シリコンバレーのエトセトラ〜2週間滞在してわかった7つのこと〜

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世界中のデザイナーやエンジニアから大きな注目を集めているIT都市、通称「シリコンバレー」。GoogleやAppleなどの大企業が集まっていること、「シリコンバレー」は実際の地名を指すわけではないこと、などの基本的な事実は頭に入っていたものの、正直はるか遠い世界としてのみ認識をしていました。

このたび私は、サンフランシスコ、サンノゼという「シリコンバレー」と呼ばれている地域の中に2週間滞在し、頭のどこかで神格化していたシリコンバレーの現地の空気感を初めて味わっています。

そこで今回の記事では、シリコンバレーに住む人々の日常生活、シリコンバレーで生活する中で気づいた現地の生活スタイルなどをレポートしてみたいと思います。

1. シリコンバレーは非常に広い

silicon

まず、地理については最初に特記すべきでしょう。多くの人がご存知の通り、「シリコンバレー」という土地は存在しません。シリコンバレーで働く日本人にフィーチャーしたWebメディア『SiliconValleyWorkers』による「シリコンバレー有名企業マップ」を見るとよくわかりますが、多くの有名企業はカルフォルニア州の2つの都市、サンフランシスコとサンノゼとその周辺部に大きく分散しています。

サンノゼという都市についてはあまり馴染みがない人も多いかもしれませんが、カリフォルニア州では3番目に大きな都市です。北部のサンフランシスコにはスタートアップ(Uberやairbnbなど)が集結し、南部のサンノゼ周辺には大企業(Google、Apple、intelなど)が集まっています。

「シリコンバレーに行ってオフィス見学をしたいけど、どのエリアに行けば良いの?」という疑問は多くの人が持っているかと思いますが、実際はこの「シリコンバレー」と大きく括られているエリアはとても広いのです。点在するサンタクララ・パロアルト・サンノゼ地区、サンマテオ、メンローパーク、パロアルト、スタンフォード、マウンテンビューなど、全てを見て回ろうとすると、高速道路に乗って車で30分〜40分はかかるでしょう。

見学したい企業をあらかじめ考えた上で回ることをおすすめします。

2. サンフランシスコの異常に高い家賃

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というわけで、一口に「シリコンバレー」と言っても非常に広いエリアを指すため、シリコンバレーで働く人々の住環境、というものも一概にはいえません。

サンフランシスコに限っていえば、ベイエリアはアメリカで今最も人気が高いエリアであり、世界で一番家賃が高い都市の1つでもあります。ある調査によると、家賃は平均月4200ドル(約48万円)で、大企業に務めるエンジニアの多くは、給料の40%〜50%を勤務先の近くに住居を借りるために使っているといわれてます。

また現地の友人の話によると、サンフランシスコ中心部の高額な家賃を払えない場合は、サンフランシスコ北部、電車で30分ほどの距離にあるオークランドやバークレーなどの他都市に居を構え、毎朝そこから出勤している人も多いとのこと。晴れやかなイメージの裏側で、そこで働く人には家賃という大きな悩みがあるようです。

3. 特にサンノゼ周辺は車がないと何もできない

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さて、「シリコンバレー」という土地は存在せず、多くの有名企業はカルフォルニア州の2つの都市、サンフランシスコとサンノゼに大きく分散していると先ほど書きましたが、交通手段はどうなっているのでしょうか。

サンフランシスコ市内では、Caltrain、Bart、MUNIといった市内バスや電車、観光客に人気なケーブルカーなどが充実しています。しかし、サンフランシスコ市内とサンノゼ間の移動となると、電車は1時間に1本しかありません。ちょっとした打ち合わせ程度でも往復すると半日がかりになるため、車で移動をしている人が多い印象です。

特にサンノゼ周辺は、広大なエリアに大企業の大きなキャンパスが点在する以外は、驚くほど何もありません。公共交通機関が充実していないため、特にサンノゼ周辺での移動では車が必須です。サンフランシスコ 市内以外での勤務であれば、車の購入を検討するのが現実的でしょう。

ただし、Googleなどの大企業に務めている場合は、Googleバスなど社員専用のシャトルバスがあちこちから発着しているようです。

4. 毎日続く快晴と大平洋からの潮風

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サンフランシスコは毎日が信じられないくらいの快晴で、一年中気持ちよく過ごせます。かつ、太平洋からの潮風のおかげで、決して暑すぎることなく、仕事が大変しやすい環境です。

実はこの気候、夏は砂漠のように暑くなるカリフォルニアでは例外的といわれていています。サンフランシスコ から内陸へ2時間ほど車を走らせるだけでも、気温がぐっと上昇し、風景も非常に殺風景な砂漠地帯に近いものへと変化します。そんななか、潮風のおかげで一年中快適な気候を保っているサンフランシスコは、まさに砂漠の中のオアシス。この過ごしやすさが、多くの企業を惹きつけた理由のひとつなのかもしれません。

