採用効率化で人事をラクに!質を落とさず優秀な人材を迎えるノウハウを解説
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「求める人材から応募が来ない」
「面接官によって評価が分かれてしまう」
「採用しても、すぐに辞めてしまう」
採用活動において、このような課題を抱えていませんか?
この記事では、採用ペルソナの基本的な意味やターゲットとの違いから、具体的な作り方の5ステップ、すぐに使える項目テンプレート、そして実践的な活用方法を解説します。
企業の人事担当として300人以上の採用に関わってきた筆者が、実体験をもとにアドバイスします。

人事ジャンルを得意とするフリーライター。30年の会社員生活では、一貫して人事に従事。人事コンサルタントとして企業の組織改革や採用課題の解決なども経験。現在は主にHRメディアの記事やコラム記事を手掛けている。
目次
採用活動を成功させるには「採用ペルソナ」を設定することが欠かせません。しかし、その意味や目的を正しく理解できていない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、採用ペルソナとは何か、なぜ重要なのか、そしてよく混同される「ターゲット」との違いについて、基本から分かりやすく解説します。
採用ペルソナとは、自社が採用したいと考える「理想の人物像」を具体的に設定したものです。年齢や職務経験といった情報だけでなく、その人の価値観やキャリアに対する考え方、プライベートな過ごし方、情報収集の方法といった、より深い側面まで掘り下げます。
採用ペルソナの設定が重要なのは、採用に関わるメンバー全員が「どんな人に来てほしいのか」という共通認識を持てるようになるからです。認識が統一されれば、募集方法から面接での質問まで、採用活動全体に一貫した軸が生まれます。
結果的に、採用の精度が向上し、入社後のミスマッチを防ぐことにつながるのです。
「ペルソナ」と「ターゲット」は混同されがちですが、両者には情報の「解像度」に違いがあります。採用ターゲットは、大まかな属性やスキル、経験で絞り込んだ集団を指すものです。例えば「20代後半の営業経験者」や「IT業界経験5年以上のエンジニア」といったように設定します。
一方、採用ペルソナは、そのターゲット層の中から「架空のたった一人の人物」を浮かび上がらせることです。例えば「都内在住、32歳、現職では大規模システムの開発に携わり、将来的にはリーダーになりたいと考えているAさん」などと設定します。
具体的な人物像があるからこそ、その人が「何を求めているか」や「どんな情報に響くか」まで深く理解でき、より効果的な採用戦略を練ることが可能になるのです。
近年は、少子高齢化による労働人口の減少や、働き方の多様化によって「優秀な人材」の獲得が難しくなっています。条件の良い求人を出したり、広く募集をかけたりするだけでは、本当にマッチする人材を見つけにくくなっているのが現状です。
特に中小企業やスタートアップでは、大企業に比べて知名度や待遇で劣るケースも少なくありません。このような状況下では、自社の魅力をピンポイントで伝える必要があります。
採用ペルソナを設定すれば、候補者が重視する点や、どうすれば相手に響くかが見えてきます。効率的かつ確実に最適な人材を獲得するためには、この採用ペルソナの設定が欠かせません。
このような理由から、採用ペルソナの重要性が高まっているのです。採用ペルソナは、現代の採用において、企業の「戦略的な羅針盤」として機能します。
採用ペルソナを設定すれば「なんとなく良さそう」というイメージだけで採用し、失敗することを防げます。ここでは、採用活動の質を向上させる代表的な3つのメリットを詳しく見ていきましょう。
採用ペルソナを設定すれば経営陣や人事、配属先の現場社員など、採用に関わる全てのメンバー間で「求める人材像」の認識を統一できます。採用する際は「優秀な人」という言葉の解釈が、部署や役職によって異なることが少なくありません。
この認識のズレが、選考基準のブレや採用のミスマッチを生む原因となるのです。具体的な人物像を共有すれば「自社にとっての優秀な人材とは、どんな人物なのか」という共通認識が生まれます。そうすれば、面接官ごとの評価のバラつきがなくなり、一貫性のある選考が可能になるのです。
