2024年11月から始まる「フリーランス新法」とは?要点だけわかりやすく解説
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こんにちは、中山順司と申します。2004年から20年間、会社員をしつつ副業ライターとしてブログやウェブメディアで執筆してきた、53歳のおじさんです。
副業がポピュラーな働き方になって久しいとはいえ、20年も続けている人は珍しいのではないでしょうか。我ながらよく続いていると思います。
言い換えると、ずっと仕事が途切れなかったということで、クライアント様にはただただ感謝です。
副業を検討中のWorkship MAGAZINE読者の方々の参考になればと思い、今回は「20年間、仕事を途切れさせないために心掛けているマイルール」についてお伝えします。
2004年、趣味のサッカーをテーマにブログを書き始めたのがキッカケで、副業ライターとなる。以降、会社員をしながら副業ライターを20年続け、数百本を越える記事をメディアに寄稿。(X:@Cycle_Gadget)
私はかつてサッカーをテーマにした趣味のブログを運営していましたが、ブログ運営に慣れてきた2006年、本業を通じて大手ニュースメディアの編集長と知り合う機会がありました。
一般人ブロガーだから断られるだろうな……と思いながらも、ダメ元で「原稿を書かせてください」と頼んだら、「いいですよ! 企画はありますか?」と即答。大急ぎで5回ほどの連載企画を作って送ったところ、あっけなく通過してしまいました。
「そんな簡単に通るものなんだ、業界大手のWEBメディアなのに!」と驚いたものです。
「初稿の〆切は、○日でどうですか?」
「大丈夫です」
「じゃあそれで!」
と、あっさりスタートしたわけですが、事前に実績を求められることもなかったし、文章力のチェックもされませんでした。本当にこれでいいのかと聞いてみると、「そのために編集がいるので大丈夫です。中山さんがこれだ! と思う原稿を書いてください」と任せてくれました。
有名メディアに自分の名前が載った喜びは鮮明に覚えていて、このときが「副業ライターの入口に立った」自覚が芽生えた瞬間でした。
これが私の商業メディアデビューなのですが、このとき学んだのが、「企画って、仕事を得るためのパスポートなんだな」ということです。
「企画以前に、大手と仕事をするほどのスキルがないから……」と尻込みする人もいるかもしれませんが、スキルは後天的に伸びるので、心配はいりません。
重要なのは、どれだけ魅力的で有益なアイデアを提供できるかです。ライターなら、どう書くかよりも「何を書くか、なぜ書くか」が明確かどうか。
商業メディアでは、読者ファーストが徹底されています。著者が書きたいことを書いても意味はなく、読者の期待以上の内容……たとえば発見、驚き、新規性、意外性、学び、気付きなどの付加価値を与えなければなりません。
そのための肝は、ずばり「企画」です。
これらをまとめたものが企画書です。
私は20年間にわたって、いくつものメディアや誌面で執筆する機会を得ましたが、アイデアを嫌がる編集者は1人もいませんでした。
新しい企画に対して、彼らはいつでも耳を傾けてくれますし、筋のいい案であれば、壁打ち相手にもなってくれました。では、なぜ編集者は発案者に対してこうも親身になってくれるのでしょう?
