【FP監修】フリーランス&個人事業主向けファクタリング10社比較
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Alphabet社(Googleの持ち会社)の元CEOであるラリー・ペイジ氏は、投資する会社を決めるとき、変わった手法を採用しています。それは「The Toothbrush Test」と呼ばれる決め方。
ニューヨークタイムズの記事によると、ペイジ氏は、買収予定の会社を見て、その会社の製品が、歯ブラシのように「1日に1~2回使用するもの」かどうかを基準に考えているといいます。ペイジ氏は、ユーザーに浸透する製品は顧客の習慣に関係しているというのです。
私ニール・イヤールは『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール』の著者で、「フックモデル」という習慣化のプロセスを提唱してきました。
今回は、ユーザーがプロダクトに「ハマる」とはどういうことなのか、「習慣」の考え方を交えながらご紹介します。
新しいアプリサービスは、それまでなくても生活が成り立っていたはずなのに、いつしか利用することが毎日の習慣になっていきます。そのように成功するプロダクトは、ユーザーに対して「習慣を提供すること」ができています。ユーザーが気づかぬうちにハマってしまうようなサイクルを生み出すためのロジックがあるのです。
同著内では、そのサイクル『フック・モデルの4ステップ 』を次のように定義づけています。
- トリガー(きっかけ)
人々に行動を取らすための引き金。外的トリガーと内的トリガーの2つがあり、すべてのフックの始まりとなるフェーズ。- アクション(行動)
アクションのしやすさと、それを行うための心理的動機の2つを用いて、特定のアクションが発生する可能性を高めるフェーズ。- リワード(報酬)
ユーザーを惹きつけるために欲望を生み出させるフェーズ。報酬にはトライブ(集団)、ハント(狩猟)、セルフ(自己)の3つがある。- インベストメント(投資)
ユーザーにわずかな仕事をさせて改善を行わせることで、新たなフック・サイクルを作り出す確率を高めるフェーズ。
筆者は以前、700人の不動産業者の前で講演をしたことがあります。主催者の「消費者の習慣に関する専門家、ニール・イヤールに登壇していただきましょう。ニール氏は、家の購入を習慣に替える方法を教えてくれるはずです!」という前振りに、思わず焦ってしまいました。即効マイクを掴み「申し訳ないのですが、家の売買を習慣にする方法をお教えすることはできません。なぜなら、家の売買は習慣になり得ないからです。」と断りを入れました。
家の売買は習慣になるほど頻繁に起こりません。習慣とは、無意識下で行われる行動を指すのであり、過度に消費者を鼓舞しようとする不動産取引のメンタリティとはまさに対照的です。
講演後、ある代理店の方から、興味深い質問を受けました。「もし私が家の売買そのものではなく、売買にまつわることについて習慣を生み出すことができたら、その場合はどうなるでしょうか?」というものです。
のちに、「家を買う」という行動そのものを習慣化できなくても、「売買」「コミュニケーション」など視点を変えていけば、潜在的な顧客をエンゲージさせる方法を考え出せるということがわかりました。
まれに使用される製品にまつわる習慣の構築には、少なくとも2つの方法があります。それは、コンテンツとコミュニティです。
しかし、すべてのビジネスが習慣化する必要はありません。顧客を呼び戻す方法はたくさんあり、多くの企業が顧客の習慣に頼らずに成功を収めています。彼らは広告を購入したり、検索エンジンの最適化にお金を費やしたり、店頭を開いて歩き回り、顧客の注目を集めたりします。
しかし、顧客を維持する伝統的な方法のほとんどが、企業にWebサイト、検索エンジン、または店舗スペースのレンタルを強制するやり方です。対照的に、顧客の習慣を利用すれば、企業側が何か対価を払う必要はなく、プラスにしかなりません。
ではどのようにして、まれにしか使用しない製品を、習慣形成のサイクルにフィットさせるのでしょうか?その第一歩は、まず素晴らしいコンテンツを消費する習慣を作ることです。
「例えば、近隣の住民が、個人的に財務面で疑問があった時、私に質問しにくるというサイクルを生み出すのです」と、ある不動産業者の方は言いました。彼女の計画は、潜在的な住宅購入者と売り手とのコンテンツ習慣を形成するための記事、ビデオ、金融電卓を用いたサイトとアプリを作成するというもの。「そのサイト/アプリで新しい記事を投下し続けたり、私がオンラインで見つけた、人々が興味・関心のあるトピックについて書かれた記事をシェアしたらどうでしょうか?」と彼女は尋ねました。
つまり、サイトを構築し、人々に「財務上の決定を下すのに役立つ情報を得るには、彼女のサイトを訪れるのが一番、彼女に相談するのが一番」というイメージを植え付けるということです。潜在的な顧客の習慣を形成し、サイトでの動向を調べることができれば、人々が家を売買する時に彼女と取引する確率を上げることができます。
