フリーランスを襲う「意外な労災事故」とは? プロに聞いた、労災保険の実態

「クライアント先に向かう途中、階段で転落。休業は2ヶ月の見込み……」

労災手続きを支援する現場には、そんな緊迫した連絡が毎日届いています。

労災事故なんて、デスクワークが中心の自分には関係ない。そう思ってはいないでしょうか。しかし、事実は異なります。転倒・転落や交通事故といったトラブルは、業種を問わず誰の身にも起こり得るものです。

そして、フリーランスには会社員と決定的に違う点があります。何も備えていなければ、労災保険の補償は受けられません。治療費は自己負担(※国民健康保険にて3割自己負担)、働けない間の収入はゼロ。その大きなリスクを背負っているのが、今の私たちの働き方です。

本記事では、意外と知られていないフリーランスの労災リスクと、いざという時に身を守るための「正しい備え方」について解説します。

監修:社会保険労務士法人TSC
監修:社会保険労務士法人TSC

社会保険労務士法人TSCは、創業1965年・累計導入実績100万件超・全国展開のCACグループにおいて、人事・労務領域を専門に担う社会保険労務士法人として、労務相談、労働保険・社会保険手続き、給与計算、就業規則など、企業の人事労務を幅広く支援しています。フリーランス・業務委託・副業人材の活用が広がる中、契約形態や労務管理上のリスクを整理し、企業が安心して外部人材を活用できる体制づくりをサポートしています。長年培ってきた実績とノウハウを活かし、法令遵守と実務運用の両面から、中小企業の経営者・人事労務担当者の「困った」に寄り添っています。

※この記事は社会保険労務士法人TSCの提供でお送りします

実際にあったフリーランスの労災事故。給付された金額はいくらか?

労災でよくあるのが、転倒・転落です。毎日必ずと言っていいほど手続き依頼が届くといいます。

歩行者・自転車・バイク・車を問わず、交通事故の連絡もほぼ毎日。

「先日は、治療費だけで120万円という領収書が届きました。労災保険に入っていなければ、全額自己負担になっていたかもしれないケースです」(TSC)

実際にTSCが担当した、保険が給付された事例を3つ紹介します。

事例1:取材帰りに駅のホームで転倒、骨折

発生状況 雑誌企画のインタビューを終えた帰り道、駅のホームでつまずいて転倒し、骨折。休業40日。
給付基礎日額 20,000円
給付内容 療養補償給付:治るまでの治療費を全額給付
休業補償給付:444,000円
休業特別支給金:148,000円
給付額合計 592,000円(治療費を除く)

事例2:高所作業中に転落

発生状況 高所蛍光灯の清掃を終えたあと、組み立てタワー(高さ3.5m)の解体中にバランスを崩して落下。両足が不自由になる。休業240日、障害等級12級。
給付基礎日額 20,000円
給付内容 療養補償給付:治るまでの治療費を全額給付
休業補償給付:2,844,000円
休業特別支給金:948,000円
障害補償一時金:3,120,000円
障害特別支給金:200,000円
給付額合計 7,112,000円(治療費を除く)

事例3:打ち合わせ後に階段で転倒、翌日死亡

発生状況 クライアントとの打ち合わせを終えて事業所の外に出た際、階段でつまずいて転倒し、頭部を打撲。救急搬送されたものの、翌日亡くなった。遺族は2名。
給付基礎日額 25,000円
給付内容 療養補償給付:治療に要した金額を全額給付
遺族補償年金:5,025,000円(年金として一生涯保障 ※対象遺族の人数で金額変動)
遺族特別支給金:3,000,000円
葬祭料:1,500,000円

3つの事例に共通するのは、特別に危険な作業をしていたわけではないことです。移動中や打ち合わせの帰りという、誰にでもある場面でも起きています。

もしも、労災に加入していなかったら……。療養費用や休業の際の出費がかなりの金額に至ることになり、負担は重くなります。

「企業も被災者ご本人も、安全に配慮しながら日々活動されています。それでも、思わぬ災害に巻き込まれてしまう。それが実情です」(TSC)

その怪我、健康保険は使えません

あまり知られていませんが、業務中・通勤中の怪我や病気に、健康保険は原則使えません。

個人事業主が加入している国民健康保険なら、治療そのものは多くの場合、3割負担で受けられます。ただし、休業中の収入を補償する仕組みがありません。事例1のように40日間働けなくなれば、その間の収入はゼロ。フリーランスは自分の稼働がそのまま収入なので、ダメージは会社員の比ではありません。

