「専門スキルを伸ばす VS 幅広い領域に挑戦する」フリーランスの生存戦略討論
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デジタルマーケティングの分野で働く方が、取得を検討する資格の一つに「SEO検定」があります。デジタルマーケティングの世界は移り変わりが早く、資格が身元を保証しないことは誰もが周知しています。
そんな環境において、SEO検定は実際に「意味がある」資格なのか。SEO検定1級の保有者である私が、SEO検定の持つ意義や取得のメリット・デメリットについて、経験を交えて解説します。
デジタルマーケティングプロデューサー/株式会社Rdesign factory代表取締役。企画×コンテンツ×マーケティングで価値の最大化を支援している。ツールを活用した仕事効率化に強みあり。(X:@matty3com)
目次
SEO検定とは一般社団法人全日本SEO協会が主催する検定試験で、4級から1級のグレードがあります。Webサイトの検索エンジン最適化に必要なキーワード選定からコンテンツ作成、サイト構造の最適化に至るまでの幅広い知識を問われます。
SEO検定4級は、SEO(検索エンジン最適化)の入門レベルに位置付けられる資格です。SEOの基本的な概念や用語、検索エンジンの仕組みに関する初歩的な知識を扱います。
SEO検定3級は、サイト運用者が自社の状況を把握できるよう、調査力とデータに基づいたサイト内部の最適化を学ぶ資格です。SEOをする上で最も重要な目標キーワードの設定とサイト内部の改善技術を習得します。
SEO検定2級は、サイト運用者が現場ですぐに実践できる運用技術を習得し、サイトの集客力を高め、Googleからの評価を高める技術を学ぶ資格です。コンテンツSEOとソーシャルメディア活用方法が中心となります。
SEO検定1級は、企業内チームのSEOスペシャリストとして実務対応ができるようモバイルSEOやローカルSEOのほか、Googleからペナルティを受けたときの検索順位の回復方法などを習得します。
4級は最も基本的なレベルであり、SEOの初心者でも理解しやすい内容が中心です。試験は級が上がるにつれて難易度が増し、1級では高度なSEOの知識と実践的な技術に対する知見が必要とされています。
また、SEOの理論だけでなく、最新のトレンドやアルゴリズムの変更にも対応できる実践的な能力を測るよう設計されているため、最新のSEOに対する知識も求められます。
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勉強方法は、公式教材である学習テキスト・問題集(紙版・電子版)を使います。より理解を深めたい受講生向けに「ダウンロード講座」も用意されており、テキストに対応した学習内容を網羅した動画講座と、セミナー動画を使って学習することができます。
それぞれの試験内容は以下のとおりです。公式テキスト・問題集を通じてこれらの知識を学ぶことができます。
級 | 試験内容 |
1級 | ・モバイルSEO ・ASOとアプリマーケティング ・ローカルSEO ・Googleアップデート ・検索順位の復旧方法 ・SEOの未来 |
2級 | ・コンテンツ資産の構築 ・外部リンク対策 ・トラフィック要因の重要性 ・ソーシャルメディア対策 ・アクセス解析と競合調査 |
3級 | ・検索キーワードの需要調査 ・検索キーワードのパターンと目標設定 ・上位表示するページ構造 ・上位表示するキーワード出現頻度 ・上位表示するサイト内リンク構造 ・構造化データ |
4級 | ・Webと検索エンジンの仕組み ・Googleの特徴 ・SEOの意義と情報源 ・企画、人気要素 ・内部要素 ・外部要素 |
試験はマークシート方式で行われ、試験時間は60分。出題数は80問で、64問以上の正解で合格となります。
全日本SEO協会が公開している合格率は以下の通りです。
年度 | 1級 | 2級 | 3級 | 4級 | 全級平均 |
2023年 | 64% | 69% | 70% | 69% | 68% |
2022年 | 65% | 68% | 71% | 72% | 69% |
2021年 | 70% | 63% | 68% | 81% | 70% |
2020年 | 77% | 87% | 77% | 89% | 81% |
2019年 | 81% | 84% | 78% | 86% | 82% |
受験料以外に、公式テキスト・問題集の費用がかかります。どの教材をどこまで使うかは受検する方によって異なるので、自分の理解度に合わせて選択しましょう。
