フリーランスがチームを組むとどうなる?お仕事の請け方やお金はどうなっているの?

EDITONE

フリーランスには「周囲の評価」や「収入」など、成長を証明する要素がいくつか存在します。ただ個人では仕事を請ける量にも限界がありますよね。となると、次のステップとして会社設立ということになりますが、人を雇用するとなると、急にハードルが上がってしまいます。

そこで今注目されているのが、フリーランス同士が集まって“ギルド”的な集まりを作る「フリーランスチーム」という働き方です。今回は九州のフリーライターが集まって結成した「EDITONE(エディトーン)」のメンバーに集まっていただき、いったいどんな仕事の進め方をしているのか、また収入にどういう変化があったのかを語り合ってもらいました。

フリーランスが集まるチームって何?

EDITONEのメンバー

▲EDITONEメンバー(左から赤坂、北村、ユウミ、くましろ)

Workship MAGAZINEをご覧の皆様、こんにちは。福岡在住のライター・編集者の赤坂太一と申します。2020年の春に、仲の良い同業者に声をかけて「チームを組んでみませんか?」と誘った言い出しっぺです。

今回はこのチームでの仕事の仕方や、1年間の振り返りなどをメンバー全員で話す機会をいただきました。改めて編集部の皆様に感謝申し上げます。それではチームについて余すことなく語ってみたいと思います。

赤坂太一
赤坂太一

札幌生まれなのに福岡市在住の編集者・ライター。おカタい系の仕事ばかりだがSNSが好きというギャップがある。最近「適切に売れる」ことが重要と今更ながら気付いた44歳。

フリーランスチームの仕組み

まず私たちのチームである「EDITONE」ですが、ただの仲良しグループといって差し支えないと思います。 「ただの仲良しで成り立つの? お金とかどうなっているの?」と思うでしょうが、こちらも順番に丁寧に説明していきますね。

まず会社組織であれば契約に基づいて規定に沿って業務を遂行しお給料をいただくことになりますが、私たちはフリーランスなので決まったお金がどこかで発生して収入になる、なんてことは当然ありません。

あくまでお仕事の依頼のご相談の連絡がきて、請けるかどうかをその都度判断しています。それをチーム内の他のメンバーにシェアしたり、協力して請け負っている、という感じです。

なぜフリーランスチームを作ろうと思ったのか?

チーム的なことをしてみたいな、とは何年も前からボンヤリとは考えていました。

そんな中、2020年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、出版業界をはじめとするメディアの仕事がどんどん少なくなっていきました。業界的に「取材」がどんどんなくなっていき、取材なしのコンテンツが量産されていく中で、改めて「チームを組むことで状況を変えられるかもしれない」と思ました。

自分ひとりではチームは作れません。でも、同業者と一緒に同じ案件に取り組んだり、頻繁に会うことって、とても少ないんですよね。そこで、福岡で知り合ってから数年が経過し、気心の知れた人たちに声をかけました。チームを作る上では、仕事に対する姿勢やコミュニケーションのとりやすさなど、「人柄」というか相性が良いことが最も重要だと感じていました。

それが今のEDITONEのメンバーである北村朱里(あかり)さん、ユウミハイフィールドさん、くましろひろこさんでした。

もちろん、チームを結成してすぐに仕事が来るわけはないので、準備と発信だけはしていこうとnoteやTwitterのアカウントは作りました。そんな状態から始まって1年が経ちましたが、現在は正直出来過ぎかなと思うくらいのお仕事をいただいていると思います。メンバー全員でこの1年を振り返ってみました。

フリーランスでチームを組むメリット

北村朱里
北村朱里

佐賀県在住。行政・企業・大学・NPOなど堅めな案件の取材執筆、女性向け商品やサービスのネーミング・コピーライティングなどを手がける。話し方講師(専門学校非常勤)も。

くましろひろこ
くましろひろこ

福岡市在住。制作会社で16年ディレクターとして勤務後2019年に独立。主にビジネス系サイトやオウンドメディアでのディレクション・執筆、ブックライター、ライティング講師などを務める。

ユウミハイフィールド
ユウミハイフィールド

日々ジャンルレスに取材をしながら、福岡市内でかわいい愛猫と一緒に小さな絵本屋「Books cyan」を営む店主兼ライター。「よく読み!よく書き!よくモフる!」をモットーに今日も元気に執筆中!

メリット1. 一人ひとり違う環境。隙間にフィットしたチーム仕事ができる

赤坂:
結成からちょうど1年ですが、みなさん振り返るとどうですか?