採用ペルソナが明確になると、採用活動全体の効率と効果が向上します。「誰に」「何を」「どこで」伝えるべきかが、具体的に見えてくるからです。
例えば、ペルソナのライフスタイルや情報収集の手段が分かっていれば、その人に合った求人媒体やSNSを戦略的に選べます。また、ペルソナの心に響くメッセージで求人票やスカウトメールを作成できるため、応募の質も上がるのです。
結果的に、闇雲に広告を打ったり、手当たり次第にスカウトを送ったりするよりも、無駄な採用コストや工数を削減でき、費用対効果の高い採用活動を実現できます。
採用ペルソナは、スキルや経験だけでなく、価値観や企業文化との相性といった内面まで深く考慮して設計します。そうすれば「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを減らすことが可能です。
厚生労働省の調査でも、新規学卒者の約3割が3年以内に離職しているというデータがあり、早期離職は多くの企業にとって深刻な課題となっています。(参考:厚生労働省|学歴別就職後3年以内離職率の推移)
その大きな原因が、企業文化や人間関係への不適応といったミスマッチです。(参考:労働政策研究・研修機構|第6章早期離職とその後の就業状況)
ペルソナを設定し、自社の社風や価値観に合う人材を惹きつけることで、入社後の定着率が高まり、長期的に活躍してくれる人材の確保につながります。これは、採用コストだけでなく、育成にかかるコストの削減にもつながります。
採用ペルソナは、思いつきや理想だけで作っても機能しません。効果的なペルソナを作成するには、外せないいくつかのコツがあります。ここでは、誰でも実践できる採用ペルソナの作り方を、具体的な5つのステップに分けて解説します。
この流れに沿って進めれば、精度の高いペルソナが完成するでしょう。
採用ペルソナを作成する最初のステップは、なぜ採用を行うのか、その目的を明確にすることです。目的が曖昧なままだと、どのような人物像が必要なのかが見えにくくなり、効果的なペルソナ設定が難しくなります。
例えば「欠員補充なのか、それとも新規事業の立ち上げに伴う増員なのか」「短期的な業績アップを目指すのか、長期的な組織力強化を狙うのか」といった点を具体的に言語化しましょう。こうした目的が、ペルソナ設定におけるすべての判断の土台となります。
経営層や関係者間で十分に議論し、共通認識を持っておくことが重要です。
採用目的が固まったら、次に現場で活躍している社員や、配属予定部署の管理職にヒアリングを行い、具体的な人材要件を洗い出していきます。高い成果を出している社員を参考に「どのようなスキルや価値観を持っている人材が自社で活躍しているか」を分析するのも有効な手段です。
スキルや経験といった「見える能力」だけでなく、性格や仕事への姿勢といった「見えない能力」についても情報を集めると、よりリアリティのある人物像につながります。
集めた情報をもとに、具体的な人物像を設計しましょう。基本情報(氏名、年齢、学歴、職歴)や価値観、性格、趣味、休日の過ごし方などパーソナルな部分まで設定してみてください。
詳細な人物像があれば、採用に関わる全員が同じイメージを共有しやすくなります。「誠実な人」といった抽象的な表現ではなく「納期が厳しいプロジェクトでも、最後まで責任をもってやり遂げる人」といった具合に、具体的なエピソードまで踏み込むのがポイントです。
ペルソナの草案が完成したら、経営陣、人事、現場責任者と共有し、すり合わせを行いましょう。すり合わせの工程を省くと、後から「こんな人を求めていたわけじゃない」といった意見の食い違いが起こる原因になります。
「この人物なら、今のチームの課題を解決してくれそうか」や「自社の社風に合っているか」といった視点で検討してください。そうすれば、採用基準に一貫性が生まれ、選考過程での評価のズレを最小限に抑えられます。
設定したペルソナが、現実的に採用可能な人材であるかという視点も重要です。どんなに理想的なペルソナを設定したとしても、市場に存在しない、あるいは獲得競争が激しすぎる場合は採用に結びつきません。
求めるスキルを持つ人材が市場にどれくらいいるのか、競合他社はどのような条件を提示しているのかをリサーチしましょう。その上で条件に優先順位をつけ「ここは譲れない」という点と「ここは妥協できる」という点を明確にしておくと、より現実的な採用活動が可能です。