また、資格取得後の維持費用はかかりません。
公式テキスト | 公式問題集 | ダウンロード講座 | 受験料 | |
1級 | 3,652円 | 2,552円 | 22,000円 | 8,800円 |
2級 | 3,102円 | 2,552円 | 19,800円 | 6,600円 |
3級 | 2,552円 | 2,552円 | 15,400円 | 5,500円 |
4級 | 2,178円 | 2,552円 | 13,200円 | 5,500円 |
※表示は税込価格
SEO検定が「意味がない」と言われるおもな理由は、実際のSEO業務では、検定で学んだ知識だけでは対応しきれない現実があるためです。検索エンジンのアルゴリズムは頻繁に更新されるため、常に最新の情報を追いかけ、実践を通じて学ぶ必要があります。
しかし、検定では基本的な原則や一般的な知識が試されるため、最新のトレンドや実際のサイト運営で直面する複雑な課題に対処する能力までは、残念ながら測定できません。
実践的な経験は資格習得に必要な勉強だけでは得られないため、検定を「意味がない」と言う人もいます。
実際のSEO業務では、キーワードリサーチやコンテンツの最適化、リンク構築、ユーザー体験の改善など、多岐にわたるスキルが統合的に必要とされます。
これらのスキルは実際にサイトを運営し、データを分析し、戦略を調整する過程で習得されることが多く、机上の学習だけでは得られない実践的な知識と経験が必要となるため、検定内容と実際の実力にギャップが起こりやすいと考えられています。
知識はSEO戦略を構築する基盤となりますが、実際のウェブサイトに適用し、測定し、調整するプロセスを経ることで、初めて成果に結びつきます。
たとえば、キーワードリサーチを行った後、そのキーワードを効果的にコンテンツに組み込む方法、ユーザーエンゲージメントを高めるためのページレイアウトの最適化、外部リンクを獲得する戦略など、具体的なアクションが必要です。
施策は学習を経ていれば立てることができますが、優先順位をつけて効果の出やすいものから効率的に実施することは、テキストで学んでもすぐにはできません。
また、SEOの成果が現れるには、少し時間を要します。その間も継続的なコンテンツの更新、サイトの技術的な改善、ユーザー体験の向上など、長期的な取り組みが必要とされます。データ分析を行い、結果をもとに戦略を調整する柔軟性も、成功するSEOには欠かせません。
SEOの知見や専門性は、単なるテクニックではなく、こうした幾度もの試行錯誤を経て、継続的な努力を続けることで身につきます。資格を有することとSEOの専門家であることが同義ではないと考えられているのは、その点にあります。
ひと口にSEOと言っても、対応範囲が広く、得意・不得意の分野は人それぞれです。しかし、資格があることでSEOについての知識や能力がある人だと認識されやすくなるのは、ひとつのメリットだと感じています。
SEO検定1級を取得した後、ライティングの依頼が目に見えて増えました。とくにSEOライティングへの声がけが顕著でした。
正直なところ、私自身はライティングは20年以上、コンテンツマーケティング・コンテンツSEOは15年以上携わり、結果も出し続けてきました。
しかし、資格ひとつでこうも見え方が変わるのかと、うれしい反面、少し悲しい気持ちにもなりました。それだけ、資格が保証する専門性や信頼性は大きいのだなと改めて実感しました。こんなにも需要があるのなら、もっと早く取っておけばよかったです。
SEO検定の資格取得に迷う方には、悩む時間を学習時間に充て、早めに取得することをおすすめします。
業務で行うSEOは、運営しているサイトの特性によって実施内容がそれぞれ違います。そのため、得意なジャンルと関わりが少なく、結果的に苦手になるジャンルが生まれてしまいます。その差を埋めてくれたのが、資格試験の勉強です。
SEO実務に必要な知識を広く満遍なく、専門性を高めながら深めていくことができたので、自分の強みと弱みを認識するきっかけにもなりました。SEOを網羅的に学べただけでなく、新たな施策につながる知見を得ることもでき、日々役立っています。
ざっくり説明すると、私が運営する会社はデジタルマーケティング支援会社なので、SEOの総本山である全日本SEO協会から外部リンクが貼られることは、自社サイトのドメイン価値をE-E-A-T視点(※)で上げることができます。結果、検索結果の上位表示につながりやすくなります。