それは、0→1が一番しんどいとわかっているからです。
企画と一口に言っても、実はけっこう複雑なプロセスです。たとえば、企画者の脳内では、こんなダイアログが繰り広げられています。
アイデアの創出
リサーチと情報収集
アイデアの具体化
完成した企画書は1枚かもしれませんが、仕込みには膨大な時間がかかるものです。数週間、ときには何ヶ月もかけて、味噌が発酵するくらいのスピードでゆっくりと作っていきます。
10年以上前の話ですが、仲のいい編集者が、「企画のネタはいくらあっても困らない。エクセルに100行書いてくれる人がいたら、1万円で買ってもいい」と漏らしていたのを覚えています。
それくらい、ゼロからアイデアを生むのは負荷のかかる作業ということですね。
20年間、私の仕事が途切れなかった最大の理由は、「新しい企画を出し続けたから」だと思っています。
メディアはもちろん、その他の業界だって、企画は常に枯渇しています。
この事実を認識するようになってからは、「仕事が欲しければ、企画を用意すればいい」、「企画を生み続ける力があれば、仕事がなくなることはない」という考えになりました。
とはいえ、「企画を手土産に提案するのが効果的なのはわかるけど、通らないこともあるのでは?」と思った方もいるかもしれません。そのとおりです。
苦労して企画書を仕上げても、却下されることはザラ。たとえばライターの場合、メディアの規模が大きくなるにつれ、企画そのもの以前に、実績や知名度を問われることもあり、通過率は下がっていった印象です。
それでも私は、骨折り損のくたびれ儲けになるのを承知で、定期的に企画をひねり出して編集部に送っていました。
通過しなかったら、「企画に飢えた編集者が、それでも食わないほど不味い企画だった」だけの話です。あるいは、「腹は減っていたけど、食べたかったモノはそれじゃなかった」のかもしれません。
ちなみに、私の通過率は4割くらい。5個中2個通過したら、十分かなという気がします。企画を通すのは楽ではありませんが、いったん通過したらいいこと尽くめです。自分のやりたいことができるので、自由度と満足度が高く、やりがいのある仕事が生まれるからです。
企画を作るとき、ベクトルは自分ではなく、相手に向けます。利己の精神ではなく、利他の精神で臨むのがカギです。
たとえばライターの場合なら、「貴メディアでこれを書きたい」ではなく、「貴メディアには、こういう記事があるといいのでは」というスタンスでアプローチする、といった具合です。
そのとき、意識することは3つ。
顧客が増え、売り上げにつながるのがビジネスの最終目標なので、もれなく喜ばれます。
「~~を作れば、未開拓の潜在層にリーチできる。その仮説は……」
「XよりもInstagramのほうが裾野を広げられる。なぜなら……」
「無料ウェビナーをあえて有料にしたほうが集客できる。その理由は……」
といった提案です。
ライターがメディアに記事を提案するとしたら、「こういうコンテンツがあれば未開拓の潜在層にリーチでき、メルマガ登録に寄与できます」みたいな感じになるでしょうか。
既存顧客の満足度につながるアイデアもいいですね。1ほどのインパクトはないかもしれませんが、LTV(Life Time Value)の向上に貢献できます。
LTVとは「顧客が企業と取引を始めてから終了するまでにトータルで得られる利益」を指しますが、新規の獲得コストよりも、既存顧客の維持のほうが安く済むのが定説です。既存顧客の満足度を高めることで、長期的な収益の安定化と成長が期待できます。
たとえば、編集者との企画会議なら、「◯◯と△△系の記事は豊富だが、◇◇系が弱い。ここを拡充することで、完成度が増すのでは?」とか「ペルソナの価値観と指向性を鑑みるに、⬜︎⬜︎なコンテンツがあれば大きな反響があるはず」など、さまざまな提案ができそうです。
顧客の「これを待っていた」を気づかせることも、感謝されます。
「Aで困っている人は、Bの課題も抱えているはず」
「AとBを解消した後、新たなCという問題に直面するのでは?」
「では、先回りして、Cを解消する施策を仕込みましょう」
といったイメージです。
見えないものを見つける作業なので難易度は高く、立てた仮説が間違っていることもあります。しかし、新たな視点が出発点となって議論が始まり、想像しなかった企画が生まれることもあります。
私が20年間、副業を続けられてきたのは、このような意識で企画を立てることができたからだと思います。
「仕事の幅を広げたい」「新規で受注したい」とお考えであれば、クライアントが喜ぶ企画ってなんだろう?と考えるところから始めてみてください!
(執筆:中山順司 編集:少年B)