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「いまの時代のマーケティングに適したメディアはどれか?」
いつの時代も、マーケターの頭を悩ませる問題です。
現在はスマートフォン、8Kテレビ、サブスクリプションと、新たな技術の台頭でライフスタイルが細分化され、それに伴いメディアも多様化しています。
そんな多様化した現代にマッチするマーケティングのひとつとして「クロスメディア(クロスメディアマーケティング)」が挙げられます。
今回は、近年世界中で活用されているクロスメディアについて、成功事例や専門資格、クロスメディアを学べる書籍などと共にご紹介します。
クロスメディアに興味があるマーケターの方は、ぜひ参考にしてみてください!
CMの最後に、このような表示を見たことがある人は多いでしょう。これはテレビCMからWebにユーザーを誘導する手法です。
このように、2つ以上のメディアを組み合わせて行うマーケティング/広告戦略をクロスメディアと呼びます。
クロスメディアは2004~2005年ごろから使われ始めた戦略です。携帯電話(ガラケー)の普及や技術革新が進み、Webとさまざまな既存メディアの組み合わせが可能になった時代に生まれた、という背景があります。
近年は飲料メーカーやファッション業界をはじめ、出版社やゲーム会社でもクロスメディア展開が著しく、クロスメディアプランナーを採用している企業もあるほど。
クロスメディアには、どのような効果やメリットがあるのでしょうか。以下で解説していきます。
クロスメディアのメリットはなんといっても、展開する多くのチャネルから顧客獲得が見込める点です。
従来は、テレビやラジオなどのメディア毎でのみしか顧客へのアプローチができませんでした。
しかしクロスメディア戦略を取り入れることで、顧客セグメントをより細部までチューニングしてリーチできます。
マスメディア | テレビ、新聞、ラジオ、雑誌 |
WEB | オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディア、メールマガジン |
紙媒体 | チラシ、DM、パンフレット、カタログ |
店頭、街頭、イベント | サンプリング、POP、街頭ビジョン、車両ラッピング、交通広告、体験会、ブース出展 |
クロスメディア戦略における媒体の組み合わせ例として、以下のようなものがあります。
ただ一口に新聞広告やラジオCMといっても、新聞/雑誌/地域密着フリーペーパーだけで3億部、ラジオ/コミュニティFMは200局以上あります。
したがって、目的に合った最適な広告媒体を選定し、効果を最大化させることが、クロスメディア戦略を成功させるためのポイントです。
クロスメディアは複数の広告媒体を使用し、媒体ごとに最適化された戦略を立てる必要があります。
それは裏を返せば、展開する複数の媒体それぞれへの適切なコスト配分を実現できるということです。
費用対効果を最大化させたいときに、クロスメディアはおすすめです。
広告やマーケティングで使用する各媒体には、それぞれ長所と短所が存在します。
たとえば下記のようなものです。
これらの広告媒体を複数利用することで、お互いの短所を補えるのがクロスメディアです。
たとえば初期のクロスメディアの代表事例とも言える、テレビCMとWebメディアの組み合わせは、それぞれ以下のように補い合っています。
テレビCMは認知度を向上させるには良い媒体ですが、コンバージョンを促すほど十分な情報量を提供するのは難しいです。
したがってクロスメディアで戦略設計を行い、テレビCMを起点に、より詳しいWebへの流入を促すのです。
マーケターは商品が売れなかったときに「なぜ商品が売れていないのか?」を分析します。
しかし1つのチャネルのみで広告展開を行っている場合、どこの段階でコンバージョンが取れていないのかという「効果測定」が難しいでしょう。なぜなら比較対象となるものが存在しないからです。
クロスメディアで複数媒体を活用すれば、それぞれの媒体ごとに細かく効果測定を行い、またそれぞれの媒体ごとに比較できます。
さらに他メディアで得られた顧客データをもとにWeb広告を活用すれば、ユーザーの行動やコンバージョンに向けた予備行動なども測定できるため、より緻密なマーケティング戦略を考えられるでしょう。
Web解析士をはじめ、マーケター向けの資格はいくつか存在しますが、そのひとつに「クロスメディアエキスパート」という資格があります。
クロスメディアエキスパートは、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)が認定している資格で、文字通り「クロスメディアに関する資格」です。
この資格は「紙、Web、モバイルなどのさまざまなメディアへ、情報資源を効率的、効果的に展開するための設計&運用をマネジメントできる人材」の認定となります。
クロスメディアエキスパートになるには、1年間で2段階の試験を受ける必要があります。試験の概要は下記にまとめているので、クロスメディアエキスパートに興味がある方はぜひ参考にしてください。
