10億ドルECの企業Quikrに買収された車の修理アプリ『Stepni』。UX担当者が語るサービス設計のコツ

10億ドルECの企業Quikrに買収された車の修理アプリ『Stepni』。UX担当者が語るサービス設計のコツ

インドのバンガロールに本社をおくQuikrは、人材サービスやECコンサルティング、車の販売など幅広い事業に取り組む年商10億ドルの大企業です。日本でいう楽天のようなものでしょうか。そんなQuikrが、Stepniという車の所有者とサービスセンターをマッチングさせるアプリを金額非公開で買収したのが2016年のこと。

この記事では、StepniのUXデザインを担当していたマリガンカ・ブーヤン氏が、サービス設計のコツをご紹介します。

Stepniとは

Stepniは車の所有者と地元のサービスセンターをつなぎ、メンテナンスや修理サービスを受けられるアプリです。

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このプロジェクトにおいてUXデザイナーが設計したのは、モバイルアプリやWebアプリのUX にとどまらず、設計のプロセスやストラテジーにまで及びます。ブーヤン氏によると、設計段階にUXデザイナーが関わったことで、より良いサービスが作れたといいます。

プロジェクトにおけるUXデザイナーの役割

プロジェクトにおける私の役割は、Stepniの第一バージョンをローンチするために、情報アーキテクチャ、ユーザーフロー、ワイヤーフレーム、プロトタイプの設計をおこなうことでした。また、サプライサイドのパートナーとともに創業者たちを手助けしました。

Stepniの設計プロセスで良かったこと

1. 情報ヒエラルキーを明確にした

まず、ユーザーフローを設計する際に役立つように、プロジェクトに関するあらゆる要素を書き出して情報ヒエラルキーを作りました。対象を小さなパーツにわけて、それらをすこしずつ掘り下げます。

今回のプロジェクトについても、まず地元のガレージが提供するサービスをリストアップして分類しました。ドアや泥よけの傷、フロントバンパーのくぼみなどは「へこみと傷」、ホイールの調整、タイヤのパンク、ホイールのバランシングなどは「ホイール関連のサービス」というように、こまかく分類したのです。

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▲初期に作成したインフォメーションヒエラルキー

2. より多くの人に使ってもらえる仕様を意識した

国土面積が広いインドには、多様な宗教、言語、風習が混在しています。そんなユニークなフィールドで大衆に利用される製品を設計するにあたって、設計チームは次のような障害を考慮しました。

(1) 自動車整備用語に慣れていないユーザーが多い

ユーザーの中には、部品の名称や修理メニューなどの基本的な用語を理解できない層もいると考えられています。どんなバックグラウンドをもつユーザーにとっても明快なインターフェースを設計しなければいけません。

(2) 多くのユーザーは修理サービスの品質を判断できない

知識不足などにより、誤った、または不必要な修理にも応じてしまうユーザーが多いというのが現状です。こうした状況は、自動車修理サービス業界の不透明さにもつながってしまいます。

(3) ガレージによってサービスや価格が異なる

ガレージは独自の基準によってそれぞれのサービスに価格を割り当てています。Stepniは価格の標準化を目的のひとつに据えました。透明性と信頼を築くのに役立つような設計をする必要があります。

3. インタビューでユーザーニーズを把握した

ユーザーのニーズや、サービスを取り巻く環境を具体的に把握するには、実際のユーザー層にインタビューをするのが最適な手段です。ブーヤン氏は友人や同僚などにインタビューをしたと言います。そしてその結果、ユーザーを以下の3種類に分類しました。それぞれの割合まで割り出すことができました。

  1. 車に起こりうるトラブルをまったく把握していない – 約10%
  2. 点検を受けることに興味がある- 約30%
  3. 車に起こりうるトラブルをある程度把握していて、修理を希望している – 50%以上

インタビューによって、私たちにとっての主な対象は「車の問題をある程度把握していて、修理を希望している」ユーザーであるということが明確になりました。

4. ユーザーフローの設計

把握した情報をもとに、以下の図ようにユーザーフローを設計していきました。

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5. データをもとにした価格の設定

Stepniは車の所有者に低価格で質の高いサービスを提供することを目標にしていました。そして価格の設定と標準化にあたって重要な要素のうちのひとつが、価格を設定する根拠となったものを把握することでした。

私たちは価格設定のアルゴリズムに関連するすべてのシグナルを列挙し、それぞれに異なるスコアを割り当てることによってそれらをフィルタリングしました。たとえば、下図の「AGE OF CAR」、車の年数は価格決定に与える影響が少ないので低いスコアになっています。

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ガレージを運営する費用の決定にあたって、Housing.comを通じて地域別の地理的なデータも利用しました。不動産コストが高い地域にガレージある場合はサービスコストも高くなるので、House.comが提供しているような情報が必要だったのです。

製品化と買収

アイディアが洗い出せたところで、製品化に向けてスケッチします。まずは手書きで必要な項目を足したり引いたりしていくことで、抜け漏れを防げます。

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次に、スケッチのアイデアをプロトタイプに落とし込み、数名と共有して予約機能を確認しました。

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アプリのインターフェースに加えて、私はアプリのマイクロコピーを軽快で明るく、たのしいものにするように努めました。

  • 「車がシャワーを浴びたがっているみたいです」
  • 「予約が確認できるまで、蒸しパンでも召し上がってお待ちください」

など、国民性に受け入れられるように、アプリのキャラクターを設定したのです。

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Stepniがユーザーにもたらしたもの

Stepniは結果的に車の所有者にポジティブな影響を与え、予約件数の成長率は毎月100%以上でした。

リソースの問題や財政的な制約によって、リリース前の時点では完璧ではなかったサービスですが、まずは世の中に提示することで、斬新なソリューションを提供できたと考えています。

そしてその結果、12ヶ月後にQuikrという10億ドル規模の企業がStepniを買収するに至ったのです。

サービス開発者にとって最も時間をかけるべきプロセスは設計です。ぜひ参考にして見てください。

(翻訳:Asuka Nakajima)

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