会社員は雇用された時点で、自動的に労災保険に守られています。フリーランスは、自分で入らない限り守られない。この差が、いざというときに数十万〜数百万円の差になります。

労災保険には、フリーランスも入れる

労災保険は、業務中や通勤中の怪我・病気に対する国の補償制度です。主な給付は次の4つ。

  • 療養(補償)給付:治療費・入院費などを、治るまで全額給付。期限なし
  • 休業(補償)給付:休業4日目以降、1日につき給付基礎日額の8割を休業終了まで給付
  • 障害(補償)給付:障害が残った場合に、程度に応じて年金または一時金を給付
  • 遺族(補償)給付:死亡時に、遺族へ年金または一時金と葬祭料を給付

ただし、労災保険は本来「雇われている人」のための制度です。フリーランスが補償を受けるには、「特別加入制度」の利用が必須です。

ここで知っておきたいのが、2024年11月の法改正です。フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の施行に合わせて、全業種のフリーランス(特定受託事業者)が特別加入の対象に加わりました。エンジニアもデザイナーも、ライターもコンサルタントも入れます。

なお、加入手続きは労働局の承認を受けた「特別加入団体」を通じてのみ行えます。個人で国に直接申し込むことはできません。

意外と知られていない、国の労災保険の特徴

国の労災保険は生活保障を目的としているため、以下のように、民間の保険とは異なるメリットがあります。

  1. 保険料は社会保険料として控除でき、非課税
  2. 受け取る給付金も非課税
  3. 治療費は全額補償
  4. 一生涯の年金制(障害・遺族・傷病) ※年金給付条件等あり
  5. 年金給付は賃金スライド制(賃金水準が反映されるので安心)
  6. 休業補償は収入の有無にかかわらず支給 ※給付日数の制限なし
  7. 加入時の年齢制限なし
  8. 給付金は差し押さえ禁止

フリーランスにとっては、大きなポイントではないでしょうか。

プロに聞く、労災保険の「正しい使い方」3つのポイント

制度に入るだけでは、備えとして半分です。TSCに、加入時と加入後に押さえるべきポイントを聞きました。

1. 適正な給付基礎日額を選択すること

「給付基礎日額」とは、保険料と給付額の両方の算出の際に基準になる金額のことです。自分の所得水準に見合った額を申請し、労働局長の承認を受けて決まります。

所得水準に見合った金額で申請をしておかないと、万が一の際に、ご自身の生活やご家族の生活に影響を及ぼすことにもつながりかねませんので、注意が必要です。

2. 特別加入団体は「加入後の対応力」で選ぶ

特別加入団体は全国に多数あります。ただ、サービスの範囲は団体によってさまざまです。差が出るのは、労災が起きた後。

労災申請は書類が多く、怪我をして余裕がないときに自力で進めるのは大変です。

申請手続きのサポートがあるか、社労士など専門家に相談できるかなどを、加入前に確認しておくと、いざというときの負担が大きく変わります。

3. 「上乗せ補償」を知っておく

労災保険の休業補償は、給付基礎日額の8割まで。残りの2割は補償されません。

この2割をカバーする「上乗せ補償」の共済もあります。年間掛金1,000円からと手頃で、死亡時に1,000万〜2,000万円の一時金が出るタイプも。労災保険とセットで検討する価値があります。

まとめ:労災保険は、事故が起きてからでは入れません

労災保険の補償が適用されるのは、加入手続きが完了したあとに起きた事故だけです。事故が起きてから慌てて入っても、その事故は補償されません。備えられるのは、何も起きていない今だけです。

「事故や怪我がないことが一番です。ただ、万が一は誰にでも起こりえます。給付の手厚さを日々実感しているからこそ、フリーランスの方にもぜひ備えてほしいと思っています」(TSC)

労災保険の特別加入は、TSCの関連団体(さまざまな業種に対応した特別加入団体)でも受け付けています。社労士・税理士など各種専門家への相談が無料、労災の手続き・相談も無料、年間掛金1,000円からの上乗せ補償と、加入後のサポートの手厚さが特徴です。

料金や加入手続きの流れは、以下の特設サイトから確認できます。

(執筆・編集:Workship MAGAZINE編集部 監修:社会保険労務士法人TSC)

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