【漫画】フリーランスは“103万円の壁”にどう向き合うか?
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2020年末、日本で「コロナ第3波」とも呼べる感染拡大が発生し、政府は二度目の緊急事態宣言を出しました。これにより感染者数は減りつつありますが、宣言にともなう自粛要請で飲食や旅行、エンタメ業界は大きなダメージを受けています。
飲食店には「自粛要請への協力金」が支払われていますが、それ以外の業界には保証がないと批判をうけ、政府が新たに準備したのが、今回の記事でご紹介する「緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金(以下、一時支援金)」です。
フリーランスも支給対象のこの制度ですが、持続化給付金の不正受給が問題視されたことをうけ、必要書類や審査がかなり複雑化しています。
この記事では、フリーランス/個人事業主の方向けに情報を整理してご紹介します。
※一時支援金の申請期限は2021年5月31日までであり、すでに申請受付は終了しています。事前に、延長の申込をされた場合は6月15日が書類提出の期限となります。
2022年2月現在、申請できる『月次支援金』やほかの給付金/支援制度については以下の記事でご紹介しています。
▼現在も申請可能な給付金/支援制度一覧
2024年12月 個人事業主&フリーランス向け給付金/補助金/助成金まとめ
Workship MAGAZINE
正式名に「緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金」とあるように、制度の目的は「緊急事態宣言発出による自粛の影響をうけた人たちを支援し、事業の継続をサポートする」というもの。
経済産業省の説明は以下のとおりです。
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき2021年年1月7日に発令された新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言(以下「緊急事態宣言」という。)に伴う飲食店の時短営業又は不要不急の外出・移動の自粛により、特に大きな影響を受け、売上が大きく減少している中堅企業、中小企業その他の法人等及びフリーランスを含む個人事業者に対して、緊急事態宣言の影響が特に大きい2021年1月から同年3月までの期間における影響を緩和して、事業の継続を支援するため、事業全般に広く使える一時支援金を迅速かつ公正に給付することを目的とします。
▲引用:一時支援金事務局HP
使いみちは「事業全般に広く使える」と書かれており、とくに縛りはなさそうですね。申請期間は2021年3月8日(月)~2021年5月31日(月)までであり、すでに受付は終了しています。延長の申込をされた場合、6月15日が書類提出の期限となります。
一時支援金の支給対象者を分かりやすく説明すると、「中小企業」「個人事業主(フリーランス)」のいずれかの内、以下の2パターンどちらかにあてはまる方です。
そのうえで、以下の事業/収入要件もクリアする必要があります。
つまり、「コロナによる影響を受けており、そのせいで月の収入が50%以上減少しているか」が大きな判断の基準になりそうです。
性風俗店や宗教団体は給付を受けられないなど一部の例外はありますが、上記の条件を満たしていれば基本的には対象です。たとえば「フリーランス旅行ライター」「フリーランスイベンター」などは対象といえるでしょう。
「新規開業者への特例」や「収入が季節ごとに大きく変わってしまう人への特例」なども用意されています。このあたりは、持続化給付金とほぼ同じですね。
給付額の上限は、フリーランスだと最大30万円(中小企業だと最大60万円)です。
金額の求め方は、青色申告をしている場合と白色申告をしている場合で異なります。
青色申告の場合は、以下の式で求められます。
2019年または2020年1~3月に得た事業収入の合計金額-2019年または2020年とくらべ、2021年に収入が50%以上減少した月の収入×3=給付額(30万円を超えている場合、30万円)
複雑なため、具体例で説明します。
2019年1~3月に110万円、2020年1~3月に140万円の事業収入があったとします。しかし2021年はコロナの影響をうけ、2021年2月には収入が20万円(2019年同月には10万円、2020年同月には40万円)になってしまいました。
この場合は、コロナの影響を受けた2020年の数字を使うべきなので、2020年を基準にすると
140万円-20万円×3=80万円
となり、給付額は上限の30万円になります。
白色申告の場合の給付額は、以下の計算式で求められます。
