「社員が会社のブログを書くと3万円」制度から見るGIGの企業カルチャー

「社員にブログを書いてもらって、どんどん自社をアピールしてほしいけど、なかなか書いてくれる人がいない……」

多くの経営者が抱えやすい、こんな悩み。斬新な解決策として、株式会社GIGには

  • 1記事につき3万円のインセンティブ
  • 編集チームやAIによる執筆支援
  • テーマの制限はほぼなし
  • トップによる検閲なし

という「GIGブログ制度」があります。

ユニークな社内制度を持つ企業の経営者に、福利厚生や社内制度によって企業カルチャーを醸成するコツを聞く「すごい社内制度」企画。

今回はこの「GIGブログ制度」について、株式会社GIG代表・岩上貴洋さんに、制度のなりたちや運用の仕組みを聞いてみました。

株式会社GIG代表・岩上貴洋氏
株式会社GIG代表・岩上貴洋氏

学生時代からアーリーステージを対象とした独立系投資会社にて、投資業務、コンサルティング業務に従事。2007年、株式会社LIGを創業し代表取締役就任。システム開発、デザイン制作、コンテンツマーケティング、シェアオフィス事業を展開する。2017年、株式会社GIG創業。

コーポレートブログ活性化の秘訣は「社員を信じない」?

───さっそく株式会社GIGの「GIGブログ制度」について伺いたいのですが、この制度を利用すると、1記事あたり3万円相当のインセンティブがもらえるって本当ですか?

GIG代表・岩上さん(以下、岩上):
はい、本当です。半期に一度、インセンティブ(=GIGポイント)を集計して、賞与として還元しています。

───正直、コーポレートブログにそんなコストをかける会社って、珍しいですよね。普通なら業務の一環とか有志の活動になるというか。言ってしまえば社員の善意に甘えるケースが多い気がします。

岩上
結論から言うと、僕は「社員の善意」という、形がなくて移ろいやすいものは1ミリも信じていないんです。

───おお……いきなりパンチがありますね(笑)。

岩上:
誤解を恐れずに言えば、人間って「やる気があるから動く」のではなく「トクをするから動く」生き物だと思うんですよ。

ブログを書く作業は、思考を整理しなきゃいけないし、それなりに時間もかかる。「会社のために頑張ってよ」という精神論でお願いするだけでは、そりゃ上手く回りません。

───だからこそ「3万円」という、明確なメリットを提示したと。

岩上:
そうです。仕組みで解決できることを、根性論に持ち込まない。

もともとGIGでは申請さえすれば副業ができる環境ですが、社外で副業ライターとして記事を書くくらいなら、うちで3万円分のアウトプットをしてほしいと思っています。

そのほうが本人も稼げるし、会社には資産が残る。Win-Winですよね。

書かれた記事は永久的な資産になる

───でも1記事3万円って、外部のプロライターに発注するのと変わらない、あるいはそれ以上の金額ですよね。一方で社員は、「ライティングに関しては素人」という人もいる。それでもあえて、社員に依頼する経営上のメリットは、どこにあるんでしょうか?

岩上:
外注のライターさんに書いてもらうのと、社員に書いてもらうのでは、記事の資産価値が変わってきます。

───と言いますと?

岩上:
外部の人が書く記事は、どうしても綺麗にまとまった情報になりがちです。一方で、社員が書く記事には、その瞬間の葛藤や、実務でしか得られない熱量がこもります。

───確かに、整いすぎた記事より、現場のリアルな声のほうが信頼できるかも。

岩上:
加えて、自社メディアに記事が溜まると、中長期的な広告費の削減にもなります。

たとえば、数ヶ月前に自社エンジニアが書いたAIツール活用の記事が、いまも多くのトラフィックを集めていたりするんですよ。一度払った3万円が、長きにわたって自社PRに貢献してくれている。これほどコスパの良い投資はありません。

社長の検閲なしでまわる仕組み

───GIGブログのもう一つの特徴として、「社長の検閲(チェック)がない」そうですね。一般に、コーポレートサイトに載せる記事であれば、広報や役員による検閲が入るのが普通だと思うのですが。

