生理休暇がない企業はない!? 労基法で認められた権利なのに、取得率は…【社労士監修】

生理休暇がない企業はない
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女性にとって毎月訪れる憂鬱な1週間、生理。どんなに体調管理をしていても、働けないほどの体調不良が起こってしまうこともありますよね。

そんな時の強い味方が「生理休暇」です。

でも、生理のために休暇を取得しようとするも「有給休暇を取得してください」と言われてしまったり、周りの目を気にして申請しづらかったり……。周りの人はどうやって取得しているのでしょうか。

今回は「生理休暇」についてご紹介します。

監修:石川 弘子(いしかわ ひろこ)
監修:石川 弘子(いしかわ ひろこ)

社会保険労務士(フェリタス社会保険労務士法人)。1973年、福島県生まれ。青山学院大学経済学部経済学科卒業。フェリタス社会保険労務士法人代表。特定社会保険労務士、産業カウンセラー、セクハラパワハラ防止コンサルタント。労働・社会保険手続き代行、就業規則作成等の他に、中小企業から上場企業まで、様々な企業の労務相談を受けている。また、障害年金請求手続きや、産業カウンセラーとして、企業のメンタルヘルス対策などにも携わる。著書『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)、『モンスター部下』(日本経済新聞出版)

「生理休暇」ってどんな休暇?

労働基準法に基づいて認められている権利!

「生理が重くて、今日は仕事どころじゃない」「ベッドから起き上がるのすらしんどい」というとき、上手に利用したいのが生理休暇です。

生理休暇は会社独自の制度ではなく、労働基準法第68条で定められた制度で、すべての女性労働者に取得する権利があります。

実際に法令文を見てみましょう。

(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。

つまり、生理日だからと無条件に取得できるわけではなく、生理によって就業が困難な場合のみ取得が認められるものとなります。たとえば、生理休暇を取得した日に行楽地へ出かけるなどの用途での取得は認められず、あくまで休息をとるための休暇であることを理解し、正しく利用していくことが大切ですね。

「うちの会社には生理休暇がないから休めない」「生理休暇はないから有給休暇を使わなければならない」ということはなく、どんな会社であっても生理休暇を取得することができるのです。

雇用体系に関わらず取得可能

生理休暇は正社員に限って使える制度ではなく、契約社員や派遣社員、パート、アルバイトなど、企業に属するすべての雇用体系で利用できます。

また、有給休暇とは違って取得日数に制限はなく、入社後すぐに取得することができます。

取得は1日単位、半日単位、時間単位で取得が可能なため、シフト制などの勤務体系にも対応します。

給与については企業により対応が異なる

気になるのは生理休暇を取得した際のお給料ですが、こちらは企業によって対応が分かれます。

労働基準法では、「従業員の休暇に対して賃金を支払わなければならない」と記載があるのは有給休暇のみです。つまり、生理休暇を取得した従業員に対して賃金を支払わなくても、なんら問題がないということです。

多くの企業は、生理休暇に対して無給での取得を認めている状態ですが、会社の制度として有給になる場合もあります。こちらは各企業の人事や就業規則をあらかじめ確認しておきましょう。

取得のために必要なこと。拒否されたときは?

当日の口頭申請でOK、書類は不要

ここからは、生理休暇を取得したいと考えたときに必要なことを整理していきましょう。生理は個人差があり、仕事に支障をきたすほどに辛くなる時もあれば、比較的軽い時もありますよね。

「1週間後に風邪を引く予定なので有給休暇を取得します」と申告するのが不可能なように、生理休暇に事前申告は必要ありません。また、休暇を取得するために事前書類を書かせる行為は、体調不良時の就業にあたるため、こちらも不要です。企業側は申告があったら、速やかに休暇を与える必要があります。

また、医師の診断書も必要ありません。生理の症状は先述したとおり人それぞれなので、数時間~1日で軽快するものから、数日間症状が長引くものまであります。

あまりに長い日数の休暇を必要とする場合は、月経困難症などのリスクも考え、病院に行ったほうがよいと考えられますが、数日程度の生理休暇を取得するためであれば、特別医師の証明がなくとも、企業側にその事実を伝えれば取得可能です。

請求を拒否されることはある?

生理休暇を取得したいと思っても、はたしてその要求は承認されるのだろうか……。一番の不安点ですが、企業側が業務の引継ぎや繁忙を理由に取得を拒否することは認められていません。申告があったらすみやかに休暇を与える必要があります。

また「生理休暇ではなく、有給休暇を取得してください」と企業側から変更を促された場合、請求者はこれを拒否することができます。生理休暇は有給休暇とは別に、生理日の就業が困難な場合の使用目的で設けられており、有給休暇を充てなければならない決まりはないからです。

つまり、正当な理由での請求が拒否されることはなく、拒否された場合は労働基準法第68条の違反に当たります。

しっかりした制度はあるのに、実情は取得率1%

労働基準法、つまり国の法律で定められている生理休暇ですが、2015年度雇用均等基本調査によると、女性労働者がいる事業所のうち、請求者がいた事業所は2.2%、実際に請求をした女性は0.9%と、取得率は1%を切るのが実情です。

取得しない/できない理由はさまざまですが、多いのが「上長が男性社員で申請しづらい」「生理休暇という直接的な名称を口に出すのが恥ずかしい」という理由。最近は女性が取得する休暇を「S休(エスキュウ:オリエンタルランド)」「F休(エフキュウ:サイバーエージェント)」と呼称し、表現をマイルドにする動きも出てきました。

また、生理休暇を有給と定めている会社は決して多くはないため、「給料が減ってしまうなら有給休暇を充てよう」と考える人も多いのかもしれません。

生理の異常は身体の大きな病気につながることもあるため、働く女性も企業側も、その重要性を理解し、取得する動きが広がっていくといいですね。

まとめ

生理の重さには個人差があります。他人に自分の生理の辛さを知ってもらうことはできませんし、他人の生理の辛さを完全に理解することも決してできません。「この程度の痛み、我慢しなくちゃ」などと思わず、国が定めている生理休暇も上手に利用していきたいですね。

女性だけではなく、男性にも生理中の就業について理解が深まり、男女ともにイキイキと働ける社会であれば、よりいいもの、いいサービスが生まれていくはずです。

これまでタブー視されてきた「生理」というデリケートな話題について、いま一度見直してみませんか?

(執筆:山口真央 編集:少年B、まつもと 監修:石川 弘子社会保険労務士(フェリタス社会保険労務士法人))

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