【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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近年、さまざまな働き方が提唱される中で注目される「副業」領域。2020年以降はコロナ禍の影響で、さらに世間からの興味・関心を集める状況となりました。
本記事では、サイドワークや副収入に人々の目がさらに向き始めたこの2021年において、「副業」「ギグワーク」、そして「フリーランス」といった働き方がどのように伸びていくのかトレンド予測をしていきます。
目次
働き方の「多様化」が叫ばれるようになって久しいですが、その影響は正規/非正規といった雇用区分だけでなく、企業がサイドワークをどう容認するのかという分野にまで及びます。
2018年には厚生労働省から「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が発表され、国の指針としても、企業は労働者の副業・兼業を容認すべきという流れがスタンダードになってきました。
これを皮切りに、大企業でも続々と「副業可」の就業規則が制定されてきており、ダブルワークに取り組むサラリーマンも増えつつあるのが現状です。
また、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大が起き、営業自粛や在宅勤務を強いられる中、収入減によりやむを得ず副業を検討せざるを得ない状況に陥った方も多かったのではないでしょうか。
そこで今回は、「2021年の副業・ギグワーク市場はどう伸びる?」というテーマで調査を進めました。ヴァリューズの市場分析ツールである『Dockpit』を用い、ダイバーシティやコロナ影響により今後も促進されると推測される、副業やギグワーク市場の伸びを多角的に分析します。
調査は、主にキーワード「副業」(もしくはそれに関連する語句)の検索者のインサイトを探る手段で行います。キーワードを検索するユーザーの属性や、よく検索されている語句を特定・比較することで、今後の市場トレンドを予測していきます。
副業への関心の高まりが起きる中で、「副業」のネット検索者数は増加しています。
「副業」キーワードの検索ユーザー数の推移を、過去2年分で見てみましょう。
上記グラフを見ると、2019年12月時点で40万回弱だった検索数が、2020年に入ると一気に月間50万人ほどの水準まで一段階上がったことが分かります。この傾向は2020年を通して持続し、12月にも「副業」検索者数は50万人程度を維持。2019年と2020年を比較すると、「副業」というキーワードを検索する人は約1.3倍増えた計算です。
この要因は、1つは周知のとおり新型コロナウイルスの影響によって元の収入が維持できなくなり、副収入を考え始めた人が増えた点だと推察されます。また、在宅ワークが一般化したことで、クラウドソーシングの案件を請けやすくなった人が増加したことなども一因でしょう。
マナミナでも以前、「副業やクラウドソーシングが伸びている実態とは?大手2サイトのユーザー層の最新トレンドを探る」にて、コロナ禍におけるクラウドソーシングのトレンド上昇について紹介しています。
さらに、2020年は大企業によって従業員の「副業OK」が出されたことも、度々報じられた年でした。たとえば2019年12月にはSMBC日興証券が2020年春からの副業解禁を発表し、2020年1月からはアサヒビールが社員3,000人規模に対して副業を認める制度を開始しています。
社会的影響力の大きな企業が寛容な姿勢を示し始めたことで、世間的に副業への目が向き始めたことも、検索回数の伸びに影響していると思われます。
「ギグワーク(もしくはギグワーカー)」という言葉が登場してからまだ日が浅いですが、2020年のコロナ禍において、その認知は大きく進んだことが推察されます。
先ほど同様に、「ギグワーク」というキーワードの検索ユーザー数の推移を見てみましょう。
上記、過去2年の推移を見ると、「ギグワーク」は2019年末頃から検索され始め、以後は新型コロナの感染者増大により経済的な緊張が高まったタイミングで急増している傾向です。
「ギグワーク」は空いてしまった隙間時間を、単発取引の業務を受注することで有効活用するという働き方です。
そのため、先のグラフを見るに、感染者増大に伴い一時的な営業自粛が要請される飲食店や、娯楽施設のスタッフ等に需要が生まれている可能性があります。
さらにDockpitによって「副業」という検索語句のユーザー属性を探ります。まず2020年上半期における検索ユーザーは、20代・30代の伸びが最も大きいという結果になりました。
