20年の副業経験から学んだメリットと、見落としがちなデメリット

こんにちは、中山順司と申します。2004年から20年間、会社員をしつつ副業ライターとしてブログやウェブメディアで執筆してきた、53歳のおじさんです。

「副業で月10万円稼げる!」「スキルアップの近道は副業から!」……などといった言葉に惹かれて副業を始める人は多いでしょう。

確かに、収入増加や自己実現など、副業には魅力的な面がたくさんあります。しかし、その一方で見逃されがちなデメリットや注意点も存在します。

本記事では副業を考えている方や、すでに始めている方に向けて、メリットとデメリットを包み隠さずお伝えしつつ、20年間での価値観の変化や学びについても赤裸々に綴ろうと思います。

中山順司
中山順司

2004年、趣味のサッカーをテーマにブログを書き始めたのがキッカケで、副業ライターとなる。以降、会社員をしながら副業ライターを20年続け、数百本を越える記事をメディアに寄稿。(X:@Cycle_Gadget

20年副業してわかったメリット

「お金」「つながり」「スキル」の3つに集約されると思います。

1. 自由になる副収入

改めて語るまでもないですが、給与と別に自由に使える副収入を得られるのは第一のメリットです。

「自由に使える=ぱっと浪費する」……というイメージがあるかもしれませんが、じつはその逆。給料の1万円と副業の1万円では重みが違うので、財布の紐はむしろ固くなります。

副業で苦労して稼いだからこそ、「賢く使わねば」という意識が働き、気軽に使えないものです。毎月支払われる給与に対し、副業収入はその都度の努力への報酬として受け取るため、より価値を感じやすいのでしょう。

私の場合は、生活費としてなんとなく使ってしまいたくなかったので、個人事業用の口座を設け、原稿料や諸々の副業収入はすべてそこで一元管理しました。

安易に生活レベルを上げないように注意し、不定期な家族イベント(祝い事や旅行)、実家への帰省、年払いの各種保険料、数年毎の車検など、支払いが見えているモノへの積立金として運用したのですが、これは妻にとても感謝されました。

副業収入は自分の贅沢ではなく、家族のために使えればヨシ。今振り返ってみると、賢い選択をしたと思います。

2. 心のサードプレイスが生まれる

社会人になると、会社と家の往復だけの生活になりがち。でも、私は副業によって人間関係が広がりました。本業では接点のない人やコミュニティに出会えるというのは、副業をやってみて気付いたメリットでした。

会社のような上下関係もなく、取引先でもない。学生時代のつながりでもなく、家族でも親戚でも友人でも同僚でもご近所さんでもない……という不思議な関係性です。

既存のカテゴリーに当てはまらない「ナナメの関係」とでも言いますか、私にとっての心のサードプレイスです。

人と人との「ゆるいつながり」を意味するWeak Ties(ウィークタイズ)という言葉がありますが、それに似ていて、適度な親密さのおかげでストレスが少なく、対等な立場で付き合えるのもいいですね。

さまざまな人生経験を持つ人々から、新しい視点や自分では考えもつかない価値観に気付かされ、多くを学ばせてもらいました。勤務先の人間関係は硬直化、マンネリ化、同質化しやすいものですが、「外に出ると世界は思った以上に広い」のです。

ちなみに、転職や独立等の人生の岐路に立ったとき、重めな人生相談に乗ってほしかったとき、相手に選んだのは、すべて「副業を通じて出会った人たち」でした。

職場や家庭と異なり、副業を通じて築いた関係は直接的な利害関係が少ないため、自己開示しやすく、相手も偏見や利害によるフィルターをかけずにアドバイスを提供しやすくなるからだと思います。

加えて、家族や親しい人は関係性の濃さゆえに、感情的に反応したり、バイアスがかかることがあります。ナナメの関係は適度な距離感があって、冷静で建設的なアドバイスをしやすい(&受けやすい)のでしょう。

今の自分のかけがえのない財産です。

3. キャリアに柔軟性と多様性が生まれる

抽象的な表現になりますが、副業と本業とでは使う筋肉が違います。持久力しかなかった働き方(会社員)に瞬発力(副業)が加わり、プレーできる種目が増えるというイメージです。

