採用戦略とは?立て方の5つのポイントと具体例・採用施策を解説

採用戦略とは?立て方の5つのポイントと具体例・採用施策を解説
HR

「求人媒体を増やしても、なかなか応募が集まらない」「内定を出しても辞退が続き、採用してもすぐに辞めてしまう」このような悩みを抱えている採用担当者の方も多いのではないでしょうか。

こうした課題は、求人媒体やスカウトサービスといった「手法」を変えるだけでは解決しません。多くの場合、「誰を・なぜ・どう採用するか」という根本的な採用戦略にズレが生じていることが原因です。

採用戦略とは、単に採用人数を埋めるための計画ではなく、経営や事業と人材をつなぐ設計そのものです。最初に5つの意思決定を固め、それを施策に落とし込むことで、行き当たりばったりではない、再現性のある採用が実現します。

本記事では、採用戦略と採用計画・施策の違いをはじめ、採用がうまくいかない根本原因や最初に決めるべき項目を解説します。さらに、実際に筆者が実践した営業職5名を採用する具体的な設計例も紹介するので参考にしてください。

松尾隆弘
松尾隆弘

人事ジャンルを得意とするフリーライター。30年の会社員生活では、一貫して人事に従事。人事コンサルタントとして企業の組織改革や採用課題の解決なども経験。現在は主にHRメディアの記事やコラム記事を手掛けている。

採用戦略とは、採用活動の「方向性」を決めること

「採用戦略」「採用計画」「採用施策」の3つは混同されがちですが、それぞれの役割を整理すると、採用活動全体の解像度が大きく上がります。

項目 役割
採用戦略 意思決定(誰を・どのような目的で採用するのか)
採用計画 数値目標(いつまでに・何人を・いくらの予算で)
採用施策 採用手法(媒体の選定・選考フロー設計)

まず、採用戦略とは、経営や事業において「そもそも誰を、なぜ採るのか」という人材獲得の根本的な考え方を決める上位の意思決定です。経営・事業と人材をつなぐ、いわば採用活動全体の設計図にあたります。

「採用計画」は、その戦略を実行に移すための具体的な数値目標です。定めた戦略を人数・時期・予算に落とし込み、「いつまでに・何人を・いくらの予算で」採用するかの計画を立てます。

そして「採用施策」とは、求人媒体やエージェントの選定、SNSの活用、選考フローの設計など、戦略の下にぶら下がる具体的なアクションや手法のことです。

設計図である「戦略」が定まらないまま、小手先の施策だけをあれこれと変えても成果は安定しません。まずはベースとなる採用戦略を固めることが最優先です。

採用がうまくいかないときは採用手法より先に戦略を見直す

多くの企業は「採用がうまくいかない」と感じた際、求人媒体やスカウトサービスなどの「手法」を最初に見直そうとします。

  • 求人媒体を増やしても応募が増えない
  • 応募は来るのに書類選考や面接で採用が決まらない
  • 採用してもすぐに辞めてしまう
  • 面接官によって評価がばらつく
  • そもそも欲しい人材から応募が来ない

こうした悩みに対し、実際に手をつけるべきは戦略である場合が多いです。

もちろん、求人票の記載内容や媒体選びといった手法自体に問題があるケースもあります。しかし「媒体が悪い」「スカウト数が足りない」と手法を変える前に、まずは自社の採用戦略にズレがないかを確認してください。

次章で解説する「なぜ採用するのか」「どんな人材が必要か」といった5つの項目を再定義することが、同じ失敗を繰り返さないためには不可欠です。

採用戦略を立てるとき最初に決めるべきこと5選

採用戦略とは、次の5つを順番に決めていく意思決定のプロセスです。1つずつ、何をどう決めればよいのかを見ていきましょう。

1. なぜ採用するのか

採用戦略の出発点は「なぜ採用するのか」、つまり経営や事業におけるどの課題を解決するための採用なのかを明確にすることです。

採用はあくまで事業課題を解決するための手段であり、人を増やすこと自体が目的ではありません。「単に人手が足りないから」といった漠然とした理由で採用活動を始めてしまうと、自社にとって本当に必要な人物像がブレてしまい、選考基準も曖昧になります。

