未経験から始めるインフラエンジニア運用保守|仕事内容・年収・キャリアパスをまるごと解説
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「インフラエンジニアの“運用保守”って実際どんな仕事?」
「自分にもできる?」
そんな疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。特に未経験の方にとっては、インフラという言葉だけでもハードルが高く感じられるかもしれません。
この記事では、インフラエンジニアの中でも運用保守に焦点をあて、仕事内容や求められるスキル、年収、そしてキャリアパスまで、現実的な視点で解説していきます。
現役エンジニアとして働く筆者が、さまざまな現場で感じたこと、学んだことをもとに、リアルな情報をお伝えします。インフラに一歩踏み出したいあなたの参考になれば幸いです。
現役エンジニア兼フリーランスライター。最近名刺を新調しました。運動不足すぎるのでWii Fitで筋トレ強化中。(note: @azasaz_a)
目次
インフラエンジニアの中でも、比較的入り口として選ばれやすいのが「運用保守」の仕事です。ここではまず、運用保守の基本的な役割について整理していきましょう。
インフラエンジニアの運用保守業務は、企業のITインフラ(サーバー、ネットワーク、クラウド環境など)を安定して稼働させるために欠かせない役割です。
主な仕事内容は以下のとおりです。
このような業務を通じて、日々の運用状況を正確に記録し、トラブルの兆候を早期に察知して未然に防ぐことが求められます。地道な作業が多い一方で、システム全体の信頼性を支える重要なポジションです。
また、マニュアルに沿った作業が中心となるため、未経験者でも挑戦しやすい分野として注目されています。
「運用」と「保守」は一見似たように思われがちですが、それぞれ役割に明確な違いがあります。
項目 | 運用 | 保守 |
---|---|---|
主な目的 | システムの安定稼働を維持すること | 障害発生時の復旧と再発防止 |
対応内容 | 監視、バックアップ、障害の検知と初期対応など | 障害対応、原因調査、修復、改善策の実施 |
作業タイミング | 日常的・定常的な作業 | トラブル発生時や計画的なメンテナンス時 |
主な対象 | サーバー・ネットワークなどの状態全般の監視 | ハードウェア・ソフトウェアの不具合や構成の問題 |
性質 | 予防的・継続的 | 対処的・問題解決型 |
例 | 死活監視、ログチェック、アカウント管理など | 機器交換、バグ修正、設定変更、アップデート適用など |
つまり、運用は「守りの維持」、保守は「問題解決と再発防止」といった役割分担があるのです。両者は密接に連携しており、安定したITインフラを支えるうえで不可欠な存在です。
私が現場で開発側として働いていて強く感じるのは、日本ではどうしても「開発」が中心視されがちで、運用保守には十分なお金やリソースが割かれにくいという現実です。今の案件でも、サーバーの強化やセキュリティ対策を提案しても、予算の壁にぶつかることがよくあります。
でも、最近はAIの登場で開発効率が上がっている分、本来ならそのリソースを運用側に回して、システム全体の安定性を高めるべきじゃないかと強く感じています。近年「SRE(Site Reliability Engineering)」という職種に注目が集まっているのも、そうした価値観の変化の現れだと思うんですよね・・・。
なお、SREを含むインフラエンジニアの職種全体については、こちらの記事で詳しく解説しています。
インフラエンジニアの職種・種類まとめ|仕事内容・年収・将来性をわかりやすく解説
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インフラエンジニアの運用保守について調べると、「楽そう」「単調でつまらない」といった声を目にすることがあります。ここでは、運用保守のリアルな働き方や感じやすいギャップ、そこから得られるやりがいや成長ポイントについて掘り下げていきます。
運用保守の仕事は「ルーチンワークが中心で楽そう」と見られがちですが、実際には緊張感のある場面も多く、決して暇な仕事ではありません。日々の監視業務や障害対応はもちろん、突発的なトラブルへの即応、アップデートやセキュリティ対応など、やるべきことは多岐にわたります。
特に近年、サイバー攻撃の手口がますます巧妙化しており、ランサムウェアによるシステムの乗っ取りや大規模な情報漏洩といった被害が各所で発生しています。障害対応の際には、インシデントの対策や調査、再発防止策の立案、関係各所との調整・報告など、短時間で多くの対応が求められるため、負荷が一時的に集中することも。休日や深夜を問わず復旧対応にあたる皆さんには頭が下がる思いです…!
