企業はどんな仕事をフリーランスに任せる？大企業とスタートアップでこう違う

「フリーランスは自由だけど、キャリアの天井がある」

そんな不安を抱いたことはありませんか。

会社員なら、真面目に働いていれば自然と役職が上がり、新しい仕事にも挑戦できる。けれどフリーランスは、契約で決められた範囲の仕事を淡々とこなすうちに、スキルも報酬も伸び悩んでしまう……そんな現実があります。

なぜ企業は、フリーランスに単純作業を任せるのか？
そして、どうすれば「上流の仕事」に関わることができるのか。

今回は、フリーランス・副業人材専門の求人・案件検索プラットフォーム『Workship』にてエージェントを務める泉さんにお話を伺い、

• 大企業が求める「タスク型」案件
• スタートアップが求める「丸投げ型」案件

対照的な2つの構造をひもときながら、フリーランスが企業から信頼を得て、キャリアの天井を突き破るためのヒントを語っていただきました。

【話し手】

Workshipカスタマーサクセス 泉さん

株式会社GIG Skill Share事業部所属。教育大学を卒業後、WorkshipのカスタマーサクセスとしてGIGへ入社。最適なマッチングを目指し、求人企業と登録ユーザーの仲介サポートを担当。

【聞き手】

夏野かおる

フリーランスの編集者・ライター。2021年7月に1人会社を設立。博士（人間・環境学）（←って何？？？）。趣味はゲームと放浪。（X：@Natsuno_Kaoru）

大企業がフリーランスに求めるのは「決まった手順・確実な納品」

夏野：
そもそも企業がフリーランスに委託したいと思う仕事には、どんな傾向があるのでしょうか？

泉：
フリーランスへ切り出される仕事は、ざっくり「大企業」と「中小・スタートアップ」で傾向が異なります。

まず大企業の場合、「決まった手順に沿って成果物を納品してほしい」というパターンが多いです。「このルールに従ってアイキャッチを20枚作ってください」というようなイメージですね。

こうした案件は、やることが明確なのでトラブルも起こりにくく、安心して取り組めるのがメリットです。

夏野：
ふむふむ。フリーランス初心者さんでも挑戦しやすそうですね。

泉：
その通りです。駆け出しのうちは、まず量をこなしてスキルを身につけるのが一番。大企業との取引実績は、ポートフォリオでも強い武器になります。

それに裁量が限られているぶん、ミーティングも少なくて済むので、フルリモートOKな案件も多いんです。地方在住の方や子育て中の方でも挑戦しやすい案件だと思います。

▲決まったタスクに取り組む場合、会議が少なくなるのがメリット

夏野：
稼働時間が読みやすいのもありがたいですよね。裁量の大きい仕事って、終わるまでの時間が読めないことが多いから……。アイキャッチ制作みたいに「1枚○分で○円」って見通せるのは安心。

泉：
そうなんです。それと大企業の場合、信頼を積み重ねることで、別部署などから新たな案件を紹介してもらえるケースもあります。営業しなくても自然と仕事が広がるのは、フリーランスにとって大きなメリットですね。

夏野：
とはいえ、定型作業ばかりだと単価が上がりにくいですよね。稼ぐには結局、働く時間を増やすしかないとなると、年齢を重ねるほどしんどくなりそう。

泉：
そこは確かにあります。さらに言うと、定型業務って、どうしても代替が利いてしまうんですよ。「この人じゃなきゃ困る」と思ってもらえる存在になっておかないと、他のフリーランスや、もっと安価なツールに置き換えられる可能性があります。

夏野：
この時代、AIの進化も加速してますしね……。怖い話だ。

▼AIの脅威を感じるフリーランス達の対談はこちら

スタートアップがフリーランスに求めるのは「スピード勝負・伴走者」

夏野：
スタートアップの場合はどうでしょう？

泉：
スタートアップ企業だと、代表が手探りで事業を進めていて、「まずは1人目の外部パートナーとして入ってほしい」と言われるケースが多いです。「アイキャッチやSNS画像などのクリエイティブまわりを、必要に応じてどんどん作ってほしい」といった具合ですね。

だからこそ仕様が固まりきっていない部分も多く、戦略面を一緒に考えたり、改善提案を出せる人はとても高く評価されます。外注先というより、経営や事業に伴走するパートナーに近い立ち位置になります。