たとえば、同じ募集でも新規事業の立ち上げに向けて体制を強化したい場合と、既存事業の業務量増加に対応したい場合では、候補者に求める経験やスキル、採用の緊急度が全く異なるはずです。そのため、まずは「採用を通じて自社の何を解決したいのか」を、経営や事業の視点からきちんと言語化することが、ブレない採用活動には必須となります。

2. どんな人材が必要なのか

採用目的が決まったら、どのような人材が必要なのかを明確にします。これは、業務に必要な経験やスキル、行動特性にまで踏み込んで、求める人物像を具体化する重要なプロセスです。

「営業経験がある」「コミュニケーション能力が高い」といった抽象的な条件では、面接官によって評価基準にブレが生じてしまいます。選考の一貫性を保つためには「法人営業の経験が3年以上あり、自ら新規開拓を進められる人」のように、具体的な経験や行動にまで解像度を上げることが重要です。

なお、法令により年齢を条件とした募集や採用は原則として禁止されています。ターゲットとなる人物像は年齢で絞らず、あくまで経験やスキル、行動特性をベースに定義するようにしてください。

求める人材像を具体化する詳しい手順については、以下の記事で解説しています。

3. その人材は何を求めているのか

求職者が転職やキャリアにおいて「何を重視しているのか」を理解することが必須です。自社が求める人物像をどれだけ明確にしても、相手の価値観とズレたアピールでは興味を持ってもらえないでしょう。

たとえば、「裁量を持って事業に貢献したい」と考えている人材に対し、会社の安定性や福利厚生の充実ばかりを強調しても心には響きません。給与や待遇といった条件面だけでなく、働き方や仕事の任せ方など、相手が転職先に期待する要素を洗い出してください。

自社の既存社員に「なぜ転職してきたのか」をヒアリングしたり、ターゲットに近い人材が抱えがちな不満を書き出したりして仮説を立てることで、効果的なアピール方法が見えてきます。

4. 自社は何を理由に選ばれるのか

求職者は常に複数の企業を比較検討しているため、「競合他社ではなく、なぜ自社を選ぶのか」という明確な理由を提示する必要があります。他社にはない独自の魅力が伝わらなければ、求職者に選んでもらえません。特に中小企業の場合、知名度や事業の安定性、充実した福利厚生だけで大企業と張り合うのは難しいでしょう。

だからこそ、経営陣との距離の近さや意思決定のスピード、仕事における裁量の大きさといった、自社ならではの強みを打ち出すことが欠かせないのです。たとえば「入社直後から裁量を持って挑戦できる」という環境は、大企業では得にくい独自の価値となります。

自社が勝負できるポイントをしっかりと掘り下げていけば、求職者に響く、大企業にはない魅力が必ず見つかります。

5. どの採用チャネルで出会うのか

採用チャネルの選定とは、ターゲットとなる人材の居場所や行動パターンを踏まえ、どのように接点を持つかの方向性を決めることです。どんなに自社の魅力的なアピールポイントを用意しても、肝心の相手がいない場所で発信していては出会うことすらできません。

たとえば、すでに転職活動を本格化させている層には、求人媒体や転職エージェントの活用が有効です。一方で、転職を考え始めたばかりの潜在層には、SNSやダイレクトリクルーティングを活用して直接アプローチするほうが接点を持ちやすい傾向があります。

ここではまず「求職者がどこにいるのか」という方向性だけを定めておきましょう。ここまで解説してきた採用戦略における意思決定は、3C分析(Customer・Competitor・Company)のフレームワークに当てはめて以下のように整理できます。

3Cの視点 内容 対応する意思決定
Customer(求職者) 求職者が何を求め、何を基準に転職先を選ぶか その人材は何を求めているのか
Competitor(採用競合) 同じ人材を奪い合う競合他社がどう動いているか 自社は何を理由に選ばれるのか
Company(自社) 自社が採用で解決したい課題と提供できる価値 なぜ採用するのか・どんな人材が必要か

