エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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Webライターにはふたつの働きかたがあります。それは「専業ライター」と「副業ライター」。筆者はフリーの専業ですが、本業がありながら執筆活動をしている副業ライターはどのような生活をしているんでしょうか。
そこで今回は、会社員のかたわら、Webライター・作家として活躍する岡田悠さんにお話をうかがいました! 岡田さん流の記事の書きかたもお聞きしながら、副業ライターとしてどのように生活しているのか、副業ならではのメリットについてもお聞きしました!
会社員として会計ソフトの会社で働きながら、ライター・作家としても活動。著書に南極から部屋の中までの旅行記を収録した『0メートルの旅』(ダイヤモンド社)のほか、『10年間飲みかけの午後の紅茶に別れを告げたい』(河出書房新社)、『1歳の君とバナナへ』(小学館)がある。好きな勘定科目は旅費交通費。(X:@YuuuO)
フリーランスのライター・編集者・ぶどうマニア。文章を書くのはきらいだが、色んな人にインタビューするのが好きなので、ライターという仕事に魅力を感じている。(X:@raira21)
目次
少年B:
岡田さんは会社員をしながらライター活動をされていますが、執筆時間はどう捻出しているんですか?
岡田:
子どもができる前と後で、だいぶ変わりましたね。昔は夜と休日にやってたんですが、子どもができて夜と休日がなくなったので……(笑)。
少年B:
生活の変化が。
岡田:
そうですね。なんで、今は朝書いてます。早起きした時とか、子どもを保育園に送っていった後とか。休日だと、子どもが昼寝してる間の2時間に集中して書いたり。
少年B:
使える時間を有効に活用してるんですね。でも、早起きは大変じゃないですか? 睡眠時間は取れてるんですか?
岡田:
今は育休中なので、会社には行ってなくて。子どもと一緒に8時、9時に寝ると、5時に起きても8時間たっぷり寝れるという。
少年B:
めちゃめちゃ健康的な生活だ!
岡田:
でも元々はすごく夜型だったんですよ。学生時代は毎日朝寝て、夕方起きるって生活をしてたんですが、逆転しましたね。
少年B:
お子さんが生まれると健康的な生活を送れる……! ちなみに、お子さんが生まれる前の仕事スタイルはどんな感じでしたか?
岡田:
帰ってきたら風呂入って、食事して。その後、だいたい22時~0時ぐらいまで書いてましたね。休日は丸1日書いてるなんてこともありました。
あとは、締め切り間近でもう間に合わない!って時は、有給を利用して作業することもありました。
少年B:
副業のために有給まで!? 専業ライターからすると、働きづめだなぁと思っちゃうんですが、イヤになったりはしないんですか?
岡田:
ライターになる前から書くことが趣味なので、いまも趣味の延長線上みたいなものですね。だから、むしろ楽しくやっていますし、職場だと常に誰かと一緒にいるので、書斎にこもってひとりになる時間としても使ってます。
少年B:
岡田さんがライターになったきっかけをうかがってもいいですか?
岡田:
2019年にnoteで書いたイランの旅行記がネット上で話題になって。それとほぼ同時期に、近所の回転寿司屋の配信クーポンを予想する記事が『オモコロ』というメディアの記事コンテスト「オモコロ杯」で優勝して、それからですね。
少年B:
当時、「こんな実力者が潜んでいたなんて! 何だこの人は!?」と思いました。そこでライターとしてお声がかかった感じですか?
岡田:
そうですね。最初は「別にひとりでもnoteで書けるやん」と思ってました。でも、オモコロ杯で優勝した後にオモコロ編集部の人たちとも食事に行ったり、他のメディアの編集者の方と話してみたりしたら、みなさんすごくおもしろくて。
収入をプラスで増やしたいとは思わなかったんですけど、こんなおもしろい人たちと一緒に仕事をしてみたいなって思ったんです。おもしろい編集者の方と壁打ちしてアイデアを出したら、もっとおもしろいのが書けるのかな、って。
少年B:
そういう経緯だったんですね。
岡田:
おかげで、ライターという仕事のことをまったくわかんないまま、気づいたら始まってた、みたいな感じですね。
少年B:
noteを始める前はFacebookで文章を書いていたんですよね?
