エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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「Webサイトは、ユーザーが3クリック以内に求めている情報にたどり着けるよう設計すべきだ」という、いわゆる “3クリックルール” をご存知でしょうか。この3クリックルールはWebデザインの世界でまことしやかにささやかれ、多くの人がこのルールにしたがってWebサイトを設計してきました。
しかし、じつは3クリックルールには根拠がありません。それどころか実際には、ユーザーのクリック数と顧客満足度には相関がないのです。
今回は、3クリックルールの歴史を振り返りながら、Webサイトにおけるクリックの新しい捉えかたについて解説します。
3クリックルールの生みの親は、ジェフリー・ゼルドマン氏。著書『Taking Your Talent to the Web』で「すべての情報は3クリック以内で閲覧できるようにすべきだ」と語ったのが、3クリックルールのはじまりです。
2001年当時は、1ページ内の情報は多ければ多いほどいいと考える傾向がありました。当時のWebに関するデータの少なさや時代性を考えると、こうした意見が出てきたことも不思議ではありません。
しかし、それから13年が経った2014年にも、同様の説を唱える人が登場しました。当時のYahoo!のCEOで、Googleの元副社長でもある、メリッサ・マイヤー氏です。マイヤー氏は「アプリを起動してから2タップ以内で目的にたどり着けますか? もしそうでなければ、アプリを見直す必要があります」として、少ない動作で目的が達成できる重要性を強調しました。
2014年当時、マイヤー氏はFlickrのアプリの再設計を担当しており、新しくなったFlickrは多くの人にとってお手本のような存在に。Flickrはとても優れたアプリで、クリック(タップ)数が重要な要素として捉えられていました。
そしてそれから6年が経ったいまでも、似たような言説をたびたび耳にします。しかし先述のとおり、クリック数の少なさとサービスの成功には相関性はありません。
じつは、クリック数とサービスに対する顧客満足度に相関性がないことは、2003年にすでに明らかにされていました。ジョシュア・ポーター氏の研究で、クリック数が多くても、直帰率が高くなったり満足度が下がったりしないと分かっています。
また、DUMBOがおこなった調査でも同様の結果が出ています。DUMBOは15万回のセッションを対象に、直帰率を計測するテストを実施。テストでは、ユーザーが目的の結果に到達するまでに6回クリックする必要がありました。
3ステップルールに則れば、6回のクリックはユーザーにとってストレスになるはず。しかし、各ステップでの直帰率はわずか各1%で安定していました。クリック数が増えても直帰率に影響なかったどころか、直帰率が非常に低く推移していたのです。
DUMBOが手がけた大手航空会社の予約プロセスの再設計では、予約完了までに必要なステップを減らすのではなく、逆に増やしたことでコンバージョン率が向上しました。また、ステップ自体は増やしたものの、ユーザーが予約を完了するまでの時間は大幅に短縮。6ステップから9ステップに増えましたが、平均予約時間は6分48秒から3分48秒と、約2分の1になりました。
ここからは3クリックルールとは逆に、クリック数を増やすメリットを3つご紹介します。クリック数を増やすことで、顧客満足度が上がるケースもあるのです。
ステップが多くとも構造自体がシンプルであれば、ユーザーは使いやすいと感じます。またステップが多いほうが、タスクをはやく完了できるという調査結果もあります。ステップが多くなると、その分1ページ内の情報量が少なくなるためです。
複雑な事務手続きを例に考えてみましょう。多くの記述箇所が1ページに詰め込まれているよりも、シンプルなページに分割されて、一問一答のような形式になっているほうが、ハードルが低くストレスが少ないですよね。
では、適切なステップ数(=クリック数)はどのように判断すればよいのでしょうか。ここからは、ECサイトでの支払いプロセスを例に、適切なステップの分割について考えてみましょう。
支払いに必要なプロセスのうち、適切に分割されているのは以下のどれでしょうか。
正解は、3番です。1番と2番はユーザーに発生するタスクが明確でないため、細分化の余地があります。4番についてはクレジットカードの種類を入力するだけでは目的を達成できないため、適切とはいえません。
これらに対して3番は、クレジットカードや銀行払いなどの種類を選択するというシンプルなタスクのため、ユーザーは迷うことなく支払いを進められます。
このように、ステップを細分化しながらも、そのステップごとに目的を果たせるかどうかが、分割の基準です。
送金処理など、リスクを伴う作業をユーザーに行なってもらうケースを考えてみましょう。セキュリティ自体が高いのはもちろんのこと、ユーザーの信頼感を得る工夫も大切です。
信頼感を与えるためには、状況をコントロールできている感覚をユーザーにもってもらうことが重要です。ステップを細分化して各プロセスをしっかり認識させることで、ユーザーに安心してもらえます。
この場合、作業のスピードは問題にはなりません。ゆっくりと、確実にステップを踏んでもらうことが大切です。
もちろん、あらゆる場面において「セキュリティリスクが高い場合はステップを増やせばいい」わけではありません。対象としているユーザーによって、適切なクリック数、ステップ数は変わります。
たとえば、デイトレーダーは高額の取引に慣れており、取引にかかる時間をとても重視しています。こうした場合、ステップを増やすとトレーダーは煩わしく感じてしまうでしょう。
ユーザーのサービスに対する知識や経験を考慮することが大切です。
大きなデスクトップ型パソコンを使っていた時代と、小さなモバイル端末中心の現代では、デバイス環境がまったく異なります。多くの人が使うスマートフォンでは、クリックのではなくスワイプやタップで操作します。
モバイル端末で文字を入力するとき、キーボードが画面の3分の1程度を覆ってしまいますよね。こうした環境で、スクロールしながらフォームに入力を繰り返すことをストレスに感じるユーザーも多いはず。
モバイルファーストのデザインにおいて重要なのは、無駄を減らしてユーザーの操作を最適化すること。画面の大きさが限られているので、画面あたりの入力数を極力抑えましょう。
サービスを使いやすくするには、デバイスに沿った最適化が必要です。
3クリックルールはクリック数を基準にした理論ですが、重要なのはクリック数ではなくユーザビリティです。クリック数そのものは、コンバージョン率や満足度と関係ありません。
本記事で解説したように、シンプルさ、セキュリティ、ユーザビリティという3つのポイントを指標にして、デザインの要点を明確にしましょう。状況に対応した適切なデザインこそが、コンバージョン率や満足度の高さに繋がります。
(執筆:Robert Goesch 翻訳:Asuka Nakajima 編集:イズミ カズキ 提供元:Muzli)