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心療内科医が教える!在宅ワーカーのパフォーマンスを上げる「休憩」の設計術

心療内科医が教える!在宅ワーカーのパフォーマンスを上げる「休憩」の設計術
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こんにちは。フリーライターの目次ほたるです。私は普段在宅で仕事をしているのですが、最近困っていることがあります。

それは、「休憩の取り方」がヘタなこと! 在宅だといい意味でも悪い意味でも「周囲の目」がないため、必要以上にダラダラと休んでしまったり、逆に休憩なしで働きすぎてしまったりと、自己コントロールが難しい場面が多いんです。

そこで今回は、「心療内科医が教える本当の休み方」の著者であり、休み方の専門家である鈴木裕介さんに、パフォーマンスを上げる在宅ワークの休憩のコツを伺いました。

鈴木 裕介(すずき ゆうすけ)
鈴木 裕介(すずき ゆうすけ)

内科医・心療内科医。2008年高知大学卒。内科医として高知県内の病院に勤務後、一般社団法人高知医療再生機構にて医療広報や若手医療職のメンタルヘルス支援などに従事。2018年に秋葉原saveクリニックを開業、院長に就任。ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、産業医活動や講演、SNSでの情報発信を積極的に行っている。著書に、『心療内科医が教える本当の休み方』『我慢して生きるほど人生は長くない』などがある。

聞き手:目次ほたる
聞き手:目次ほたる

取材記事やコラムなどを手がけるフリーライター。コロナ禍をきっかけにライターを始め、普段はほとんど在宅で働いているものの、自宅ではなかなか仕事に集中できないことに悩んでいる。(X:@kosyo0821

休憩の仕方に正解はない。日本人が「休み下手」な理由

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在宅で仕事をしていると、どうしても休憩時間にダラダラしてしまったり、逆に過集中で働きすぎてしまうことに悩んでいます……。誰でも簡単にできる究極の休憩はありませんか???

鈴木:
う〜ん、そもそも「休憩の仕方に正解がある」と考えるのをやめるところから、スタートしたほうがいいかもしれませんね。

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え……! 正解がないってことですか……?

鈴木:
そう。世の中には、さまざまなノウハウやハウツーが溢れていますが、休憩や休み方には「これが正解!」と言えるような答えはないんです。休憩や休息は、自分で「デザイン」するもの。それぞれの働き方や抱えている課題、ライフステージに応じて、組み替えていくことが重要だと、まずは念頭においてほしいですね。

とはいえ、こうした休み方について考える機会が少ないのは、当然のことでもあります。なぜなら、「休み方」について習ったことってありませんよね?

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言われてみれば、学校や会社でも教えてもらったことはないかも……。

鈴木:
我々の社会では、仕事で成果を上げることが求められますよね。休み方にフォーカスするよりも、活動性を上げてたくさん働くことを考えてもらうほうが都合がいいじゃないですか。

でも、本来「働くこと」と「休むこと」は対立しているものではありません。プロとして仕事をするうえで、一定の生産性やパフォーマンスを維持しつづけるには、必ず休息が必要。どんなに切れる剣でも、使いつづければ刃こぼれしたり、錆びてしまいます。適切に手入れをする時間は重要なんですよ。

休憩の目的を決めて「自律神経のモード」を切り替えよう

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まずは、「仕事 vs 休憩」といった対立構造で考えるのをやめて、自分の働き方にあった休憩の仕方を見つけることが重要なんですね。でも、自分にあった休憩はどのように見つけたらいいんですか?

鈴木:
まずは、自分が「休憩」に対して何を求めているのかを考えてみましょう。

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休憩に対して、何を求めているか……? 「休みたい」以外に休憩する理由があるってことですか?