「種目=仕事の幅」と言い換えることができます。副業と本業を掛け合わせたり、副業の筋肉だけで別のことを始める、といったアイデアが生まれます。自分で思いつくこともあれば、思いがけずチャンスが舞い込むこともあります。

40代も半ばを過ぎると「会社員としての未来が見えてしまい、閉塞感を味わう」などと言われます。会社員という一つの種目の経験しかないため、他の選択肢を持つことができず、働き方が硬直化する現象です。副業はそこに風穴を開ける可能性があります。

たとえば私は、「書くこと」から始めた副業が徐々に変化し、YouTubeやコンテンツマーケティングのコンサルティングへと広がっています。

「よいコンテンツを作りたい」→「文字にこだわらなくてもいいのでは」→「時代は動画だ」→「YouTubeに挑戦しよう」→「チャンネルを成長させよう」→「マネタイズしよう」→「その経験を活かしてコンサルを始めよう」と、どんどん知識と経験が増えていき、5年前には想像できなかった仕事をしています。

副業が広がれば、それが本業にもプラスの影響をもたらし、相乗効果が生まれます。この「本業も副業も楽しくて、筋肉がムキムキになっていく」という最高の状態を目指しましょう。

ただし、本業から逃げの姿勢でやる副業だと、このような効果は生まれにくいです。

20年副業してわかった見落としがちなデメリット

次に、デメリットにも触れましょう。

よく聞くのが、自由時間がなくなる、本業がおろそかになる、長時間労働で生活習慣が乱れる、家族との時間が取れなくなる……あたりですが、そのへんは既知かと思うので、別の視点で3つ挙げてみます。

1. 小遣いの廃止

小遣いがゼロになりました。会社員の小遣い相場は35,000〜40,000円だそうですが、これがゼロです。

べつに妻に頼まれたわけではなく、自主的に宣言することで、安定的に仕事をこなす強制力を生み出したかったからです。つまり、「毎月の小遣い」とメリットで触れた「家族イベント用のプール金」を副業だけで賄うという、なかなかのストロングスタイルです。

自分で自分の首を絞めただけなので、デメリットと呼ぶのは違う気もしますが、もらうはずだった小遣いは貯蓄に回し、生活費に充てないルールを設けました。

ちなみにフリーランスになった今、妻に「もう副業はやってないから、今後はお小遣いをもらってもいい?」と言ったら「え~、ヤダ~!」と却下されました。悲しすぎる。

小遣いゼロが既成事実化した結果、あるはずだった権利を失ってしまった私はどうすればいいのでしょうか。

みなさんの副業が軌道に乗り、「小遣いがなくても余裕だぜ」と思う額を稼げたとしても、私のように後戻りできなくなる可能性もあります。宣言するときはくれぐれも慎重に……いや、そんな宣言はしないほうがいいと思います。

2. 周囲の妬みや嫉み

本業がおろそかになると、周囲に攻撃の理由を与えることになります。自分にそのつもりがなくても、ちょっとしたミスや言動で揚げ足をとる輩はどこにでもいます。

たとえば、会議に遅刻したとか、少し納期を過ぎてしまった……くらいのミスでも、「仕事を舐めてる → 副業のせいだ」と思われがちです。こうなると副業がしにくくなるので、そう感じさせないように注意していました。

そのおかげもあって、表立って嫌な態度をされたことはないし、悪口や叱責を受けたこともありません。直接的な被害はゼロでした。しかし、誰からもそういう感情を持たれなかった……とは断言できない気もします。

副業が軌道に乗ると、妬(ねた)み、嫉(そね)み、僻(ひが)み、という負の感情を向けられる可能性はあって、「調子に乗ってる」「泡銭を手にしてる」と噂をされているかもしれません。というか、社内ではそう言われている前提で振る舞うのがちょうどいいくらいだと思います。

余談ですが、分不相応なモノを身につける、飲食に費やす額が跳ね上がる、ガジェット類を頻繁に買い替える、ハイクラスなホテルで過ごす……なんてことをしていると、隠しているつもりでもバレます。

