IoT時代の必須技術!? エッジコンピューティングの活用事例11選

BUSINESS

2020年にモバイル通信「5G」が実用化され、スマートフォンだけでなく、あらゆるデバイスがインターネットに繋がると予想されています。

あらゆるデバイスがインターネットとつながることで、サーバーは今まで以上に膨大な量のデータを処理しなければなりません。そのため、これまでにようにクラウドにデータを集約していては、その処理は追いつかなくなってしまいます

そこで登場するのがエッジコンピューティングです。今回は次世代のインターネットに欠かせない、エッジコンピューティングの活用事例を11個ご紹介します。

エッジコンピューティングとは?

エッジコンピューティングとは、「端末の近くにサーバーを分散配置する」というネットワークコンピューティングの手法のひとつです。

エッジコンピューティングは、現代のクラウドコンピューティングが抱えている処理速度の課題を解決する技法として注目を集めています。

クラウドコンピューティングの問題点

現在利用されている「クラウドコンピューティング」は、ユーザーから離れた外部のコンピュータを利用しています。外部のコンピュータがデータ処理をおこなうことで、以下のようなメリットがあります。

  • データの保存容量や処理速度が各デバイスに依存しない
  • あらゆるデータを複数のデバイスで利用できる

一方でクラウドには、インターネットに接続するデバイスの数が増えるとデータ量が増加するため、通信に遅れが生じるというデメリットもあります。


例えば、クラウドコンピューティングでは自動運転車を実現するのは難しいでしょう。自動運転車は大量のセンサーを使って非常に多くのデータを収集します。クラウドコンピューティングの通信遅延で情報処理に遅れが出た場合、致命的な事故につながりかねません。

Cisco社の調査によると、2015年から2020年の5年間でクラウドコンピューティングには以下のような変化が起こると予想されています。

  • 世界のIPトラフィックは22%の年間平均増加率(CAGR)で増加し、2015〜2020年の間に3倍まで膨らむ
  • 世界のインターネット利用人口が10億人増加し、2020年には41億人に達する
  • 世界のIPネットワークがサポートするデバイスは163億から263億に増加
  • ひとりあたりのデバイスとの接続数が2.2個から3.4個に増加

IoT社会に対応するためには、クラウドコンピューティングよりも速く情報を処理できるシステムを採用する必要があります。そこで登場するのが、エッジコンピューティングなのです。

クラウドコンピューティングの問題点を解決するエッジコンピューティング

エッジコンピューティングでは、データを生み出すデバイスの近くにデータ処理の基盤を設置します。これによって、クラウドに送るデータ量が減り、データの処理スピードが速くなるため、限りなく遅延の少ないリアルタイムな処理が可能となります。

エッジコンピューティングの活用が期待されているのは、情報処理速度の速さが重要なIoT分野です。具体的にどのような分野でエッジコンピューティングの実用化が期待できるのか、順にみていきましょう。

エッジコンピューティングの活用が予想される事例・分野 11選

1. 自動運転車

自動運転車はエッジコンピューティングの活用が最も期待されている分野のひとつです。自動車は瞬時に状況判断しなければならない場面が多く、データ処理のリアルタイム性が求められます。

インテル(Intel)、エリクソン(Ericsson)、デンソー、トヨタ自動車、トヨタIT開発センター、日本電信電話(NTT)、NTTドコモの7社はエッジコンピューティングの活用を推進する団体「Automotive Edge Computing Consortium(オートモーティブ・エッジ・コンピューティング・コンソーシアム)」の創設に向けて活動を始めると発表しています。

このことからも、自動運転車においてエッジコンピューティングの活用が期待されていることがわかるでしょう。

2. 顔認証を活用した入退管理

NECでは、ウォークスルー顔認証を活用した入退管理ソリューションを製品化しています。ウォークスルー顔認証とは、カメラの前で立ち止まることなく歩きながらの顔認証を可能とするシステムです。

顔認証技術の精度は世界No.1を誇り、「NeoFace」などの商品を展開しているNECならではのサービスです。

従来のセキュリティゲートでは、ICカードによる個人認証をおこなっていますが、貸し借りできるという側面や紛失のリスクがあることから、セキュリティ対策としては不十分です。

一方で顔認証は、認証時に設置しているカメラで顔を捕捉するだけなので、セキュリティ上の紛失のリスクはありません。

顔認証が必要なクラウドサービスのエッジコンピューティングとして活用できます。

3. ひかりTV

NTTぷららが提供している映像配信サービス「ひかりTV」のインターネットブラウザのクラウド対応に、エッジコンピューティングの技術が用いられています。

エッジコンピューティングを採用することでひかりTVのクラウド化に成功し、下記2つのサービス向上が達成されました。

  1. クラウド化以前に比べて画面表示速度が2倍
  2. テレビ画面とモバイル機器のリアルタイム連動

詳しくはNTTぷららのニュースページをご覧ください。

4. 気象予報システム

NTT技術ジャーナルより

気象予測分野でもエッジコンピューティングの活用が期待されています。NTT技術ジャーナルによると、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)とNTTは気象予測システムの共同研究を2016年に開始しました。

気象予測の分野では、高精度な予測データはすべての地点で必ずしも必要ではありません。例えば農業では農地周辺の気象データが入手できれば十分ですし、自動車では高速道路や国道上の気象データがわかれば問題ありません。

エッジコンピューティングの技術によって、これまでの広域の気象予測シミュレーションに加えて、局所的で高精度な気象予測シミュレーションが実現します。これにより、広範囲で気象予測の精度を上げるよりも、低コストで十分な気象予測データを各産業に提供が可能になるのです。

