アディダスのクリエイティブから学ぶ、これからの広告・SNSマーケティング戦略

アディダス(Adidas)はサッカー日本代表のユニフォームを制作していることでも知られている、超有名スポーツ用品メーカー。ドイツで誕生した同社は現在バイエルンに本社を置いており、その製品は世界中の人びとに愛されてきました。

今回はそんなアディダスの人気を後押ししてきたマーケティング戦略に注目。アディダスならではの発想や強みとはどのようなものなのでしょうか。

変化の一途をたどる、これからの広告手法

時代とともに変化する広告媒体

かつては広告といえばテレビや雑誌、看板などが主流でした。しかし時代の移り変わりとともに、人びとが注目する媒体も変化しています。いま消費者の目が向いているのはいわゆるマスメディアだけではありません。

マスメディアのかわりに、私たちは便利で簡単にシェアできる魅力的なコンテンツを手にしました。では、現代にはどのような要素が広告の核となり得るのでしょうか。

ストーリーテリングによる販促が次世代広告の主流に

私たちが誰しも持っている感情は、行動に繋がります。消費者がSNSに時間や感情を費やす現代において、広告の核となるのがストーリーテリングです。先見性のあるブランドはこのことをきちんと理解しており、ストーリーテリングを活用して販売を促進しています。

アイデアと感情を組み合わせることによって、顧客はブランドと感情や信念などを結びつけることができます。マーケティングのコンセプトとしてストーリーテリングを採用し、長年の歴史をいかして消費者との関係を築いているのが、今回取り上げるアディダスなのです。

2015年に、アディダスは「積極的なストーリーテリング」をおこなうことを目標としてクリエイティブエージェンシー「72&Sunny」を雇いました。これがアディダスの広告にどのような違いもたらしたのか、探ってみましょう。

17年前から振り返るマーケティングの歴史

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』の印象的なジャージ

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アディダスの歴史を17年ほど前まで振り返ってみましょう。2001年の映画『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』ではアディダスのジャージが印象的なかたちで登場しました。

ベン・ステイラーが演じるキャラクターとそのふたごの息子たちは、画像からもわかるように普段はアディダスの赤いジャージを着ており、なんと葬儀のときでもアディダスの黒いジャージを着ています。これは一見ベーシックな製品の露出方法のようですが、こうした例によって人びとに愛される「かっこよさ」が確立されていったのです。

このような露出のしかたはストーリーテリングなアプローチであるといえます。そして、こうしたアプローチによって消費者の生活に感情的で強力な影響を与えることは、先述したとおりとても重要です。

アディダスの事例から学ぶ、ストーリーテリングのポイント

1. 「Impossible is Nothing」キャンペーン

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消費者との感情的繋がりが核となるストーリーテリング。アディダスのマーケティング戦略は、これをファインアートのレベルまで高めています。

10年以上前のキャンペーンであるにもかかわらずいまだに話題になるのが2007年の「Impossible is Nothing」です。

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このキャンペーンの成功の理由はテクノロジーやモデルではありませんでした。ストーリーのリアルさやオーセンティックさが消費者に強い印象を与えたことこそが、キャンペーンを成功に導いたのです。モハメド・アリの名言であるこの言葉は、敗北から栄光を掴みとる物語と繋がっています。アディダスは「Impossible is Nothing」によって、勝利の精神とブランドを結びつけることに成功したといえます。

2. 女性を支援する「#MyGirls」プロジェクト

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アディダスはプロジェクトなどを通じて重要な社会問題にも取り組んできました。2013年の「#MyGirls」プロジェクトもその一環です。

「#MyGirls」は女性選手の活動を讃え、女性を支援するプロジェクトでした。国際女性デーにマーケティングキャンペーンをはじめ、複数のチャネルにコンテンツを積み重ねることで世界中のスポーツウーマンのストーリーを共有したのです。

アディダスはスポーツ界における女性の活躍を若い世代に伝える#MyGirlsオンラインマガジンにも広告を載せました。このキャンペーンは女性の活動を後押しし、無気力だった若者にさえ影響をおよぼしました。