鈴木:
「休みたい」という状況には、分解すると目的があるはずです。たとえば、頭を使う仕事をどんどんこなしている人は、休憩に対して「リラックスする」ことを求めますよね。

でも、なんとなく仕事にやる気が出ないから休憩するときは、「次のタスクにとりかかるエンジンをかける」ために休憩するのではないでしょうか。このように、休憩に対して何を求めているかは状況によって変わるわけです。

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なるほど……! 休憩の目的なんて、これまで考えたことがなかったです。

鈴木:
休憩に対して、何を目的にしているかが明確になったら、次は「仕事へのやる気を出す/リラックスする」というモードを切り替えられるよう、行動を変えてみましょう。

このモードの切り替えを司っているのが、「自律神経」です。自律神経といえば、「交感神経」と「副交感神経」の2つによって成り立っていることは広く知られていますよね。活動的なアクセルを担当する交感神経と、非活動的なブレーキを担当する副交感神経のバランスを自動的に調整するのが役割だと言われています。

しかし、ステファン・W・ポージェス博士が提唱する「ポリヴェーガル理論」において、「副交感神経」の大半を占める「迷走神経」が、さらに「腹側迷走神経」「背側迷走神経」の2つに分かれており、それぞれの役割に応じて、人は3つのモードに切り替わるといわれています。

①炎のモード→交感神経優位な状態(アッパー系、怒り、パニック)危機に対して、闘ったり、逃げたりするモード ②リラックスモード→腹側迷走神経優位な状態 癒しとつながりを確保するモード ③氷のモード→背側迷走神経優位な状態(ダウナー系、フリーズ) フリーズして、省エネ状態で自分を守るモード

▲人は3つのモードを切り替えながら過ごしている

鈴木:
仕事と休憩を上手に接続してパフォーマンスを上げるには、仕事をするのに適した「①炎のモード」と、身体を休ませるのに適した「②リラックスモード」を、休憩の仕方によって切り替えるという考え方が有効かもしれません。

目次:
同じ休憩でも、目的が違うとやるべきことが変わるんですね。

鈴木:
そうです。バリバリ働きたいときに「リラックスモード」になる休憩をしてしまったり、ゆっくり休みたいときに「炎モード」になる休憩をしてしまうと、求めている効果を発揮できないんですよ。

では、具体的な切り替えの方法もいくつかご紹介しますね。

「バリバリ仕事をするぞ!」という「炎モード」に切り替えたいとき・呼吸を少し早めにする ・ジョギングや散歩など軽い運動をする ・テンションの上がる音楽を聴く ・カーテンを開けて、日光を浴びる ・カフェインを含んだ飲み物を飲む(飲み過ぎには注意!) ・活動的なゲームを短時間プレイする 「ゆっくり身体を休ませたい」という「リラックスモード」に切り替えたいとき ・ゆっくり深呼吸をする ・ストレッチをして身体をほぐす ・穏やかな音楽を聴く ・カフェインの含まれない温かい飲み物を飲む ・横になって、短時間目をつぶる

▲「炎モード」「リラックスモード」を切り替えるコツ

鈴木:
このように、自律神経の働きについて理解したうえで、「どのように過ごしたいか」を考えて、休憩時間を自分なりにデザインすることが大切です。

目次:
休憩のときは「スマホを触らないほうがいい」という印象がありますが、SNSを見たり、スマホゲームをするのはOKなんですか?

鈴木:
これも一概には言えないですね。たとえば炎モードに切り替えたいタイミングで、テンションがあがるようなスマホゲームをするのは悪くないかもしれません。

ただ、SNSやゲーム自体が人間が中毒になりやすいように作られているのは事実です。スマホを触ることが絶対にダメだとはいいませんが、身近にある最も強力な依存物のひとつであり、やめ時が難しいものだという認識はしておいたほうがいいですね。

在宅ワークにおける上手な休憩には「環境づくり=ゾーニング」が不可欠!

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こうして聞いてみると、自分がいかに休憩について向き合ってきていなかったかがわかります……。在宅ワークをしているときの休憩がうまくいかないわけですね。

鈴木:
そもそも、多くの在宅ワーカーが感じているように、仕事とプライベートを完全に切り替えることのできない在宅ワークは、自律神経の切り替えの観点から見ても、上手に休憩するのがすごく難しい環境なんですよ。

前述した、炎モードとリラックスモードを自分の意志と行動で切り替えなければいけない。だからこそ、意識的な環境づくりをしてみてほしいです。人は思った以上に環境の影響を受けています。たとえば、在宅ワーク中にベッドで仕事をする人は不眠症になりやすいことをご存知ですか?