ユウミ:
私は毎月のレギュラーの仕事にプラスして、変動するイレギュラー仕事の枠でチームの案件を受けるようにしていました。チームに声を掛けていただいた案件は、できるだけ取りこぼしのないように心がけていましたね。結果的に、チームに来た案件はすべて請けられていますよね。

北村:
最初の頃はチームの案件はいちど赤坂さんに相談がきて、依頼の内容によって「ではチームで対応しますね!」的な動きが多かった印象でしたね。

赤坂:
でも、認知度が進むにつれ、最初からチームでできそうなお仕事も増えましたよね。去年度の個人的なレギュラー仕事はどうだったんですか?

ユウミハイフィールド

ユウミ:
カメラマンさんと一緒に動く案件が多かったので、延期になることが多かったです。そこにチームの仕事がたくさん入ってきたので、特に上半期は助かりました。

ひろこ:
私はフリーになって、わりとすぐのタイミングでチームに入りました。加入してすぐに取材案件が来るようになったので、世の中の流れとは違って忙しかったと思います。

チームにいることで、自分とはつながっていない会社からお仕事をいただけるのがいいなと思いました。他のメンバーがいるからこそですね。お互いの人脈の交換というか。

赤坂:
ライター系のイベントでしか会わない程度だと、リアルな仕事を共有したりお願いしたりは難しいと感じたので、こういうチームにしたというのもあります。仕事はあるところにはあるっていうのがわかった期間でもありましたね。

ひろこ:
メンバー間でお仕事をお願いすることもありましたね。

北村:
お互いの得意不得意を理解すると、「これは〇〇さんにお願いしよう」と頼れることがわかりました。

メリット2. 自分の仕事への客観的な視点が身についた

赤坂:
夏以降、ちゃんと「会う」ことを意識して月イチでミーティングをするようにしましたよね。日ごろのチャットでも自然と雑談から何から話し合える雰囲気ができていると思います。

北村朱里

北村:
これまでいろいろなライターと交流することはありましたが、なかなか深い話ができなくて。でも価値観の近い人たちが集まったチームなら、お金の話も抵抗なくできるし、自分では気付かないことをお互いアドバイスし合えます。

たとえば見積もりとかはいまだに悩むことが多いんですが、メンバーに相談すると「私ならこの金額にするかな」などと意見をもらえる。そういうことを通じて仕事に対する客観性が養われ、さまざまな場面での判断力が向上したのは、私にとって成長だと思います。

ひろこ:
全員、自立しているから誰かに依存することがないのは気持ちが良いですよね。その上で、自分の知識を他のメンバーに共有できたり悩み事を相談できたりもする。だから自立しつつも「居てくれる」心地よさがあります。

ユウミ:
ちょっとした雑談やプライベートな相談まで、日常的にコミュニケーションが取れる関係を作れると、心理的安全性が保たれますよね。

北村:
私たちの仕事は基本的に、依頼主さまのビジネスを文章でお手伝いする「黒子」の立ち位置です。一方でスキルアップや営業のためにはライターのイベントに参加しにいくような「表に出る」行動ができる人たちも揃っているのがありがたいですね。

メリット3. ブランディングによる相乗効果も

ユウミ:
チームの結成以降、発起人の赤坂さんのネット露出が増えました。それがまたブランディングにも繋がっていて、良い相乗効果になっているんじゃないかと思います。

赤坂:
チームの仕事をSNS等で発信する役割みたいなのは自然とありますよね。みんなそれぞれ適性がありますし。「全員で必ずこういう投稿をする」みたいなのは苦しくなっちゃうので、できる人がやれば良いと思っています。

赤坂太一

ひろこ:
一応、最初の方のミーティングで軽い決め事みたいなことも話し合ったけれど、とくに強制しないですしね。無理しない。

ユウミ:
それぞれが得意項目で一歩前に出る、みたいなのが自然とできていますよね。案件のジャンルとかもそうですし。でも、メンバー個人の性格によるものも大きいので、もしEDITONEが誰でも参加できるチームだったらそうはいかなかったかもしれません。

赤坂:
そうですね、私も「このメンバーなら」と思ってお声をかけたので。

メリット4. 「チームだからこそできるコミュニケーション」が孤独を解消してくれた

北村:
たとえば案件の打診がきて誰か1人が執筆するという場合も、スムーズに決まりますよね。それぞれがスケジュールを見て「私がいきます」という。「私が私が」っていうのがない。

