フリーランスの報酬から「天引き」するのは違法?振込手数料・端数・支払い遅延の注意点【社労士解説】
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「あれ、請求書の金額より数百円少ないような⋯?」
「毎月、振込手数料が引かれているけれど、これって当たり前なのかな?」
「支払いがだいぶ先みたいだけど、請求書を出すのが遅かったから仕方ないのかな?」
フリーランスとして働いていると、実際に振り込まれる金額を見て、首をかしげた経験が一度はあるのではないでしょうか。
こうした「ちょっとした減額」や支払い遅延に関するニュースが最近、増えています。
今回は社労士の視点から、フリーランスの報酬から静かに引かれてしまいがちな「見えない金額」やその遅延の正体と、自分の身を守るためのポイントを解説します。

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo)
2026年8月から9月にかけて、公正取引委員会(公取委)が大手企業に対して「是正勧告」を出したニュースが話題となりました。
ひとつは、大手家電量販店グループの物流会社の事例です。
この会社は、配送や設置工事などを請け負う個人事業主(フリーランス)へ報酬を振り込む際、契約書で「振込手数料はフリーランス負担」と取り決めていました。
この際、自社は銀行から優遇されている安い手数料しか払っていなかったにもかかわらず、フリーランスからは通常手数料分を差し引いていました。これが「不当な減額」にあたると認定されました。
参考:公正取引委員会「(令和8年8月26日)株式会社ジェイトップに対する勧告について」
もうひとつは、日本郵便の事例です。
100名以上のフリーランスに対して、事前に仕事内容や報酬額、支払期日を書面などで伝えておらず、仕事が終わって請求書が届いてから確認・支払うという運用をしていました。
結果として、最長で約4か月も報酬の支払いが遅れるケースが発生し、「支払い遅延」として是正勧告を受ける事態となりました。
参考:TBS「日本郵便 フリーランス法違反認定で公取委が勧告 最長で約4か月報酬支払わず」
これまで「そういう商習慣だから」「請求書をもらってから払うのが普通だから」と見過ごされてきた運用が、次々とアウトだと判断されたのです。
これらのニュースから見えてくるのは、たとえ少額であっても、また事前の合意があったとしても、「発注側の都合で報酬を削る・支払いを遅らせることは許されない」という大原則です。
他にも、フリーランスが直面しやすい「見えない減額」「支払い遅延」には、以下のようなものがあります。
「振込手数料は受託者(フリーランス側)の負担」という契約になっているケースは珍しくありません。
しかし、フリーランス新法や取適法、2026年1月1日から適用されている運用指針などにより、実質的に「振込手数料を発注側が負担する」ルールが徹底されています。
ましてや、冒頭のニュースのように「実際にかかった銀行手数料以上の金額」を引くことは明確なルール違反です。
▼フリーランス新法についてはこちらの記事で解説しています 2024年11月施行の「フリーランス新法」とは?要点だけわかりやすく解説 Workship MAGAZINE
消費税の計算で出た「1円未満の端数(銭単位)」を四捨五入や切り捨て処理することは問題ありません。
しかし、事務作業を楽にするためなどの理由で、「10円単位」や「100円単位」の端数を勝手に切り捨てて振り込む行為は、不足額がいくらであっても不当な「減額」となります。
「社内のチェック(検収)が終わっていないから、支払いは来月になります」と言われた経験はないでしょうか。
法律上、支払期のカウントは「納品した日(サービスを提供した日)から」スタートするものであり、「検収が完了した日から」ではありません。
納品から60日を超えて支払いを引き延ばすことは、支払遅延にあたります。
「管理手数料」「振込事務手数料」「システム利用料」などの名目で報酬から一定割合を差し引いたり、現場でのちょっとしたミスに対して、客観的な額の証明もないまま定額の「ペナルティー」を報酬から差し引く行為は、仮に合意があったとしてもフリーランス新法では原則として違法となります。
「見えない減額」を防ぎ、対等な関係で働くためには、以下を意識することが大切です。
発注時に示された金額と、実際に口座に入金された金額や明細を必ず確認しましょう。「たった数十円の差だから」とスルーせず、どのような名目で、いくら引かれているのかを把握することが第一歩です。
仕事を始める前に、「納品から何日以内に検収されるか」「支払日はいつか」が明記された書面(メールやチャットでもOK)をもらうようにしましょう。
正体不明な控除(差し引かれた金額)を見つけたら、「発注書と振込額に〇〇円の差額があるのですが、内訳を教えていただけますでしょうか」と冷静に確認してみましょう。
「数十円のことだし⋯」と諦める必要はありません。
国がフリーランス保護のルールを厳格化している今だからこそ、泣き寝入りせず、自分の「手取り」をしっかりとチェックする姿勢を持ちましょう。
もし解決が難しいと感じた場合は、フリーランス向けの公的相談窓口に相談してみてください。
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(執筆:もひもひ、編集:夏野かおる)
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