目次:
疲れているときは、ゴロゴロして仕事をするとはかどるように感じていましたが、不眠症の原因になるんですか!?

鈴木:
寝転んでいるから感覚的にはラクな感じがしますが、脳が「ベッドは仕事をする場所なんだ」と学習してしまい、ベッドに寝転ぶだけで自然と炎モードに切り替わってしまうようになるんですよ。

リラックスしたい休憩時にベッドに横になるのは効果的ですが、ベッドを仕事と休息、どちらにも利用するのは、双方に悪影響があると考えたほうがいいですね。

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私も仕事がめんどうなときは、ついついベッドにいながら作業をするときがあるので、耳が痛いです……。上手な休憩をするための環境づくりをするには、他にはどんなことが効果的ですか?

鈴木:
何が効果的な環境づくりになるかは人それぞれですが、少なくとも「仕事をしている状態」と「休憩している状態」に共通するものはなるべく減らしたほうがいいかもしれません。

・仕事をする部屋と、プライベートを過ごす部屋を分ける・仕事用の机で、休憩や食事をしない ・始業時は必ず着替えて、パジャマや部屋着のまま働かない ・仕事中とプライベートのBGMをわける

▲効果的な環境づくりのために、仕事/プライベートは意識して分けよう

鈴木:
仕事と休憩を環境から分けることが、仕事のパフォーマンスを上げることに繋がるんです。このような切り分けを「ゾーニング」といいます。在宅ワーカーの方はとくに意識してみてほしいですね。

目次:
細かな生活習慣が、自律神経の切り替えに影響を与えているんですね。ゾーニング、意識してみます!

鈴木:
私たちの心は思っているよりも、身体で感じている情報の影響を受けています。とくに「着替える」などは小さな行動のように思えますが、心には大きな影響を与えているんですよ。

だから、些細な習慣でも舐めてはいけません……! 自分の心を切り替えるための仕掛けをたくさん持っておくことがおすすめです。

定期的に働き方を見直し、自分のリズムを見つける。その「過程」も楽しもう

目次:
こうして教えていただくと、効果的に休憩するってけっこう難易度が高いことなんですね……。

鈴木:
自分なりの休憩のセオリーを見つけていくのは、たしかに時間がかかることかもしれませんね。でも、その「過程」も楽しんでみるのはどうでしょうか。

たとえばダイエットをするときも、最初は食生活や運動習慣を整えるのがめんどうに感じますよね。でも、少しずつ痩せたり、健康的な生活習慣を身につけると、身体がラクになって、楽しくなりませんか?

目次:
目に見えて自分が変化していく過程は楽しいですよね。

鈴木:
一方で、流行りのダイエット法に囚われたり、無理な食事管理をしたりすると、体調を崩して、ダイエット自体が嫌になってしまうこともあります。これは、自分の心や身体の声を聞いていないからです。

休憩や休息も同じように、簡単なハウツーに囚われず、自分自身の心と身体の声によく耳を傾けながら、ちょっとずつ変化していく自分を楽しんでいけばいいと思いますよ。

目次:
たしかに、自分なりの休憩のセオリーを見つければ、結果的にラクになるのは自分自身なのか…!

鈴木:
そして、セオリーも変化していくものです。急速な成長をしたいときは、夜休まず働くことが選択肢に入るかもしれないし、ちょっと身体を休ませたいときは、多めに休みを取る「人生の夏休み」のような期間が必要なときもある。効率的に働き、効果的に休憩することだけが、自分の人生にとっていいこととは限らないということを忘れないでほしいですね。

大切なのは、自分の在りたい姿を想像しながら、働き方を見つめ直し、自分のリズムを作っていくことです。当たり前のことかもしれませんが、ついつい忘れてしまうことでもあるので、改めて自分の心と身体の声を聞いてみてください。

目次:
誰でも簡単にできて効果的な休憩法を教えてもらうつもりで来ましたが、休み方って考えれば考えるほど、奥が深いものなんですね……! 心地よい働き方ができるよう、自分に合った休憩のセオリーを模索していきます!

(執筆:目次ほたる 編集:少年B)

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