iOS 13から搭載された触覚タッチとは?“Haptics(触覚技術)”の秘密に迫る

iPhone XR
ENGINEER

「Haptics(ハプティクス)」という言葉を知っていますか?

iOS 13以降で採用されている「触覚タッチ」(iOS 12以前は「Haptic Touch」と呼ばれていました)。この機能を支えているのがHapticsという技術なのです。触覚タッチはiPhone XRから導入され、以降ほぼすべてのiPhoneに触覚タッチが採用されています。

今回はHapticsについて、そして「Haptic Touch」とiPhone XR以前に搭載されていた「3D Touch」との違いについて、ご紹介していきます。

Hapticsとは皮膚感覚フィードバックを得るテクノロジー

Hapticsとは、ユーザーに対して力・振動・動きなどの”触覚”を通じて情報を伝達するテクノロジーのことで、「Haptic Technology(触覚技術)」とも呼ばれます。

身近な例としては、デジタルデバイスのタッチパネルやゲームコントローラーの”振動機能”などが挙げられます。

また、ミライセンスによって開発された「3D Haptics」では、繊維などの表面のザラザラとした触覚・硬さ・ずっしりと伝わる重さなどの、より立体的な感覚をデバイスを通じて体感できます。

Hapticsは「脳の錯覚」によって成り立っている

なぜ、振動のみでこれほど立体的な感触を味わうことができるのでしょうか。

そのヒミツは「脳の錯覚」にあります。

ミライセンスの代表・香田夏雄氏によると、「特殊なアルゴリズムによる振動刺激を手に与えると、脳がまるでそのモノに触れているかのような感覚を生み出す」といいます。

Haptic Touchって?3D Touchとの違いとは

apple 発表会

▲出典:Apple/Screenshot by Sean Hollister/CNET

iPhoneに搭載されたことで話題となった、Hapticsの技術を用いた「触覚タッチ」ですが、具体的に「3D Touch」と「触覚タッチ」では何が違うのでしょうか。

3D Touch

3D Touchは、iPhone 6sから搭載された機能です。

「画面を強く押し込む」ことで、ショートカットやプレビュー機能が作動します。LINEのチャットルームなどを押し込んで「既読をつけずにLINEを見る方法」なども3D Touchをつかった小技です。

指の圧力を2段階で感知し、「ブルッ」とした触覚フィードバックを返します。これは、基盤に「Taptic Engine」と呼ばれるAppleが独自に開発した特殊なリニアモーターと感圧センサーがセンサーが感知し、振動するフィードバックを返すという仕組みです。なお、この「Taptic Engine」もまたHapticsのひとつといえます。

触覚タッチ

触覚タッチはiPhone XRから搭載された機能です。「画面を長押し」することで、ショートカットやプレビュー機能が作動します。

iPhone XRにはリニアモーターや感圧センサーなど、3D Touchで必要なパーツが備わっていません。そのため画面を長押しすると、通常のバイブレーションがフィードバックとして返ってきます。

iOS 12の頃は3D Touchに比べると実行できる機能が少なかったのですが、2019年9月20日にリリースされたiOS 13からは、Live壁紙や3D Touchのみに対応したアプリケーションを除き、3D Touchと同じ機能が使えるようになりました。

Haptics(ハプティクス)を応用した事例3選

事例1. ゲームの可能性を広げる!Nintendo Switchの「ジョイコン」

任天堂スイッチ

▲出典:任天堂

2017年3月3日に任天堂から発売されたNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)のコントローラー『ジョイコン』にはHD振動」と呼ばれるHaptics(ハプティクス)技術が使われています。

コントローラーが微弱に振動して、氷がカラカラとグラスに当たる感覚や、大きな扉を開ける感覚、ボールを転がしてターゲットに当てた時の感覚など、まるで本当に触れているかのような体験ができます。

事例2. 多くの人を救う、リアルハプティクス

Hapticsを応用した技術として、慶應義塾大学理工学部の大西公平教授が提案した「加速度規範双方向制御方式」が注目されています。この技術は「リアルハプティクス」として、世界で初めて高精度な力の伝達を成功しました。

リアルハプティクスは、単なる振動で触覚を再現するのではなく、実際にものを押す・つかむ・引くなどのプロセスで働く力をシグナル化し、リアルタイムで伝達するシステムです。この技術は義手やロボット等への応用が期待されています。

現在の現場で運用されているロボットなどは決められたサイズのものを運ぶなど、一定の動きしかできませんが、リアルハプティクスが実装されれば対象物の大きさや重さに柔軟に対応できるようになるそうです。建設や倉庫での仕事、災害時の現場などでも活躍が期待されます。

事例3. 映画の世界が現実に!?空中で触れられるテクノロジー

近未来ハプティクス

▲出典:Bae

SF映画などで何もないところから映像が出現し、それに触って操作するようなシーンをみたことがある人は多いでしょう。そんな誰もが夢見たシーンが、近い将来実現するかもしれません。

このようなバーチャルな感触を可能にするテクノロジーこそが「超音波 ハプティクス技術」です。イギリスのITベンチャー・ウルトラハプティクス社によって開発が進められています。

超音波を発生させる小さなスピーカーをアレイ状に置いて、そこから出る超音波をコントロールすることで、まるでモノに触れているような感覚を味わえるとのこと。

今のところ、主にジェスチャー操作(3D ジェスチャー)との組合せで応用されることが期待されています。デバイスを使う動作を手元で行い、そこに物体が無くても押している感覚が返ってきたらとてもワクワクしますよね!

まとめ

Hapticsはスマホなどを通して、少しずつ私たちの生活に浸透し始めています。近い将来、映像や音楽など五感に関するインターフェイスと組み合わせることで、より近未来なエンターテイメントが私たちを楽しませてくれるでしょう。

(執筆:ばち 編集:Workship MAGAZINE編集部 サムネイル出典:Apple公式

SHARE

  • 広告主募集
  • ライター・編集者募集
  • WorkshipSPACE
週2日20万円以上のお仕事多数
Workship