ChatGPTのアクセス数は「約3割減少」。統計データから分析する生成AIの現在

We Analyzed Millions of ChatGPT User Sessions: Visits are Down 29% since May, Programming Assistance is 30% of Use

生成AI、とくにChatGPTは、テック系だけでなくあらゆるメディアに取り上げられ、いまや世界中で注目の的です。

ChatGPTの予測成長率は900%』や『ChatGPTはFacebookが10年かかったことを半年で達成した』といった記事も多く出され、これだけ見るとChatGPTはこの先も目覚ましい成長を遂げるように思えるかもしれません。

しかし、こうした記事がある一方で、評論家のテッド・ジョイア氏が運営するThe Honest Brokerは『ChatGPTの悲惨なデータからAI需要の縮小が明らかに』という記事を公開。ウォールストリートジャーナルやワシントンポストも、類似の記事を公開しています。

では、実際のChatGPTの現状はどうなっているのでしょうか。2千万台のデバイス(モバイルとデスクトップ・200カ国以上)を対象にWeb上の行動を分析している『Datos』と協力して得たデータをもとに、ChatGPTの現在地を解説します。

調査1. ChatGPTの利用は増えているのか

まず、OpenAI.comのトラフィックデータを見てみましょう。

We Analyzed Millions of ChatGPT User Sessions: Visits are Down 29% since May, Programming Assistance is 30% of Use

▲横軸が時間、縦軸がトラフィックをあらわしている(出典:SparkToro)

グラフからは、2023年5月以降、OpenAIのトラフィックが29.15%減少していることがわかります。

しかし、この減少と生成AIへの関心低下には関連性がないという言説もあります。根拠は以下のAとBです。

  • A : 業務での利用や、定期的な利用は依然として成長している
  • B : 利用の多くは学業と結びついており、アメリカやカナダなどの夏休みが減少につながっている

Datosのクリックストリームパネルは、パネルにオプトインした数百万台のデバイスが訪問したすべてのURLを収集しています。OpenAIへの月間トラフィックだけでなく、デバイスの訪問回数も把握できるため、次にAの説が正しいか検証してみましょう。

ChatGPTの業務利用や、定期的な利用は依然として成長している?

以下は、昨年9月以降のOpenAIへの全パネルのトラフィックを訪問回数/月別に集計し、分布を可視化したものです。

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▲横軸が時間、縦軸がトラフィックをあらわしている。2023年5月は濃いグレー(出典:SparkToro)

一番左の利用頻度が1~2回/月のグループ(=利用頻度の少ないグループ)は、濃いグレーであらわされている2023年5月以降が減少しているだけでなく、黄色の2022年12月以降も大きく減少しています。これは、ChatGPTの機能に関する各種ニュースが、初回利用者の急成長に拍車をかけたためだと考えられるでしょう。

しかし、3~10回/月や、11回以上/月のグループ(=利用頻度の多いグループ)も、2023年5月、または4月以降にトラフィックが減少しています。つまり、利用頻度が高い人の利用率も、2023年5月以降は下がっているということです。

では、Bの説はどうでしょうか。ここからは、ChatGPTの利用目的について掘り下げてみましょう。

調査2. ChatGPTはどのような目的で使われているのか

ChatGPTの用途を探るために、実際のユーザープロンプトを分析しました。Datosから提供された7千以上のプロンプトの中から、信頼性や関連性を考慮して選んだ約4千個のプロンプトにフィルターをかけ、分析した結果が以下です。

まずは1セッションあたりで活用されるプロンプトの数を見てみましょう。

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▲プロンプトの数をあらわすグラフ(出典:SparkToro)

プロンプトを1つ、2〜4つ、5つ以上使う層は、ほぼ均等に分かれていることがわかります。

さらに、プロンプトの内容をあらわすグラフが以下です。

We Analyzed Millions of ChatGPT User Sessions: Visits are Down 29% since May, Programming Assistance is 30% of Use

▲プロンプトの内容をあらわすグラフ(出典:SparkToro)

最大の用途はプログラミングでした。全プロンプトのうち、29.14%を占めており、コードの記述やエラーの検出などに使われているようです。ChatGPTがプログラミング分野に優れていることを考えると、自然な結果だといえます。

つぎに多いのが、23.3%を占める教育です。ただし、これは小学校や中学校のような「学業」に関するものだけでなく、コンテンツの作成、ゲームの謎解き、資料作成のように、趣味・教養のための学習やビジネスのための学習もここに含まれます。つまり、これだけで夏休みを原因とする一時的な減少とは断言できません。

「専門的なコンテンツ制作(7.4%)」「個人的なコンテンツ制作(7.3%)」「クリエイティブなアイデア(4.9%)」、「ライティング支援(1.2%)」は、より広い「コンテンツ」の用途に当てはまるため、すべて濃いグレーにしました。

13.47%を占めているセールス&マーケティングには、業務上のタスク補助としか分析できないものを分類しました。どのチャネルで製品を宣伝すべきかといった質問や、広告最適化のタスク、プロモーションのヘルプなどがこれにあたります。

上記をさらに細かく分析するため、グラフの色はそのままに、サブカテゴリーを分けて作成したグラフが以下です。

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▲サブカテゴリーごとに色分けをしたグラフ(出典:SparkToro)

グラフはサブカテゴリーの内容ごとに色分けをしています。

ブルーに色分けした「高等教育(11.9%)」「初等教育(3.3%)」「宿題(2.4%)」は、すべてあわせても20%以下です。このことから、Bの説も誤りであることがわかります。

補足:ChatGPTでよく使われる単語は?

参考として、ChatGPTでよく使われる単語も可視化してみました。

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▲頻出単語を可視化した図(出典:SparkToro)

「Write(書く)」「Create(作る)」「List(リスト化する)」がよく用いられていることにあまり意外性はありませんが、「SEO(2.39%)」や「Game(ゲーム、4.66%)」も多くの人に使われているようです。以下は意外な単語と、その割合をあらわすリストです。

  • Judge(審判・裁判官):0.61%
  • SaaS:0.56%
  • Pricing(価格設定):0.54%
  • Curriculum(カリキュラム):0.46%
  • Employment(雇用):0.44%
  • Employer(雇用者):0.39%
  • Attorney(弁護士):0.37%
  • Lawyer(弁護士):0.37%
  • Tweet(ツイート):0.34%
  • Movie(映画):0.32%
  • DnD/D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ):0.17%
  • RPG:0.15%

ダンジョンズ&ドラゴンズやRPGなど、ゲームに関する利用が一定数あるのが興味深いですね。

おわりに

一般的には急拡大しているような印象のChatGPTですが、意外にもトラフィックは減少傾向にあることがわかりました。

減少している原因について確かなことは言えませんが、アメリカやカナダの夏休みといった一時的な要因だけが理由ではなさそうです。アクセス数や用途の変化など、今後の動向にも注目したいところです。

(執筆:Rand Fishkin 翻訳:Asuka Nakajima 編集:齊藤颯人 提供元:SparkToro

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