採用ペルソナを作るといっても、具体的にどのような項目を設定すればよいのかわからないかもしれません。ここでは、ペルソナの骨格となる基本的な項目から、新卒・中途採用それぞれの具体例、すぐに使えるテンプレートを紹介します。
ペルソナの土台となるのが、その人物の基本属性と職務経験です。これらは、履歴書や職務経歴書に記載されるような客観的な情報と考えて良いでしょう。これが人物像を具体化するための骨格となります。
基本属性とは、氏名、年齢、性別、居住地、最終学歴、家族構成などです。一方、職務経験には、これまでの勤務先企業、業種、職種、役職、具体的な業務内容、そして実績や得意なスキル、保有資格などを設定します。
これらの情報を細かく設定することで、ぼんやりとしていた人物像が、リアリティのある1人の人物となって浮かび上がるのです。
基本属性や職務経験だけでなく「価値観」や「志向性」といった内面的な要素も設定します。企業文化に合うかや、入社後の活躍や定着を予測する上で、内面的な要素は重要です。
例えば、仕事において何を最も大切にするのかや、将来どのようなキャリアを築きたいのか、得意なチームでの役割は何か、といった点まで深掘りましょう。さらに、趣味や休日の過ごし方、よく利用するSNSといったライフスタイルに関する情報も加えると、より人物像の解像度が高まります。
新卒採用では職務経験がないため、学業や課外活動からポテンシャルや人柄を読み解くペルソナを設定しましょう。
例)
【氏名】田中 碧(たなか あおい)
【年齢】22歳
【大学】〇〇大学 経済学部
【人物】大学ではマーケティングのゼミに所属し、地域企業と連携した商品開発プロジェクトでリーダーを務めた経験を持つ。サークル活動では、イベントの企画担当としてSNSを活用した集客を成功させた。アルバイト先の飲食店では、新人教育も任されている。好奇心旺盛で、新しいことに挑戦するのが好きな性格。企業選びの軸は「若いうちから裁量権を持って働ける環境」
新卒の場合は、ポテンシャル採用のため、人物を深く掘り下げます。
中途採用では、即戦力としての活躍を期待するため、スキルや実績を具体的に設定します。
例)
【氏名】鈴木 誠(すずき まこと)
【年齢】30歳
【現職】株式会社〇〇(IT系メガベンチャー)Webマーケター
【経験】事業会社で5年間、自社サービスのデジタルマーケティング全般を担当。特にSEOや広告運用を得意とし、担当プロダクトのリード獲得数を2年間で3倍にした実績を持つ。チームリーダーとして2名のメンバーのマネジメント経験もある。転職理由は「より専門性を高め、事業のグロースに直接貢献したい」
即戦力が求められる中途採用では、これまでの実績や経験を具体的に設定することが大切なポイントになります。ここの解像度が低いと、入社後のミスマッチを招きかねません。
ペルソナ作成にすぐ使える項目のテンプレートを紹介します。これをベースに、自社の採用目的やポジションに応じて、必要な項目を追加・修正してご活用ください。
| 【基本情報】
氏名: 【職務経歴(中途の場合)】 会社名: 【スキル・資格】 語学力: 【価値観・パーソナリティ】 性格: 【ライフスタイル】 趣味: |
採用ペルソナは、作成して終わりではありません。採用活動のあらゆる場面で活用してこそ、その真価が発揮されます。
ここでは、設計したペルソナを具体的なアクションに落とし込み、採用成果を最大化するための4つの実践方法を見ていきましょう。
求人票や募集要項は、候補者が企業と出会う最初の接点です。ここに採用ペルソナの心に響くメッセージを盛り込めば、応募の質を高められます。
例えば、ペルソナが「チームワークを重視する性格」なら「部署の垣根を越えた連携が活発な社風」をアピールすると良いでしょう。また「スキルアップ意欲が高い」ペルソナなら、研修制度や資格取得支援について具体的に記載すると効果的です。
業務内容を羅列するのではなく、ペルソナが「この会社で働きたい」と感じるような魅力の伝え方を意識すると、惹きつけたい人材からの応募につながります。
採用ペルソナが普段どのような媒体で情報を収集しているかを分析し、最適な手段を選定しましょう。これをやれば、広告費を効率的に使い、訴えたい層へ的確にアプローチできます。
例えば、20代の若手ITエンジニアなら、一般的な転職サイトよりも、技術系のブログやSNS、エンジニア専門のダイレクトリクルーティングサービスの方が接点を持ちやすいかもしれません。