次の章では、これらの意思決定を踏まえて、営業職5名を採用する設計例を見ていきましょう。

営業職5名を採用するなら?採用戦略の設計例

これまで解説してきた5つの意思決定プロセスを、より実務に沿って細分化し、選考や目標設定(KPI)までを含めた「9つのステップ」として具体的なシミュレーションを確認していきましょう。これは筆者自身が実際の採用現場で実践していた考え方です。

自社の採用戦略を設計する際の参考にしてみてください。

ここでは「地方にある従業員100名規模の企業が、新規事業の立ち上げに伴い、新たに法人営業を5名採用する」というケースを想定して解説します。

1. 事業上の課題

採用戦略は「今、会社のどのような課題を人材によって解決したいのか」を明確にすることから始まります。ここでは「新規事業を拡大したいが営業人員が不足しており、案件獲得や商談に手が回っていない」というケースを前提に考えていきましょう。

このプロセスで最も重要なのは「人が足りない」という表面的な課題だけで終わらせないことです。たとえば、新規開拓において「見込み客の獲得数」がボトルネックになっているのか、それとも「商談のクロージング」に課題があるのかまで踏み込む必要があります。

このように現場で実際に起きている課題を具体的に言語化することで、次に決める「採用目的」や「求める人物像」の解像度が上がります。

2. 採用目的

事業上の課題が「会社として何を実現したいか」を指すのに対し、採用目的は「その課題をどのような人材を採用してどう解決するか」を明確に定義するものです。

今回のケースでは、単に「営業職を5名採用する」ことが目的ではありません。入社後のミスマッチを防ぐためには「新規事業の案件獲得からクロージングまでを自走し、早期に事業の収益基盤を構築できる法人営業の即戦力を5名採用する」というレベルまで解像度を上げる必要があります。

採用した人材がどのような価値を発揮し、それによって事業課題がどう解決される状態を目指すのか、その具体的な「状態」を採用目的として設定するのがポイントです。

3. 必要人材

採用目的を達成するためには「どのような能力やスタンスを持つ人材が必要か」をさらに具体化する必要があります。今回の新規事業のケースにおいて欠かせないのは法人営業経験や新規開拓経験といったスキルだけでなく「不確実性への耐性」です。

売れ筋の人気商材を扱ってきたトップセールスが、新規事業でもそのまま活躍できるとは限りません。マニュアルや営業フローが存在しない環境下であっても、自ら顧客の課題をヒアリングし、手探りで価値を証明していける自走力と泥臭さが求められます。

このスタンスを必須要件として組み込めるかどうかが、入社後のミスマッチを防ぐ最大の分かれ道となります。

4. ターゲット

求める人物像が定まったら、次は「実際にどのような業界・経歴の人にアプローチするのか」という具体的なターゲットを設計します。

ここで「法人営業経験3年以上」といった広すぎる条件を設定すると、既存顧客向けのルート営業をメインとする人ばかりが集まり、本当に欲しい新規開拓の即戦力にはなかなか出会えません。採用を成功させる秘訣は、求める能力要件と実際のターゲット設定を明確に分けて考えることです。

今回のケースであれば、必須条件として「無形商材の法人営業経験」や「自らリストを作成し、新規開拓からクロージングまで完遂した経験」を設定します。

単なるスキルの羅列ではなく、「現在、中堅SaaS企業で従業員50名規模の法人向けに新規開拓を行っている営業担当」といったように「今、他社でどのような仕事をしている人なのか」まで解像度を上げて人物像を描いてください。ターゲットの解像度が上がるほど、スカウトの返信率や選考通過率は向上します。

5. 求職者ニーズ

ターゲットが明確になったら、次はその人材が「今の環境にどのような不満を抱え、転職先に何を求めているのか」を深掘りしていきます。

「キャリアアップできます」といった抽象的な言葉だけでは、優秀な人材の心は動きません。今回のケースにおけるターゲットであれば「大企業で一定の成績は出しているものの、担当領域が細分化されていて物足りなさを感じている」「もっと事業の成長に深く関わりたい」といった思いを抱えているはずです。

