【MBTI診断】16タイプ別・フリーランスに向いてる仕事/働き方
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UXデザインがより重要視されている昨今、シリコンバレーではUXライターという新しい職種が誕生しています。よりユーザーを気遣ったコピーが求められているのです。
筆者が『Google I/Oカンファレンス2017年大会』で聞いた話をもとに、UXライターの文章技術を磨くためのメソッドをまとめました。テキストを使うインターフェイスを作っている人なら、誰にとっても役立つはずです。
目次
日本では全く聞いたことのないというWeb関係者がほとんどのUXライターという言葉。実はアメリカを中心に急速に増えている職業なのです。
GoogleがUXライターの募集をスタートしたのは2017年3月ごろです。募集要項によると、UXライターとは「文字情報によってユーザーのタスク完了を支援する。自社の商品がもつトーンと製品のUXデザインを牽引する存在」だとのこと。
あまり想像つかないですね。では普通のライターとはどのように違うのでしょうか。
同じライターという肩書きの人でも、仕事の内容は全く異なります。
インタビュー記事を書くライター、キャッチコピーを書くライター、セールスライター、シナリオを書くライター、ブログのライターなどなど……。全員に共通していること、それは、UXを考えながら書いているということです。
「なぜ突然UX?」と思われるかもしれません。UXの定義を知っているデザイナーであれば、違和感はないのでは?
UXとは、サービスやコンテンツを通してユーザーがえる体験のこと。UXデザインとは、その体験を通してユーザーが楽しい気持ちになるよう、グラフィックや導線のデザインをすることです。その考え方は文字にも応用できます。
読む人にどんなことを感じて欲しいか、ライターは常に考えながら書いています。
インターネットの発達によって、Webメディアやアプリ、サービスが乱立しています。それによりライターの需要が増えています。さらに、サービスが乱立している市場では、他社との差別化が求められます。
より高いUXを叶えるために、UXのことをとことん考えユーザーをコンバージョンなりタスク完了なりに導くUXライターが必要とされるようになったのです。
Googleの行動原則である「ユーザーに集中せよ、ほかはあとからついてくる」という言葉は有名ですね。
コンテンツ戦略とは、あらゆる製品のためのメッセージを考え、作ることです。UXライティングは、この分野の専門技術のひとつです。ユーザーが目標を達成することを、言葉で手助けするのが目的です。ユーザーへの気遣いは、コンテンツの細部にまで及んでいるべきです。
言葉の役割は、ユーザーが望んでいるゴールまでの道筋を示すこと。コンテンツ戦略でユーザーが何を達成したいかに焦点をあてれば、忠誠心と信用を築きあげることができます。
UXライターは、デザイナーとともにページの情報階層について考えます。ユーザーのアクションを誘発するための仮説を検証し洞察したことを伝えます。
UXライティングの基盤ができたら、そこにブランドの特徴を言語化したブランドボイスを加えましょう。UXライティングは基本を抑えるだけでも役に立ちますが、これを定めることによって大きく前進します。
ソフトウェアに問題がおこったとき、「Failure(失敗)」「authentication error(認証エラー)」と表示されることがあります。これは誰の“失敗”を表しているのか、何が“失敗”なのか、非常にわかりづらいものです。動詞はアクションを表す単語で、文の中で最も強力な部分になるのがふつうです。極力、人を主語にした言葉で問題を伝えましょう。動詞はユーザーを何らかのアクションに導きます。明確に伝えるために、専門用語は避け、アクションはユーザーの文脈で表現します。
これは、製品の発表やアプリのアップデートについて書くとき特に大切です。多くの場合、発表する新製品や新機能の技術的仕様に焦点があてられています。本来なら、「こんなことができるようになる」という新しいアクションにあてるべきです。専門用語を使わないことで、メッセージに文脈が生まれます。
簡潔というのは、短ければ良いということではありません。むしろ「効率的」に近い意味をもちます。簡潔に書くために、メッセージをよく見て、画面上の単語ひとつひとつが明確な動作を指示しているかを確かめてください。