一方で、管理職クラスは、ビジネスSNSや人材紹介サービスの活用が有効です。このように、ペルソナが「どう行動するか」に合わせて採用手法を選べば、費用対効果を最大化できます。
採用ペルソナは、面接や選考の基準を明確にする上でも役立ちます。ペルソナに設定したスキルや経験、価値観、志向性などを評価項目に落とし込めば、面接官による評価のブレを最小限に抑えることが可能です。
例えば「チームワークを重視する」というペルソナ項目があれば「過去のチームでの協業経験や、意見対立時の対応」などを具体的な質問として用意できます。また「成長意欲が高い」という項目に対しては「今後どのようなキャリアを築きたいか」といった質問で、候補者の本質的な部分を引き出せるでしょう。
ペルソナを軸にした明確な選考基準があることで、客観的かつ公平な評価につながり、ミスマッチの少ない人材を見極める精度が高まります。
ダイレクトリクルーティングで候補者に送るスカウトメールも、採用ペルソナを活用すれば、返信率を向上させられます。ペルソナが「何を求めているのか」「どのような情報に興味を持つのか」を理解していれば、一人ひとりに響くメッセージを作成することが可能です。
例えば「あなたの〇〇というご経験は、弊社の△△という課題を解決できると確信しています」や「弊社なら〇〇という成長機会を提供できます」と書けば、関心を引きやすくなります。このように、ペルソナを設定すれば「あなただけ」に宛てた特別なメッセージが送れ、優秀な人材の心を動かすのです。
採用ペルソナは使い方を誤るとかえって採用活動の妨げになることもあります。良かれと思って設定したのに、応募が全く来ない…という事態になりかねません。
ここでは、ペルソナ設定で陥りがちな失敗を防ぎ、効果を最大化するための3つの重要な注意点を解説します。
採用ペルソナを細かく設定しすぎると、かえって逆効果になることがあります。あまりにも具体的にしすぎると、現実にそのペルソナに完全に合致する人材がほとんど見つからず、採用のハードルを上げてしまいかねません。
以下は、NGの例です。
「毎朝〇〇時に起床し、通勤中は△△のニュースアプリを必ずチェックする」
このように、細かい行動まで設定すると、本当に必要な「価値観」や「スキル」といった本質的な部分を見落としてしまう可能性があります。採用活動の目的達成に不可欠な「本質的な情報」に焦点を当て、必要以上に個人的な情報を盛り込みすぎないのがポイントです。
求める人物像を1パターンに絞り込む必要はありません。特に、多様なスキルや視点が求められるポジションでは、複数のペルソナを設定したほうが良いです。
例えば、同じ営業職でも、新規開拓が得意なタイプと、既存顧客との関係構築が得意なタイプでは、強みが異なります。どちらも自社にとっては価値ある人材の可能性があるのです。
ひとつのペルソナに固執すると、こうした異なるタイプの優秀な人材を取りこぼしてしまうかもしれません。多様な人材を確保するという観点からも、複数の視点からペルソナを設定することをおすすめします。
一度作成したペルソナは見直しが必要です。市場の状況や事業のフェーズ、働く人の価値観は常に変化しています。採用ペルソナも、こうした変化に合わせて定期的に見直し、更新していかなければなりません。
数年前に作成したペルソナでは、現在の働き方の多様化に対応できていないケースもあります。採用活動が思うように進まないと感じた時や、少なくとも年に一度は、ペルソナが今の状況に合っているかを確認しましょう。
企業が求める人材を獲得し、長く活躍してもらうためには、感覚的な採用活動ではなく、より緻密な戦略が必要です。本記事で解説した「採用ペルソナ」こそ、まさにその戦略の要です。
理想の人物像を深く掘り下げ、具体的に描くことで、社内での認識統一や採用活動の効率化、さらにはミスマッチによる早期離職の防止につながります。また、設定したペルソナは、求人票の作成や採用媒体の選定、面接基準、スカウトメールにも活用可能です。
紹介した方法を参考に、貴社に最適な採用ペルソナを設定し、採用活動を成功させてください。
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▲出典:Workship CAREER
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(執筆:松尾隆弘 編集:猫宮しろ)