有名メディアの編集長が求める人材は「文章が上手い人じゃない」- ウェブメディア編集者座談会Vol.2

2018年11月に催され好評を博した『ウェブメディア編集者座談会』。その第2弾が2019年2月23日、阿佐ヶ谷ロフトで開催されました。

Webメディア業界の「本当のところ」「ここだけの話」などが聴けるということで、Web編集者2年目のまえかわがイベントに潜入!

居酒屋形式のライブハウス・阿佐ヶ谷ロフトAにて、業界のトップを走る編集長たちが「どんなライター・編集者が求められているのか?」というテーマをお酒片手に語らいました。

登壇者紹介

伊藤大地(BuzzFeed Japan副編集長)
伊藤大地(BuzzFeed Japan副編集長)

出版社『インプレス』、ハフィントンポスト日本版副編集長を経て、BuzzFeed Japan副編集長。1978年生まれ、神奈川県出身。

奥山晶二郎(朝日新聞withnews編集長)
奥山晶二郎(朝日新聞withnews編集長)

2000年に朝日新聞へ入社。地方勤務を経て東京本社デジタル部門へ。2011年に現在のデジタル編集部新設に伴い異動。『withnews』立ち上げを経験し、現在は編集長に就任。

竹内翔(J-CASTニュース編集長)
竹内翔(J-CASTニュース編集長)

2011年ジェイ・キャスト入社。複数媒体の編集部や編集長を経て、2017年から『J-CASTニュース』副編集長。翌年には編集長に着任。京都大学文学部卒。

池谷勇人(ねとらぼ副編集長)
池谷勇人(ねとらぼ副編集長)

アイティメディア株式会社にて『ねとらぼ』副編集長。ガジェット通信やexcite.ニュースなどでも執筆経験あり。

漆原直行
漆原直行

フリーランスの編集者、ライター。1972年東京都生まれ。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』『ネットじゃできない情報収集術』など。

BuzzFeedから人材流出が進んでいる件について

ぶっちゃけましょう!

いきなりぶっ込みますが……。人材といえばBuzzFeedさん、最近めちゃくちゃ人材流出してませんか?
(笑)。媒体も3年目なので、一区切りなのかもしれません。
でも、ネガティブな退社の人は少ないですよ。より書くことに集中できるできる環境を求めて移籍したりする人はいますが。BuzzFeedはベンチャーなので、書く以外の業務も多いんですよ。
書く以外の業務というと?
特徴的なのは、週に一度の振り返りです。記事がウケたかウケなかったかを追い、まずはその理由を自己分析。それをもとにチームで議論します。あとは、他社さんのよく読まれている記事について話し合うこともありますね。
辞めていくメンバーはちらほらいるけれど、弊社での実績が認められて巣立っていく人が多いので、そこは誇らしいことだなと思います。
やりたいことが明確になってくると、巣立ってしまうのかもしれませんね。
朝日新聞社のwithnews編集長・奥山さんは、欲しい人材はいますか?
会社柄、Webに明るくない社員が多いので、Webならではのノウハウが豊富な方を採用したいと思っているんですよね。
また、プロデューサーの視点を持ちながら現場に行ける人も求めています。
「プロデューサーの視点」とはつまり、ただ記事を書けるだけでは足りないということでしょうか? 前回のイベントでも「記者はいっぱいいるけれど、数字を意識しながら書ける人は少ない」とおっしゃっていましたね。
はい。数字の理解がある方は、会社の雰囲気も変えられるのではないかなと。
数字以外には、たとえば専門知識があることなどは重要でしょうか?
正直、専門性”だけ”が秀でている人はあまり採用しない傾向にあります。単一のテーマで突き抜けるなら、外部の専門家に取材をするだけで完結できますから。
ちなみにライターにとって大事なのは「掛け算」ですね。たとえば「IT×スポーツビジネス」とか、独自の角度で市場にアンテナを張れる人が強いと思います。

ねとらぼのタイトルは「パワーワードの足し算」でできている

僕は紙媒体出身で、Web業界に入りたてのころはギャップをいくつか感じました。そのひとつがタイトルです。煽り成分が過剰だったり、妙な体言止めを使ったり、やたら長かったり……。
ねとらぼの場合、多いときは100文字くらい使う記事もありますよ。
長い……!それってある意味、芸風というか、媒体のカラーなのでしょうか?
ねとらぼの場合、タイトルはパワーワードの足し算だと考えています。私の感覚ですが、パワーワードにはランクがあるんですよ。SSランク、Sランク、とかって。タイトルの中にいかにパワーワードを入れて、かつ内容を正しく伝えられるかが大切です。ちなみにねとらぼでよく使うSランクワードは「爆誕」です。
たしかに、よく見る(笑)。
J-CASTニュースはねとらぼと逆で、見出しにはイチ要素しか入れません。読者がぱっと見て把握できるように意識しています。J-CASTニュースを立ち上げたのは朝日新聞の雑誌部門の出身者ですが、そのやり方を引き継いでいますね。
withnewsの場合、タイトルの文字数はサイトのレイアウトを考慮して最大31文字までにしています。でも、外部配信するときはタイトルを媒体に合わせて調整しますよ。
ねとらぼも、外部配信のときはタイトルを短くします。たとえばヤフーさんに掲載するなら、50文字くらい。多分これがちょうどいいんですよね。