実施日 | 3月と8月の年2回 |
試験形式 |
|
出題範囲 | 「クロスメディアエキスパート カリキュラム」より 例)マーケティングと経営、メディアとコンテンツ |
受験資格 | なし |
認証期間 | 2年間 ※更新には更新試験の受験と基準を満たす必要がある |
受験料 |
|
主催 | 公益社団法人日本印刷技術協会 |
クロスメディアエキスパートに合格するには、メディアやマーケティングの知識はもちろん、「論理的な現状分析、課題設定、施策効果、効果、費用」の知識が必要です。
過去の記述試験問題文と解答例は公式HPで閲覧できます。解答例を読むだけでクロスメディアのイメージが掴めそうなくらい実践的な内容のため、一見の価値ありです。
たとえば第26期の記述試験では、与件文を読み込み、コインランドリー事業者への顧客コミュニケーション施策をA4用紙3枚で提案するという問題でした。与件文は状況説明、ヒアリング報告書、提案先企業の概要、社長のモットーや趣味まで含め、約6,200文字で記されています。
続いて、クロスメディアを勉強するのにおすすめの本を3つご紹介します。
クロスメディアを紹介する本は多く出版されているので、チェックしてみてください。
書籍名 | クロスイッチ―電通式クロスメディアコミュニケーションのつくりかた |
発売日 | 2008/8/29 |
著者 | 電通「クロスメディア開発プロジェクト」チーム |
書籍名 | クロスメディアエキスパート受験サポートガイド[改訂新版] |
発売日 | 2008/8/29 |
著者 | 電通「クロスメディア開発プロジェクト」チーム |
書籍名 | インターネット広告革命―クロスメディアが「広告」を変える |
発売日 | 2005/4 |
著者 | 横山 隆治 |
クロスメディアをより深く理解するには、国内ですでに成功している事例を見るに限ります。
ここからは、クロスメディアの成功事例を6つご紹介します。
業界 | アパレル |
商号 | 株式会社ジーユー |
所在地 | 本部 東京都港区赤坂9丁目7番1号 ミッドタウン・タワー |
従業員数 | 約15,000名 |
主なチャンネル |
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『GU(ジーユー)』は、10~30代の男女やキッズをターゲットにしているカジュアルアパレルブランド。中国、台湾、韓国にも進出し、全世界で約370店舗を展開しているアパレル業界の猛者です。
そんなGUはさまざまな広告媒体から、オンラインストアや実店舗に誘導するマーケティング手法を取っています。
たとえばテレビCMでは10~20代に人気の女優を起用して若い層へのアプローチをする一方、Instagramを中心としたSNSでは働く女性や主婦におすすめのコーディネートをおしゃれに発信しています。
テレビCMとSNSを組み合わせ、より幅広い層へのアプローチに成功していますね。
また同社はWebとアプリ、実店舗を組み合わせ、斬新な取り組みを率先して行うことでも知られています。今後の動向にも注目したいです。
業界 | アパレル |
商号 | 株式会社ピーチ・ジョン |
所在地 | 本社 東京都港区北青山3-1-2 青山セント・シオンビル |
従業員数 | 約140名(正社員) |
主なチャンネル |
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『PEACH JOHN(ピーチ・ジョン)』は、日本の女性向けランジェリーブランドです。
20~30代の女性向けランジェリーやインナー、ルームウェア、ボディケア商品などを実店舗やオンラインストアで販売しています。
PEACH JOHNは、まずアイドルや人気モデルを起用したテレビCMで認知度を向上させ、興味を持った顧客にカタログやWebサイト、SNSをとおして商品の魅力を紹介しています。
また公式アプリでは、気になる商品の在庫状況が確認でき、店舗ではフィッティングサービスやボディケア商品の試供が行えるなど、アプリや実店舗それぞれの特徴を活かした販売戦略も行なっています。
女性向けのクロスメディア展開を考えている方の参考になる事例ですね。
業界 | メーカー・総合電機 |
商号 | シャープ株式会社 |
所在地 | 本社 大阪府堺市堺区匠町1番地 |
従業員数 | 連結43,064名 |
主なチャンネル |
|
日本を代表する家電メーカー『SHARP』は、テレビCMのほかにTwitterを大きく活用しています。
大企業のSNSマーケティングといえば、
というイメージを抱かれがちですが、そんなイメージを根底から覆した第一任者がSHARPです。
その結果、 SHARP公式Twitterのフォロワー2019年秋現在で58万人と、企業アカウントとしては大成功した事例といえます。
SHARPのTwitter公式アカウントは、新製品の情報や、トラブル対応などの情報を発信するだけでなく、日常的なゆる〜い投稿や、世間のトレンドやネタを敏感に察知した面白い投稿をしています。