5. 長時間労働はNG。誰もがプライベートも充実させている印象

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現地で働く人々との交流の中で気づいた生活スタイルや仕事環境について紹介していきます。

今回は仕事の関係でGoogleキャンパスを訪れたのですが、金曜日の16:00頃には既に人の気配がなく、がらんとした雰囲気でした。

SiliconValleyWorkers」の編集長である中屋敷さん(@Kazuki19911230)によれば、シリコンバレーでは「帰る時間に合わせて、仕事を効率的もしくは生産的に進めて終わらせる」というのが基本とのこと。日本のようにだらだら会社に残って、終電で帰宅するなどという働き方は、シリコンバレーで働く人にとってはあり得ないものだそうです。

また朝ジョギングをしてから出社、夜は平日も友達と飲みに行ったりと、プライベートを充実させている人が多い印象です。

6. 人脈作りには『Meetup』などを使う

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人脈の大切さについてはよく耳にしますが、シリコンバレーでの人脈作りにはそのためのサービスを活用している人が多いです。

現地で一般的な『Meetup』や『Eventbrite』などのサービスを使えば、誰でも気軽にイベントの主催者になることができ、FacebookやTwittrなど他のソーシャル・ネットワーク・サービスと連携させイベントの宣伝を行えます。日本では『Peatix』が主流ですが、シリコンバレーではEventbrite、Meetup、Facebookの3つを抑えておけば、ビジネス系、ネットワーク系イベントはほとんど網羅できるといえるでしょう。

特に私自身滞在中に多用したMeetupでは、シリコンバレーのUX界隈のカジュアルな飲み会や、未だにマイノリティである女性のコーダーのための勉強会、VR界隈のネットワークづくりと情報交換など、さまざまなイベントが毎日のように開催されていました。1〜2週間程度の短期の滞在だったとしても、こうしたイベントをフル活用すれば、現地でのネットワークは簡単に作れます。そしてこの人脈は、仕事探しの際などに大いに活用できるのです。

7. 多様性のある仕事環境

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シリコンバレーでは、何よりも多様性を大切にする企業文化があたり前な印象を受けました。「多様性」とはここでは、外国人比率だけでなく、人種・ジェンダー・文化・宗教・障害のあるなしなど、さまざまな「違い」を指します。シリコンバレーの多くの企業では、ダイバーシティゴールと称して社員の多様性を高めるための目標数値を設定しており、「多様でない方が不自然」という文化が根付いているように思いました。

シリコンバレーは「イノベーションが生まれる場所」として有名ですが、このイノベーションは、グローバル化でユーザーがますます多様になる中で、異なった視点を持ち込み、ユーザーの多様性を仕事環境にも反映させることがその絶対条件になっています。日本ではまだまだドメスティックな企業文化が主流な印象を受けますが、シリコンバレーの多様性への賞賛と実践は、ぜひ真似したいものです。

まとめ

以上、シリコンバレーに短期滞在してわかった7つのことを紹介しました。もちろん、変化が激しく多様なシリコンバレーの姿を切り取るのは容易ではないので、あくまでも一意見として受け取ってもらえればと思います。

また、現地の人たちと会話をする中で、シリコンバレーは「第2のゴールドラッシュ」と呼ばれていることがわかりました。カリフォルニアの発展は1849年に始まったゴールドラッシュの賜物ですが、世界中の多くの企業や労働者を魅了するシリコンバレーは、カリフォルニアの2度目のゴールドラッシュであるとのことです。動いているお金の規模や人口の流入を考えると非常に良い比喩ですが、なんと両者の間にはれっきとした繋がりがあることも、今回の滞在でわかりました。

1849年に始まった第1次ゴールドラッシュで成功した鉄道王リーランド・スタンフォード(1824-1893)は、現在シリコンバレーと呼ばれている地域に、多大なる遺産を残しています。そう、世界最高峰といわれているスタンフォード大学の設立です。スタンフォード大学は創業初期から工学部に力を入れており、現在のこの地域におけるIT・インターネット関連企業の発展と、密接な関係性を持っているのです。

スタンフォード大学から生まれた有名企業を並べてみると、ヤフー、グーグル、フェイスブック、ヒューレット・パッカード、サン・マイクロシステムズ、シスコシステムズ、ネットスケープなどがあります。シリコンバレーの発展の歴史を振り返ると、第2のゴールドラッシュは偶然の賜物ではなく、1800年代から脈々と続く歴史の中で必然的に生まれてきたものなのです。

教育に投資することの重要性も、ひしひしと実感した滞在となりました。

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