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HubSpotの生産チームおよびプロダクトマーケティングのチームは、一年間の多くの時間を割いて準備し、毎年9月に新製品を一挙に発表します。
この年に一度の製品・サービスの一斉大量リリースは、HubSpotが自ら主催するビジネスフェス「INBOUND conference」において、14,000人の聴衆を前で行われるプレゼンを軸に展開します。
このプレゼンの後には、ブログ投稿やWebセミナー、その他さまざまなコミュニケーションが相次ぎ、大規模なリリースキャンペーンとして展開されます。プレゼンを見たり、評判を聞いて気になった人が、リリースされたHubSpotの新製品やサービスに誘導されているのです。
このようにHubSpotの製品リリースは段取りが非常に巧みであり効果的なキャンペーンとなっています。一連のキャンペーンを全て模倣するのは難しいでしょうが、その戦略から学べることは数多くあります。
筆者は最近、HubSpotマーケティングチームのトップ2であり製品発表戦略のキーマンである Meghan Keaney Anderson 氏から直々に、その戦略の裏側を教わる機会に恵まれました。本記事では、HubSpotが毎年9月に製品・サービスを大量リリースできる秘訣と、その戦略に学ぶ7つのポイントをご紹介します。
目次
製品が実際に発表・発売される2、3週間前に、マーケティングチームはブログの投稿を開始します。この投稿は、既存顧客や潜在顧客に対して、製品そのものは具体的に公表しないまま、HubSpotが今年打ち出すキャンペーンの戦略についてあれこれ考えてもらうためのブログ記事です。いわばキャンペーンの「予告編」といえます。
例えば、以下のような題名のブログを投稿して興味を誘導します。
*HubSpotは毎日10ポスト投稿しているので、このテーマでブログ投稿が占拠されたという訳ではありません。
ブログタイトルをざっと見ただけで、広告と「リードスコアリング」がテーマであることは明白です。ということは、これらのテーマに関係する特徴を持った製品・サービスが発表されるような気がしてきますよね。
このように、ブログの投稿内容によって暗に新製品・サービスの内容をほのめかすのがHubspotのキャンペーン手法のひとつです。
HubSpotは9月9日に一斉にリリースし、同日中に以下のような活動が続きます。
新製品リリース発表の場は、企業ビジョンの提示に最適の環境です。製品の発表と同時にビジネスの将来像を語ることで、顧客リストやセールス情報リストをたどるよりも広い層の興味をぐっと惹きつけられます。
HubSpotはビジネスフェスでのプレゼンと、CEOや創業者によるブログ投稿により、見事に企業のビジョンを語ることに成功しました。
しかし、同時に製品発表においては、顧客の現実のニーズを考えることも重要です。
顧客は、新製品が具体的にどう役に立つかを知りたがります。可能であれば、実際に製品やサービスが使えると嬉しいでしょう。
そこでHubSpotは、プレゼンの45分後に 新製品のまとめをカスタマーブログで投稿しました。この投稿では、製品・サービスがどんな風に使えるかを提示し、実際にアプリの機能のスクリーンショットやリンクを掲載しています。
将来に渡るビジョンを語ることで、興味を持ってもらえる層を広げ、セールスの拡大を見込めます。一方で、新製品のリリースは既にいる顧客がメインターゲットであり、既存顧客の心を掴むことで売り上げを伸ばすことは必須でしょう。
どちらの層にもアピールできるものが、成功するリリースといえます。
HubSpot はAppcueと提携し、Appcuesの顧客へ新製品の告知を行いました。その際、下図のような新機能を告知するアプリ内ターゲット広告を使用しました。
アプリ内広告のデザインという点では、「ユーザーに、新製品の具体的な使い方を示すことに集中している」と担当者は説明します。
「アプリ内広告は、ビジョンを語る場所ではないので」
アプリ内の特定のページを狙って表示することで、新製品を探すユーザーも、当該アプリを使っているだけのユーザーも、アプリの特定領域に対応して紹介される新機能を使いたくなります。
HubSpotのアプリ内広告は、製品リリースを成功させるためには欠かせない、新規顧客を獲得するのに役立つのです。
