フリーランスのスキル別・時給目安表|実質手取りは「額面の半額」【社労士解説】
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フリーランス人材を活かす上で避けて通れないのが、「報酬をいくらに設定すべきか」という問題。
社労士として多くの企業の経営者や事業責任者と話していると、よく出てくるテーマです。
フリーランスへの報酬は本来、成果物の価値や業務の難易度で決めるべきものです。しかし、プロジェクトの予算管理や工数見積もりの都合上、実務ではどうしても「時間単価」(時給)を基準に計算せざるを得ない現実があります。
ここで多くの企業が陥りがちなのが、「一般的なアルバイトの時給」を基準にした考え方です。
「アルバイトの時給で1,800円ならかなり高い部類。専門スキルがあるプロには2,000円も出せば十分だろう」
もしこんな考えがあるとしたら、実態を理解できていないかもしれません。
今回はフリーランスへの適切な報酬設定について、「隠れたコスト」を考慮しながら考えていきます。

開業社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)、特にIT/Web業界を中心に支援している。趣味は同人活動で、評論同人サークル「さかさまダイアリー」より同人誌「村上春樹っぽい文章の書き方」シリーズなど発行。(X:@mo_himo)
目次
なぜ、フリーランスの単価設定にはアルバイトの「時給」感覚が通用しないのでしょうか。
それは、フリーランスが背負っているコストが、会社員やアルバイトのような労働者とは根本的に異なるからです。
会社員の経験がある人は、給与明細を見て「天引きされる社会保険料が高い」と感じたことがあるはずです。
ただし、この金額は従業員が負担している分にすぎません。実はこの裏で、会社も同額の保険料を負担しており、会社と従業員が社会保険料を折半する形になっています(労使折半)。
一方、フリーランスは健康保険も年金も、すべて自分一人で負担しなければなりません。これだけで、額面報酬の数割が「固定費」として消えていきます。
それだけでなく、フリーランスが仕事をするためには、このようなコストがかかります。
- PCや周辺機器、専門ソフトの費用
- 通信費やコワーキングスペース代
- 請求書作成などの事務作業の工数
- 営業活動や打ち合わせなど、受注前の工数
これらのコストは、会社員であれば勤務時間内に処理できたり、会社が費用を負担してくれたりする項目です。一方でフリーランスは、独立した事業者としてこれらのコストを自己負担しています。しかも、このコスト自体は1円も利益を生みません。
これらを加味すると、実態として報酬額面の30〜50%は、事業を維持するための経費や社会保障費として消えていくことになります。
つまり、「時間単価2,000円」で発注した場合、プロの手元に残る実質的なお金は1,000円程度、あるいはそれ以下。
これでは、「最低賃金よりも安い」と感じる人も少なくないでしょう。
さらに深刻なのが、「老後資金を自分で積み立てなければならない」という見えないコストです。
日本の年金制度は「2階建て」と表現されます。つまり、専業主婦・主夫や自営業の人を含んだすべての人を対象とする基礎年金が1階部分。会社員を対象とする厚生年金を2階部分として、2階建てで保障される仕組みです。
例えば月給36万円の会社員であれば、給与から天引きされる厚生年金保険料は32,940円。会社も同額を負担し、計65,880円を納めます。
そして老後は、1階部分の基礎年金と、2階部分の厚生年金の両方を併せて、老後は月額20万円弱の受給が見込まれます。
一方、フリーランスは原則として1階部分の基礎年金(国民年金)のみの加入。月額の自己負担は17,510円で済みますが、老後に見込まれる受給額も月額7万円弱となります。
つまり、フリーランスは会社員よりも、毎月ざっくり十数万円、年金が少ないという老後格差に直面しているのです。
▼フリーランスの年金についてはこちらの記事でも詳しく解説しています 年金を5%OFFで納付!?前納×クレカ還元×付加年金でおトクに備えよう Workship MAGAZINE
この差を補うためには、iDeCo(個人型確定拠出年金)や付加年金、国民年金基金、貯金や保険といった自助努力によって、月数万円を積み立て続ける必要があります。
もし「このフリーランスには末永く参画してほしい」と願うなら、彼らが安心して老後の備えを積めるだけの金額を報酬に反映させる視点を持つべきです。
ここで、もう一歩踏み込んだ提案があります。
それが「小規模企業共済」の活用を前提とした報酬設計です。
会社員には退職金制度がある企業も多いですが、フリーランスに退職金はありません。自ら準備しなければ、キャリアの終着点でまとまった資金を得ることは不可能です。
ここでご紹介する小規模企業共済とは、いわば「個人事業主のための退職金制度」。
月額1,000円〜7万円の掛け金を払っておけば、廃業時や65歳になった際に、積み立てていた金額をまとめて受け取ることができます。また、支払った掛け金は全額所得控除されるので、節税効果もあります。
フリーランスは、必ずしもこうした制度に精通しているわけではありません。
「今回、長期的なパートナーシップをお願いしたいので、単価をプラスアルファしました。もしよければ、この上乗せ分を小規模企業共済の掛け金に充てるのはどうですか?全額所得控除になるので、節税しながら将来の退職金を作れますよ」
このように寄り添う一言があれば、あなたの企業は、フリーランスにとって「単なる発注元」から「自分の生活を共に考えてくれるパートナー」へと変わり、信頼関係がより深まるかもしれません。

これまでの話を元に、社員を雇用した場合のコストと対比した、フリーランスの時間単価の目安をシミュレーションしてみます。
| 区分 | 想定される社員月給 | 想定される時間単価 | 補足 |
|---|---|---|---|
| プロフェッショナル | 60万円〜 | 7,000円〜 | 高度な専門性への対価に加え、小規模企業共済(退職金分)の積み増しを考慮した水準。 |
| エキスパート | 40万円〜 | 4,500円〜 | 年金格差を埋めるための自助努力(iDeCo等)の積立原資を確保できる水準。 |
| スタンダード | 25万円〜 | 3,000円〜 | 社会保険料の自己負担に加え、最低限の事業経費、事務工数を加味した水準。 |
※これらはあくまで「事業者間の取引価格」の目安です。特定の業務を具体的に指示したり、勤務時間を厳密に管理したりする運用は、偽装請負と判断されるリスクがあるため厳禁です。独立したプロとしての裁量を尊重した上での、適正な契約金額として捉えてください。
報酬を安く抑えることは、短期的にはコスト削減に見えるかもしれません。
しかし、不安定な生活基盤の上に、長期的なコミットを期待するのは酷な話です。
無理な低単価で発注し続けると、フリーランスの生活を追い詰め、結果として離脱を招きかねません。
その結果、自社の事業が止まったり、ナレッジが消失したりすることは損失であり、深刻な事業リスクです。
持続可能で適切な報酬設定こそが、最高の人材に活躍し続けてもらうための、最も確実で効果的な投資なのです。
(執筆:もひもひ、編集:夏野かおる)
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