このように求職者の心理に対して解像度の高い仮説を立てることで、スカウト文面や面接の場で、相手の心を掴む説得力のあるアピールができます。

6. 自社の訴求ポイント

求職者ニーズを特定した後は「自社ならではの魅力」を設計します。今回のケースのように、大企業でくすぶっている優秀な営業人材をターゲットにする場合、会社の安定性や福利厚生で真っ向勝負をしても勝ち目はありません。

彼らの心に最も強く響くのは「自分が実際に事業に携われるか」です。「単なるプレイヤーにとどまらず、新規事業の営業戦略から関われる」「経営層と直接議論しながら事業を創り上げられる」といった裁量の大きさは、大企業では得られにくい強力な武器になります。

競合他社には提示できない自社独自の価値を言語化し、面接の場で魅力的にアピールしてください。

7. 採用チャネル

自社の魅力が明確になったら、次はそのメッセージをどこでターゲットに届けるかを選定します。

新規事業を牽引できる優秀な営業人材は、今の職場でも高く評価されていることが多く、自ら積極的には動いていない転職潜在層がほとんどです。そのため、エージェントからの紹介を待つだけの「待ちの採用」では、即戦力5名を集めるのは難しいでしょう。

今回のケースでは、企業側から直接アプローチするダイレクトリクルーティングを主軸にするのが確実です。まずは即戦力やハイクラス層が多く登録する媒体を選定します。その上で「ゼロから事業を創る面白さ」といった自社の強みを熱量高くスカウト文面に落とし込みましょう。

筆者が過去に実践した例では、人事だけでなく現場責任者や経営陣自らが直接口説きにいく手法をとっていました。経営トップが熱い想いを直接アピールすれば、求職者の心が動きやすくなります。

もちろんエージェントの併用も有効な手段です。ただし、単に求人票を渡すだけでは大企業の求人に埋もれてしまいます。「なぜ今、この新規事業にこのポジションが必要なのか」という背景まで担当者に伝え、自社の魅力を代弁してくれるパートナーとなってもらう信頼関係が欠かせません。

8. 選考設計

どれほど魅力的なメッセージで優秀な候補者を集めても、選考プロセスが曖昧では意味がありません。ここで最も陥りがちな失敗が、面接官による評価のばらつきです。

新規事業を牽引するような即戦力の営業人材は、既存の枠に収まらない尖った個性を持つことも多く、評価軸がブレていると「何となく合わなそう」といった曖昧な理由で、本来採用すべき人材を見送ってしまうケースがあります。これを防ぐためには、面接での評価項目を3〜4つに厳選することが重要です。

今回のケースであれば、以下の項目に絞り込みます。

  • 自走力(マニュアルがない環境で動ける)
  • 泥臭さ(プライドを捨てて行動量でカバーできる)
  • 不確実性への耐性(変化を楽しめる)
  • ヒアリング力(売り込みではなく解決ができる)

その上で「どのようなエピソードがあれば高く評価するのか」を面接官全員で事前にすり合わせ、目線を統一しておくことが採用成功の絶対条件です。

9. KPI

これまでの設計を、日々の採用活動における具体的な行動目標(KPI)へと落とし込みます。通常の採用計画では「応募100名→書類通過30名→内定7名→承諾5名」といった典型的なパターンで考えがちです。しかし、新規事業を牽引する即戦力のような難易度の高い求職者を狙う場合、このセオリーは通用しません。

今回はダイレクトリクルーティングを主軸とするため、応募数を追うのではなく、その手前の「行動数」と「質」をKPIに設定するのがポイントです。たとえば、以下のように落とし込みます。

  • ターゲット要件を満たす潜在層へのスカウト送信数:月間300件
  • 現場責任者・経営陣からの直接スカウトによる返信率:10%
  • 一次面接での自走力評価の通過率:30%

