エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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情報発信のひとつの手段として検討したいのが「Webメディア」をもつこと。
そして、そんなWebメディアで数多のライターを束ね、進むべき道を示し、時には大胆に舵を切るのが「編集長」という存在です。
その具体的な仕事内容やスキルセットを、メディアやブログを運営する者として、ぜひ知りたい……!
というわけで今回は、新卒で入社しわずか3ヶ月で編集長に就任、たった半年で20万→300万PVまで伸ばしたWorkship MAGAZINE編集長・じきるうさんに取材を決行。
Webメディアの裏側や、実際にやっている編集長のお仕事を具体的に教えてもらいました!
早稲田大学および同大学院でメディア表象にかんする研究に携わった後、2018年に株式会社GIG入社。編集者兼マーケターとしてクライアント企業さまのコンテンツ支援や採用支援を行うほか、フリーランス向けメディア『Workship MAGAZINE』の編集長を務める。業務外でもライター向けメディア『クレイジースタディ』を主宰するなど、根っからのメディア好き。
永遠の17歳をしている取材ライター。ただのヲタク。一時期ブログを頑張っていたが、飽きて放置をしている。
目次
ゆぴ:
まず、初歩的な質問で恐縮ですが、いまはさまざまな企業がWebメディアを運営されていますよね。Webメディアを運営すると、どのようなメリットがあるんですか?
じきるう:
「自分たちのルールで資産を作れる」のが最大のメリットです。
まずメディアには大きくわけて「オウンドメディア」「アーンドメディア」「ペイドメディア」の3種類があり、それぞ得意なことが異なります。
じきるう:
オウンドメディアは、自社で保有するメディアの総称です。狭義ではWebサイトの形式のものを指しますが、最近はSNSアカウントをオウンドメディアとして活用する例も多くみられます。
集客のほか、自社の思いを伝えたり、ファンをつけたり、サービスへの理解を促すことを目的に運営されることが多いです。「自分たち主導」で情報を届けられるのが特徴ですね。
じきるう:
アーンドメディアは、ざっくり言うと「第三者による口コミ」です。自社商品やサービスに関するSNS上での口コミやブログ投稿、雑誌やテレビでの報道などもアーンドに含まれます。第三者に言及してもらうことで、自分たちだけでは届けられない層にリーチできるのが特徴です。
じきるう:
ペイドメディアはフロー型(売り切り型)のメディアで、いわゆる広告を指します。お金を使って広告を表示させるので、お金を使った分だけ集客できるのが特徴です。一方で、オウンドメディアやアーンドメディアのようにコンテンツが蓄積されるものではありません。
ゆぴ:
なるほど。Workship MAGAZINEはこの3つのなかでいくと「オウンドメディア」ですよね。
じきるう:
そうですね。
そしてオウンド、アーンド、ペイドのメディアがある中で、唯一オウンドメディアだけが「自分たちのルールで資産を作れる」のです。
アーンドメディア(口コミ)は情報のコントロールが難しいですが、オウンドメディアは自分たちのルールで情報発信ができます。またオウンドメディアのコンテンツが積み重なることで、自分たちに共感してくれるファンを生み出せるのです。その結果、アーンドにも良い影響が出たりします。
ペイドメディア(広告)はお金を使った分だけ集客できますが、オウンドメディアが育ってくると安定したアクセスを獲得でき、広告よりもはるかにコスパよく集客可能です。
効果が出るまでに時間はかかりますが、自分たち主導のメディアをもつことで将来的に大きな価値を生み出すと思いますよ。
ゆぴ:
Webメディアの運営に必要なものは何ですか?
じきるう:
ベースとして、コンテンツを載せるWebサイトやSNS、コンテンツを継続的に上げるための制作チーム(編集部)は必要です。それらがないと始まらないので。
そのうえで必要となってくるのが、「目的」「方針」「指標」です。
まず、それぞれのWebメディアには運営される「目的」が必要です。企業のブランディング、商品の購買、広告費獲得、人材募集、啓蒙活動などが目的としてよく定められます。Workship MAGAZINEの場合は、フリーランス向けお仕事マッチングサービス『Workship(ワークシップ)』の認知拡大や利用者獲得が大きな目的ですね。
次に、重要なのが「方針」です。Workship MAGAZINEでいくと、「日本最大級のフリーランスメディア」というタグライン(キャッチコピー)があるんですけど、こういったわかりやすい定義付けは大切ですね。
今はフリーランス向けのコンテンツを多く作っていますが、以前はエンジニア、デザイナー、マーケターなどに向けた「Web制作系メディア」だったんです。
ゆぴ:
えっ、そうだったんですか!