岩上:
以前は僕もチェックをしていたんですよ。でも、やめちゃいました。理由はシンプルで、社長のチェック待ちで記事公開が遅れることが、ボトルネックになると思ったからです。

それに、社長の顔色を伺い始めると、どうしても優等生的な記事になって、つまらなくなるんです。

だから、公開にあたっての権限はすべて、現場の編集部に委譲しました。その結果、インターン生が書いた会社への批評記事とかも、僕の知らないうちにアップされています(笑)。

───インターン生が会社を批評!? なかなか大胆な内容ですね。

岩上:
チェックの機会を設けないことで、もちろん、ヒヤッとする場面もありました。でも、それが許される空気こそがGIGのカルチャーなんです。

もしかしたら批判的な記事を読んで、「この会社は風通しが良さそうだ」と判断する人もいるかもしれない。ガチガチにガバナンスを効かせるよりも、民主的に開けているほうが、いまの採用市場では強いメッセージになると考えているんです。

短期のPV(数字)を追わない勇気

───ちなみに、「GIGブログ制度」で書かれた記事にはどのようなKPIを設定しているんですか? やっぱり、PVとかでしょうか。

岩上:
いえいえ。実はGIGブログでは、短期的なPVをKPIに設定していません。

───ええっ! 数字は度外視ってことですか? 3万円も払っているのに?

岩上:
数字を追わせると、みんな「バズりそうな小手先のネタ」に走り始めるんじゃないかと思って。そうではなく「自分が今、本当に熱中していること」や「実務で学んだコアな知識」を書いてほしいなと。

───あくまでも、「書きたいものを書く」という自発性を大切にしているんですね。。

岩上:
その通りです。自分のためのアウトプットが、結果として誰かの役に立ち、回り回って会社の資産になる。これが理想のサイクルです。

先ほど挙げたAIツール活用の記事も、本人が「これ、超便利じゃん!」と興奮して書いたからこそ、多くの読者に刺さった。

数字は追うものではなく「結果としてついてくるもの」だと割り切っています。

「公平」ではなく「平等」な機会こそがカルチャーを作る

───そんな「GIGブログ制度」ですが、どすのくらいの割合の社員が利用しているんですか?

岩上:
今のところ、日常的に書いているのは全社員の15%程度ですね。

───あえて斜に構えると、15%の人だけがインセンティブを得て、年収に差が出ることに不満は出ないものですか?

岩上:
言い方が良くないかもしれませんが、動く人・動かない人に平等な報酬を配ることは、本質的な公平ではないと考えています。

機会は全員に、平等に与えられています。その上で、「やる・やらない」は個人の自由です。動いた人が圧倒的に得をする、いわば心地よい格差みたいなものが、自律的なカルチャーを育むんです。

───納得感があります。とはいえ、「書きたいけど、文章に自信がなくて書けない」人もいるのでは?

岩上:
そこはもちろん考えていて、たとえば文章が苦手でも、アイディアさえあれば記事が書けるように、徹底的にインフラを整えました。「どう書けばいいか分からない」なら、社内の編集チームが構成案の相談に乗りますし、AI(Gemini)を活用した執筆支援ツールも共有しています。

AIと一緒に叩き台を作って、プロの編集者が添削する。書き手である社員は、自分の知見を吹き込むだけでいい。執筆へのサポート体制は整っているはずなので、ぜひ書きたいネタがあればどんどん書いてほしいですね。

制度は調整し続ける、それが経営者の役割

───お話を伺って、GIGブログは単なるブログ制度ではなく、GIGという組織をアップデートし続ける要だと思えてきました。

岩上:
制度って、一度作って終わりじゃないんです。今日お話しした「GIGブログ制度」も今の形になるまでに紆余曲折がありました。予算が足りなくなって要件を調整したり、投稿が減ったのを機に執筆のハードルを下げたり……。今の形になるまで、失敗と微調整を何度も繰り返してきたんです。

そもそも、全員に愛される制度を作るのは難しいものです。それでも、根気強く「熱量のある人が報われる仕組み」を作っていけば、自然とそこに企業カルチャーが構築されていくのではないでしょうか。

───「善意を信じない」という言葉の裏にある、社員への深い敬意と期待を感じました。ありがとうございました!

(執筆・編集:Workship MAGAZINE編集部)

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