エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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ライターのさくらいみかです。編み物をしたり工作をしたり、思い付いたものをよくWeb上で発表しています。
いまやインターネットが当たり前な時代。作ったものをSNSなどにアップして、誰もがかんたんに発信できるようになってきました。
一方で、個人の作品と似たものが他から出現したり、それがフリマアプリで売られていたり、企業に商品化されたり……。「これって大丈夫なの?」という場面をたびたび見かけます。
そんな場面に遭遇したとき、どう反応するのが正しいのでしょうか。
法律を知っていれば解決しやすくなるのか、なにか専門的な知識を付けておいたほうがいいのか……。まるで分からないので、クリエイター方面の著作権に詳しい弁護士・河野冬樹さんに教わりに行きました。
法律事務所アルシエン 弁護士。主に個人クリエイター向けに、著作権をはじめとする知的財産権に関するリーガルサービスを提供している。
Web上で動くアプリっぽいものを作るのが本職、副業Webライターで編み物作家。半分会社員で半分フリーランスです。
前回はこちら!
記事のアイデアがパクられたら訴えられるの?「著作権」について弁護士に聞いてきた
Workship MAGAZINE
目次
さくらい:
私は編み物などをよくするのですが、ハンドメイド作品って「本に載ってる手順を参考に作る」人が多くいます。そしてそれを販売している人をけっこう見かけるんです。本をマネて作るのはいいとして、売るのはダメって聞いたことがあるんですが……このあたりどうなんですかね?
河野:
うーん、それが何に引っかかるのか……。あーでも、型紙どおりに作った縫い物とかはNGの可能性があるかな。
さくらい:
えっ!? 型紙かそうでないかで違いが……?
河野:
たとえば型紙どおりに「ぬいぐるみ」を作ったとしたら、ダメな可能性が高いですね。
さくらい:
ものによって違うんですか? じゃあ、毛糸で同じ形のものを編んだ場合はどうなんですか? 本に掲載されている編み図の通りに編んだ場合とか……。
河野:
それならいいんじゃないですか?
さくらい:
ええっ、完成形が同じ形でも、やり方によって違う?? どういうことなんですか。
河野:
前回、「形がハッキリしてるものは著作権で保護されやすい」と説明しましたよね。なので型紙は、著作物として認められやすいんです。一方、本に書いてあるだけのものは、形にはなってないので保護されません。
さくらい:
となると作ったものを売るのは、型紙がある縫い物であればNGだけど、編み物であればOKってことですか?
河野:
縫い物・編み物で区別がある訳じゃなく、なにがなにをマネしてるかっていう話なんですよ。たとえばミッキーマウスを作れば著作権に引っかかるので、どんな方法であろうがアウトです。そこに縫い物・編み物などの差はありません。
一方で、服などの実用品だと、著作権として保護されるのかなという疑問はあります。洋服の青山で売ってるスーツと似てるものがネットショップで出品されても、どうしようもないですよね。
さくらい:
少し話は戻りますが、「ぬいぐるみの形なら(作って売るのが)ダメな可能性が高い」と仰ったのはどういうことですか?
河野:
ぬいぐるみって本質的には美術品的なところがあるので、著作物として保護されやすいんです。
さくらい:
なるほど。マネされる対象が「著作物」として保護されるかどうか、という話なんですね。けどそれを認識している人って少ないと思います……。
さくらい:
私は編み物作品を発表することが多いんですが、それ自体は著作権保護されにくそうですね。かなり考えて作ってるんですが……。
河野:
もののデザインには、なかなか著作権が認められにくいと言われてるんです。どうしても保護したいのであれば「意匠」の登録をしておくしかないですね。
さくらい:
「意匠」というと……?
河野:
商品のデザインです。たとえばペットボトルのくびれとか、iPhoneとかが典型かな。意匠登録をすることで、まったく一緒のものが作られないように保護できるんです。ちなみに、意匠登録は5年ごとに更新料もかかります。
さくらい:
うーん……個人で保護するのは簡単じゃなさそうですね。
さくらい:
「本に載ってるハンドメイド作品を作って売る」以外に、「SNSにアップした作品とよく似たものがいつの間にか売られている!」というケースも見かけます。バズったと思ったら、さっそく企業にパクられた……とか。
河野:
どんな場合でも意匠登録してない場合は、とにかく著作権侵害だと言っていくしかないんです。
「似てる」というのは評価の問題だし、見る人によっては「別物」となるかもしれないですよね。じゃあ何が特徴的なのか、そこの部分をパクりましたよねと指摘していく流れになります。
さくらい:
指摘したところで、企業相手だと簡単にどうにかできるもんじゃないと思うのですが……。訴えるとなると、お金も労力もかなりかかるだろうし。
河野:
著作権の主張にくわえて、それぞれ発表した日付を比較すると「出したのは私が先です」という事実は分かりますよね。それらの情報を、見た人がどう考えるか、というだけじゃないですか?
さくらい:
前回と同じく、やっぱり「見る人が判断」というモラルの問題に行き着くんですね。
河野:
そうですね。また周りの人に判断してもらうためにも、基本的にはオリジナルを主張していったほうがいいかなと思うんです。じゃないと、いつの間にか自分がパクってるみたいな話になっちゃうんで。
さくらい:
「見た人の受け取り方」と「自分がどれだけ主張するか」というところにかかってるんですね。
さくらい:
どうしても保護したければ意匠登録する、というお話がありましたが、意匠権を個人で維持するのは大変そうですね。くわえて、もし意匠権侵害を訴えたとしても、けっこう労力かかるんじゃないかなと思うのですが。
河野:
そうですね。個人の方だと実際に弁護士費用払って訴えたとしても、それに見合う効果があるかは怪しいです。賠償額より弁護士費用のほうが高くつくこともあります。それを見越して、「どうせ訴えられないし勝手に売っちゃおう」と考えると企業もいるかもしれません。
さくらい:
ひどい……! そんなの、泣き寝入りするしかないじゃないですか!
河野:
そういう場合の対策として、たとえば「顧問弁護士がいますよ」と個人サイトやSNSに書いておく方法があります。最近は無料の顧問弁護士表示サービスもありますし、書いておくだけでも抑止力になりますよ。ちなみに私も月額5500円〜でクリエイター向け顧問弁護士サービスをやってます。
さくらい:
「自分には弁護士がついてるぞ!」というのを、自分のサイトやSNSで匂わせるということですね。
河野:
はい、それだけでも効果はあると思います。
できることなら「事前に意匠権を取得→作品をネット上で発表→アイデアを守る」という流れが良いのかなとも思いますが、どの程度反響があるかは蓋をあけてみないと分かりませんし、手続きや費用を考えたら現実的ではありません。
顧問弁護士をバックに武装しつつ、バシバシ作品を発表して、もしなにかあれば徹底的に主張する!というのがベストなんじゃないかと思えました。
今回学んだことを役立てる場は来ないに越したことはないけど、他人にマネされるような良いアイデアを思いついてはみたい。そんな思いを胸に、今後もなにかを作り続けようと思います。
(執筆&イラスト:さくらいみか 撮影&編集:じきるう)
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