上の画像には、「サインインエラー」というヘッダーの下に、「パスワードが間違っています」という情報が表示されています。これは、メッセージのライティングでやりがちな間違いです。まず、ヘッダーは不要です。これはどのインターフェイスにもあてはまることです。テキストフィールドがあると、ついつい埋めたくなってしまいますが、やってはいけません。可能な限りコンテンツファースト・デザインを実践しましょう。
コンテンツファースト・デザインでは、ビジュアルをあなたのいいたいことにあわせます。メッセージを違う目的で作られたボックスに押し込んだりしてはいけません。
今度はヘッダーを外しました。ほとんどの人は画面に表示された単語を全部読むことはありません。だいたいが流し読みです。
人が画面を見ていくとき、視線が「F」の形をなぞることがわかっています。1行目、2行目と読んだあと、各文の最初のひとつかふたつの単語だけ見ながらページを下に進んでいきます。このために、テキストは簡潔にするだけでなく、フロントローディング(前倒し)にします。
フロントローディングとは、重要な概念を前におく方法です。こうすることで、読者がページを流し読みしたときに、重要な単語が目に入りやすくなります。
上の例では重要な単語である「incorrect」が文の最後にきています。これは下の図のように重要な単語を前にだすことで解決できます。最も重要なテキストを前に置いたら、残りは容赦なく削ります。
これと同じことがいつもできるとは限りませんが、重要な原理として覚えておいてください。
テキストはCTA(Call to Action: 行動の喚起)の役割を果たします。ユーザーを次のステップに誘動するために、ターゲットが望む行動と調和したCTAを設置しなければなりません。以上のことを踏まえると、下の例の「OK」は、良いCTAとは言えません。
これの代替として「TRY AGAIN(やり直す)」を思いついた人がいるかもしれませんが、それだけでは不十分です。パスワードを忘れた人のための選択肢が必要です。パスワードを忘れたときの選択肢が「やり直す」 だけだったら、ユーザーはフラストレーションがたまるに違いありません。
ライティングの内容だけでなく、誰に向かって書いているかに注意を向けることが非常に重要です。そうすることで、アプリやWebサイトが提供すべき基本機能がいくつか見えてくるかもしれません。極端なケースを想定せずにテキストを書くと、離脱を生む可能性があります。
次の3つの原理に注意を払っていれば、ユーザーと良い関係を作ることができます。
お伝えした3つの原理は、必ずしも互いに調和しません。そこでは一種の綱引きが起こっています。
テキストを明確にしただけでは、まだかなり長くて流し読みできません。テキストを簡潔にすると、短くなるかわりに、明確さが多少犠牲になります。最後に、テキストを有益にしたことで文が長くなり、一目では読みにくくなりました。ユーザーの立場になって考えることで、3つの原理の適切なバランスが見つかるでしょう。その瞬間、ユーザーが何を欲しがっているかを考えてください。
下のメッセージは、Googleが自身のポジティブなブランドボイスにあわせるために何をするかを示しています。彼らは 「wrong」 のようにネガティブな単語ではじめることを嫌います。また、テキストが長く簡潔でなくても、親しみやすくするためなら気にしません。下のメッセージ(グリーンの部分)にはGoogleらしさが感じられます。ただし、これがあなたのブランドにとって正しいとは限りません。あなたの製品のブランドボイスを作るのはあなた自身です。
ブランドボイスは、素敵な言葉を並べるだけのポエムではいけません。上記の原則のもと、明確、簡潔、有益のバランスをとって作るべきです。さらに、できあがったボイスは製品のキャラクターに忠実でなくてはなりません。
製品の核となる機能について考えると、キャラクターのさまざまな要素が見えてきます。次に、どこが特別で、何が差別化要因なのかを考えます。
ブランドボイスの適切な書き方をご紹介します。
あなたのブランド、および人々にそれをどう受けとめてほしいかを具象化する形容詞をいくつか見つけます。たとえばGoogle Payの理念は「フレッシュ、共感、親しみやすさ」です。形容詞を思いつくために、ブレーンストーミングを行うのも有効です。
