということは、民間の保険制度よりは安定度が高いと言えるのでは……?
国民年金保険料の納付は国民の義務であり、未納が続くと催告状が届き、最終的には財産を差し押さえられるリスクがあります。
また、督促状が指定する期日までに納付がない場合は延滞金がかかってしまいます。最近は年金未納率の上昇を防ぐために差し押さえなどの取り組みを強化しているという話も聞くので、どうせ払うことになるのなら払っておいた方がいいかも……。
かつて話題になった「老後2,000万円問題」ですが、厚生年金に加入していない個人事業主は老後2,000万円どころかもっと必要な事態になっています。
国民年金を払っていなければ、さらにとんでもない額の老後資金が必要になります。老齢年金以外にも節税効果や生活保障などのメリットがあるので、最低限、国民年金は払っておき、いざという時に備えることをオススメします。
払えない人には免除制度もあるので、所定の窓口に相談してみましょう。逆に余裕のある人は、おトクな付加年金や前納制度も活用してみてください!
(執筆:シュゴウ、編集:夏野かおる)
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