2019年下半期と2020年上半期の比較では、10代を除くすべての年代で「副業」と検索するユーザーが増えていますが、20代・30代がそれぞれ前期比126%、123%の伸びとなり大きいです。
これは、コロナ第1波の影響で一時的に勤務ができなくなった、もしくは働き口が無くなってしまったという若年層が多かったことがひとつの要因かもしれません。また、正規雇用者であっても若年層は高い給与をもらっている割合が低く、自身の先々の収入に対する不安が増す中で、副業への関心を強めた可能性もあるでしょう。
しかし、2020年下期に入ると状況は変化し、今度は40代以上の高年代層による副業への関心が高まり始めます。
グラフを見ると、2020年上期に上昇率の高かった20代・30代はそれぞれ検索数が下落、横ばいとなっているのに対し、40代以上の年代は引き続き検索者が増加している様子です。
このことは、行く先を案ずる企業のベテラン社員や、経験・スキルの醸成されている年齢層の人材にも、徐々に副業という考え方が広まっている可能性を示唆しています。
副業への興味関心を寄せるユーザーは、具体的にどのような情報取得のニーズを持っているのでしょうか。
「副業」と検索するユーザーが、他にどんなワードを特徴的に検索しているかを「関心ワード」として抽出した表が以下の通りです。
関心ワードを見てみると、最も検索ユーザーが多い語句は「副業禁止」というキーワードです。企業勤めの人材による副業の促進が市場全体で進んでいますが、一方で「副業をしたいけれど本業の会社に原則として推奨されていない」と感じる人もいるかもしれません。このジレンマに悩む人も多いのではと考えられます。
また、「月5万」といった具体的なキーワードから察するに、「現状より5万円でいいから月収を増やせないか」という思いを馳せる人も多そうです。
加えて、「MANABLOG」といった有名ブロガーのサイト名や、「内部リンク」「ブログ記事」「ODAN」などはすべて、ブログ型のアフィリエイト収入を画策しているユーザーによる検索語句だと推察されます。
以上を統合すると、「本業がありつつも今よりも5万円で良いから副収入を得たい」「副収入は、ブログ型のアフィリエイトで得たい」と考える人が、ペルソナの1つなのではないでしょうか。
副業を考えているユーザーに、この2年でどのような物事への関心が強まっているのかについて、さらに詳しく見ていきましょう。
以下は、Dockpitにより抽出した「副業」という語句と掛け合わせで検索されているキーワードのうち、2019年から2020年にかけて検索数が増大したものを集計したリストです。
「求人」「失業保険」といったキーワードを見ると、コロナ禍により仕事が減った・無くなってしまったというユーザーの関心が高まったことがわかります。また、「青色申告」や「住民税」「経費」といった語句が伸びていることから、2019年よりも本格的に副業を開始した人が多かったことも窺えます。
これらは、冒頭からお伝えしている通り、複数の要因で副業へのニーズが全体的に上昇していることを示唆していると考えられます。
続いて、「動画編集」「エンジニア」「イラスト」といった語句にも注目です。「在宅」というキーワードが登場していることと合わせて考えると、専門領域かつ、在宅で業務の行える職種は関心が高まっていると思われます。
とくに、近年YouTube等の台頭で一般的になった動画の分野や、教育の必修化などで世間からの注目度も高いプログラミング・エンジニアリング領域も需要が伸びている状況です。
その他、「ウーバーイーツ」「メルカリ」などの有名サービス名もあり、これらサービスは比較的に専門的なスキルが要求されない副業として、取り組む選択肢に考える人も多いようです。
「働き方の多様化」の文脈においては、フリーランスという働き方も年々浸透してきています。企業に属しつつ本業・副業を考えるユーザーと、そもそも組織に所属せずにフリーランスとして個人事業を営むユーザーは、どのような違いがあるのでしょうか。
「副業」と「フリーランス」の2キーワード、それぞれの検索者の属性をDockpitで抽出したデータを見てみます。
それぞれのキーワードの検索者を比べると、「副業」は男性55.5%・女性45.%と男性ユーザーのほうが多く検索していますが、「フリーランス」の検索ユーザーはほぼ50:50の男女比率となっています。
つづいて、検索者の性別と同様に、年齢層のデータも抽出してみます。
こちらのデータでは、「副業」の検索者は20代が圧倒的に多いこと、「フリーランス」の検索者は「副業」同様に若年層に寄っているものの、20代より30代のほうがやや多いことが見て取れます。
「副業」については、まだまだ高い給与が得られない傾向にある20代の企業勤めの人が、副業を考える機会が多いと言えるでしょう。また、「フリーランス」は「副業」よりも30代のユーザーの割合が多いことから、ある程度のスキルや社会経験を積んだ人材が、30歳を超えて独立を思い立つ、といった背景もありそうです。