自分の製品を出会い系サイトに登録するなら、どんなプロフィールにしますか? どんな言葉や情報を入力しますか? あなたの製品を際立たせている特長は何でしょう。人々が一番も興味をもつのはどこでしょう?考えたプロフィールから、特徴や性質を表す言葉を抜きだします。それらが、あなたのブランド理念になります。
さあ、これでブランド理念ができ上がりました。次のステップは、この理念をライティングに適用するとどう見えてどう聞こえるかです。それが、あなたのライティングのガイドラインになります。
ここでさらに一歩進めて、あなたのブランドボイスが別のコンテキストではどう聞こえるかを考えます。これがトーンです。
ボイス(声)とトーンの(調子)違いを覚える簡単な方法は、人間にあてはめて考えることです。人の声は変わりませんが、話すときのトーンは、そのときの状況や何を話すかによって変わることがあります。
ユーザーに言葉を伝えるとき、いつも一定のテンショで語りかけるのではなく、状況にあわせて声のトーンを調整すべきです。そのトーンのレベルを何段階かで配列したものを、トーン・スペクトルといいます。これを定めることによって、アプリがわれわれの声をユーザーエクスペリエンス全体にわたって一貫した方法で使うことが約束されます。『Android Pay』のトーンスペクトルは、「重大(serious)」から「気まぐれ(whimsical)」まで広がっています。
あなたの製品の場合、スペクトル軸の両端はさきほどとは違う言葉で呼ばれるかもしれません。トーンの範囲は「役立つ」から「感動的」まで、さらには「ユーモラス」まで広がるかもしれません。あなたの製品にぴったりな軸を作ったら、次はどの瞬間にそれをマッピングするかを決めましょう。
そのためのうまい方法は、ユーザーエクスペリエンスのなかの特徴的な節目や場面について考えることです。たとえば、チュートリアル、トラブル対応といったものが考えられます。
スペクトルのどこに位置づけるかを決めるには、次の3点を考えます。
自分のボイスが決まって、トーンのマッピングも終ったところで、UXライティングをはじめます。いよいよ、ユーザーインターフェイスにどんな単語が入るかを決めるときです。
インターフェイスのテキストは以下を満たしていなければなりません。
『Android Pay』をはじめて使うユーザーへのメッセージを例にGoogleのUXライティングの作成プロセスを順を追って見ていくことにしましょう。
開発チームはそのユーザーが好奇心旺盛であると予想しました。そこで、このアプリで何ができるかを教え、さらにこの次の画面に進んで設定をする理由を与えたいと考えました。
プロセスの最初は、まず下図のような説明的なテキストから始めます。
▲「お店ではスマートフォンで払いましょう。アプリを使えばすばやくチェックアウトできます」
次に、良いUXライティングのための3つの理念に沿って考えます。このテキストは、明確かつ有益ですが、簡潔ではありません。そこで、各部分の情報が本質的かそうでないかを見極めます。ビジュアルに変えて表現できる部分はあるか? 編集の結果、以下のように変わりました。
明確、簡潔、有益の全項目にチェックマークがついたので、次はトーンを考えなくてはなりません。このテキストはごく一般的で、『Android Pay』のブランドを伝達しているとはいえません。
そこで、ブランド理念に立ち返って、もっとフレッシュに、もっとエキサイティングにするにはどうするかを考えます。これがユーザーにとっての第一印象になるので、一風変わっていても構いません。
最終版はこんな感じです。
テキストは前より少し長くなりましたが、ちょっとした個性が加わりました。この個性を注入することに、単語を増やすだけの価値があるかどうかはあなたの判断です。どちらの方が効果的か自信をもてないときは、A/Bテストを実施してください。
『Android Pay』の開発チームも初期画面のA/Bテストを行いました。
A/Bテストは、2つのバージョンからテキストを選ぶ優れた方法です。どちらの方がユーザーとつながりやすいかを知ることができます。
『トム・ソーヤの冒険』で知られるアメリカの作家マーク・トウェインはこう言いました。
「書くことなんて簡単さ。間違った単語を消すだけでいいのだから」
正しいメソッドさえ知っていれば、良いUXライティングを実現できます。ユーザーを動かすコピーを、あなたのサービスやアプリに散りばめてください。
(翻訳:Nobuo Takahashi)
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