気象予測情報は高精度でリアルタイムなので、農業や自動車の分野だけでなく、スポーツスタジアムビジネスへの応用など、多くの分野での活用が見込まれています。

詳しくはNTT技術ジャーナルをご覧ください。

5. ドローン

KDDI株式会社と株式会社アラヤは空の自動運転を実現させるため、AIとエッジコンピューティングを組み合わせた自律制御システムをドローンに搭載する計画を進めています。

KDDIの企業情報ページによると、以下の4つの項目に取り組むことでエッジコンピューティングを利用したドローンの自律制御運転を目指しています。

  1. AIエッジコンピューティング技術の研究開発
  2. 人工知能による高度自律的学習機能の研究開発
  3. AIエッジコンピューティングに基づくドローン制御技術の開発
  4. 5G通信環境によるエッジ-クラウド連携技術

自動運転車と同様に、主観的な判断が要求されるドローンもエッジコンピューティングと相性が良いのでしょう。

6. 農業機器

株式会社オプティムはAI・IoT・ビッグデータを活用したスマート農業ソリューション「OPTiM スマート農業ソリューション」を発表しています。

AI・IoT・ロボットを有効活用できるプラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」と連携しており、農業のデジタル化をサポートしています。この中の陸上走行型ロボット「OPTiM Crawler」にエッジコンピューティング が活用されています。エッジコンピューティングによってクラウドを経由する必要がないので、高度な自律運転ができ、本体内で画像認識をおこなうことが可能です。

画像データはAIによって分析され、作物の収量や作物の収穫適期を予測します。

7. 透過型ディスプレイ搭載デバイス

NTT持株会社ニュースリリースによると、NTTとパナソニックが共同で透過ディスプレイ搭載のポータブル端末を使った新しいおもてなしサービスの実現を目指しています。

使い方はポータブル端末のディスプレイに対象物を透過して見るだけ。かざしてみると、対象物に関連する情報や映像などのコンテンツがディスプレイに表示されます。

ポータブル端末での処理機能に、エッジコンピューティングの技術が生かされています。

従来はポータブル端末にアプリケーション処理機能を搭載しなければなりませんでした。しかし、エッジサーバーで分散処理することで、CPUやメモリ容量 、通信機能などの処理機能が低い端末でもサービスが利用できるのです。

8. 異音検知ソリューション

INFORUMより

NTTデータの設備機器である異音検知ソリューションMonone™(モノン)にエッジコンピューティングが利用されています。

Monone™(モノン)は設備機器の稼働音をセンサーによってデータ化するシステムです。異常音を解析することで、今までは技術者の耳に依存していた設備機器の保全ノウハウを継承したり、業務を効率化させたりすることにつなげます

Monone™(モノン)では以下の処理をエッジコンピューティングでおこなっています。

  • センサー(マイク)から取得した稼動音に対して、異常な稼動音がしていないかの検知処理
  • 現在の稼動音の異常度を算出する処理
  • クラウドプラットフォームにデータや一次解析結果を送信する処理

9. フィールドシステム

ファナックは2017年にシスコシステムズと共同で、フィールドシステム(FIELD:FANUC Intelligent Edge Link & Drive system)を開発しました。

フィールドシステムとは、製造業向けのオープンプラットフォームです。あらゆる機器のデータを一元管理でき、データを活用するアプリケーションを誰もが開発して運用できます。また、収集したデータを工場内や企業内に保存可能です。

アプリを組み合わせることで、各メーカーは自社の製品製造に合わせたデータの活用が可能です。

システムの特長に「Edge Heavy(エッジ・ヘビー)」と書かれており、エッジコンピューティングを強く意識していることがわかります。

10. スマートマニュファクチャリング

日立では、現場のデジタルデータを活用した生産活動と経営活動が可能なスマートファクトリーの構築を提案しています。このスマートファクトリーの基盤となっているIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」にエッジコンピューティングが導入されています。

はいたっくによると、生産現場における以下の場面でエッジコンピューティングが利用されていることがわかります。

  • プロダクト(生産設備や製品)の稼働状況のデータ入手
  • プロダクトのリアルタイム制御
  • 経営情報から製造現場の状況までのKPIを可視化する 「経営・製造ダッシュボード」へのデータ送信

日立のみならず製造現場でITを駆使したスマートファクトリーを導入する際にはエッジコンピューティングが重要な技術となるでしょう。

11. 官民連携による都市活動全体のデジタル化・最適化

内閣府が提唱している「官民連携による都市活動全体のデジタル化・最適化」にエッジコンピューティングの導入が提案されています。

「科学技術イノベーション官民投資拡大推進費ターゲット領域検討委員会(第3回)」は、以下の3つの取り組みを軸として、快適性・経済性・安全性を兼ね備えた新しい年を創造することを目指しています。

  1. 都市活動全体を瞬時かつ常時「見える化」するセンサーネットワーク構築
  2. 市民一人ひとりのニーズに適した都市経営を実現するデータ分析基盤整備
  3. データに基づく都市経営の実行性確保に向けた体制・制度等の整備

そして、官民で推進すべき研究開発の中に「収集データの内容に応じて適時処理を行うエッジコンピューティング技術」が含まれています。

経団連の資料をみると、センサーデバイスから収集したデータをリアルタイムで予兆検知、制御するAIの開発や大量データの超高速処理する技術の開発にエッジコンピューティング が利用されるのではないかと予想されます。

最後に

いかがでしたか?

今回は、エッジコンピューティングの活用事例を紹介しました。

2020年の5Gが導入されると多くのデバイスがインターネットに繋がると予想され、IoTの分野が今以上に注目を集めるでしょう。その時に、リアルタイムで情報処理ができるようになるエッジコンピューティングの重要性が高まります。

今のうちにエッジコンピューティングについて理解を深め、新しい時代の新サービスに活用していきましょう。

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