くましろひろこ

ひろこ:
「この前は私がやらせていただいたので、誰かスケジュールが空いていたらどうぞ!」って自然と譲り合っていますよね。苦手な仕事なら請けなくてもいい。それが会社とフリーランスチームの違いかなって。

「チームで請けた仕事なんだからやりなさいよ」みたいな変な拘束感はないですね。まとまった量の打診が来た時もチーム内で相談してお返事が返せるのもメリットかなと。

ユウミ:
私はいつどんなパスが飛んできてもいいように、余力を持たせるようにスケジューリングしているんですが、チームにいると、毎月いろいろなジャンルの仕事が集まってくるので、とても楽しいですね。

赤坂:
ひとりだと難しいけど、そういうチャンスがチームにはありますよね。今でこそそれぞれ個人のお仕事が忙しくなってきて、この先チームで請けられるかな? という懸念もありますが、そもそも一人ひとりの生活が最優先ではじめたチームですしね。

個人が持っているチャンネルの一つとしてチームがあると意識しているので上手くいっているのかな、とも感じました。

ユウミ:
私はひとりのときの精神的なストイックさが軽減されたのを感じています。月イチのミーティングも楽しみだし、深夜に原稿を書いている時も誰かがメッセンジャーにいると1人じゃないなって思える。

ひろこ:
何気ないチャットでの朝のあいさつが心地よいですよね。「おはようございます! 今日は取材です」「行ってらっしゃい〜」って。別に返事がなくても気にしないし、自分が答えられなくても誰かが答えていますし。これが個人同士だと負担が大きい(笑)

北村:
家族とか恋人か、みたいな(笑)。4人いるから気軽ですよね。

ユウミ:
1対1だと気を使ってしまうけれど、チームだからこそできるコミュニケーションですよね。

フリーランスでチームを組むデメリット

スタンスが一致していないとギクシャクする

赤坂:
逆に、不都合に感じたことはありましたか?

北村:
コロナ禍でしたが、個人的には地元佐賀のお仕事で忙しかったんですよね。なので、チーム案件へのコミット具合は少なかったと思います。でもそれを責めたり、不満に感じるメンバーがいなくて、ありがたかったです。

ユウミ:
たとえば、体調不良でしばらくチャットに反応できないときも、久しぶりの気まずさが全然ないですし「寝込んでました」っていうと「休んで!」とか「甘いもの摂って!」と甘やかしてくれますしね(笑)。

赤坂:
これ、チームを組むことの落とし穴だと思うんですけど、「平等じゃなきゃダメ!」みたいなマインドがあると、コミット具合に差ができたときにギクシャクしがちかもですよね。うちは最初から「あくまで個人の生活が最優先」でできたチームだから、誰かが自分の仕事で忙しくても、他のメンバーは「頑張って!」って言えるのかも。

北村:
そうそう。もしチームの仕事が最優先って空気だったら、こうはいかないだろうなと思います。メンバー間のスタンスに差があると、うまくいかないかもしれませんね。

赤坂:
逆に「新しい仕事ないんですか?」とか言ってしまうような人とかね。誰でもいいからとどんどん声をかけてしまうと輪が乱れるし、どこかのチームに入るにしても「自分とスタンスが合いそうか」を考えておかないと、うまくいかないような気がします。

ひろこ:
メンバーの関係性は本当に重要ですよね……。

EDITONE

良い関係性が個人の信用を増幅する

以上、メンバー全員での振り返りでした。

お金に関してはクライアントさんにチームとしての特性を理解していただいて、たとえば取材・執筆だけじゃなく、私(赤坂)が撮影に回って誰かが執筆を担当する案件もあります。他にも執筆料にプラスして校正費もいただき、チーム内で校正をした原稿を納品することもありました。

チームとして活動をしてみると、自分たちが思っているよりも認知されていると感じていますし、適正な原稿料をいただけていると思います。ライターは個の存在ですが、チームでいることで知らないことに気付けたり、適正な報酬を得られることができたり、心強かったりと、メリットの方が多いことが改めて認識できました。

ただ、誰がやっても同じにはならないと思います。あくまで個人の人柄や置かれている状況によって形成されることですので、私たちのチームはあくまで一例に過ぎません。ひとつ言えることは、自分が「良くあろう」と心がけることが、他者と良い関係を築ける基本的なステップであることを、フリーランスのみなさんにご理解いただきたいと感じています。

個人とも会社とも違う、フリーランスチームという働き方。みなさまもぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

(執筆:赤坂太一 編集:少年B)

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