3. 著名人を取り上げた「Superstars」キャンペーン

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著名人を通してブランドと消費者を結びつけるキャンペーンも実施されました。2015年の「Superstars」ではモバイルでの視聴をターゲットに設定し、スーパースターという概念を再定義する短編動画を制作。ブランドと消費者のあいだにポジティブな繋がりを持たせています。

4. へイターを扱った「Blah Blah Blah」キャンペーン

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独自のストーリーとそれに関連する他者のストーリーを組み合わせることによって、アディダスはストーリーテリングをより強化しています。プロのスポーツ選手とスポーツが好きな一般の消費者のあいだにコミュニティー感覚を生み出し、ブランドがより拡張・浸透するための仕組みを作っているのです。

2016年のキャンペーン「Blah Blah Blah」では、へイター(憎悪主義者)を取り上げました。「へイターがなんと言おうが気にするな」という強いメッセージとともに、はじめの一歩を踏み出す人に向けて「First Never Follows」というポジティブなメッセージも伝えています。

《ストーリーテリングというトレンドを先取りしたアディダス》

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取り上げてきたいくつかの例からもわかるように、アディダスはストーリーテリングを活用したプロモーション戦略によって、数あるスポーツブランドの中で自らの地位を確立してきました。

改めてアディダスの広告活動を振り返ってみると、マーケティングのホットトピックとしてストーリーテリングが取り上げられるずっと以前からトレンドを先取りしているという事実に驚かされます。これから先さまざまなブランドのストーリーテリングに注目することによって、その背後にある信念を学ぶことができるはずです。

アディダス流、ソーシャルメディア活用法

Twitter

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アディダスは大規模な企業なので、ビジネスにはいくつかの分野があり、それぞれに独自のソーシャルメディアが必要とされています。そして、アディダスが活用しているソーシャルメディアのうちのひとつがTwitterです。今回は部門ごとのアカウントではなく、もっとも一般的な@adidasのアカウントに焦点をあててみましょう。

@adidasのフォロワーは2018年6月現在約345万人。過去のUEFAチャンピオンズリーグの決勝戦では、リアルタイムの情報を届ける目的でこのアカウントが使用されました。選手がゴールを決めた際に、アディダスの製品を使用している選手の画像に人気のハッシュタグをつけて投稿する、というようなかたちでTwitterを活用したのです。このようなマーケティングの成功により、アディダスのアカウントは多くのエンゲージメントを得ました。

Facebook

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Twitterと同じくFacebookにも多くのアカウントがあり、こちらにもたくさんのファンがいます。アディダスはソーシャルメディアキャンペーンを成功させるために、ソーシャルメディア同士の連携にも気を配っているようです。Facebookに自社のYouTubeの動画を投稿する、といった取り組みがこれにあたります。

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さまざまなアカウントを組み合わせれば組み合わせるほど、各アカウントの閲覧者が増え、コンテンツがシェアされる回数も増えます。こうしたアカウントはアディダスの顧客であるスポーツ選手やスポーツチームなどとも連携しており、新しい製品をリリースした際に顧客がその情報をシェアする、という関係性が築かれています。

YouTube

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TwitterやFacebookと同じく、YouTubeでもヘッダーとロゴをマッチさせることによって構造を強化しています。YouTubeにおいて便利なのは、プロフィール情報と「おすすめのチャンネル」のセクションです。ここに本体のアカウントと関連する部門ごとのチャンネルを載せることができます。

それぞれのチャンネルは特定のキャンペーンのための動画を配信していますが、本体のアカウントは特定のエリアにフォーカスしているわけではありません。本体のアカウントは部門ごとのアカウントのリーダー的存在で、詳細については他のアカウントを視聴するように促しているのです。

本体のアカウントにあまり多くの動画がないかわりに、他のアカウントのプレイリストがそれを支えるという構造によって、関連するコンテンツを自然に視聴者が行き来するようになっています。

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アディダスのYouTubeの活用力は驚異的で、チャンネルの視聴回数は過去の26倍にもなり、キャンペーン期間中の加入者数は倍増しました。YouTubeのロードブロッキングによってモバイル端末で400万人以上のユーザーを獲得し、「All-In」の動画は米国で200万以上の視聴数を記録しました。数字からみても、YouTubeをとてもうまく活用していることがわかります。

