エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
- ITエンジニア
- 副業
バンクーバーのうぇぶ屋・セナさんインタビュー【前編】:無計画なワーホリは危険!?
Workship MAGAZINE
バンクーバーのうぇぶ屋・Sennaさんインタビュー前編では、セナさんがカナダで働くに至った経緯や、『Frog』の活動内容、海外留学&就労において気をつけるべきポイントなどをお話いただきました。
後編では、留学・就労先としてカナダのバンクーバーをおすすめする理由や、現地のWeb制作トレンドなどを中心に教えていただきます。
―― カナダの中でも、特にバンクーバーが留学・就労先としておすすめな理由はありますか?
バンクーバーがシリコンバレーと地理的に近く、また密接な関係にあることが大きな理由のひとつですね。
たとえばシリコンバレーに本社を置くFacebookは、バンクーバーにオフィスを構えていますが、そこは一時勤務用のオフィスです。バンクーバーはビザが取得しやすく、また世界トップクラスの教育機関が充実しているため優秀な人材が集まりやすいのですが、Facebookはそうしたバンクーバーに集まる優秀な人材を獲得したいのです。しかし、アメリカで働かせるとなるとビザの取得が難しく、就労ビザの発行にも多大な時間と労力がかかります。そこで、アメリカにはビザの関係で呼べない優秀な人材に、バンクーバーのオフィスで一時的に働いてもらい、アメリカのビザの申請が降りたらシリコンバレーの本社に来てもらおうという寸法だったようです。将来的にシリコンバレーで働きたいという人は、その前段階としてバンクーバーに来るのはおすすめですね。
他の大企業もFacebookと同様に、カナダの優秀な人材を捕まえたいけれどもビザの関係で難しい場合は、ビザの申請期間中にも働いてもらえるように、カナダにオフィスを作るというケースが多くあります。
もちろん企業側の都合だけでなく、労働者としてもバンクーバーは魅力的だと思います。今のアメリカはトランプ政権の影響で、シリコンバレーで働く外国人のうち約4割がアメリカで働き続けることに難しさを感じているといわれています。その中の大半が、次の渡航先としてカナダを選ぶとのこと。カナダのバンクーバーであれば、飛行機でシリコンバレーまで2時間程度ですし、時差も同じです。物価もアメリカより安いなど、さまざまなメリットが挙げられますね。
先ほども述べたように、カナダでは、政府によるビザのサポートは非常にしっかりしています。例えばバンクーバーのあるBC州であれば、「BC PNP Tech Pilot」というテック界隈専用の永住権取得のためのプログラムが用意されています。またカナダのトルドー首相も、Amazonの本社オフィスをバンクーバー に誘致し、3000人を雇用する計画を発表しています。首相自ら、バンクーバーでテック業界を盛り上げる意識を強く持っているのです。
―― カナダは国を挙げて、テック分野を成長させようという意識があるのですね。
そういえば、バンクーバーで生まれた世界的なサービスもいくつかあるんです。例えば『Flickr』は、元々はバンクーバーで生まれた写真共有コミュニティサービスです。その後、シリコンバレーに渡って更に大きく成長したわけです。また、一時期スマホアプリを作る際にハイブリッドアプリという開発手法が流行ったのですが、そのハイブリッドアプリのフレームワークとして一時期有名になったCordovaというフレームワークがありました。そのCordovaの原型が生まれたのは、なんと私たちの新オフィスがある、ここバンクーバーのコルドバストリートなのです。Apacheのイメージが強く、Cordovaはシリコンバレー生まれと勘違いしている人もいますが、実はバンクーバーが発祥の地なんですね。フレームワークに限らず、新しいサービスを生み出すスタートアップが生まれやすい環境が、バンクーバーにはあります。
ちなみにカナダのトロントも人気があります。特にAI、ディープラーニング、バイオテクノロジー関連ではトロントが一人勝ちの印象ですね。一方で、Web制作やアプリ開発はバンクーバーも負けていません。また私の好きなゲーム会社やグラフィックデザイン関係の会社は、モントリオールにあることが多かったりもします。カナダで働くならば、トロントやモントリオールもおすすめですね。
―― ビザの取りやすさなどから、カナダそのものに魅力がありつつ、また都市ごとに得意分野などの特徴もあるのですね。
▲2018年7月に移転したばかりのFrog新オフィス
―― カナダのWeb制作の現場について詳しくお聞きします。日本と比べて、給与の差や働き方の違いは何かありますか?