運用保守は「楽な仕事」どころか、現代のIT社会を支える縁の下の力持ち。外から見るよりもずっと責任が重く、常に最新の知識やスキルが求められる仕事であることを、しっかり認識しておくべきでしょう。
運用保守の仕事は、監視やログ確認、障害対応などの繰り返し作業が多いため、「単調でつまらない」と感じる人も少なくありません。特にマニュアルに沿った対応が中心になる初期の段階では、やりがいを見出しづらいと感じることもあるでしょう。
しかし、工夫次第で業務の質もモチベーションも大きく変わるもの。例えば次のような工夫によって、単調に見える業務にもやりがいや発見が生まれます。
こうした積み重ねが自信やスキルアップにつながり、将来的にはSREや設計・構築などのキャリアにも展開できます。たとえ地味に思える業務でも、能動的に工夫することで、自分だけのやりがいや価値を生み出せるのです。
インフラエンジニア(正社員)の平均年収は、2025年6月時点で約497万円とされています。運用保守職も、この水準が一つの目安と考えて良いでしょう。(参考:求人ボックス給料ナビ)
ただし、若手は300万円台がボリュームゾーンとなっており、経験を積むことで600万~700万円超を目指すことも可能です。さらに、クラウド(AWS/Azure/GCP)やセキュリティ、DevOps関連のスキルを身につけることで市場価値が高まり、年収は一段と上がります。実際、上流工程やマネジメントを担うポジションでは、1,000万円以上の年収を提示している企業も珍しくありません。
地域によっても年収には開きがあり、東京や大阪などの都市部では平均700万円台後半と高めですが、地方では500万円前後が中心です。ただし、リモートワークの普及により、地方在住でも都市部水準の年収を得られるケースも増えてきています。
このように、インフラエンジニアの年収は「何をできるか」「どこで働くか」によって大きく異なります。運用保守からスタートしても、学び続けてスキルの幅を広げていけば、高収入を実現することは十分可能です。
より詳しいインフラエンジニアの年収全体については、こちらの記事も参考にしてみてください。
インフラエンジニアの年収はいくら?今すぐできるキャリア戦略ガイド
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運用保守の仕事は、インフラエンジニアとしてのキャリアの「入り口」として選ばれることが多く、ここでの経験をベースにして、さまざまな専門分野や上位職種へとステップアップしていくことが可能です。障害対応や監視業務を通して得られるシステム全体への理解は、将来的に高い専門性が求められる職種への土台となります。
具体的には、次のようなキャリアパスが考えられます。
運用保守は、「ゴール」ではなく「スタートライン」です。経験を積み重ねながら、興味や得意分野に応じた進路を自在に選べます。
個人的にも、運用保守で身につけたインフラの知識は、エンジニアとしてさまざまな場面で本当に役立つと感じています。開発の仕事をしていると「もっとインフラの知識が欲しい…」と痛感する場面がありますが、そうしたときに必要なのって、Linuxの基礎操作やネットワークの基本、クラウド基礎といった初歩的な知識なんですよね。
だからこそ、こうした基礎がしっかり身につく運用保守の経験は、すべてのエンジニア業務の土台となり得るものだと思います。そう考えると、運用保守から広がるキャリアの可能性って、実は無限大なのかも…!
