就活生の私が考える。言葉のプロ・梅田悟司から学ぶ、相手に届く言葉術

BUSINESS

「考えていることはことはあるけど言葉が上手く出てこない」

「自分の意図が相手に上手く伝わらない」

という悩みを持っている人は多いのではないでしょうか?

社会に出ると、ビジネスの場面や人間関係を構築するにあたって「コミュニケーション」は不可欠になります。筆者も就活に勤しんでいる身として、コミュニケーション能力の重要性を日々感じております。

そんな「言葉で悩む人」に届けたいのが、言葉のプロであるコピーライターの梅田悟司さんが書いた『「言葉にできる」は武器になる。』です。この本は相手の意図をくみ取るときや、自分の意思を伝えたいときに使える言葉の発信方法を学べます。

今回は、本からの学びをビジネスシーンとリンクさせて、役立つ心構えをご紹介します。言葉を扱う仕事をしている人はもちろん、それ以外の職種の人にも役立つ内容が詰まっているのです。そもそも、言葉を使わない仕事なんてないのですから。

「コミュニケーション能力は才能だ」と諦めている人にこそ知ってほしい、梅田流言葉術をご紹介します。

本の著者:梅田悟司(うめださとし)

株式会社電通のコピーライター、コンセプター。コピーライティングではジョージア『世界は誰かの仕事でできている。』やタウンワーク『バイトするなら、タウンワーク。』
などを手がける。カンヌ広告賞、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。他の著書には『企画者は3度たくらむ』(日本経済新聞出版社)、2019年出版の『名もなき家事に名前をつけた』(サンマーク出版)などがある。Twitter

ビジネスでの悩みは ”人間関係” が1位

上記のチューリッヒ生命の調査によると、2017年/2018年のビジネスの悩みでは「上司との人間関係」が男女ともに1位となっています。

またビジネスにおける人間関係の構築は上司だけでなく、「同僚」や「お客様や取引先」とも築かなければなりません。

そしてこの人間関係は、会話をして構築していくはず。職場の環境づくり、取引先との交渉力、お客様の要望を適格にくみ取るためのヒアリング力……。

コミュニケーション能力が不可欠であると同時に、うまくできないと悩んでいる人が多くいるのが調査結果からわかります。

相手の心に響く言葉とは

ではコミュニケーションを円滑にする会話とは、どのようなものなのでしょうか?

会話をつなぐために、たくさん発言すればよいわけではありません。内容が整理されていなかったり、中身がなかったりすると、薄っぺらい印象を相手に与えてしまします。とくにビジネスの場面では、言葉による印象の影響は大きいです。

たとえば自社サービスを顧客に紹介するときに、たくさんのメリットやデメリットをごちゃごちゃと説明されたらどうでしょう。製品についてたくさんの知識を持っていたとしても「この人の言ってることよく分からないな……」という不信感につながってしまいます。

一方で要点を絞って簡潔に説明できると、サービスを理解している印象を与えられ、信用につながります。

いわば言葉は、その人の信用度をはかる「ものさし」のような役割を果たしているのです。

言葉を正しく伝わるように使えれば、相手から信頼されるビジネスパーソンになれるでしょう。最終的に目指すは「実がある」「まとまりのある」「説得力のある」言葉です。

伝わっているレベル

梅田さんは言葉には相手に伝わっているレベルが4段階あると述べています。まずは自分がどの段階で悩んでいるか把握しましょう。

  • 不理解・誤解
  • 理解
  • 納得
  • 共感・共鳴

たとえば取引先との打ち合わせで、アイデアはあるのに自分の考えがうまく言葉にできないときや、相手に伝わらないとき。

この状況はまさに「不理解・誤解」の段階です。意思が伝わらなかったり、汲みとれなかったりすると互いに大きなストレスを感じ、意見することに苦手意識を抱いてしまいます。