ここまで、副業やフリーランスの分野が近年どのようにニーズが高まっているか見てきましたが、伸びていく市場の中で注目に値するサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。
「副業」「フリーランス」それぞれの語句の検索ユーザーが訪問しているサイトを見てみましょう。
上記を俯瞰すると、両キーワードに共通してセッションが多いのはクラウド会計ソフトである『freee(フリー)』のサービスサイトです。副業には経費申請や確定申告といった作業が付いて回るため、双方の検索者にとって有用なサービスとして認知が進んでいる様子です。
また、両キーワード共に『dジョブ』を始めとするアウトソーシング案件のマッチングサービスが並ぶのが共通していますが、「フリーランス」のほうはよりITやWebの職種、エンジニアリング領域サイトの顔ぶれが多いのも特徴的です。
「フリーランス白書2020」によれば、フリーランスの職種内訳としてWeb系やプログラマー等のIT人材の割合が高いというデータも出ており、流通している案件も必然的にこの領域に寄る傾向にあるようです。
それでは、それぞれの流入の大きなサイトから、いくつピックアップして紹介していきましょう。
『クラウドテック』はクラウドソーシングサービスの大手であるクラウドワークスが手掛ける、IT業種に特化したフリーランス専門エージェントです。プログラマー・Webデザイナー、Webライターなどの職種で、フリーランス案件を受注することが可能です。
クラウドテックのサイトセッションをDockpitによってデータ抽出すると、とくにコロナの第1波~第2波のあった春から夏にかけ、セッション数の増大が見て取れます。
「フリーランス」の掛け合わせキーワードを紹介した項でも触れましたが、フリーランスの人はこの時期、元々の企業案件が打ち切られて仕事を失ってしまったという人が増えたタイミングです。そのため、新規案件の受注を求め、クラウドテックのサイトへのセッションも伸びたのではないでしょうか。
同サービスは今後も引き続き高いであろうリモートによるアウトソーシング需要に応えるべく、サービストップでも「リモートワーク案件数、業界トップクラス。」を謳っています。
『note』は近年、急速に知名度と利用者を伸ばしているCGM(Consumer Generated Media、消費者がコンテンツを投稿することで形成されるメディアのこと)です。
2019年1月には既にMAU1,000万人という規模に達していた同サービスですが、Dockpitでセッション数の推移を見てみると、コロナ禍の1年でさらに流入を拡大している様子が窺えます。
とくに、コロナ第1波のタイミングでセッション数が大きく伸びており、以後は引き続き、高いセッション数を保ったまま推移しているのが見て取れます。
noteは1からブログ構築などをせずとも、ユーザーが手軽に情報発信できるプラットフォームに設計されていますが、最大の特徴は「コンテンツの有料販売」機能にあります。
noteには閲覧に課金が必要なコンテンツを投稿者が設定でき、購入者から収益を得られる仕組みがあるため、そもそもが「情報発信による副業に向いている場」であると言えるでしょう。また、投稿されるコンテンツには各種ビジネスノウハウなども多数存在することから、「何かしら副業をしよう」と考えている側のユーザーからの訪問も定常的です。
noteを副業のフィールドにするユーザーと、noteで得た知識で副業へ取り組むユーザーの双方が循環し合って、サービスへの関心を高めている構図は非常に興味深いです。
さまざまな観点から分析をしてきましたが、以上を踏まえた「副業・ギグワーク」分野の2021年のトレンド予測は、以下のようにまとめることができます。
働き方の「多様化」を認め始めた社会情勢と、2020年のコロナ禍を経て、副業を安定的な収入を得るための1つの選択肢と考えるのは、既に一般的なのかもしれません。この市場は今後も間違いなく伸びていくと思われますし、市場拡大の最中にあっては、また新しい労働者の需要やそれに応えるビジネスモデルが多数生まれるでしょう。
本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。
【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2019年1月〜2020年12月の検索流入データ
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス
(執筆:坂田憲亮 提供元:マナミナ)