インフラエンジニアのキャリア全体について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
インフラエンジニアのキャリアパス完全ガイド|将来性・必要スキル・副業の始め方まで解説
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インフラエンジニアの運用保守は、未経験からでも目指しやすい職種の一つですが、現場で求められるスキルや知識は決して少なくありません。ここでは、運用保守に必要とされる主なスキルや知識について、詳しく紹介していきます。
運用保守においてまず求められるのは、インフラに関する基礎的な技術スキルです。
中でも、Linux環境でのコマンド操作やネットワークの基礎知識(IPアドレス、DNS、ルーティングなど)はほぼ必須です。近年では、オンプレミスだけでなくクラウド環境(AWS、Azure、GCP)での運用も増えており、クラウド基礎や仮想化技術への理解も重要になってきました。
すべてを最初から完璧にこなす必要はありませんが、システムの構成や動作の仕組みを理解しておくことで、障害対応やトラブルシューティングの精度が大きく向上します。
運用保守の現場では、技術力以上に「人とのやりとり」が大きな役割を占めます。
例えば、障害発生時には冷静に状況を整理し、関係部署や上司へ正確に報告・連携を取る力が求められます。日常業務においても、「なぜこの作業が必要なのか」「どの業務フローに影響を与えるのか」といった業務全体への理解力が不可欠です。
近年はAIによる自動化が進み、技術スキルの一部が代替されつつある中で、こうした「人間にしかできない判断力やコミュニケーション力」の価値は、今後さらに高まっていくでしょう。
単に作業をこなすのではなく、その背景や目的まで考えて動ける人ほど、現場で信頼される存在になれます。つまり、非技術スキルこそがプロフェッショナルとしての差を生み出す重要な要素といえるのです。
インフラ運用保守の業務では、システムを安定的に運用するためにさまざまなツールの知識が求められます。特に、稼働状況を常時チェックする監視ツールや、定期処理を管理するジョブ管理ツールは欠かせない存在です。
現場でよく使われる代表的なツールをまとめてみましょう。
種類 | ツール名 | 概要・特徴 |
---|---|---|
監視ツール | Zabbix |
|
Nagios |
|
|
Prometheus |
|
|
Datadog |
|
|
ジョブ管理ツール | JP1(Job Management) |
|
Hinemos |
|
|
Systemwalker |
|
|
Apache Airflow |
|
このようなツールに慣れておくことで、業務効率の向上はもちろん、障害発生時の初動対応にも大きな差が生まれます。現場によって使われるものが異なるため、どのツールを使っても対応できるよう、基本的な仕組みや概念を理解しておくことが重要です。
インフラエンジニアの運用保守にチャレンジしたくても、「何から学べば良いのか分からない」と悩む人も多いはず。ここでは、未経験からでも着実にスキルを身につけられる学習ステップについてご紹介します。
インフラエンジニアの運用保守を目指す場合、未経験者でも取り組みやすい学習ステップを踏むことが大切です。
学習ステップは次のような形で段階的に進め、基礎→実践→応用という順で無理なく進めましょう。
ステップ | やること | 説明 |
---|---|---|
ステップ1 | Linuxとネットワークの基礎を学ぶ |
|
ステップ2 | 仮想環境で手を動かしてみる |
|
ステップ3 | クラウド(AWSなど)に触れる |
|
このように段階的に進めることで、未経験でも無理なく実践的なスキルを習得できます。
資格はあくまで「通過点」ではありますが、未経験からインフラ分野に挑戦するうえでは、スキルを客観的に証明できる強力な武器になります。特に次のような資格は、現場でも評価されやすく、学習のモチベーション維持にも役立ちます。
このような資格は、初心者向けのレベルから段階的に取得できるよう設計されており、学習の指針としても有効です。特にLinuCやCCNAは、インフラ運用保守の現場で即戦力と認識されやすく、就職・転職活動でもアピールしやすいでしょう。
インフラエンジニアにおすすめの資格については、こちらでも詳しく解説しています。
インフラエンジニアにおすすめの資格10選|未経験OK・キャリア別にやさしく解説!