2019年または2020年に得た年間収入から1ヵ月当たりの平均値を算出した額(年間事業収入÷12)×3-2019年または2020年の平均値とくらべ、2021年に収入が50%以上減少した月の収入×3=給付額(30万円を超えている場合、30万円)
こちらも具体的に計算してみます。
2019年の年間収入が360万円、2020年の年間収入が180万円で、2021年1月が30万円、2月が10万円だった場合を想定します。
収入の多い2019年を基準にすると以下の式ができます。
360万円÷12=30万円(1円未満切り捨て)
30万円×3-10万円×3=60万円
この場合も給付額は上限の30万円です。
ここまでもだいぶ複雑でしたが、持続化給付金を申請したことのある方なら、それなりに制度を理解できるのではないかと思います。
しかし、一時支援金と持続化給付金の決定的な違いは「必要書類の数」と「申請方法」です。
一時支援金は、フリーランスとして事業所得を得ている場合、以下6つの書類が必要になります。
このうち、「宣誓・同意書」と「取引先情報一覧」が新たに加わった書類です(確定申告書類も、2年分必要になった点は異なります)。
「宣誓・同意書」には、「申告内容に虚偽がないこと」「虚偽があった場合には返還に従うこと」などの規定があり、こちらに同意する必要があります。持続化給付金で不正受給が多発したことへの対策でしょうが、申請する側はすこしプレッシャーを感じますね。
「取引先情報一覧」は、対象とする月に取引があった業者/事業主名をまとめたリストで、こちらも不正対策のための書類だと思われます。
申請の流れは、大きく分けて
という4ステップになっています。
ただし不正対策が厳しくなっているためか、申請の流れはかなり複雑です。持続化給付金を受給した筆者でも、比べものにならないくらい申請が難しくなっているなと感じました。
なお、電子申請が基本ではありますが、申請が難しい人のために「申請サポート会場」が開設されます。制度がよくわからないという方は、こちらの利用も検討してみてください(要事前予約)。
一時支援金事務局HPから、一時支援金申請用アカウントを作成します。
まず、この段階でできるのは申請用アカウントの仮登録で、
を入力します。すると申請用のIDが発行されるので、それを控えておきましょう。
これがおそらく最大の山場で、申請者が「登録確認機関」を自分で探して予約する必要があります。
そもそも「登録確認機関」という単語にまったく聞き覚えがない方も多いのではないでしょうか。事務局は以下のように説明しています。
検索サイトに掲載されている、商工会/商工会議所の会員の方は当該商工会/商工会議所に、農協/漁協の組合員の方は当該農協/漁協に、中小企業団体中央会の会員の方は中小企業団体中央会に、金融機関と事業性の与信取引がある方は当該金融機関に、顧問の士業がいる方は当該士業に確認を依頼してください。
フリーランスの場合、商工会などに属している方は少ないと思いますので、「出資先の金融機関などに頼む」か「顧問の税理士や行政書士に頼む」となるでしょう。しかし、そうしたツテのある方は多くないと思いますし、あてはまる機関であっても国の登録を受けている必要があります。
あてはまるものがない場合は検索サイトから身近な登録確認機関を見つけ、自分でアポをとる必要があります。
筆者の家の近くにある「登録確認機関」を調べてみたところ、信用金庫や商工会、行政書士、税理士事務所などがヒットしました。
ただし要項をよく見てみると、信金や商工会は「与信関係があること」「商工会の会員であること」を確認の条件にしている場合が多い印象でした。
行政書士や税理士のなかには顧客以外を受け入れてくれる人もいますが、「登録確認報酬」が発生することもあるようです。金額は5,500円で済む機関もあれば、55,000円かかってしまう機関もありました。
某税理士事務所 | 1件5,500円 |
会計事務所A | 1件22,000円 |
会計事務所B | 1件55,000円 |
某行政書士事務所 | 応相談 |
さらに、東京税理士会からは「税理士会会員におかれましては、確定申告時期であること等も鑑み、顧問先を中心とした支援を行っていただきますようお願いいたします」という文書も発表されています。
こうした機関の顧客になっていないフリーランスにとっては厳しい条件のため、現状では登録確認機関まわりのシステムが緩和されることを期待するしかありません。どうしても現状で費用をかけずに事前確認をしたいのであれば、数は少ないですが「非会員でも受け付けてくれる商工会」を探すのがベストだと思います。
なお、4月に入ると制度が周知されるにつれて「ウチは無料で登録確認を受け付けます!」という税理士や行政書士の方も見られるようになりました。商工会に加えて、こうした方々の力を借りるのも有効です。
【無料で登録確認を実施していることが確認できた機関、個人】