もし目標数値との乖離が生じた場合は、原因箇所を特定します。スカウト返信率が低いなら「文面のA/Bテストを実施する」、一次面接の通過率が極端に低いなら「面接官同士で判定基準が厳しすぎないか再確認する」など、仮説に基づいた具体的な改善策を実行してください。

これら9つの要素すべてが一つにつながり、連動して機能する状態になってこそ、勝てる採用戦略が完成します。

採用戦略を実行するための採用施策

ここまで決めた採用戦略は、具体的な採用施策に落とし込んで初めて成果につながります。あくまで「戦略が先、施策は後」という順序を見失わないことが大事です。

ここからは戦略を実行へと移すための5つの代表的な施策について見ていきましょう。

求人媒体・エージェントで母集団を形成する

求人媒体やエージェントの活用は、幅広い母集団を形成するための王道となっている採用チャネルです。すでに転職活動を積極的に進めている顕在層に対して、確実なアプローチができる点が最大の強みと言えます。

効果を引き出すためには、ターゲットに合わせて使い分けることが重要です。幅広い層にリーチしたい場合は「総合型の求人媒体」を、専門性の高い人材を狙う場合は「特化型の媒体やエージェント」を活用するなど、採用の目的に応じて最適なものを見極めてください。

ただし、求人媒体への掲載のみに依存するのはリスクがあります。掲載を終了した瞬間に候補者との接点が完全に途切れてしまうためです。あくまで一定の応募数を確保するためのチャネルと位置づけ、他の採用施策と組み合わせて運用していきましょう。

ダイレクトリクルーティング・SNSで直接アプローチする

ダイレクトリクルーティングやSNSの活用は、求人媒体で待っているだけでは出会えない転職潜在層へ直接アプローチできる有効な手段です。

一般的な求人媒体は、すでに転職を決意している顕在層にしか情報が届きません。しかし優秀な人材ほど、本格的に転職市場に出てくる前に他社への入社を決めてしまうケースも多いため、企業側から能動的に動く必要があります。

中でも代表的なのが、スカウトサービスを利用して求職者の経歴を事前に確認したうえで直接声をかけたり、SNSを通じて自社の情報を発信し続けて興味を惹きつけたりといった手法です。

この手法は応募数を集めるだけでなく、母集団の質を向上させたい場合や特定の専門スキルを持つ人材へピンポイントに狙いを定めて採用したい場合に特に効果があります。

▼ダイレクトリクルーティングの参考記事はこちら


リファラル採用で社内のつながりを活用する

リファラル採用は、自社の文化や実情をよく理解している社員から知人を紹介してもらう手法です。現場のリアルな情報が求職者に直接伝わりやすいため、入社後のミスマッチを最小限に防げるメリットがあります。

この制度を効果的に機能させるには、紹介者への謝礼制度を設けたり、紹介手続きのハードルを下げたりする工夫が必要です。社員個人の人間関係に依存する手法であるため、万が一選考で不採用となった場合には、紹介してくれた社員への丁寧なフォローや配慮が欠かせません。

運用上の配慮は必要ですが、リファラル採用はコストを抑えつつ定着率の高い人材を獲得できる効果的な施策の一つです。

採用サイト・オウンドメディアで自社の魅力を発信する

採用サイトやオウンドメディアでの継続的な情報発信は、企業名での指名検索や直接応募につながる母集団を自ら育てていくための施策です。

求人媒体だけに依存した採用活動は、掲載を止めた瞬間に接点が途切れてしまうデメリットがあります。しかし、自社メディアで発信を続ければ、情報が資産として蓄積され、中長期的な採用基盤として機能するでしょう。

また、社員インタビューやリアルな環境の雰囲気など、文字数やフォーマットが限られた求人票では伝えきれない魅力を届けられる点もメリットの一つです。こうした発信を通じて求職者が抱える応募前の不安を解消することで、自社への志望度を高める効果が期待できます。

採用サイトを使った発信を検討する際は、以下の記事も参考にしてください。

トランジション採用で即戦力人材を確保する

正社員としての採用は、実際に入社してみないと業務への適性や企業文化との相性が分からないため、どうしてもミスマッチのリスクが伴います。そこで有効なのが、まずは業務委託として関わりながら実務能力や相性を確かめ、双方の合意のもとで正社員化を検討できる「トランジション採用」です。