じきるう:
方針自体は変わっていいと思っています。その時々の状況に合わせて方針を適宜変えて、コンテンツを作っていくのが大切です。一つの方針に固執して、まったく成果が出ないのも考えものなので……。
そして「目的」「方針」を定めたうえで決めたいのが、PVや売り上げなどの「指標」。それがあってはじめて、「その指標を達成するために、どういうコンテンツを作ればいいか」に繋がっていきます。
ゆぴ:
Webメディアの運営にはどのような人員が必要なんですか?
じきるう:
初期は編集長が1人いれば大丈夫です。Webメディアは目的・方針・指標があるうえで運営されるので、それらを理解して実行できる人がいればOK。逆にそれらがブレブレな2人がいて喧嘩するぐらいなら、1人のほうがいいかもしれません(笑)。
あとは、Webメディアの拡大に合わせて、内部・外部のメンバーを増やしていきます。たとえば現在4年目を迎えるWorkship MAGAZINEは、編集長1人、編集部員6人、外部ライター十数人で運営されています。
ゆぴ:
ライターは外部でもいいんですね。
じきるう:
方針に沿った記事が継続的に制作できるなら、内部・外部は関係ないと思います。ただしどれだけライター歴が長くても、メディアで掲げているテーマに関する記事が作れないと難しいですね……。
ゆぴ:
ちなみに、企画を選ぶ基準はありますか?
じきるう:
Webメディアの追っている指標にもよりますが、PVが求められているなら、PVを取れない記事だと意味がないですよね。
たとえば、グルメ系メディアを運営してるとして、「自宅でたった5分!簡単につくれるロシア料理10選」なら読まれるかもしれないけど、「モクズガニを題材にしたポエム」を書いても恐らくPV伸びないですよね。
Webメディアの目的・方針・指標にマッチした企画を立てられるかどうかは大切です。それさえ合っていれば、チャレンジングな企画は結構ウェルカムだったりします。
詳しくはこちらの記事をチェックしてみてください!
Workship MAGAZINE編集部が考える「いいライターの条件」とは
Workship MAGAZINE
ゆぴ:
じきるうさんは、このWorkship MAGAZINEのPVを半年で15倍まで成長させましたが、Webメディアを伸ばす際に工夫していることはありますか?
じきるう:
ボクはメディア運営に関しては素人だったので、試行錯誤しながら運営していました。まず、記事が読まれないとWebメディア自体も認知してもらえないので、PVを増やすのは大事にしてましたね。そのためにやったのが、記事本数の担保です。
一定本数の記事を上げて、PVなどのデータを分析し、伸びた記事をフォーマット化し、次の施策につなげる。成功パターンを見つけるまで、「数を打ちながら試行錯誤して変えていく」というのを意識するといいです。
また、Webメディアは継続的にコンテンツをあげることで、リピーターが増え、ファン増加に繋がります。逆に言うと、コンテンツ発信が途切れるとファンは離れていきますね。継続的なコンテンツ発信は、Webメディアを育てるうえで必須です。
……とまあそんな感じで、トリッキーなことは全然してないんですよ。地道にコツコツ、Webメディアの運営を続けるのが大事です。
ゆぴ:
ちなみに、記事は月に何本上げるのがベストなんですか?
