フリーランスが契約書で注意すべき7項目|「辞めたら違約金」は違法?【社労士解説】

USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のダンサーとして働いている人が、違法な可能性のある不公平な契約を結ばされている、というニュースが話題になりました。

https://bunshun.jp/articles/-/91665

フリーランスを経験していると、発注元から提示された契約書を精査しないまま、「こういう決まりなのかな?」と、深く考えずに契約を結んでしまうケースも少なくありません。

今回は社労士の視点から、フリーランスが自分の身を守るために契約書の「どこを点検すべきか」を分かりやすく解説します。

もひもひ
もひもひ

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo

フリーランスの契約トラブルとは?USJダンサー問題から考える

今回のケースの最大のポイントは、「違約金の存在」です。

労働基準法では、労働者に対し「途中で辞めるなら50万円を支払え」のように賠償予定をすることは禁止されています。

(参考)厚生労働省 和歌山労働局 賠償予定の禁止(第16条)

今回のダンサーが労働者にあたるかは難しい判断になりますが、実態として会社員と同じように時間や場所を厳しく拘束されて働いている(労働者性がある)と判断される場合、あらかじめ違約金の額を決めておくことは禁止されています。

そして、たとえ労働者性がなかったとしても、「業務委託だから」という言葉ひとつで、弱い立場にある個人の働き手にその責任を押し付けてしまうような運用は問題があると言えます。

▼「偽装フリーランス」についてはこちらの記事でも解説しています

フリーランスが契約書で確認すべき7つのチェックポイント

ダンサーでなくても、エンジニア、ライター、デザイナー、講師など、他のフリーランスでも同じようなトラブルは起こり得ます。

一度、締結済みの契約書ファイルを開いてみて、次の7つのポイントに気になる記載がないか点検してみましょう。

1. 「違約金」「損害賠償」のペナルティが書かれていないか

「途中で解約したら違約金〇〇万円」「契約を終了した場合は、理由にかかわらず損害賠償」といった記載はないでしょうか。

こうした文言は、前述した「偽装フリーランスになっていないか」(労働基準法上の扱い)に関わるのはもちろん、仮にフリーランスとしての契約でも、民法(公序良俗違反)や独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」、あるいはフリーランス新法に抵触する不当な経済的負担として、無効や違法とされる可能性があります。

参考:公正取引委員会「優越的地位の濫用」

2. 働く時間や場所を厳しく指定されていないか

始業・終業時間がきっちり決まっていて遅刻にペナルティがあったり、働く場所が発注元のオフィスに指定されていたりするような記載はないでしょうか。

本来、業務委託は「成果物」や「業務の遂行」に対して対価が支払われるものです。時間や場所の管理が会社員並みに厳しい場合、それは業務委託ではなく実質的に労働者に近い状態と言えます。

▼「偽装フリーランス」についてはこちらの記事でも解説しています

3. 急な仕事中止で、報酬がゼロにならないか

発注者側の都合で急に仕事がなくなったとき、お金が1円も支払われなくなる契約になっていませんか。

実質的に雇われている状態であれば、会社都合の休みに対しては「休業手当」の支払いが法律で義務付けられています。

仮にフリーランスであっても、フリーランス側に責任がないのに一方的に報酬を払わなかったり、減額したりする行為は、フリーランス新法で禁止されている「報酬の減額」や「受領拒否」にあたる可能性があります。

▼フリーランス新法についてはこちらの記事で解説しています

4. 他の仕事を禁止されていないか

「他社からの案件受注を全面的に禁止する」というような、厳しい専属義務がついていませんか。

他社との取引を一方的に制限されると、その1社に依存せざるを得なくなります。正当な理由なく他社との取引を縛るような契約は、独占禁止法で問題視されるケースもあります。

フリーランスの強みである「複数の取引先を持つ自由」が奪われていないか、確認が必要です。

5. 著作権などの知的財産権を無償譲渡する契約になっていないか

「納品物の著作権はすべて発注者に無償譲渡する」「実績としての公開を禁止する」といった記載はないでしょうか。

著作権の無償譲渡や実績公開の禁止は、「実績としてポートフォリオに公開できない」など、フリーランスの営業活動を妨げるリスクがあります。実績公開の許可(条件付き公開)が契約書に明記されていると安心です。

6. 再委託(外注)が全面的に禁止されていないか

「第三者への再委託は一切禁止する」というルールになっていませんか。

一部の作業を他のフリーランスに手伝ってもらいたい場合も、再委託禁止の条項があるとその選択肢がとれなくなります。

「発注者の事前承諾があれば可能」など、柔軟な規定になっているかを確認しておきましょう。

7. 検収期限や修正回数が曖昧になっていないか

「納品後のチェック(検収)期限」が書かれていなかったり、「発注者が承認するまで何度でも修正に応じる」となって、手戻りが無限に発生する状態になっていませんか。

また検収の期限が定められていないと、いつまでも合格が出ず、報酬が支払われないリスクが生じます。

「納品後〇日以内に連絡がなければ検収完了とみなす」という自動検収のルールが入っていると安全です。

フリーランスが不利な契約から身を守るための対策

クライアントとの思わぬトラブルを防ぐために、フリーランス側は以下のような自衛策をとっておくと良いでしょう。

  • 契約書の、「違約金」「中途解約」「中止時の保障」の項目は特にチェックする。
  • 違和感のあるペナルティーがあったら、締結時や更新時に理由や背景を聞く。
  • やり取りや指示内容のログをとっておく。

契約書に違和感があったら専門家や無料相談窓口へ

契約書は「言われた通りにサインする書面」ではなく、「対等なパートナーとして条件をすり合わせるための書面」です。

「おかしいな」と感じる契約内容や、実際に違約金を請求されるようなトラブルに巻き込まれたときは、一人で悩まずに弁護士やフリーランス向けの無料相談窓口などに早めに相談するのがおすすめです。

契約書のリスクをしっかり点検し、安心して業務に集中できる環境を作りましょう。

(執筆:もひもひ、編集:夏野かおる)

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