ましてや、その様子をSNSに投稿するといった行動は、個人的には百害あって一利なしだと思います。承認欲求はSNSで満たすのではなく、仕事そのもので満たしましょう。

まれに「副業していることを周りに吹聴した? 黙っていた?」と聞かれるのですが、このような理由で、積極的には言っていませんでした。ただ、記事は記名で書いていたし、実名でブログもやっているので、自ずと知れ渡ることにはなりました。

TVに出演したり、雑誌取材を受けたり、書籍を出版したときは、◯◯株式会社の中山として露出し、「勤務先のPRに貢献する」よう努めたものですが、それも妬み嫉みを未然に防ぐための自己防衛的な側面がありました。

3. 社内出世の関心が薄まる

本業がおろそかになるという意味ではなく、単純に「社内で出世しなくてもいい」というマインドになっていきました。

社外で通用するスキルが身につくと、自分の市場価値を社内評価にだけ依存させなくてもいいのでは?と考えるからですね。

つまり、成功の概念が「社内で評価され、昇進する」から、「社外で認められ、名指しでお声がかかる」に変わるのです。

もともと役職を上げることに関心が薄かった私は、この変化をすんなり受け入れました。しかし、社内出世や肩書を長年目指してきた人にとっては、価値観や目標の再構築をする必要があり、バランスを取ることに苦労するかもしれません。

それと、役職が上がらないことは「給与が上がりにくい」ことを意味しますので、それも間接的なデメリットになるでしょう。

ちなみに私は、管理職になって部下を抱えてチームを率いて……という一般的なキャリアは、30代前半で捨てました。

そのかわり、「余人をもって代えがたい技能、経験、知識を持ち、他人に置き換えることができない職人として生きる」と決め、転職するときは「そういう人材を評価する会社を選ぶ」と決めて行動してきました。

社内出世しなくてもいいと割り切ったことに迷いも後悔もありませんが、こういう考えはマイノリティなので、腹を割って話せる相手が社内にはいないという、一種の寂しさはありましたね。

副業のおかげで助かったエピソード

最後に「副業をやっててよかった!」と心底思ったエピソードを2つ紹介します。

1. 転職面接で即採用

これまで6回ほど転職しているので、面接を受けた回数も多いです。履歴書には当然副業のポートフォリオも記載しておくのですが、面接官から「いつも読んでます」「一度お会いしたかったんです」と言われ、面接もそこそこにその場で採用が決まったことが何度もありました。

転職を有利に進めるつもりで副業をしていたわけではありませんし、結果的に入社に至らなかったこともありましたが、「芸が身を助けることがあるんだな」と思ったものです。

本業とシナジーがある副業をしていれば、結果的に転職活動の後押しになるのは間違いないでしょう。

2. 住宅ローン審査の後押しになった

転職して半年しか経っていない時期に、マンション購入のために住宅ローンの審査に申し込みました。仲介してくれた不動産会社からは「都市銀行の場合、通常は最低でも2〜3年の勤続年数が求められる。信用金庫や地方銀行でも1〜2年は必要なので、入社半年だと苦戦するだろう」と言われました。

買いたい物件は決まっていたので、数年待ってから申し込むことはできません。でも自己資金では到底足りないから、ローンは必須です。頭を抱えていたら、不動産会社の担当者さんが私のWikipediaを金融機関に見せながら、「こういう実績がある人で、書籍も出版していて……」と説明してくれました。

すると、あっさり審査が通ったのです。しかも、ふたつの金融機関から。このとき、人生初の万歳三唱をしたのを覚えています。

再現性があるかは不明ですし、副業の種類にもよるとは思いますが、社外で名前を出して活動をしていることで、こうやって信用していただけることもあるんだな……と思いました。

まとめ

副業のメリットとデメリットを比較すれば、「メリットのほうが大きい!」ことが伝わったかと思います。

まだ始めていない方は、小さな一歩からでもトライしてはいかがでしょう。5年後の未来が、大きく変わっているかもしれません。

(執筆:中山順司 編集:少年B)

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