じきるう:
最低週1本で、ベストは毎日です。Workship MAGAZINEの場合は現在、月に50本公開しています。毎日同じ時間にコンテンツをあげることで、メディアに来てもらうのを習慣化してもらえます。
うちの場合はSNSでの配信や、プッシュ通知(更新されるとユーザーに通知が届くシステム)も合わせてやっていますね。最近では直接訪問してくれるユーザーの数も増え、ファンが増えてきているのを感じています。本当に嬉しいことです。
ちなみにWebメディアに訪問してくれるユーザーには
の4つのチャネル(流入経路)があって、このなかの「Social」「Referral」「Direct」はファンがいないと流入が安定しないんです。ブランディングやファン獲得を目的にするのであれば、Organic以外も意識するといいですね。
そしてファンに定期的に訪問してもらうためにも、記事はできれば毎日上げるのがおすすめです。
ゆぴ:
なるほど。この4つのチャネルは、均等に育てたほうが良いんですか?
じきるう:
均等にやっておくと、どれかが死んでも他が生き残る、というメリットがあります。集客を検索だけに頼っていると、Googleのアルゴリズム変更で一気に飛ぶこともありますからね……。Workship MAGAZINEも、アルゴリズム変更で月間数十万PVレベルの変動が起こったことがあります。
じきるう:
あと、編集部内で定期的に、方針や思いの共有の場があると良いですね。
方針がブレると、PVを稼いでもブランディングに繋がらないことが起こりうる。何ならうちもそうなった時期があります。
じつは最近、ABOUTページ(Webメディアの方針を説明したページ)を作ったんです。Webメディアの方針を対外的に共有することで、方針に合ったライターが応募してくれたり、クライアントから問い合わせをいただいたりすることも増えます。チーム内の認識共有にも使えますしね。
方針を決めて、同じ思いを持ってそこを目指していくチームを作り、最終的には自分がいなくても運営できるのが理想系だと思います。
ゆぴ:
続いて、「編集長」の仕事についてお聞きしたいです。編集長ってイマイチ何をしているのがよくわからないのですが、どんな役割があるんですか?
じきるう:
編集、マーケティング、営業、カスタマーサポート、マネジメント……とかですかね。あとは何かあったときの「責任をとる人」とか(笑)。
編集者としてすべての記事に目を通してクオリティチェックしてますし、どうやってWebメディアを伸ばすかマーケティング視点で戦略を立てることもします。そしてマネージャーとして運営体制を固め、方針を決めて責任を取ります。
あとは広告掲載問い合わせ対応や商談、クレーム処理もしているので、営業やカスタマーサポートの役割もありますね。
現場の編集者がそのまま営業も担当するのは、そんなに珍しくありません。現場のことを理解している分、コンテンツ提案などは強いです。
ゆぴ:
えっ、めちゃくちゃ働いているじゃないですか! いつもデスクにいないのに……。
じきるう:
働いてますよ!(笑) 問い合わせ対応だけで1日が終わることもあります。毎月の記事発注もありますし、取材に同行してカメラマンをやったり、空き時間に記事の確認をしたり……本当は自分で記事を書いたりもしたいんですけど、なかなか書く時間がとれなくて。
ゆぴ:
編集長がカメラマンをやるんですか……!?
じきるう:
Webメディアの編集部って、慢性的に人手不足と予算不足なので(笑)。こういうWebメディアは多いんじゃないかな。
「編集長」って言うとエラそうに思われるんですが、要は雑用なんですよね。上にメンバーがいるというよりは、メンバーの下に編集長がいる。縁の下の力持ちなんです。
ゆぴ:
じきるうさんは未経験から編集長に就任されていますが、編集長に必要なスキルがあれば知りたいです!
じきるう:
「編集スキル」「マーケティングスキル」「マネジメントスキル」ですね。
まずはコンテンツを見る力=編集スキル。ボクも最初のころは先輩編集者に朱入れ(原稿を添削してもらうこと)をしてもらいながら学んでいました。もし朱入れをしてくれる人がいない場合は、完成した原稿を一晩寝かせて、翌日に自分で朱入れするというやり方もあります。予算があるなら、外部編集者に依頼するのもありです。
次に、マーケティングスキル。メディアの方針を実現するために、どのチャネルからどうPVを稼げばいいのかなど、計画立てて実行できるスキルですね。
最後にマネジメントスキル。Webメディア運営は基本的に複数人で行われるため、内部・外部のメンバーをまとめ上げてチームを推進していく力は大切です。
ゆぴ:
どれも難しそう……。じきるうさんは未経験からこれらのスキルをどう身につけていったんですか?
