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写真を共有するSNSといえば、多くの人がInstagramを思い浮かべるはず。そんなInstagramの人気にじわじわと迫っている写真共有アプリが『Dispo』です。
Dispoはいわば「アプリ版の使い捨てカメラ」。アナログな現像が意識されており、写真を撮っても翌朝9時までは確認できない仕組みが特徴です。
ノスタルジックな魅力が人気を呼んだDispoは、β版の段階で1万人ものユーザーを獲得。日本でも流行の兆しを見せています。
今回はInstagram登場からそれに疲弊する流れ、そしてDispoの出現までについて解説します。
まずは写真共有アプリの最大手である、Instagramの歴史を振り返りましょう。
InstagramのCEOであるケビン・シストロム氏が最初に作ったのは、ユーザーがチェックインしたり、予定を投稿したり、写真を共有したりできる『Burbn』というアプリ。
しかし機能が複雑すぎることに気づき、共同創業者のマイク・クーリガー氏とペアを組んで、「写真以外の機能」をアプリからはずしました。
写真共有の機能だけにしぼった理由は、ユーザーのエンゲージメントが他の機能よりも高かったため。写真に限定しただけでなく、フィルターなどの機能を充実させて、洗練された写真を簡単に作れるなどの改良を加えました。
こうして2010年にリリースされたInstagramは爆発的に流行し、2年後の2012年にはFacebookが同社を買収。当時から現在まで、Instagramはさまざまな機能を発表してきました。新機能を評価する声があるいっぽう、改悪だという意見もたびたび聞かれます。
Instagramは約10年間で、個人の娯楽アプリから企業のマーケティングの場へと変化しました。
ユーザーが日常を写真に写し、好きなフィルターを選んで気ままに投稿していた時代はもう過去のものです。いまでは、有名人がスポンサー付き投稿で何十万、何百万という報酬を得たり、インフルエンサーが何時間もかけて写真を撮ったりするプラットフォームになりました。
そうしたなか、ユーザーの反応を示す「いいね」の価値は肥大化。とくに若い世代にとっては重要で、「いいね」がつかない投稿を削除するユーザーがいるほどです。
Instagramというプラットフォームが成熟するにつれて、日常の写真を共有する場から、完璧主義な場へと変化していきました。洗練された写真を共有しなければいけないというプレッシャーは、いまではユーザーを疲弊させています。
メンタルヘルスの専門家は、Instagramの「ポジティブさ」こそが原因だと指摘します。Instagramではポジティブで魅力的な写真が好まれますが、こうした写真は「自分以外の人間はみんな完璧だ」という不安に陥れる危険性も孕んでいるのです。
最近の研究では、長時間SNSを見ている若者に、不安感や鬱、自殺の増加などの傾向がみられることが明らかになりました。「Instagramは無力感を植えつける工場のようなものだ」という意見すらあります。
現在、Instagramの若いユーザーの多くは、友人間で写真をシェアするためだけのアカウントを作り、閉じたコミュニティで写真を楽しんでいるようです。これは「人目を気にせず写真を投稿したい」というニーズがあることを意味します。
そのようなInstagramで溜まったフラストレーションを昇華できるアプリとして、Dispoが注目されたのかもしれません。
Dispoは使い捨てカメラを再現しており、ユーザーは小さな四角いファインダーを使って写真を撮ります。写真は翌日の朝9時まで確認できず、フィルターや編集ツールはおろか、キャプションすら付けられません。
Dispoの創業者であり、ユーチューバーでもあるデイビット・ドブリック氏は、使い捨てカメラにまつわる体験を以下のように語っています。
「以前友人とパーティーに行ったとき、使い捨てカメラが家中に置いてあり、写真を撮るように言われました。朝になってからカメラを回収し、写真を見返すとそこには『いったい昨晩なにがあったんだ?』と思うような意外な光景が。パーティーのホストやその友人は、こうした瞬間を写真に残すことを愛していました」
完璧主義からかけ離れた、普通の日常。Dispoは、そのような光景を共有できるアプリなのです。
Dispoは、複数人が同じフォルダ(ロール)に写真を保存することで、コラボレーションとコミュニティの形成を可能にしています。使い捨てカメラを友だちと一緒に使うような感覚で、経験を共有して思い出を作れるのです。
社会的な存在である私たちは、人との繋がりや承認、コミュニティを求めています。Dispoが目指しているのは、考え抜かれたデザインによるユーザー同士のつながりの促進・形成と、健全で有益なインタラクションの創出です。
創業者のドブリック氏は、使い捨てカメラを使っていたときの特徴について以下のように語っています。
「写真をその場で確認することも、ライティングを気にすることもありませんでした。写真を撮ったあとそのまま一日過ごして、翌日の朝になってはじめて写真を確認できるのです」
Dispoの「翌日の朝9時にならないと写真を確認できない」というデザインは、「いま」を大切にすることを教えてくれます。写真を撮ったあとの確認や編集に時間を費やすのではなく、その瞬間を楽しむようにデザインされているのです。
こうしたデザインは、瞬間的な快楽のかわりに、継続的な期待感を与えてくれます。
私たちの生活はストレスで溢れています。自由時間に楽しむSNSには、ストレスを感じたくないですよね。
Dispoは、編集、フィルター、キャプションの機能を意図的に排除しました。撮った写真をそのまま投稿するというデザインは、「完璧な写真を作る」というプレッシャーやストレスを取り除いてくれます。
Dispoは、Instagramの特徴である完璧さや過度な演出とは、逆を目指しています。
友人と気軽に写真を撮って「いま」を楽しめた、よりシンプルな時代にユーザーを連れていってくれるのです。
Dispoはまだ発表されたばかりで、今後の動向に注目が集まっています。収益化については、先人の失敗に学びながら慎重なアプローチを取るはずです。
あえてノスタルジックな魅力を売りにしているDispoは、はたしてテクノロジーの未来を担う存在になるのでしょうか。
(執筆:Meghan Wenzel 編集:Asuka Nakajima 編集:泉 提供元:UX Collective)