がんが突然やってきた日。フリーランスの私が仕事を止めずに乗り越えた方法

がんが突然やってきた日。フリーランスの私が仕事を止めずに乗り越えた方法

突然ですが、今あなたががんになったら、破産せずに乗り切れそうですか?

なんでこんな質問をするのかというと、私自身がつい先日、突然がんになり、入院・手術を経験したからです。

「2人に1人ががんになる」と言われる時代、「いつか年老いたらがんになるかもしれないな…」と思っていました。でも違いました。現役バリバリの今でした!

というわけで今回は、フリーランスや自営業者が突然がんになったらどうすればよいのか、極力具体的にお伝えします。

金指 歩
金指 歩

株式会社となりの編プロ 代表取締役/編集者・ライター。大学卒業後に大手信託銀行で住宅ローンや投資信託などの営業を担当。その後、不動産関連会社、証券会社、ITベンチャーを経て、2017年12月よりライターとして、2020年頃より編集者として活動。2023年12月に法人化し、主に金融・ビジネス・人材系のコンテンツ制作に携わっている。(となりの編プロ公式サイト)(X:ayumi_writer

がんは突然やってきた。しかも期末に!

とても健康な30代でした

まずは簡単に自己紹介させてください。私は2017年末にほぼ未経験でフリーライターとして独立し、たくさん働いて、2023年末に法人成りしました。今は超零細の編集プロダクション(以下、編プロ)を経営しながら、取材記事やSEO記事の制作を請け負っています。

フリーライターになった当時は32歳、今は39歳。その間に第一子の出産、第二子不妊、離婚なども経験しましたが、特に大きな病気もなく健康に過ごしていました。

事件が起きたのは、2025年1月でした。偶然にも第二子の妊娠が発覚、今のパートナーとの子どもでした。

ところが喜びもつかの間、妊婦健診の一環で受けた子宮頸がん検診が「再検査」に。そしてその結果、同年3月に「子宮頸がん」が分かりました。しかも「腺がん」という進行の早いタイプでした。

思い返せば、その1年ほど前から不正出血があったんです。でもごく少量でしたし、ちょうど2年前に子宮頸がん検診を受けていたので、まさか不正出血ががんに直結するとは思ってもいませんでした。

私は心から出産を希望していましたが、「赤ちゃんを体外に出せるまで治療を先延ばしにしたら、あなたの寿命が危ない。正確なことは言えないが、2年は保たないと思う」とはっきり言われ、泣く泣く自分の命を優先することに決めました。

ステージⅠながら、約6時間の開腹手術に

こんな感じで急にがんが判明したわけですが、腫瘍が2cm以上あったことから「ステージⅠのB2期」と診断され、「広汎子宮全摘出術」という手術を受けることになりました。開腹して、子宮、卵巣・卵管、骨盤のリンパ節を全部取るため、所要時間は麻酔などの時間も含めて7〜8時間ほど。ステージⅠなのに案外大がかりな手術です。

実際には、以下のスケジュールで入院・手術しました。

  • 3月上旬:子どもの中絶手術(1泊2日で入院)
  • 3月下旬〜4月上旬:子宮頸がんの手術(10泊11日で入院)

手術後の回復はすこぶる順調で、がんの転移もなかったので、すでに経過観察に入っています。5月のGW明けからは取材も再開し、6月には仕事量も元に戻り、多忙な日々を過ごしているところです。

入院前後の休業と仕事の調整は「可能な範囲で」

そんなこんなで今は日常生活を取り戻している私でしたが、入院前後の「仕事との付き合い方」には苦慮しました。ここでは時系列を追いながら、当時の状況や工夫した点を紹介します。

一年で最も忙しい時期に入院・手術

がんが発覚した3月は、仕事の受注量がとても多い時期。自営業者は「信用」が命なので、復帰後のことを考えると、すでに受けた仕事は何としても対応したいところでした。

幸いなことに、この時点ではほとんどの取材を終えていて、3月は編集や校了までの案件進行がほとんどでした。これなら、とにかく早めに仕事を進めれば、手術までにほぼ完了できそうです。よって、中絶手術を終えてからは、とにかく仕事、仕事、仕事!の日々でした。

再入院まではどうしても気が滅入りがちだったので、仕事で気を紛らわせることができてよかったと思います。

手術前に「その後の生活」を極力イメージしておく

がん手術日の決定後は、入院後と退院後の生活への備えを開始しました。当時はまだどこまでがんが転移しているかがわからなかったので、がんの経験者に話を伺い、入院中や退院後にどれだけ仕事ができそうなのか、どんなサポートが必要そうなのかを教えてもらいました。

私はパートナーと同居しておらず、一人で6歳の子どもを育てているので、退院後は確実に仕事と生活を両立させる必要がありました。自分がまったく動けなくなることを想定し、「ファミリー・サポート・センター」など、子育てを支援してくれる団体に登録するなどして、なるべく多くのセーフティーネットを張るようにしました。