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知識をインプットしたら、副業などで早めに実践に移すことがスキル定着の近道です。
最近では副業マッチングサービスやクラウドソーシングを通じて、インフラ運用保守系の業務を副業として受注するチャンスも増えています。監視業務や障害一次対応、マニュアルに沿ったサーバー設定作業など、未経験から取り組みやすい案件もあります。
最初は簡単な作業から始めて、少しずつ対応範囲を広げていくと良いでしょう。副業を通じて実際の現場に触れることで、学んだ知識を実務レベルにまで落とし込めます。
実務経験を積む場を探すなら、フリーランスマッチングサービスの「Workship」がおすすめです。スキルや稼働スタイルに応じて案件を選べるため、未経験からの第一歩にも適しています。
また、より専門性の高いインフラ案件を探したい場合は、インフラエンジニア特化型エージェント「クロスネットワーク」が心強い味方になります。クライアントの要望に合わせて、スキルにマッチした案件をスムーズに紹介してくれるため、経験者のキャリアアップにも最適です。
インフラエンジニアの副業については、こちらで詳しく解説しています。
インフラエンジニアができる副業7選|週1・土日OKの案件と始め方を徹底解説
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インフラ運用保守の仕事は、単なるルーチン作業ではなく、技術革新とともに常に進化し続けています。ここでは、オンプレミスとクラウドの違いや、最新の運用ツール、そして今後求められる“人間ならでは”の力について整理していきましょう。
かつてのインフラ運用保守といえば、オンプレミス環境での物理機器の管理や定型的な運用作業が中心でした。しかし、近年はクラウドの普及やAI・自動化技術の発展により、オンプレミス・クラウドに関係なく、運用保守の仕事内容そのものが大きく変化しています。
クラウドではコードによるインフラ管理(IaC)が一般的になり、オンプレミスでもツールによる自動監視や構成管理が標準化しつつあります。その結果、単なる監視・手順対応ではなく、「ツールを理解し、設定し、改善していく」力が求められるようになりました。
どちらの環境でも“変化についていける人材”でなければ、すぐに時代に取り残されてしまいます。今後のキャリアを考える上でも、変化を前提にスキルを更新し続ける姿勢が重要です。
近年の運用保守では、自動監視ツールやAIOps(AI for IT Operations)の導入が進み、従来の“目視監視”や“人力アラート対応”から大きくシフトしています。
例えばPrometheusやDatadogなどの監視ツールでは、システムの状態をリアルタイムで収集・可視化し、異常があれば即座に通知が可能。さらにAIOpsの導入により、過去のログデータやパターンから障害予測や原因特定まで自動化が進んでいます。
こうした変化により、運用担当者には「ただ監視する」のではなく、「ツールを使いこなす」「設定を最適化する」といった新しい役割が求められるようになっています。
技術が進化し、自動化が進んだ現代でも、すべての業務をAIやツールに任せることはできません。特に障害対応の現場では、「何を優先して復旧すべきか」「どのように影響を最小限に抑えるか」といった判断を、限られた時間の中で下す必要があります。そこでは、“人間ならでは”の経験や直感に基づいた判断力が大きな価値を持ちます。
また、ユーザーや他部署との連携、トラブル後の信頼回復といった場面では、“人としての対応”が何よりも重要です。マニュアル通りではない、状況に応じた柔軟で誠実な対応こそが、信頼関係の礎になります。
先行きが不透明なこの変化の時代においては、テクノロジーだけでなく「人間性」もあわせて磨くことが、運用保守系インフラエンジニアに求められる重要な力と言えるでしょう。
インフラエンジニアの運用保守は、未経験からでも挑戦しやすく、IT業界への入り口として魅力的な職種です。ルーチンワークに見える業務の中にも、障害対応や改善提案など、実は多くの学びと成長のチャンスが詰まっています。
そしてその経験は、将来的にインフラ構築やクラウドエンジニア、さらにはSREやITアーキテクトなど、幅広いキャリアへの土台となります。
これからインフラ分野に踏み出したいと考えている方は、まず運用保守の現場で「現実のインフラ」に触れることから始めてみてください。自分のペースで無理なくスタートしながら、着実にキャリアを築いていきましょう。
副業として実践力を磨くなら、案件の幅が広い「Workship」や、インフラ領域に特化した「クロスネットワーク」を利用してみるのがおすすめです。
(執筆:水無瀬あずさ 編集:猫宮しろ)