岡田:
最初はmixiでやってて。mixiが廃れたんでFacebookに移ったんですよ。いつも読んでくれる友達向けに書いてたんですけど、Facebookもだんだん画像が多いSNSになり、長文が書きづらくなってしまって。
少年B:
「さらに表示」をタップしたら、えらいことになりそうですね。
岡田:
周りの友達からも「長ぇよ」って言われてましたね(笑)。それでほかに何かないかな、と思って見つけたのがnoteだったんです。
少年B:
ブログ系のサービスはほかにもありますが、なぜnoteだったんですか?
岡田:
ブログはちょっとハードルが高かったんですよね。noteならSNS感覚でできるかな、と思って。でも、友達だけに見せるつもりだったのに、仕様がよくわかんなくて、知らずに全体公開になってたんですよ。それで、ああいうことになりました。
少年B:
岡田さんの記事はとにかく企画が個性的ですよね。たとえば、オモコロ杯で優勝した寿司屋のクーポン予想記事はどうやって企画したんですか?
岡田:
あれはもともと、社内で次のクーポンを予想する遊びみたいなことをしてたんですよ。そこで、毎回記録付けたら勝てるんじゃないかな、みたいに思ったのがスタートですね。
少年B:
競馬の予想みたいな感じで。
岡田:
そうですね。あと本に書いた「ゴールデンウイークに一番検索されていない場所に行く」って記事なんかだと、以前マーケティングの仕事をやってた時に、専門ツールを使って検索ボリュームとかをよく調べてたので「このツール、旅行にも使えそうだな……」と思ってて。
少年B:
書籍にもなった「午後の紅茶を捨てられない」記事などは?
岡田:
あれも、じつは昔のmixiの自己紹介文に「飲みかけの午後の紅茶を捨てられない」みたいに書いてたんです。何でかは覚えてないんですけど。
少年B:
人生の壮大な伏線が回収された。
岡田:
何というか……。何かを記録するとか、継続する遊びってのが結構好きで。1年ごとに、来年の自分に手紙を書いたりとか、そういうのを並行して色々やってるんですよ。
そうすると毎日が楽しいというか、毎月何かが起こるんですよ。「今月はこのイベントが来るのね」とか、「来週はアレやらなきゃ」とか。
少年B:
寿司のクーポンは毎週火曜日に配信されるんでしたよね。そういう楽しみ方があるのか。
岡田:
だから、記事のネタを考えるというより、色々遊んでることが記事のネタになりがちですね。時間で遊ぶというか……そういうのが好きなんで。もちろん、記事にならないこともたくさんあります。
少年B:
人生の楽しみ方がすごい。
岡田:
もともと、旅行が好きで旅行記を書いてたんですけど、旅行って平面の、地理的な移動じゃないですか。それがコロナでできなくなったんで、じゃあ時間、時系列の移動に着目すれば、近場でも楽しめるんじゃないかな、と。
同じ場所でも見てれば変化があるんで、それを楽しむとか。ゴールデンウイークの記事でも、近場だけどちょっと違うところに行ってみるとか。だから、どうやったら楽しく旅行できるか、みたいなことを考えている部分が多いかもしれません。
少年B:
そういえば、岡田さんが執筆で一番好きなのは、推敲作業だとか。たぶん、そういう人はあんまりいないんじゃないかなと思うんですが。
岡田:
マジですか!? 推敲が一番楽しいですよ。永遠にそこだけやってたいぐらいです。今でも昔の記事をこっそり修正したりしてますから。
少年B:
ええっ!?
岡田:
仕事で書いたものは難しいけど、昔のnoteとか。オモコロは加筆修正が自由にできるので、オモコロの記事も。
少年B:
何年も前に出した記事を修正して、読者に気付かれることはあるんですか?
岡田:
句読点の位置だったり、ちょっとした言い回しだったりするんで、気付かれることはまずないです。ほぼ自己満足ですね。収入が発生するわけでもないし。
少年B:
本当に趣味として文章に向き合ってるんですね。
岡田:
よく「仕事の早い人は7割で出す」みたいなことを言うじゃないですか。本業だと確かにそうなんですけど、文章に関しては締め切りギリギリまで粘って推敲してます(笑)。
少年B:
推敲の際に気を付けていることはありますか?