Instagram

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もしSNSマーケティングを検討しているなら、アディダスがそうしたように、Instagramのような視覚に訴えかけるソーシャルメディアをおおいに活用しましょう。アディダスはInstagramを活用して製品の魅力を視覚的に伝えてたくさんの「いいね!」を獲得しており、アスリートや製品についてのコンテンツ作りにもこれを活用しています。

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Instagramを利用する目的は、商品を販売することだけではありません。優れたビジュアルコンテンツの積み重ねによってブランド意識を高め、消費者に「アディダスの製品を手に入れたい」と思わせることにも役立ちます。アディダスが得ている大量のエンゲージメントの影響力は絶大で、ソーシャルメディア上での影響力を測るKloutスコアもかなり高く、他のソーシャルメディアにもポジティブな影響を与えています。

Instagramの活用例として、FIFA女子ワールドカップ開催時に行われたキャンペーンが挙げられます。アディダスはモントリオールでおこなわれたFIFA女子ワールドカップにマッチボールを提供し、ボールの写真をInstagramに投稿しました。この際、モントリールという場所を検索したユーザーもコンテンツを見つけられるように、投稿のロケーションをモントリオールに設定したのです。アディダスはこうした工夫により、ブランドの認知度を高めてきました。

アディダスの広告クリエイティブがもつ魅力

スター選手を登用している

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アディダスが新しいサッカーシューズを売り出した際に行った「There Will Be Haters」のキャンペーンは、スターの起用によって広告や動画が数多くシェアされた例のうちのひとつです。キャンペーン自体が優れていなかったわけではありませんが、スターの存在が大きな助けになったことは間違いないでしょう。

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アディダスは常に、消費者に「こんなふうになりたい」という憧れを抱かせるための工夫をしています。しかしコンテンツそのものが魅力的なので、必ずしもアディダスに憧れを抱いていなくても、消費者は結局動画や宣伝に注目してしまいます。

スターを起用することはファンが広告を見ることに繋がります。たとえファンが製品を購入したいと思っていなくても、コンテンツをシェアしてくれるファンはたくさんいるのです。このようにして、アディダスはスター選手と有益な関係を結んでいます。

初心者からプロまで幅広くカバー

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アディダスの競合として挙げられるのが、ナイキです。ナイキもアディダスも優れたコンテンツを発信して大きな反響を得ており、両者は似ているとも捉えられます。しかし、ナイキと比べるとアディダスは強烈な印象をあたえるようなブランドではないかわりに、初心者からプロフェッショナルまで幅広いターゲットをカバーしているのです。ひとことであらわすなら「グッドガイ」的なブランドであるといえます。

もちろんナイキが「バッドガイ」であるというわけではありません。しかし、たとえばナイキはクリスティアーノ・ロナウドを新しい靴のキャンペーン動画に起用し、「この世のものとは思えないほどのスーパースター」として描きました。

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一方アディダスは、選手を世界的なスターとしては描きますが「世界で一番」という見出しをつけたりはしません。クリスチアーノ・ロナウドは栄誉ある賞を受賞しており、実力がある選手であることは間違いありませんが、アディダスが契約しているメッシもまた賞を獲得しています。

こうしたスター選手の取り上げかたにも、アディダスの特徴があらわれています。

まとめ

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ここまでアディダスのマーケティングやソーシャルメディアの活用法、強みなどを探ってきました。これらに基づいて、覚えておくべきポイントをまとめてみましょう。アディダスのマーケティングに学ぶべき優れたポイントは、以下の4つです。

  • ソーシャルメディアのアカウントの使い分けなど、明確な戦略がある
  • ビジュアルコンテンツが優れている
  • リアルタイムのマーケティングでエンゲージメントを得ている
  • 成功には欠かせないすばらしいコンテンツを配信している

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アディダスはスポーツ用品業界のリーダーであり、最先端のデザインを基盤としたオーセンティックでインスピレーショナルな存在として尊敬を集めてきました。そして、その核となっているのはアスリート・スポーツ・製品に対する情熱です。

アディダスはスポーツアリーナや製品に、ファッションや音楽からのインスピレーションだけでなく、絶えず成長するライフスタイルの重要性を取り入れることにも取り組んでいます。そしてそのような取り組みが消費者にとってブランドを特別なものにしているのです。

(翻訳:Asuka Nakajima)

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