じきるう:
詳しい人を真似て、聞いたとおりにやってみて、トライアンドエラーを繰り返しました。やり方はたくさんあると思いますが、どれが正解なんてないので、とりあえず学んで実行して、PDCAをまわすしかないと思っています。
ボクがこれらのスキルを学ぶうえで参考にした本を置いておきます。人それぞれ合った本があると思うので、さまざまな本を読んで試してみてください。
じきるう:
編集長に向いているのは、「自分主導で決められる人」です。人から与えられたものだけをやるのでは、Webメディア運営は難しいと思います。
自分主導でやるからこそ、責任が生まれるし、楽しんでWebメディア運営ができます。
Webメディアは途中で大きく方針を変えなきゃいけないときもありますが、そこの舵取りができる人であってほしい。方針に合わせて指標や体制を変えられる人は強いと思います。
実はボクはもともと、誰かに相談するタイプだったんです。でもそれだとうまくいかなかくて。「こんな方針がいいと思うんだけど、みんなどう思うかな……?」と不安げな編集長って、頼りないじゃないですか。
最終的な決定は編集長がしなきゃいけない。Webメディアの行き先を主導できる、リーダー気質のある人は向いていると思います。……これ、自分で言うの恥ずかしいですね(笑)。
ゆぴ:
じきるうさんはTwitterでの発信を積極的に行っているイメージですが、これも戦略的に運用しているんですか?
じきるう:
あれは好きでやってるだけですけど……(笑)。でも実は、Webメディアを伸ばす一番簡単な方法は、編集長自身にフォロワーをつけることなんですよ。
自分の影響力をつけたうえでWebメディアのことを発信すると、ソーシャルからトラフィックが取りやすくなります。また問い合わせページではなくボク宛にライター志願が来ることもありますね。SNSも窓口にしちゃうのがオススメですよ。
公式アカウントからの発信でも良いですが、編集長や編集部員など「中の人」が見えるほうがファンがつきやすいと思ってます。だって、誰が運営してるかわからないWebメディアって、ちょっと心配になりませんか?
ゆぴ:
たしかに。SNSでの発信内容はどう工夫されているんですか?
じきるう:
SNSで悩むのが発信内容だと思うんですけど、Webメディアの担当者はここがラクなんですよ。なぜなら、発信するコンテンツがすでにあるから。自分の関わった記事について発信すればいいし。Webメディアに関する思いなどを発信しても良いですよね。
フォロワーを増やすために頑張るというよりは、役に立つ情報をしっかり出して、そのうえで思いをしっかり伝えるのが大事です。
廃道探索者の平沼義之さんに取材しました。@yokkiren
超ニッチな世界なのに、随所で共感の嵐……!
>当時はインターネットでお金を稼ぐと「お金のためにやってるのかよ!」と叩かれる風潮があった
営業はしない。ライバルも見ない。プロ廃道探索者の「自己防衛の仕事術」 https://t.co/0QoxVr66Xg pic.twitter.com/w4Brf5MDBw
— じきるう 編集者 (@zikilluu) March 30, 2021
ゆぴ:
じきるうさんのツイートはユーモアもあって好きです。
じきるう:
あれもWebメディア関係なく、ただの趣味で……(笑)。本当は、ノウハウ提供に特化したほうがフォロワーは増えやすいんです。ただ、発信者そのものへのファンは増えにくいかなと思っていて。なので自分の場合は、キャラクターやパーソナリティーを出すようにしてますね。
「ノウハウ」「パーソナリティ」「思い」の3軸があれば、個人にもメディアにもファンがつくと思います。
未経験で、しかも人員不足なのに、短期間でこんなにもWebメディアを軌道に乗せることができるものなのか……というところから始まった本取材。企業メディア運営者にも、個人ブロガーにもかなりタメになる話になったかと思います。
あと編集長はデスクにいないことが多いので、「いつもこの人は何してるんだろう……」という疑問も晴れてスッキリしました。ありがとう編集長。そして編集長のいないWebメディアは早急に人を立てましょう。皆さまが楽しくコンテンツ作りができますように!
(執筆:ゆぴ 編集:じきるう)