中小企業のSNS採用は何を投稿すべき?若手に届くTikTok・Instagram活用法
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ここは株式会社健王建材。今日も今日とて、若手人事のひよ吉は、自分のデスクでスマホを凝視しながら眉間に深いシワを寄せていた。
彼の視線の先で激しくチカチカと、色とりどりのエフェクトを振り撒いているのは、巷で流行りのTikTok動画である。
「……うーん、わからん。わからなすぎる。うちの社長に『これからはSNS採用だ! 流行りのTikTokをやれ!』って言われたけど、こんなキラキラした世界、うちみたいなしがない建材屋が入っていける隙なんて1ミリもなくない……?」
思わずスマホを放り出したひよ吉。そこへ、待ってましたと言わんばかりの足音が近づいてくる! 人材サービス業界歴20年のベテラン・ミスターHRだ!
【話し手】

歴20年のベテラン採用コンサルタント。このたび健王建材の人事部に採用コンサルとして参画することになった。
【聞き手】

健王建材の総務兼人事担当。「若くてリテラシーのある人」を採れと社長に言われている。これまでの施策を惰性でなんとなくやっているが、応募数は右肩下がり。うーん、どうしたもんかしら。
目次
ミスターHR:
おやおや、ひよ吉さん。TikTokの画面を見ながら、まるで現代の利器を恐る恐る触る原始人のような顔をしていますね。
迷える人事:
ミスターHR!なんだかどんどん口が悪くなっていくような……。いや、社長にTikTok採用をやれって言われたんですけど、正直、手も足も出ないんですよ。
SNSなんて言ってしまえば若者の遊びだし、うちみたいな地味な中小企業が参入しても、スルーされるのがオチじゃないですか。
ミスターHR:
ふむ。あなたはまだ、SNSを「バズらせるための遊び道具」とでも思っているようですね。
迷える人事:
えっ、違うんですか? SNSって、おもしろい動画を撮って、何万回も再生されないと意味がないんじゃ……。
ミスターHR:
大きな勘違いです。採用におけるSNSの役割は、決してエンターテインメントではありません。とくに資本力で劣る中小企業にとって、SNSは求職者からの共感を一気に勝ち取る重要なツールですよ。
迷える人事:
共感を勝ち取る?よく分からないけど、結局、会社の認知度を上げて応募数を増やせればいいんですよね。
それだったら、うちはハローワークとか大手求人サイトにずっと広告を載せてますし……それで十分じゃないんですか?
ミスターHR:
では聞きますが、ハローワークなどで仕事を探す人は、何を基準に検索しますか?
迷える人事:
それは、給与とか、休日数とか、勤務地とか……条件面ですよね。
ミスターHR:
その通り。そこは数字を中心とする条件でしか判断されない、残酷な比較検討の場です。一方、SNSで情報を集める若年層は、数字の裏側にあるリアリティを求めています。
迷える人事:
やはりリアリティ、ですか。これまでも何度か出てきている言葉ですね。
ミスターHR:
「業界的に怖そうだけど、実際はどうなんだろう」「古い体質に見えるけど、人間関係が良ければ、条件自体はアリだな」。
求職者は、求人票の文字から漏れ落ちるような、会社のリアルな空気を知りたいんです。
迷える人事:
なるほど。SNSが採用においても効果的なのはわかりました。
それじゃ聞きたいんですけど、TikTokとInstagram、一体どっちに力を入れればいいんですか? 両方はさすがにキャパオーバーです!
ミスターHR:
その2つは、役割が違うんです。どっちがいいと簡単に決めることはできません。
まず、TikTokは認知の入り口です。
TikTokのアルゴリズムは、フォロワー数に関係なく、そのコンテンツに興味がありそうな人に動画を届けます。つまり、あなたの会社をまったく知らない層に「おっ、おもしろそうな会社があるな」と思わせる出会いの場です。拡散力が高いのも特徴ですね。
たとえば、何か手土産を買いたくてデパ地下をふらふらしていると、見たこともない美味しそうなお菓子が目に入ることってありませんか? 外国で流行ってるお菓子の存在を知って、遊び心で買ってみたりもしますよね。そんな風に、TikTokはまだ広く知られていない会社が認知を獲得する場になるんです。
迷える人事:
デパ地下、大好きですよ! 取引先に行く前にしょっちゅう行きます。じゃあ、Instagramは?
ミスターHR:
Instagramは、いわば信頼構築の場です。
TikTokで「ここ、いいじゃん」と感じた求職者は、プロフィール欄からInstagramに飛び、過去の投稿を遡ります。そこで日々のランチ風景や、社員の日常的なやり取りを見て、「ここなら自分も馴染めそうだ」という確信を得るわけです。
デパ地下の例えでいうなら、お菓子や惣菜を試食して気に入ってファンになり、ついに本店まで行って買い付けるようになった! みたいな感じでしょうか。TikTokで認知を得て、Instagramでより深いファンになってもらう流れです。
ただし、これはあくまでもたとえなので、何がなんでもTikTokを先にやるべき!というわけではありません。どちらのSNSをメインで使うかは、会社の状況と目的によります。
健王建材の場合は、TikTokでバズらせて多くの認知を得る路線よりも、コツコツInstagramで信頼を構築していくほうが向いているんじゃないでしょうか。
迷える人事:
よし、じゃあ早速うちも投稿してみます!まずは会社の外観を……。