伝わらない原因を「生まれつき口下手だから……」と諦めている人も多いでしょうが、コミュニケーション能力は努力しだいで後天的に身につく能力です。

大学のゼミで、研究の途中経過を教授に報告したときの話です。

研究の方向性が見えず、内容に行き詰っていた私は「わからないこと」がわからない、一番恐ろしい状態に陥っていました。教授がさまざまな角度からくれる助言に「そういうことではない」と首をふりながら、らちのあかない時間を過ごしました。まさに相手に意図が伝わらない「不理解」の状態です。

自分の理解できない点をうまく言語化して伝えられないもどかしさ、またうまく意向を受け取れない教授もストレスを感じたはずです。そのときは、最終的には教授が粘り強く私の疑問を言語化してくれたので難を逃れました。

このように、日常の中には言葉にできないストレスがあふれています。私が教授に上手く伝えられなかったのは、口下手だったからではありません。言葉の解像度が低かったからです。

また「共感・共鳴」が得られていないと思う人も、同じ原因が考えられます。

「理解」「納得」レベルがあれば、日ごろ生活するうえでは不自由ないでしょう。しかしビジネスではそれ以上の「共感・共鳴」が不可欠です。

たとえば顧客は広告を見て「こんな商品があるのか」と思っても、いざ買う段階までは達さないことが多々あります。これは「理解」「納得」の域です。

顧客が「買いたい!」思うような言葉を発信できれば、「共感・共鳴」させられたことになります。

ビジネスシーンとはちょっと違うのですが、筆者は高校生の時に、この「共感・共鳴」を深く実感したことがあります。

私の母校では、代表者が全校生徒の前で3年間の振り返りを発表する行事がありました。その発表を任せられたときの話です。

私だけに与えられた5分間を無駄にするまいと、原稿用紙たった5枚の内容を、何時間も椅子に座り、ひとことも誰とも会話することなく書いては消し……をひたすら繰り返した思い出があります。頭がおかしくなるかと思いました。発表内容はさておき、この発表が終わったあと(たいていの人は寝ているのですが)、ふだん喋らない子が「発表めちゃくちゃ共感した!」と話しかけてくれました。わざわざ伝えるために私のもとに足を運んでくれたその事実は「共感・共鳴」ではないでしょうか。

他人に自分の考え、体験を共感してもらう喜びをはじめて知ったそのとき、興奮のあまり思わずその場から駆け出しそうになったのを覚えています。

原稿と向き合う、長時間の孤独との戦いで頭が狂いそうになったのも良い思い出です。家に帰ったときにはすぐ親にその出来事を自慢しました。

あのときの喜びが忘れられず、言葉を発信する仕事に携わりたいと思ったなんて小話もあります。

最終的に目指す「実がある」「まとまりのある」「説得力のある」言葉を発せたとき、人々は「共感・共鳴」してくれるはずです。言葉の解像度が、伝わっているレベルに比例しているのです。

それではどのようにすれば言葉の解像度はあがるのでしょうか?

言葉で悩むすべての人に共通して、ひとつの心構えを持つだけで言葉に対する意識が大きく変わります。

「言葉にできない」は「考えていない」だけ

梅田さんは、ずばり言葉にできない原因は「単に考えていないだけ」だといいます。

そして、この原因を常に心構えとして持っておくことが大切です。そうすることで考える癖がつきます。

まずは言葉を生み出すプロセスである以下の2点を理解しましょう。

  1. 意見を育てる
  2. 意見を言葉に変換する

私たちは目に入ったもの対して感情や意見を抱きます。しかし自分の脳内で語られる多くは外に発信されることなく、内部に留まって消えていくことがほとんどでしょう。この内部に生まれた言葉を梅田さんは「内なる言葉」としています。