HubSpotは、自社ソフトウェアやサービスを展開する関係で、現在までにマーケティング企業とのネットワークを多く持っています。 こうしたマーケティング会社は、それぞれが持つ豊かな人脈や情報網を通して情報を伝えていく方法を知り尽くしており、HubSpotの製品リリースに伴うメッセージの拡散に大いに協力してきました。
HubSpotの提携先はプレゼンの直後から、ブログでいくつもの投稿をしてリリースキャンペーンを支えました。例えば以下のようなものがあります。
「あまりネットワーク構築が進んでいない会社は、ベータユーザーや、すでに自社ブランドの広告塔になってくれているユーザーに、次の製品リリースを手伝ってもらうといいかもしれません」
とHubSpotの担当者はアドバイスします。
「そうしたユーザーはたいてい、製品の可能性を切り開くことにワクワクしてくれます。彼らに投資すればするほど、より広い層にメッセージが届くでしょう」
HubSpotのチームのすごいところは、リリース後の数日・数週間に渡って新製品に関するトピックの投稿を高頻度でし続けるところです。
下に列挙したリストはその一部です。
HubSpotはそれぞれが対象とするユーザーに対して別々にブログを持っており、カスタマーブログとメインのブログではニュアンスが異なります。
メインブログでは、「従来のリードスコアリングとの違い」のように、戦略に焦点を当てた投稿をしています。
一方でカスタマーブログでは、「HubSpotのリードスコアリングがあなたのマーケティングを改善する5つの方法(新しいアプリ)」のように、新製品のプロモーションが軸になっています。
ブログ投稿に加えて、HubSpotでは新製品の使い方を実演するWebセミナーをメールで告知しています。また後に、Webセミナーを録画したリンクをメールで配信しています。
言うまでもなく、実演セミナーは製品がどう使えるのかを示すのに良い手段です。さらにHubSpotは、メールを使うことでそのセミナーの告知にも成功しています。
会社の目標(売上UP)のために、製品リリース後は、ユーザーに製品の使用方法を説明することに注力すべきでしょう。Hubspotでは、ユーザー向けのブログで質問に答える、製品のメリットを宣伝する、使い方を実演で説明する記事を投稿するといった方法がとられています。
製品リリースキャンペーンの効果測定は必要不可欠です。それによって、どの宣伝が効果があってどれが上手くいかなかったかを学べます。
その計測にあたってHubSpotはまず、リリースの前に製品購入の到達目標を決めておきます。 その目標は製品の予算や、他社の類似製品の達成値を元に決定され、Hubspotチームがそれを超える目標値を設定します。
製品リリース後、 HubSpotは2つの計測を行います。
ひとつは、「マーケティングキャンペーンの成功」を、リードスコアや、情報のシェア率、顧客の興味などの指標で測り、同時にPRの成功を当該製品の利用人数で測ります。
もうひとつは、「製品の購入状況」を、ユーザーの製品利用時間、また新規ユーザーの人数で測ります。
マーケティングの成功と製品の成功をそれぞれ別の指標で測ることで、製品リリースキャンペーンをどう改善できるかのヒントが見つかるでしょう。そしてそれを、翌年のキャンペーンに活かすのです。
製品発表とキャンペーン期間が終わると、そのキャンペーンについては手を放してしまいがちですよね。しかし、HubSpotのプロダクトチームは、キャンペーンの後も熱心に「布教」を続けます。
HubSpotのプロダクトマーケティングチームは、製品・サービスに関係する話がないか常に気を配っています。データを分析したり、製品を実際に使っているユーザーと話して、その実体験をケーススタディとして使い、新しい宣伝のネタにするのです。
「中には、一般ユーザーによる製品仕様レポートがでるまで、製品の宣伝がリアルに感じられないというユーザーもいます」
他のユーザーの体験談を伝えることで、潜在顧客層に購買意欲を湧かせ、継続的な利益創出へと人々を動かすのです。
以上HubSpotの戦略をご紹介しましたが、もちろんあなたの会社はHubSpotとは色々な違いがあるでしょう。しかし、市場へのアピールや売り方について学べることはたくさんあります。
本記事から得たヒントを活かして、あなたなりの活用方法を見つけてください!
(翻訳:Yuko Nakamura)