「休業しない」という選択

幸いにも、私は編プロを経営しており、執筆はほとんどライターさんに依頼していました。そのため、無理に休業するよりは、案件のスケジューリングを工夫して稼働し続けたほうがよいだろうと判断。ライターさんの執筆期間を入院にかぶせ、入院後に編集するようなスケジュールを組むなどして乗り切りました。

また、集中を要するような執筆や編集の仕事は入院前に終わらせ、入院中はスマホでも対応できそうな仕事だけをやるようにしました。

……と言いつつも、生粋のワーカホリックなので、入院後半にはオンラインミーティングを入れたり、イレギュラーで飛び込んできた記事監修の仕事を受けたりもしました。だって監修記事のテーマが「がん保険」だったんですよ。タイムリーすぎて受けるしかないですよね(笑)。

もちろん入院中、体は思うように動かず、数日間は強い痛み止めが欠かせませんでした。その一方で、臓器の癒着を防ぐために、手術翌日から立ち上がり、歩く練習もしなければなりません。

そこで私は、腹筋を使わないように起き上がりつつ、ベッドにもたれて座るコツを早々に身に付けました。そうして体の回復を優先しつつも、スマホでメールの返信をしたり、パソコンでやりたい仕事の企画書を書いたりしていました。

そして入院中に他部位への転移がないことがわかり、一安心!4月は思ったよりも取引先の動きが穏やかだったため、休息を取れたのも嬉しかったです。

取引先への対応で意識したこと

「無断で締め切りを破ること」だけは避けたかった

入院前後の取引先対応で意識したことはふたつあります。

ひとつは、破りそうな締め切りは遠慮なく調整をお願いすることです。締め切りを守りたいがあまりに調整を申し出ない人の気持ちもわかりますが、締め切りを破ってしまったときに困るのは取引先です。しかも入院中の場合、病状によっては長期間連絡できない可能性もあります。「連絡が取れなくなった人に次の依頼は来ない」と考え、ここは遠慮なく調整を申し出ることにしました。

私の場合は1件だけ、どうしても入院中、しかも手術直後に原稿を提出しなければいけない案件があったので、取引先に事情を説明し、少しだけ締め切りをずらしていただきました。

実際にはもとの締切で提出できたのですが、ご迷惑をかけないために、万が一の備えをしておくことは大事だと思います。

せめてもの「イメージ戦略」

もうひとつは、取引先に事情を伝える際に「がん」という言葉を使わないことです。

というのも、がんと聞くと「なかなか治らない」「死ぬ可能性がある」というイメージが湧きませんか?私は取引先に「再起不能感」を与えるのは避けたいと思い、「婦人科系の疾患」と伝えていました。

また、がんに関するSNSでの言及も避けました。私はしがない自営業者ですが、代表者の健康不安はリスクのひとつになると考えたためです。案件が減る要因は極力排除したいと思い、SNSではがん治療が一段落してから公表しました。

ただし、もしがん治療が長引いて仕事にも影響が出てきた場合には、「がんの治療中です」と公表していたと思います。仕事の問い合わせをいただいたとしても、すぐに対応できない可能性が大きくなるからです。しかしこの場合でも「私はがんの治療中ですが、編プロは稼働しています」などと表現し、仕事を受け付けられることをアピールしていたでしょう。

働けないときこそ感じた「仲間のありがたみ」

がんになって改めて思ったのは「組織を作っておいてよかった!」ということです。

今回、入院前後に走っていた案件をすべて止めることなく進行できたのは、ひとえにライターさんやカメラマンさんなど、外部クリエイターさんたちのおかげです。私が麻酔をしてお腹を切っているときに、原稿を仕上げてくれている人がいる。なんという安心感でしょうか。

また、闘病中は体だけでなく心理的にも負荷がかかるので、「絶対に飛ばない」と言い切れるような方々と仕事ができていてよかったと思いました。

こう書くと、「法人化していたから乗り越えられたってことですよね?」と言われるかもしれませんが、たとえ普段は一人で活動しているフリーランスでも、やはり信頼できる仲間を持っておくのは大事だと思います。同業者が何人かいれば、いざ困ったときに頼れるかもしれません。

ところで、がん治療にいくらかかったの?

医療費のリアル、気になりませんか?

今回は突然がんになった経緯と、仕事の調整に関するあれこれについてお伝えしました。闘病中にどれだけ仕事ができるのか、休業しなければいけないのかは、仕事の内容や病状によってかなり変わりますが……少しでも参考になれば幸いです。

また、入院中にかなり自由に仕事ができたのは、今回「個室」に入院したからです。よって、決して安くはない個室料がかかっています。じゃあ、今回の入院・手術にかかったトータル金額は……?

それは次の記事でまるっと公開したいと思います!ぜひご覧ください!

自営業者のための「がん」サバイバルガイド

(執筆:金指歩、編集:夏野かおる)

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