岡田:
まずは「書いたあとすぐに推敲しないこと」。昔は酔っぱらいながら深夜にばーっと書いて、朝に頭のスッキリした状態で推敲してました。書いた直後だと、達成感が先にきちゃって、ちゃんと文章が頭に入ってこないんですよね。
少年B:
わかります……。
岡田:
あとは「客観的に見るために、読者の見る媒体でチェックすること」。今はスマホで見る方がほとんどだと思うんで、必ずスマホで確認してますね。Googleドキュメント上のこともありますけど、自分で入稿してプレビュー機能が使えるなら使う。
少年B:
できるだけ読者に近い目線で見る、ということですね。
岡田:
出版業界では今でもゲラを紙で確認することが多いのですが、これも同じ話だと思います。そうするとやっぱり客観的に見ることができるので。
少年B:
執筆と推敲にかける時間の割合はどれぐらいですか?
岡田:
うーん、8:2ぐらいですかね……。推敲が8割です。
少年B:
8割!? そんなに推敲する人初めて見た……!
少年B:
岡田さんは文章だけで生活していきたいと思ったことはありませんか?
岡田:
もちろん「もうちょっと時間があれば、もっと書きたいことを書けるのにな」と、もどかしく思うことはありますよ。でも、こんなスタンスで書いてるんで、たぶん食べてはいけないですよね。
少年B:
原稿料にゼロがふたつぐらいついてもらわないと。
岡田:
トーマスの記事なんか、文章を書く前に「きかんしゃトーマス」の全490話を2回見てますからね。
少年B:
仮に1話5分として計算したとしても、見るだけで80時間以上かかってますもんね。時給計算するととんでもないことになりそう。
岡田:
そういう記事を書けるのは、会社員をやってるからかもしれないです。
少年B:
専業ライターだったら絶対無理ですよね。さすがにそこまで時間をかけられない。
岡田:
トーマスの記事は物理的に時間がかかってるんですけど、それ以外の記事も自分の体感では時間をかけて書いたもののほうが読んでもらえるし、評判もいい気がしますね。
だから、ある程度しっかりしたものを書いていきたいって気持ちがあります。専業になって、書きたくないような記事を書くようになっちゃうのも本末転倒かな、という気がするので。
少年B:
確かに……。岡田さんの場合は「副業である」ことがすごくメリットになってる気がしますね。
岡田:
心に余裕があるのが大きいかもしれません。会社の仕事で失敗しても、記事の評判がよければ満たされるし。記事があまり読まれなくても、仕事で評価されてるしな、と思えるというか。
自分への言い訳ができるんですよね。両方全部ダメな時ってそうそうないので。メンタル的に安定しやすい。
少年B:
ライター業を通じておもしろい人たちとも出会えるし。
岡田:
それもメリットですよね。30歳過ぎて新しい人間関係ができるなんて、あんまりないじゃないですか。
少年B:
自分もそうですけど、この環境って普通じゃないんですよねぇ。
岡田:
でも、逆にライターだけだと、ある程度自分で付き合う相手を選べるじゃないですか。そうするとちょっと世界が狭くなるな、みたいなことも思ったりしてて。
会社員だと、社内にはたくさんの人がいますよね。強制的に色んな人と会う機会がある。自分から取りに行かない情報も入ってくる。それってすごいメリットだと思うんですよね。
少年B:
あー、フリーランスだと都合のいい情報しか入ってこなくなっちゃうこと、あるかもしれません。
岡田:
そうやってバランスが取れるのも副業ライターのいいところかなと思いますね。これはライターって仕事の中でもちょっと特殊な状況かもしれないですけど。
少年B:
岡田さんは書いたものが話題になって、人気ライターになりましたが、そういう経歴に憧れる人も多いと思います。最後に、おもしろい記事を書くために大切なことを教えてください。
岡田:
まず「反応を想像しやすい身近な人」に向けて、その人のことを考えながら書くのがいいですかね。僕の場合、mixi時代から感想を言ってくれる評論家みたいな友達がいて。
ずっと読んでくれて、「今回はここがよかったね」とか「ここちょっとイマイチじゃない?」みたいに感想を言ってくれるんですよ。だから、書いていくたびに、今回は唸らせてやろう、みたいな気持ちになって。
少年B:
専属の評論家がいるんだ。
岡田:
だから読者のペルソナははっきりしてますね(笑)。
少年B:
自分も同意見です。誰に対して文章を届けるか、は大事ですよね。
いい文章とは「読み手に配慮した文章」だと思う
Workship MAGAZINE
岡田:
そうですね。noteも本当に友達に向けて書いてたので。どういう人がどう思ってくれるか、を意識して書くと、文章はよくなっていくような気がします。
少年B:
そして、書き終えたあとにはじっくり推敲すると。
岡田:
ですね(笑)。
(執筆:少年B 編集:齊藤颯人)