FREENANCE Ad

【社労士解説】解雇規制緩和はフリーランスにとって絶好のチャンス?

【社労士解説】解雇規制緩和はフリーランスにとって絶好のチャンス?
FREENANCE Ad

「解雇規制緩和」という言葉が取り沙汰されるようになりました。

政治家や経済学者がこの話題を持ち出すたびに、SNSでは賛否両論が飛び交います。会社員にとっては「もしかしてクビになるのでは?」という不安の対象ですが、フリーランスで働く人にとっては他人事にも思えるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?

解雇規制の緩和が進めば、日本の労働市場は大きく変わります。その変化は、会社員だけでなくフリーランスにも影響を及ぼすでしょう。たとえば、会社員として活躍していたエンジニアやマーケターがフリーランスに転身し、新たなライバルになるかもしれません。一方で、フリーランスに舞い込む案件が広がることも考えられます。

いずれにせよ解雇規制緩和は、フリーランスに「変化のきっかけ」をもたらす可能性があります。本記事では、この大きな潮流を正しく理解し、リスクを認識しつつ、チャンスを掴むためのヒントをお伝えします。

もひもひ
もひもひ

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo

解雇規制緩和ってなに?

そもそも日本に解雇規制はあるの?

まず、日本の解雇規制について理解しておきましょう。

労働契約法では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効」とされています。これにより、企業が労働者を簡単に解雇することは難しくなっています。特に、人員整理のための「整理解雇」には以下4要素が求められます。

  • 人員整理の必要性
    「クビにしないと会社が倒産するくらいの、必要性があったか」
  • 解雇回避の努力
    「配置転換や希望退職者の募集など、会社側ができる努力をしたのか」
  • 対象者選定の合理性
    「恣意的ではなく、合理的な基準をもとに解雇対象者を選んでいるか」
  • 手続きの妥当性
    「きちんと社員に説明し、納得を得るプロセスを会社が踏んでいるか」

かつては上記4つが「要件」として機能し、全てを満たさないと解雇は無効とされていました。近年は「4要素」として総合判断となり、必ずしも全てを満たす必要はなくなりましたが、解雇には高いハードルがあるのは事実です。

これを乗り越えて解雇したとしても、元従業員が裁判を起こすなどのリスクもあります。そうなれば裁判の結果にかかわらず、「〇〇社の元従業員が、不当解雇を主張して提訴しました」というニュースになってしまうレピュテーションリスクを背負うことになるため、依然として解雇のハードルは高いままです。

解雇規制緩和とは?

解雇規制緩和とは、現在の厳しい解雇条件を緩和し、労働市場の流動性を高めようとする政策的な動きです。

この背景には、「一度雇ってしまうとなかなかクビにはできないから」という理由で企業が正社員採用を控え、非正規雇用への代替が増えたり、事業スピードが落ちたり、また従業員を不健全な形で無理やり「自主退職」に追い込んだりといった現状があります。

規制緩和の具体案としては、「解雇予告を◯か月前までに行い、相応の退職金(例えば給与◯か月分)を支払えば解雇が有効」といったルール整備が挙げられます。このように条件を明文化することで、企業は自社の人員整理を迅速に行えるようになり、事業スピードの向上が期待できます。

一方で、労働者の側からは「安定雇用が脅かされる」という不安の声が根強く、議論が進みにくい要因となっています。終身雇用は日本型雇用システムの根幹として長く機能した歴史もあり、政策主導での規制緩和には時期を要しそうです。ただこの規制緩和が本格化すれば、これまでの労働市場の構造が大きく変わることは間違いありません。

解雇規制緩和でフリーランスの仕事はどう変わる?

世の中はどうなる?

解雇規制の緩和によって、労働市場が流動化することは避けられません。とりわけフリーランスに影響が大きいのは、会社員からフリーランスへの人材流動です。

例えば「直近の業務には満足していないが、今の会社に所属しておいた方が安定しているし、勤続年数に応じて給与も上がるから」という理由で大企業に勤務していた会社員などは、解雇規制緩和をきっかけに「しがみついていても、おいしい思いはできないかも」と考え、これまで「リスクが大きい」と避けていたフリーランス転身の決心がつくかもしれません。

また、真っ先に整理解雇のターゲットになる可能性が高い、ミドルシニア層の管理職クラスも移動が活発化するでしょう。その結果、これまでのフリーランス人材ではめったに居なかったベテラン社員が、深い業界知見やマネジメント経験を武器にフリーランス業界へ参入してくることが考えられます。たとえば、システム開発やマーケティングなどの受託企業に勤務していた従業員であれば、クライアント企業の決裁者とのリレーションをアピールするようなこともあるかもしれません。フリーランスにとっては、競争が激しくなることが想定されます。

一方で、解雇規制緩和は労働者にチャンスを与える可能性もあります。たとえば、大手メーカーに所属する優秀なベテランマーケターがいたとして、その企業の経営環境や社内政治といった要因で十分に実力を発揮できていなかった……というケースは多々あるでしょう。こうした人材がフリーランスに転身することで、「会社」という枠組みやしがらみにとらわれず、様々な専門人材とコラボレーションを実現。新たなビジネスを生み出すこともあるかもしれません。

来たるべき解雇規制緩和時代に備え、フリーランスが備えておくべきことは?