また、Y Combinator社のような、有望な若手企業を見つけ出し次世代のAirBnBまたはDropboxを育成する敏腕企業も同じような戦略を取っています。
スタートアップアクセラレータは、一体どのようにテクノロジーコミュニティとのつながりを保っているのでしょう? 答えはコンテンツです。Hacker Newsは、Y Combinatorが所有するコンテンツ集約サイトで、 2016年7月に 1860アクセスを記録しました。Hacker NewsはY Combinatorの設立から2年も経たないうちに大成長し、シリコンバレーのテクノロジーとカルチャーに根付きました。Hacker Newsは、Y Combinatorの中核事業ではありませんが、コンテンツ消費の習慣を形成することによって、アクセラレータの注目を集めました。
絶え間なく変化する記事リストには習慣形成に必要なすべての要素が揃っています。ユーザーは、最新の業界ニュースや出来事を見つけるために、コーディングセッションや休憩中にサイトを毎日チェックします。彼らがブラウズすると、サイトへの寄稿者の評判がスコアとして計算されます。
Y Combinatorによると、Hacker Newsは独立した「自主的な集団」とのことですが、サイトが同社の手によって運営されているのは明白です。コンテンツ消費の習慣は、潜在的な出願者とのつながりをキープしており、それ自体がY Combinator社にとっての貴重な資産となっています。
まれに使用される製品が習慣を形成するもうひとつの方法は、コミュニティを構築することです。たとえば、クリスマスオーナメントのような、年に一度だけ購入する傾向がある製品があるとしましょう。そのような製品への関心は、12月以外の年間11ヶ月間はゼロであると考えられるかもしれません。
しかし、オーナメントショップのHallmarkが運営する『Keepsake Ornament Club』の会員にとっては、季節商品との結びつきは年中通して強まっています。このグループは外部からはほとんど知られていませんが、なんとKOCは400以上の地方支部を全国にもっています。業界の研究報告によると、同クラブには2001年に35万人の会員がいたといいます。
クラブの公式Facebookページの最新投稿では、会員たちが、各自の好きなオーナメントの作者と実際に会う為に、長い列を作っている写真を見ることができます。写真の人々が半ズボンを穿いていることからも分かる通り、このクリスマスをテーマにしたイベントは、なんと8月中旬に開催されています。
8月のホールマーククリスマスオーナメントイベントの行列。(写真:Hallmark Keepsake Ornament Club Facebookページ)
Hallmarkは、季節商品にまつわるコミュニティを育成し、繁栄させましたが、クラブの成功はオーナメントだけにとどまりません。KOCの地方支部は、Hallmarkの店舗や、コレクターのための有志組織によって組織されています。市民団体と同様、地元の関連会社の多くは、頻繁に集会や社会的行事を企画しています。
カリフォルニア州プレザントンにあるHallmarkの従業員Lindaさんは、彼女が所属する店舗のクラブには、25人しかメンバーがおらず小規模だといいます。しかし、彼女のグループは定期的に会い、オーナメントを交換したり、Eメールで冗談を言い合ったりして繋がっているのです。
ちなみに、クラブ会員だけが利用できる特権は、店に新しいオーナメントが到着するときに、それを梱包する権利だとか。はたから見れば手作業労働にしか見えないかもしれませんが、クラブ会員にとってはまたとない大きなチャンスです。顧客が求めているのは他者との交流なのです。
KOCメンバーにとって、オーナメントの収集は大いに価値がある習慣です。これは心理学でも研究されているメカニズム的行為で、真似しやすい習慣形成のジャンルではないといわれています。しかしこの事例から、クラブ会員が本当に求めているのは物ではなく社会的交流であることがうかがい知れます。
近年、多くの企業がチェックインでなく、チェックアウトの方に集中しています。例えば、FacebookやSlack、Snapchatのような頻繁に使用されるサービスなら、消費者の習慣形成が容易なのは明らかです。しかし習慣づくりのテクニックさえ知っていれば、数ヶ月または数年単位で消費者にセールスする可能性のある企業のビジネスの手助けをすることも可能です。
収益化はエンゲージメントの結果です。金融サービス会社、不動産仲介業者、季節営業者の場合、商品やサービスを買う行為自体を習慣化することはできないかもしれませんが、コンテンツやコミュニティに関連する習慣をつくることで、のちに評判・満足度・売り上げ面などで恩恵を受けることができます。
ぜひ、マーケティング戦略に活用してみてください。
(翻訳:Ayaka Takei)