上記はあくまで一例で、「事前確認 無料」などのキーワードでGoogle、SNSなどで検索するとほかにも手をあげている方はいます。ただし、制度的に税理士や行政書士の負担がかなり重くなっているため、無料で確認してもらえるケースはまれ。「無料で実施したら応募が殺到して申し込みをストップした」という声もあるため、粘り強く確認機関を探す必要があります。
登録確認機関が予約できたら、資料を用意して確認をお願いします。ただし、普段から金融機関や税理士のお世話になっている場合、資料はすでに共有されているため、とくに資料が必要ないケースも多いようです。
審査はオンラインと対面のどちらかから選択できます。しかし、確認機関の方針次第なので、すべての施設でオンライン面談ができるわけではありません。
審査の流れは、おおむね以下のようです。
「審査」「チェック」というと不安を感じる方も多いと思いますが、公式HPでは「形式的な確認」と明記されているため、「内容が正しいか」「本当に受給対象者か」を確認する場というより、「必要な書類があるか」「制度をしっかり理解できているか」の確認がメインなのではないかと思います。
ただし、ウラを返せば「登録確認機関は正解とも不正解とも言ってくれない」ため、事前確認を通過したからといって受給できるわけではなく、報酬の支払い損になる可能性も。
また、一部登録確認機関では「確認と合わせて一時支援金総合コンサル料が〇〇円」と書かれているケースもありました。悪質な担当者の場合は申請者の不安を煽り、さらなる相談料を得ようとするケースも想定されます。十分に注意してください。
事前確認まで終わったら、いよいよ申請に入ります。事前確認後に申請フォームにログインし、必要事項を入力していきます。
なお、この申請に不備があった場合はメールにて修正の連絡が入るとのこと。申請状況、審査状況などはマイページで確認できます。
審査を通過し、支給額が確定すれば「一時支援金の振込のお知らせ」が郵送され、登録した口座に支援金が振り込まれることになります。
今回の一時支援金は、「もらって終わり」ではありません。一時金を受け取ったのちにやるべきことをご説明します。
フリーランスの場合、外出自粛の影響を受けて支援を受けるケースが多いと思います。その際は、「外出自粛の影響を証明できる書類」を7年間保存する必要があります(飲食店の時短影響に該当する場合は、取引の証拠書類となる帳簿などを保存)。
こちらは申請時には使用しませんが、後日、申請が正当なものだったか調査される場合に必要になるようです。
保存すべき書類は、以下のように発表されています。
ただ、いわゆる「フリーランス」にどういう書類の保存が求められているか明記されておらず、たとえば「旅行ライター」「イベンター」などがどうすればいいのかはハッキリしません。
一応、目的としては「外出自粛の影響」を証明できればいいので、
があれば条件はクリアしているように感じます。
調査が入ったときも、資料がなければ「保存書類が存在しない、又は不十分な理由」や「飲食店の時短営業又は外出自粛等の影響をどのように受けたのか」を聞かれるとのことなので、しっかり説明できれば問題ないでしょう。
しかし、状況によっては「申請者の販売・提供先等への調査について、申請者にも協力を求める場合があります」と明記されており、クライアントに迷惑をかける可能性も……。
「自分はどんな書類を保存すればいいんだろう……」と不安な方は、専用の質問フォームまたは下記の一時支援金窓口に問い合わせてみることをオススメします。
一時支援金は課税対象になるか現段階では明かされていません。しかし、持続化給付金は課税対象となっていることから、一時支援金も課税対象になる可能性が高いと思われます。
事実、国税庁は「課税対象となるもの」の一例として、「事業に関連して⽀給される助成⾦(たとえば、事業者の収入が減少したことに対する補償や⽀払賃⾦などの必要経費に算入すべき⽀出の補てんを目的として⽀給するものなど)」を挙げており、この原則を踏まえれば一時支援金も課税対象と考えるべきです。
一時支援金を受給できた際には、課税対象となる所得が増えることを忘れないようにしましょう。
ここまで、一時支援金の概要から申請方法まで解説してきました。正直、制度はあまりに複雑で、フリーランスが受給対象とはいえ、要件を満たしたうえで実際に申請するのはかなり難しいと思いました。
しかし、最大30万円の給付はかなり魅力的なので、対象になっている方はなるべく申請してみることをおすすめします。
最後に、申請に役立つ支援金関係のリンクをまとめておきます。申請する際に、ご利用ください。
【一時支援金全体】
【フリーランス向け】
【申請に関連するフォーマット、フォームなど】
(執筆:齊藤颯人 編集:泉)
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