トランジション採用は、企業と候補者の双方がしっかりと納得したうえで正社員への移行を進められるメリットがあります。ただし、事前に業務委託の期間を挟むからといって、正社員化後の育成がまったく不要になるわけではありません。

実務への立ち上がりはスムーズに進みやすいですが、組織にしっかりと定着してもらうための継続的なフォローは欠かせません。実際にこのトランジション採用を経て入社に至った事例については、以下の記事で紹介しています。

新卒採用と中途採用で採用戦略はどう変わるか

新卒採用と中途採用において、採用戦略として策定すべきプロセスや項目自体に違いはありません。しかし、それぞれの戦略を立てる上でベースとなる意思決定の前提となる考え方が大きく異なります。

新卒採用は「将来性」と「育成」を軸に考える

新卒者は実務経験を持たないため、現時点のスキルではなく「自社の価値観と合うか」「どれだけ成長できそうか」といったポテンシャルを見極めることになります。そのため、入社後の育成を前提とした戦略設計が不可欠です。

具体的には、入社後にどのような研修やOJTを行い、どの程度の期間で戦力化を目指すのかまで、採用段階で決めておきましょう。たとえば営業職であれば「1年目は基礎研修とOJTで顧客対応の型を学び、2年目以降に裁量を広げる」といった具合に、育成ステップを明確にしておけば入社後のギャップを未然に防げます。

したがって、新卒採用においては「まだキャリアが形成されていない人材を自社でどう育てていくか」という視点が欠かせません。育成体制と採用をセットで考えてこそ、新卒採用は初めて効果的に機能します。

中途採用は「経験」と「自社の課題」の接続を考える

中途採用の戦略設計において軸となるのは、「候補者の経験」と「自社が解決したい課題」をどう結びつけるかの視点です。

すでに実務経験を持つ中途人材には、即戦力として入社後すぐに成果を出すことが期待されます。そのため、立派な経歴を持っているかではなく、その能力が自社のどの課題を解決できるのかの見極めが重要です。

たとえば営業経験者を採用する場合、「営業経験がある」という事実だけで判断すると期待した結果が得られないことがあります。失敗を防ぐには、自社の課題が「新規開拓」か「既存顧客メイン」かを明確にしたうえで、候補者のスキルがどちらで活きるのかを照らし合わせることが不可欠です。

このように、候補者の持つ経験を自社の業務に当てはめて考えることが、中途採用を成功に導くポイントとなります。

採用戦略は「採用して終わり」にしない

ここまで解説してきた採用戦略の設計や具体的な施策は、無事に人材を採用できた時点で完了するものではありません。その後の状況に合わせて継続的に以下のような運用と改善を繰り返してこそ、初めて自社の事業成長という本来の成果につながっていきます。

採用基準と現場の認識を合わせる

採用活動において、人事担当者だけで採用基準を決定してしまうのは危険です。経営層が描く理想の人物像と、現場が日々の業務で直面している課題や必要とするスキルには、ズレが生じていることも珍しくありません。この認識の乖離を放置したまま選考を進めると、入社後に「思っていた人材と違う」といったミスマッチを招く原因となります。

こうした事態を防ぐためには、経営層や現場責任者と採用基準をすり合わせておくことが欠かせません。具体的な対策として、選考の初期段階から現場責任者に面接へ同席してもらったり、評価シートの基準を事前に関係者全員で共有したりするのが効果的です。

採用は決して人事部門だけの業務ではありません。組織全体を巻き込み、全社で取り組むべき重要なプロジェクトとして捉える考え方が採用を成功に導きます。

入社後の活躍・定着まで設計する

人を採用して終わりにせず、入社した人材がしっかりと会社に馴染み、成果を出せるようになるまでのプロセスをあらかじめ戦略に組み込んでおくことが必須です。

どんなに自社にマッチした優秀な人材を採用できたとしても、入社後のフォローアップが不十分であれば早期離職を招き、それまでにかかった採用コストがすべて無駄になってしまいます。これを防ぐためには、研修やOJT、定期的な1on1ミーティングなどを通じて、新入社員が抱える不安や理想とのギャップにいち早く気づけるサポート体制を整えておくことが重要です。