手強いライバルの参入に備えたキャリア形成

解雇規制緩和によって競争が激化すると想定されるフリーランス市場ですが、ピンチは同時にチャンスでもあります。この新たな環境で勝ち抜くために、今のうちから意識しておきたいポイントとして、「複雑なプロジェクト体制での仕事に慣れる」ことを提案します。

解雇規制の緩和により、企業の事業スピードが上がり、またベテラン人材も会社の枠にとらわれずに活躍するようになります。そうすると、「社内/社外」や「発注者/受注者」という単純な関係では説明できない、複雑性の高いコラボレーションが増えることが考えられます。

例えば、Webデザイナーの場合。これまでは「発注者であるWeb制作会社のPM社員がデザイン原案を決め、その部下のメンバー社員が仕様書に落とし込み、フリーランスのデザイナーはそれをもとにデザインを制作する」という体制だったとします。

これが今後は、「フリーランスのデザイナーは、プロジェクトオーナーである責任者はWeb制作会社と契約をするが、フリーランスであるベテランPMやマーケターと共創していく」ようなケースが増えてくるでしょう。

ベテラン人材たちと足並みを揃えながらプロジェクトを遂行するには、これまでに求められたコミュニケーション能力よりも、ひと回り難易度の高いものが求められます。ベテラン人材はスキル・経験が豊富な分、タスクや責任範囲を話し合う上ではタフな交渉相手になるかもしれません。

やや後ろ向きな話にはなりますが、「相手も立てながらも、言いたいことはしっかり主張する」「言いくるめられないように気を付ける」「なんでもかんでも安請け合いしない」「濡れ衣を着せられそうになったらしっかり回避する」といったネゴシエーションの重要性が高まってくると言えます。

かゆいところに手が届くスキルが生きるかも

会社員の雇用が流動化すると、緊急性の高い案件が増えることも考えられます。

極端な例では、「解雇を通知した途端、何も引き継ぎをしないで社員が消えてしまったので、当面すべてを巻き取ってほしい」などという依頼が一般的になるかもしれません。程度の差はあれど、「丸投げ型」の案件がこれまでよりは増えるのは間違いないでしょう。

フリーランスである以上、案件を選ぶのもスキルのうちです。あまりにヤバそうな案件は全力で回避する、というのもひとつの生存戦略ですが、本当に困っているときに手を差し伸べることで、クライアントに深く入り込めるメリットは大きいのも事実です。

たとえば、「引き継ぎがない状態でも、取捨選択したうえでできる範囲のことをやり、事業へのダメージを最小化しつつ、安定運用につなげた実績があります」などとアピールできるようになれば、極めて市場価値の高いフリーランスになれるでしょう。

今のうちに、自分がもし「緊急度超・高」のお困り企業から駆け込み相談をもらったら、「どのようにコミットできそうか」「対応可能な期間・費用・前提条件」「逆に、いくら頼まれてもできない線引き」をあらかじめ整理しておくことで、「かゆいところに手が届く」フリーランスになれるかもしれません。

公的訓練を活用したり、戦略的に一度会社員になるという選択肢も

解雇規制の緩和により、企業が社員に求めるものはおのずと変わってくるでしょう。具体的には、「中長期的に定着してくれそうか」よりも「短期で成果を挙げてくれそうか」が重視されます。また、「採用するハードルも、解雇するハードルも下がる」となると、企業は社員に「自らの業務を可視化し、成果を定量化させる」ことをこれまで以上に求めてくるでしょう。

「自分の業務範囲を定義して、しっかり成果を表出する」のは、会社員よりもフリーランスの方が得意なはず。当たり前にやっている分、特別なスキルだと認識していないフリーランスも多いかもしれませんが、今後より重要になる、立派なビジネススキルなのです。

また、フリーランスの働き方は、ある意味で「解雇規制緩和後の働き方」を先取りしている部分もあります。その結果、「新しい働き方」の先駆者として、会社員としてのオファーも増えてくるかもしれません。あくまでも可能性として、視野に入れておくのも良いでしょう。

ちなみに、解雇規制緩和の目的は人材の流動化なので、政策として「職業訓練」が拡充されることも考えられます。分かりやすく言うと、国のお金で学べる制度が充実する、ということ。最近も「リスキリング(学び直し)」の名のもとで支援が強化されていますが、この流れはさらに拡大するでしょう。実務ではなかなか積むことが難しい領域のスキルは、公的サービスを活用し、自己負担を抑えながら身に付けてしまうのも賢い選択かもしれません。

まとめ

解雇規制緩和は、多くの会社や労働者にとって大きな転換点をもたらす可能性があります。この変化はフリーランスにとって競争の激化を意味する一方で、新たなチャンスを掴む絶好の機会でもあります。

この環境の変化をリスクとしてだけでなく、新たなビジネスチャンスとしてのゲームチェンジと捉えることが大切なのかもしれません。視野を広げ、描いた未来予想図から逆算して戦略的にスキルを身に付けることで、このチャンスを最大限活かせると確信しています。

▲出典:Workship

Workship』は、フリーランス・副業向けマッチングサービスです。

公開案件の80%以上がリモートOKと働く場所を選ばず、エンジニア、デザイナー、マーケター、ディレクター、編集者、ライター、セールス、人事広報など、さまざまな職種の案件が紹介されています。

さらに、トラブル相談窓口や会員制優待サービスの無料付帯など、安心して働ける仕組みがあるのも嬉しいポイント。時給1,500円〜10,000円の高単価な案件のみ掲載しているため、手厚いサポートを受けながら、良質な案件を受けたい方におすすめです。

(執筆:もひもひ 編集:夏野かおる)

SHARE

  • 広告主募集
  • ライター・編集者募集
  • WorkshipSPACE
週2日20万円以上のお仕事多数
Workship