※E-E-A-T:Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trust(信頼性)の略。SEOにおいてページ品質を高める評価項目で、重要な点のひとつに外部リンクが挙げられます。
完全にマニア視点の喜び方で恐縮ですが、ドメイン評価が上がるのはSEOをやっている人間にとって、大きな喜びなのです。とにかく、「とてもうれしい!!!」ということが伝わりましたら幸いです。
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デメリットとしては、受験には継続的な学習が必要になるため、取得に時間がかかります。日常業務でSEOを行っている場合は、すでに知っている情報のほうが多いため、自分の知識とのすり合わせを行いながら、苦手な部分を学習によって埋めていくことになります。
とはいえ、試験を受けるからには模擬テストを通じて出題形式に慣れたほうがいいので、やはり学習は必要です。
資格は4級から受ける必要はなく、いきなり1級から受けることもできます。しかし、級が上がるごとに下位の級の問題の復習が出題されるため、1級のテキストだけを勉強しても、合格するのは、少し難しいです。1級の試験問題は2・3・4級すべての範囲から出題されています。
私は4級から順に受けましたが、1月に勉強を始めて2月・3月・4月・5月と、毎月1つずつ段階を踏んで受検しました。
5か月間ずっとSEO検定の勉強していましたが、期間を空けてしまうと、過去に受検した級の学習内容の復習に時間がかかってしまいます。ならば学んだことが定着しているうちに一気に受けたほうがいいと判断し、短期間で合格する計画を立てました。
試験は会場開催のみで、札幌、仙台・金沢・東京・大阪・神戸・名古屋・京都・福岡・広島・那覇の全国11か所で実施されます。試験後、14日以内に合格者に合格通知と認定証が届きます。オンラインでの受講ができないため、最寄りの会場に出向くことが必須となります。
SEOの基本から応用までを体系的に学び、その知識を実務に活かしたいと考えている方や、自身の専門性と市場価値を高めたいと思っている方におすすめします。
具体的にはフリーランスのマーケターやWebデザイナー、ライター、デジタルマーケティングに携わる企業のマーケター、SEOコンサルタントなどが挙げられます。
フリーランスや個人事業主でウェブ関連の業務を行っている場合、SEO検定を取得することで、クライアントに対し技術と知識が認定された専門家と示せます。これは信頼性のあるサービスを提供できることの証明となり、競合他社(他者)と差別化を図る際、有利に働きます。
また、検定の学習を通じて得られる知識を活用して、自身のウェブサイトやブログのSEO対策を行い、検証と改善をくり返すことで、知見を蓄えていけます。
加えて、自身のサイトがSEOで上位表示されるようになれば、より多くの潜在顧客にリーチできるようになり、検索結果でじかに実績を示すこともできるでしょう。
自社でマーケターとして業務を行っている場合は、SEOの知識を積みあげることで自社のオンラインにおける価値を高め、ブランド力を向上させ、最終的にはリード獲得や売上向上に貢献できるようになります。
また、SEOの専門知識は多くの企業で求められるスキルのため、この資格を持ち、最新のSEOトレンドや技術を学びながら力を発揮することで、昇進や転職などのキャリアの幅や機会も自然と広がります。
SEO検定は、SEOに関する知識を体系的に学び、専門家としての信頼性を高めるひとつの手段です。1〜4級の検定を通じて、SEOの基礎から応用まで幅広く学ぶことができます。
とくにフリーランスや個人事業主、企業のマーケターにとっては、自分のサイトやクライアントのサイトのドメイン評価を向上させる知識として役立つ上、過去に積み重ねてきた知見を体系的に網羅できる機会になります。
しかし、実際のSEO業務と検定内容には大きなギャップがあります。検索エンジンのアルゴリズムが常に進化しているため、理論より実践と経験が重視されるためです。
そのため、SEO検定を取得する最大のメリットは、SEOに関する知識の偏りを体系的に学ぶことで幅が広がる点と、クライアントに対する信頼感の醸成ができる点にあります。実務にどう活かせるかは、取得者次第です。
SEO検定をスキルアップの一歩として捉え、さらに深い知識と経験を積むためにも、1級の取得後はSEOに関するお仕事にもチャレンジしてみましょう。
(執筆:まてぃ 編集:少年B)