ミスターHR:
ふう〜〜〜……(深くため息をつく)。
迷える人事:
ど、どうしたんですか? ダメですかね、この写真。
ミスターHR:
企業SNSの最初の投稿として、あまりにもセンスがなさすぎますよ! そもそも曇り空ってなんですか、せめて晴れの日を選びましょうよ。
そもそもひよ吉さん。あなたは、わざわざ会社のSNSで、曇り空だとか古びた建物の外観だとか、そんな写真を見たいですか?
ていうか、この写真どっかで見たことあると思ったら、採用サイトからの流用じゃないですか!もっと良い写真に差し替えろって言ってたばかりでしょ!
お願いがあります。採用サイトを放置しないでください
Workship MAGAZINE
迷える人事:
ば、バレましたか。
ミスターHR:
オウンドメディアリクルーティングへの移行、つまり自社で情報を発信する力を蓄えるためにも、SNSの活用は避けて通れません。ラクをしようとせず、真面目に向き合ってください!
迷える人事:
はいはい、分かりましたよ……。
でも、実はここだけの話、Instagramのアカウントだけこっそり始めてみたんですけど、全然フォロワーが増えなくて。
ミスターHR:
おっと、ひよ吉さん! そもそも採用活動におけるSNS運用では、必ずしもフォロワーを増やすためだけに頑張る必要はないですよ。
たとえばひよ吉さん、あなた自身が転職活動をしているとしますよね。条件の合う企業を見つけて、応募しようか迷っている段階だとします。そんなとき、その企業のInstagramを見たとして、そのアカウントを「フォロー」しますか?
SNSの特性上、どうしてもバズる! とかフォロワー増! とか考えてしまいますが、インフルエンサーを目指すわけではないのだから、そこにこだわる必要はないんです。企業のリアルが伝わるような投稿を続け、求職者の不安を払拭し、エントリーを稼げれば、目的は達成されているのですから。
迷える人事:
え、そうなんですか! まずはフォロワーを増やさないと、話は始まらないんだと思ってました。
じゃあ、改めて投稿をしていくとして。これまでの学びを活かして、皆の日常を何枚か投稿したんですけど。

ミスターHR:
……ひよ吉さん。「リアル」ってこういうことじゃないんですよ。
「映えているかどうか」は置いておくとしても、方向性も意図もバラバラ。こんな写真ばかり見せられて、誰が「ここで働きたい!」と思いますか?
迷える人事:
ひ、ひどい! じゃあ何を投稿すればいいんですか。
ミスターHR:
おさらいしますが、Z世代を中心とする求職者たちが求めているのはリアリティです。
とは言っても、ただ闇雲に会社の日常を投稿したって、効果はありません。建物の外観や社長の顔ばかり載せていたって、それじゃ求人サイトの延長線でしかないじゃないですか。ちゃんと求職者が「この企業に馴染めるかどうか」を判断できるような写真を、狙って投稿すべきかと!
迷える人事:
なんの意図もなく、映えない写真ばっかり載せてても、そりゃ意味ないか。じゃあ、具体的にはどういう写真を投稿すればいいんですか?
ミスターHR:
たとえば「20年目のベテラン社員が食べている弁当」や「新卒1年目が失敗したときに、先輩がかけた一言」といった、日常の働く姿を切り取ったリアルな一コマ。それこそが、求職者が喉から手が出るほど欲しがっている情報です。
あとは、「入社2年目の社員に突撃インタビュー!」のような投稿も良いですね。このときに大切なのは、採用サイトでは見られないような、自然な表情を選ぶこと。そうですね、缶コーヒーを飲みながら休憩している写真なんか、ピッタリだと思いますよ。
もう一度言いますよ。SNSに投稿する写真は、リアルな日常を伝えるものにする。そして、その企業で働く自分の姿を、求職者にイメージさせるのです。
迷える人事:
自社に興味を持ってもらうためには、「人」に焦点を当てるってことですね!
ミスターHR:
その通り!

迷える人事:
ミスターHR! どうでしょう、アドバイスを参考に我が社のSNSアカウントを改善してみました!
ミスターHR:
おお! とっても素晴らしいじゃないですか、普段どんなふうに皆さんが働いているのか、リアルな感じが伝わってきます。
迷える人事:
なんだか、SNSに対するハードルが下がってきた気がします。綺麗な動画じゃなくて、かといって映えない写真でもなく、リアルな姿を見せればいいんだ。
ミスターHR:
その意気です!
最後に、一つだけ追加でアドバイスさせてください。それは、どんなにゆるくてもいいから、コツコツ継続することです。
1ヶ月で結果が出ないからとやめてしまうのは、種をまいて翌日に掘り返すようなもの。求人サイトは「2ヶ月で切れ!」と話しましたが、SNSは積み重ねを意識しましょう。
迷える人事:
わかりました! まずは建材屋のリアルな1日を、新卒メンバーと協力して、投稿し続けてみます。
ミスターHR:
フフフ、いいですね。まずは週に1回、あるいは2週に1回でもいい。定期的に写真や動画をアップしてみてください。今度こそ、空の写真でお茶を濁すのだけはやめてくださいよ。
それが、いずれ大手企業には真似できない、最強の採用資産になるはずですから。
(執筆:北村有 取材・編集:夏野かおる)
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