夏野：
「せっかくWeb集客に力を入れるなら、TikTokも始めましょうか？私やりますよ」みたいに、自分から提案して仕事の範囲を広げていけるのが理想なんですね。

泉：
そんな感じです。上流になればなるほど、経営者や取締役、プロジェクトリーダーと議論しながらつくっていくことになるので、コミュニケーション面でも大きく成長できます。次の営業でも「経営層と事業設計から関わった」と言えるのは大きな強みですね。

▲経営陣やと協力して案件を進めた経験は、市場でも高く評価される傾向あり

夏野：
リアルな話、ここまで関われるようになると、報酬面も変わってきますよね？

泉：
おっしゃる通りで、単価はかなり上がる傾向にあります。もちろん場合によりますが、単発タスクと比べて2倍、3倍の単価になることもあります。自分の市場価値を数字として実感できるのは、モチベーションになりますね。

ただし、裁量が大きくなる分、働きやすさのコントロールも重要になります。スタートアップはとにかくスピード命。「SNSに投稿したいから、今すぐ1枚だけ画像がほしい！」みたいな依頼が飛んでくる可能性もあるので。

夏野：
それを「全部任せてもらえて楽しい！」と思えるか、「常時対応を求めるなら、社員を雇ってよ」と感じるかは、人それぞれですよね。

泉：
まさに。自分の価値観や働き方に合うかどうか、慎重に見極めて選ぶのが大切です。

「取り替え可能なフリーランス」にならないために

夏野：
ここまでのお話をまとめると、「大企業はタスク型」「スタートアップは丸投げ型」が多い、という理解で良いのでしょうか。

泉：
傾向としてはそうなります。ただもちろん、大企業でも「丸ごとおまかせ」の案件はあります。たとえば新規プロジェクトの立ち上げ時に、外部のスペシャリストを招いて知見を取り入れ、軌道に乗りそうなら社内でも本格的に展開する。そういうケースです。

夏野：
なるほど。自然な流れではあると思いますが、少し意地悪な言い方をすると、フリーランスって結局「取り替え可能な部品」なの？と思いまして。

プロジェクトがコケたとき、社員はクビにできないけど、フリーランスなら契約終了でサッと解散、みたいな。……悲観的すぎますかね？

▲ついつい疑り深くなってしまうんです。フリーランス歴が長くなるとね……。

泉：
そこまで極端に言う必要はないですが、一面的には当たっている部分もあるかもしれません。実際、プロジェクトが軌道に乗らなければ終了ですし、成功したとしても、社員が引き継いで内製化することで、フリーランスとの契約が終了になる可能性はあります。

しかも最近では、便利なRPA（業務自動化ツール）AIも普及しています。そうした代替リスクも、フリーランスにとっては無視できない要素ですね。

夏野：
どっちに転んでも夢がなさすぎる。

泉：
とはいえ、これはあくまで一番悲観的なシナリオです。充分なスキルがあって、クライアントと信頼関係を築けていれば、アドバイザーやコーチとして社員を育てる立場になったり、PdM（プロダクトマネージャー）などの監修ポジションを任されたりすることもあります。そのまま正社員登用につながるケースもありますし。

いずれにせよ安定的な立場に近づけるのは確かなので、やはり長期的に見れば、上流人材を目指すのが理想的といえるでしょう。

夏野：
現実は認識しつつ、ちょっとでも可能性を広げたほうが良いってことですね。なるほどな〜。

まとめ：上流を目指すことが、フリーランスのキャリアを救う

フリーランスに求められる役割は、企業の規模やステージによって大きく異なります。

大企業では決まった手順に沿ったタスク型業務が中心で、安定した環境で経験を積める一方、代替が利く構造ゆえにスキルアップの余地が限られます。

一方、スタートアップでは裁量が大きく、戦略面や提案力が評価されやすい環境です。経営層と直接やり取りしながら、より上流の工程に関われるチャンスがありますが、その分スピード感や柔軟性が求められます。

どちらの環境にいても大切なのは「この人だから任せたい」と思われる存在になること。

単なる作業者で終わらず、改善提案や戦略視点を持つ上流人材を目指すことで、AIや環境変化に左右されないキャリアを築けるはずです。

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▲出典：Workship

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（取材・執筆：夏野かおる）