それにより、カスタマーサービスと広告塔の2つの役割を担っています。
くわえてインフルエンサーとのコラボレーション企画や、各種PR企画を繋ぐハブ的役割を果たすなど、Twitterという土俵でクロスメディアに貢献しています。
また、「東京コピーライタークラブ広告賞の新人賞」「佐治敬三賞」も受賞しており、テレビCM以外で認知度の向上に成功した好事例です。
業界 | 文具メーカー |
商号 | 株式会社キングジム |
所在地 | 本社 東京都千代田区東神田二丁目10番18号 |
従業員数 | 連結2,172人 |
主なチャンネル |
|
文具メーカーの老舗企業『キングジム』は、WebとSNSを利用したクロスメディアに成功しました。
キングジムはWebサイトで商品情報の提供や話題作りをおこない、Twitterでは「キングジム社Twitterの中の人」のインタビュー記事を公開。新たな層へのアプローチやメディア露出を実現できたのです。
文具という商材の性格上、もともとはメーカーが顧客に直接接触する機会は多くありませんでした。しかしSNSを使うことで顧客との接触機会を増やし、また新たな層へのアプローチやメディア露出にも貢献したのです。
クロスメディアの成功事例において、『妖怪ウォッチ』が行なった一連のマーケティング戦略は無視できません。
妖怪ウォッチはもともとクロスメディアプロジェクト作品として、視聴者へ多角的にリーチするための計画が練られていました。
2012年の冬にコミカライズ連載を開始し、翌年にはニンテンドー3DSソフトをリリース。
その後もテレビアニメや映画、玩具、多くのスピンオフ作品など、多くのメディアを展開し、最終的には紅白歌合戦に出場するほどの一大ムーブメントを起こしました。
気持ちよいほどにクロスメディアマーケティングが成功した事例ですね。
以下に、初期妖怪ウォッチのクロスメディア展開を時系列でまとめました。
2012年 | 12月15日 「月刊コロコロコミック」でマンガ連載開始 |
2013年 | 7月11日 ニンテンドー3DSソフト「妖怪ウォッチ」発売 12月27日 少女漫画「ちゃお」でマンガ連載開始(※2017年5月号に終了) |
2014年 | 1月8日 TVアニメ放送 1月11日 「妖怪メダル」などおもちゃが発売 3月14日 キャラクターイベント「妖怪ウォッチ 発見!妖怪タウン」開催 (※2ヶ月開催予定が品切れにより2日で終了) 7月10日 ニンテンドー3DSソフト「妖怪ウォッチ2 元祖/本家」発売 12月20日 映画「映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」公開 (※国内興行収入78億円) 12月31日 NHK紅白歌合戦に登場 (Wikipediaより一部抜粋) |
特筆すべきは、テレビアニメの放送開始から3日でおもちゃが発売され、その2ヶ月後にはキャラクターイベントが予定されていたことです。
その結果、当初2ヶ月間行われる予定だったキャラクターイベントでは品切れが発生し、わずか二日間で終了という状態にもなりました。
大ヒットする前から緻密な計算と仕掛けがあったことは言わずもがなです。
現に妖怪ウォッチの生みの親である日野晃博氏は、多くのビジネス向けインタビュー記事でクロスメディア展開について語っています。
事前に緻密なやプランや計算に基づいて随所に仕掛けを施したことが、本プロジェクトの成功に繋がったのです。
この妖怪ウォッチの成功事例は、他分野のマーケティングでも参考にすべき所が多々ありますね。
業界 | IT |
商号 | ByteDance株式会社 |
所在地 | 日本法人 東京都新宿区西新宿2-6-1 新宿住友ビル27階 |
従業員数 | – |
主なチャンネル |
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幅広い年代層をターゲットにしたクロスメディア戦略を考えている方は『TikTok』が参考になります。
TikTokは世界150ヶ国以上で10億ダウンロードを突破した10代、20代に大人気のショートムービーのプラットフォームです。
日本では2017年8月にサービスが開始され、翌年の2018年には日本でもっともダウンロードされたアプリになりました。
TikTokが約1年でここまでスケールアップした要因のひとつが、クロスメディアでの戦略です。
YouTubeやInstagramなどに広告を打ち若年層にアプローチする一方で、人気俳優を起用してテレビドラマと連動したCMを展開し、普段は動画プラットフォームを利用しない中年層へのアプローチにも成功しました。
妖怪ウォッチをはじめ、いまでは当たり前のように展開されているクロスメディアマーケティング。
クロスメディアを展開するときは、顧客に合ったメディアの組み合わせが必要です。
その組み合わせは無限にあるので、今回紹介した事例を参考にしつつ、効果的なマーケティング戦略を考えてみてください。
(執筆:特急太郎 編集:木村優美)
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