正直、私はカナダでの生活が長く、日本の労働環境はもうあまりわからなくなっていますので、最近はコメントをできるだけ避けるようにしています。ただし、Frogコミュニティにいる日本人留学生の方々の話を聞く限りだと、バンクーバーに来るFrog利用者の7~8割の日本人は、日本の労働環境や給料に対して疑問を感じていることが多い印象ですね。
まずお給料は非常に低いという印象は受けます。例としてSEは、カナダでは花形の職種で、平均の給料は8〜10万ドルを余裕で超えます。これに比べて日本での平均給料を見ると、非常に低いことに驚かされます。ただ、アプリ関連、ウェブ関連に関しては日本の会社さんもだいぶ良くなってきているとも思います。
―― カナダで流行しているWeb制作のトレンドは何かありますか?
バンクーバーはシリコンバレーに近いので、シリコンバレーで注目されている技術をどんどん取り入れようという傾向が強いです。例えばシリコンバレーでは、Javascripをベースにしたフルスタックのエンジニアを積極的に採用し、ハイブリッドアプリやネイティブアプリが非常に流行った時期がありました。バンクーバーは、そのトレンドを追いかけていった感じがありますね。ネイティブから最初始まったところが、どんどんハイブリッドしていき、Cordovaのようなフレームワークができた経緯もありました。技術的な部分でいえば、今でもバンクーバーではJavascriptのウェブをベースにした技術というのがトレンドとなっている印象はありますね。シリコンバレー発のUberEatsのようなデリバリーサービスがバンクーバーに流入したりもしています。
一方で、バンクーバーは非常に多民族都市で、カナダ人といわれている人々は全体の半分もいません。こうした多様性のある文化である以上、ひとつの流行りというものはない印象ですね。文化が混ざり合ったサラダボールなので、さまざまな異なる文化が入ってきて、色々なものが流行っているイメージですね。
―― 今後の目標がありましたら教えてください。
Frogのコンセプトはいつも一貫しています。「日本で働くエンジニアやデザイナーの皆さんの海外進出を当たり前のことにする」という目標のもと、今後も活動を続けていきたいと思います。経験者・未経験者含め、海外就職に成功した事例がたくさんあるのだということを、もっと日本の皆さんに知っていただきたいです。
未経験の方々が海外で就職するのは、一般的には難しいといわれています。日本で経験を積んでいた方が良いのは当然なのですが、やはり、人・場所・会社によってケースは異なります。経験の質によっては、10年働いていたからといって、こちらでは全く通用しないケースもあるのです。そこでいまFrogで頑張っているのは、未経験の方がバンクーバーに来た時に、こういったステップで勉強すると良いよ、という道しるべを提供することです。
ちなみに「留学してから決める」というのでは遅いです。留学をして、どういう業種で勝負をかけるのか、そもそも何を勉強しなくてはいけないのか、自分には何が足りないのか。それを知ってもらえる環境として、Frogスクールというものを作っています。このように、未経験の方々でもこちらに来て通用する環境を作り出していくのが、私たちがいま頑張っていることです。
スキルがある人々には、私たちのコミュニティに貢献してもらいたいので、彼らに勉強会を開いてもらったりもします。また、カナダへ渡航後すぐに、現地で働いている方々と交流できるような環境を作ることも意識しています。
―― カナダに留学したい、あるいは働いてみたい人に向けて、何かメッセージをお願いします。
留学というのは、もともと留学生(るがくしょう:「行った先に留め置かれる」学生という意味)という言葉から来ています。昔は命を張って海を渡り、その場でしか得られない知識と専門的な能力を得るために、皆さん渡航していました。命を張っていたわけです。一方で現在は、留学は簡単にできてしまう時代です。だからこそ、本当の意味での留学ではなく、ただの観光になってしまっているケースは非常に多いように感じます。留学する具体的な目的がない人が多い。
実になる留学をするためには、目標値を立て、それにそってプランを立てることが重要です。例えば、現地でエンジニアになりたいのであれば、留学エージェントの話だけを聞いていてはいけません。現地でエンジニアとして実際に働いている方々のスキルやキャリアステップの方法を知る、そうした情報収集が必要になるのです。目標があるのであれば、綿密に計画を立てることが重要ですね。むしろ、目標はなければいけないと思っています。旅行で終わらせない留学を、今後も私たちはサポートしていきたいですね。
―― ありがとうございました!