タイトル付けができるライターは重宝される

「これは読まれる!」と思えるようなタイトルを付けられるライターさんって少ないですよね。ねとらぼが特殊すぎるのかもしれませんが。
タイトル付けができるか否かは、練習している回数によると思います。ライターに限らず、編集者も自分でタイトルを書かないと覚えない。
BuzzFeedでは、ひとりの編集者が付けたタイトルを全員で揉むようにしています。そうすると、全員で場数を踏めるので。
ライターさんの中には、タイトルや見出しを付けないまま提出する人もいますよね。
基本的には編集部で付けるので、ライターさんに付けてもらわなくてもウチの場合は大丈夫ですけどね。でも、タイトルが付けられるライターさんは重宝されますよ。

書くことが好きな人と、世に出したいネタがある人

呼吸をするように原稿を書ける人っていますよね。そういう人はハイパフォーマーだと感じます。1日3本とか出し続けられるの、すごい。
うちにも、20代なのにものすごい速さで原稿をあげられる人たちがいます。いいネタがあると、夜の9時からでも書き始めてしまう。夜中に原稿が上がってきて、僕が叩き起こされる。そういう人を見ていると、「自分はライターとしては戦っていけないな」と思ってしまいます。
本当に書くことが好きなのかな。一方で、「書くのは好きじゃないけどライターになりたい」という人にもよく出会います。
世の中にどうしても出したいネタがある人は、たとえ書くことが好きじゃなくても続くんじゃないでしょうか。僕も執筆後の達成感や、ネタを世に出せること自体の喜びがやりがいです。「書くのが嫌いで、好きなネタもない」という人はフェードアウトしていきますね。

記事を出すタイミングは「速報」「詳報」「深掘り」の3種類

ネタを見つけてから記事を配信するまでは、早い方がいいのでしょうか?
そうとは限りませんね。ひとつのネタに対して、記事の出し方は3つあると思っています。「速報(会見のすぐ後に出すような記事)」「詳報(会見の書き起こしに、プラスアルファの情報をつけた記事)」「深掘り(後からネタを深く掘り下げた記事)」の3つです。どのタイミングで出すかをコントロールすることが重要なんです。
なるほど。
速報は常に情報を追っていなければ出せないので、実はコストがかかるんです。しかし、それでは大手に勝てない。そこでねとらぼでは、詳報として少し要素を付け足して出すようにしています。編集者の「ここで出したい」というタイミングに合わせられるライターが求められますね。
ライターは自由に動けるように見えるけれど、即時対応が必要なケースも多いから、意外と時間に拘束されますよね。withnewsは深掘りで勝負されている印象があります。
そうですね。媒体のキャラに合わせてファクトをどう料理するか考えています。

結局、足りないのはどんな人材?

質問に答えます

人材不足の中でも一番足らないのは、ノウハウのある中堅どころではないでしょうか。
確かに編集者やライターは裾野が広がりましたが、戦力になる中堅層が増えていないのは、その通りだと思います。文末を「いかがでしたか」とかで締めちゃうライターさんはまだたくさんいますよね。もちろん、媒体側が育てていく必要があるんですけど。
中間層とはいっても、Webのノウハウってすぐに変わっていくんですよね。だから、文章の上手い下手よりも、自分でノウハウを開発していける能力が必要。
日本語の上手さは問題じゃないんですよね。原稿はこっちで直せますから。
そして自分の視点を持って話せて、編集部とのディスカッションしながら記事をよくしていけるライターを求めています!
似たような内容で質問が来ています。「紙媒体出身者はWebならではのノウハウがないけれど、Webでも活躍できるでしょうか」と。
全然大丈夫ですよね。Webのテクニカルな部分を知っていることよりも、知識がないと自覚していることが重要。
知っている気になっている人こそ、情報が古かったりします。何かを覚えたいなら、実践することですね。雑誌や書籍にノウハウとしてまとめられている情報はすでに古いことが多い。毎日Webメディアのアクセスランクを見て、どんな記事が当たっているかをチェックしている人の方がよほど新しいことを知っています。

まとめ

目まぐるしく変化していくWebの世界。編集者もライターも、ただ記事を作ればいいという環境ではありません。

日々変わっていく状況を乗りこなせる情報感度の高さがある人が、どんな媒体でも求められているのだと感じました。

(ベンチャー気質ヤァ……)

これから挑戦する人も、いままさに奮闘している人も、編集部から引っ張りだこなプレイヤーを目指して頑張っていきましょう!

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