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中国・深センのハードウェアに見るイノベーションの源泉

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こんにちは! フリーランスエンジニア関連情報やプログラミング教育について発信するメディア『フリーランスエンジニアNote』を運営している木村直広と申します。

今回は『中国・深センのハードウェアに見るイノベーションの源泉』というテーマで、中国に詳しい高須正和さんにインタビューを行いました。

高須正和さん
高須正和さん

アジアのMaker Faireに、世界でいちばん多く参加している。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』や『ニコ技深センコミュニティ』の発起人。MakerFaire 深セン(中国)、MakerFaire シンガポールの運営メンバー。Twitter

中国・深センのハードウェアの強み

ーー 中国・深センのハードウェアの強みはどんな所にありますか?

まず、深センのハードウェアの強みは「安いモノを、もともと安く売ろうとして」設計していることにあると思います。

ニコ技深センコミュニティに所属している、製品の分解を趣味にしているエンジニアが書いた「深センにある700円くらいのデジカメ分解例」を例にお話させていただきます。この安い700円のカメラは、部品の点数はめちゃくちゃ少ない上、チップや部品も安価な部品(そういう部品は、中国で再設計された安価なものが出回っている)をうまく使って設計されているんです。そしてそのような部品でも対応可能な、昔の携帯電話のような古い形式のデータの保存圧縮方法を採用している。今時のカメラではありえないような作りをあえて取り入れることで、700円という価格を実現できたと考えられます。

一方で3000円のアクションカメラになると、高性能な部品が増えてきます。高精細な画像を沢山保存できるよう、基板そのものが、部品が増えて複雑になっていて、基板の設計もたくさんの部品間の配線をするために、余計なスペースを極力生み出さないよう繊細な作りになっています。つまり何が言いたいかというと、日本みたいに高いものが古くなって型落ちしたり、高いものから部品や機能を抜いたりして安いものが出来ているのではなくて、もともと700円のものは700円で売れるよう設計されているんですよ。

基板に載っている部品だけでなく、プラスチックの外装に機構部品、組み立てなどについても上手に簡略化された設計になっており、組み立ての工数を削減できるようになってるんです。700円のカメラは、700円で売るためのノウハウがきっちりあって、安いものでも安いものなりに、目的に応じた設計をきっちり行っています。加えて、それをどのように売ろうとしているのかまで、しっかり計算にいれているのが強みなのではないかと思いますね。

ハードウェアのABテストができる設計

ーー 深センならではのハードウェアの特徴はありますか?

▲出典:TYE’s Tech. Lab

別の事例で、Marboという製品の分解事例についてお話させていただきますね。このおもちゃの面白いところは、口が動くようにするか動かないようにするか、電源をバッテリーにするのか、乾電池にするのかなどを、設計に試行錯誤している状態のまま販売されているところです。

▲出典:TYE’s Tech. Lab

ーー ん? どういうことですか?

つまり、ハードウェアでABテストみたいなことを行ったり、テスト版に近いモノを販売したりしているんですよ。未決定な部分がある雑な状態を、雑な状態なまま売り出して、とりあえずどれくらい売れるかためしめみよう、みたいなことを深センの人たちはするわけです。

バッテリーにしたものと乾電池にしたもの、両方ともある程度の数を市場に出してみて、どっちが売れたか計測して、その結果をもとに次の販売戦略を考える。でもこのようなABテストは、思えばウェブサイトを作る時なら当然行うことですよね。ソフトウェアならともかく、ハードウェアでABテストをしているのは衝撃的なことで、彼らならでは特徴ではないかと思いました。

ちなみに日本はまったくの逆で、きっちりと隅まで設計して、全てが完璧になってから売り出す、というスタイルの方が一般的ですね。

かつて日本の経営者はそうだった

ーー 深センのハードウェアから、日本は何を学んだらいいんでしょうか?

よく考えると日本でも、著名なハードウェアのアントレプレナーたちは、簡易なものでも最速で製品開発をしてとりあえず売り出すことから始めています。

たとえばホンダ創業者である本田宗一郎は、ただの自転車に湯たんぽ製のガソリンタンクと無線機発電用のエンジンで代用したものをくっ付けて、バイクの試作品を作るところから事業を始めています。

パナソニックの松下幸之助も、白熱電球を無理やりソケットで分岐させて2個繋げられるようにして、「2倍明るい」。そういうある意味で安直な発明からスタートしました。彼らの偉大なところは、アイデアの質や完成度ではなく、速攻で手を動かしてアイデアを製品化したことです。

現代の発明も同じで、たくさんの似たようなアイデアが生まれる中で、それを誰よりも早く製品化することに価値があります。アイデアを思いつくや否や、とりあえず誰よりも先に製品化して、それを売り出していく中でより良い製品を思考錯誤していく精神が、深センまわりで見られるのは面白いですね。

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