しかしその自分の内部に生まれた一時の言葉だけで「考えている」「意見を持っている」と錯覚することが、言葉をうまく伝えられない原因そのものなのです。

筆者自身、考えたつもりになっていた経験があります。

就職活動をするにあたって「将来何をしたいか」を聞かれたときです。頭の中ではそれなりに将来像を考えているほうで、行動や方向性に一貫性があると思っていました。

しかしいざ説明しようとすると、具体的な表現ができず言葉に詰まる……なんて経験をしたことがあります。

「どんな仕事をしたいか。なぜその仕事をしたいのか」までは考えられていたのですが、「なぜ」の先の考えが足りていなかったのです。

たとえば私は「言葉に携わる仕事がしたい」と思っており、それは「本が好きだから」という動機を掲げていました。

ここで考えをやめるのではなく、

  • 「ではどうして本が好きになったのか」
  • 「どのような本が好きか」
  • 「なぜそのようなジャンルの本が好きになったのか」

ひとつの意見に疑問をぶつけ続けます。

そうすることでひとつの意見に対してバックグラウンドが生まれました。

そうすることで「むかし剣道をしていたとき勝てる人が主役で、脇役の私には何のストーリーも才能もないから負けるに決まっている、と卑屈になり練習する意味が見いだせないときがあった。そんな時にバレーボールに打ち込む高校生の姿を描いた『ハイキュー』を読んで心を動かされた。あのときあの作品と出会えた自分のように、何かに悩んでいるひとや迷っているひとの一押しになるような言葉や作品と、多くの人にも出会ってほしい。私は作品と出会うべき人とその作品がちゃんと出会えるように、言葉を使って筋道を作りたい」といったように言葉の解像度をあげました。

これにより私は、言葉に携わる仕事とはいっても、「作家」ではなく「編集者」になりたいのだと分かりました。

解像度があがることで「不理解・誤解」が生まれることはなくなるでしょう。

そしてバックグラウンドや理由がはっきりしている意見は「実のある」「まとまりのある」「説得力のある」言葉です。解像度を上げ続けていけば「共感・共鳴」にたどり着くはず。

言葉の解像度

▲出典:言葉の解像度

自分の内部に生まれた言葉は、自分の意見や考えの一部です。つまり「内なる言葉」一つひとつに向き合うことで、自分がどのような考えを持った人間であるかを明確に把握できるようになります。

思考(=自分の内部に生まれた言葉)を整理することが、「相手に届く言葉」の習得において重要なポイントなのですね。

私の実際の変化

言葉にうまくできない原因は、意見に対する「知識量の少なさ」と「自信のなさ」も関係あると思います。

私はバイトやインターンで、自分の知識が少ない領域の意見が必要とされたとき、「おかしなことを言っていないか」「相手にちゃんと伝わらないんじゃないか」など、不安を抱きがちでした。たとえば意見のまとまっていない記事を執筆するとき、書いている内容に自信を持てず、何時間も時間をかけてしまうなんてことがありました。そしてじつはこの記事の執筆にもかなりの時間がかかっています……。

本を読んで「めっちゃわかる!」と共感したことを、言語化したい。しかし伝えたい部分のビジョンは頭に溢れているのに、多くの人の悩みに刺さるような適切な言葉が見つからない。まさに特大ブーメランといったところです。うう……。

一方で何時間もひとつの記事に向き合うことで、言葉が鮮明になっていくのを実感しているのも事実。また労力をかけた分、その意見に対して自信が生まれます。さらには向き合っていると、さまざまな疑問が生まれ、解消するために本を読んだり検索したりして情報感度があがります。

不安でうまく言葉にできない人にも、考え続けることは有効なはずです。

おわりに

今回は梅田さんの言葉術での学びを、コミュニケーションの成長に活用させていただきました。

言葉は、その人の思考そのものです。

言葉を発信するにはその言葉の核となる確固たる思考が必要ということが『「言葉にできる」は武器になる』を読んでわかりました。それにより言葉の解像度があがり、意見を発することに自信が持てるようになりました。

他にも梅田式の会話訓練法がたくさん語られているので、ぜひ手にとって見てみてください。

相手に伝えることを諦めずに、実践していきましょう。

(執筆:Sansui Riho 編集:Uchida Kazuyoshi、Tatsuguchi Hatsuko)

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