特に入社直後の数ヶ月間は、事前に期待していた業務内容や職場環境との間にギャップを感じやすい不安定な時期であるため、企業側からの意識的なフォローを行なってください。採用戦略における本当のゴールは、採用した人材が入社後に定着し、自社で活躍し続けてくれることにあるのです。

採用実績をもとに戦略を更新する

採用戦略は実際の選考結果や現場からのフィードバックをもとに見直し、次の採用活動へ活かしていかなければなりません。

当初立てた戦略が常に正解とは限らないため「入社した人材が現場で活躍できているか」あるいは「選考で見送った基準が本当に適切だったのか」の定期的な振り返りが不可欠です。こうした検証の繰り返しが戦略の精度を高めます。

具体的には、半期や年次などの節目で採用した人材の定着率やパフォーマンスを確認し、求める人物像や採用チャネルの選定を適宜アップデートしていきましょう。自社で客観的な振り返りを行うのが難しい場合は、外部の専門家の知見を借りることも検討してみてください。

このように実績に基づいた戦略の更新を継続していくことが、精度の高い採用を実現するための基本です。

採用戦略に関するよくある質問

Q1. 採用戦略と採用計画・採用施策の違いは何ですか?

採用戦略は「誰を・なぜ・どう採用するか」を定める根本的な意思決定です。これに対し、採用計画は戦略を人数・時期・予算に落とし込んだ「具体的なスケジュール」であり、採用施策は求人媒体の選定など「戦略を実行するための手段」を指します。

これら3つを混同せず、上流の戦略から順に設計していくことが、再現性の高い採用活動につながります。

Q2. 採用戦略はどのくらいの頻度で見直すべきですか?

半期から1年を目安に見直すのが一般的です。ただし、選考状況や事業計画に大きな変化があった際は、その都度柔軟に見直すことをおすすめします。

一度決めたら終わりではなく、定期的にアップデートする前提での運用が欠かせません。

Q3. 中小企業やスタートアップでも採用戦略は必要ですか?

必要です。むしろ採用に割けるリソースが限られている企業ほど「何を優先すべきか」を明確にする採用戦略が効果を発揮します。

大企業の手法をそのままなぞるのではなく、自社の強みを踏まえた独自の戦略設計が不可欠です。

Q4. 採用戦略の実行にはどれくらい費用がかかりますか?

すべて自社で完結させる場合、費用の大部分を占めるのは求人広告費です。一方、採用代行やコンサルティングを活用する場合は、月額固定や成果報酬などサービスによって料金体系が異なります。

自社のリソースや採用課題に合わせて、内製と外部活用を組み合わせるのが効果的です。

採用戦略を「誰を・なぜ・どう採用するか」の設計として実践しよう

「採用できないから求人媒体を変える」のではなく、その前に「誰を、なぜ採るのか」「その人はなぜ自社を選ぶのか」を設計することが採用戦略です。採用戦略とは単なる人数合わせの計画ではなく、経営課題を解決するために「事業と人材をつなぐ」重要な土台となります。

  • なぜ採用するのか
  • どんな人材が必要なのか
  • その人材は何を求めているのか
  • 自社は何を理由に選ばれるのか
  • どの採用チャネルで出会うのか

この5つの意思決定を固めたうえで、初めて採用施策が機能するのです。新卒と中途で考え方を変え、採用して終わりにせず定着まで見据えて運用を続けることが欠かせません。

自社だけで採用戦略の設計や採用活動全体の見直しを進めるのが難しいと感じる場合は、「Workship CONSULTING」のような外部の専門家に相談し、自社に合った採用の仕組みを一緒に作り上げていくことも有効な選択肢です。

(執筆:松尾隆弘 編集:猫宮しろ)

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