エンジニアの副業は週1からでも可能?副業の例や探し方も解説
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いま私たちの生活で当たり前となっている、ユニクロやJOYSOUNDといった企業。これら企業が既存大企業を差しおいて市場を席巻した背景には、「イノベーションのジレンマ」という現象が起こっていたのをご存知ですか?
この記事では、イノベーションのジレンマについて、3つの事例をもとに解説していきます。大企業が新興企業に市場を奪われてしまう原理が知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
イノベーションのジレンマとは、大企業が既存顧客や既存プロダクトを重視するあまり、市場を変えるイノベーションを打ち出した新興企業に太刀打ちできなくなる現象を指します。
大企業では、既存の主要顧客のニーズを重視してプロダクト開発&改良をすすめるのが一般的です。そのため、既存顧客が望んでいない新技術への投資が難しく、いまある技術の成長に投資をしていく傾向があります。つまり大企業では、既存プロダクトの機能性を高めたり、生産体制を効率化したりする「持続的イノベーション」に力を入れ、既存顧客の満足度を高めているのです。
一方で新興企業は、新しい技術に着目し、従来製品の価値とはまったく異なるプロダクト開発を行うケースがあります。既存市場とはかけ離れた、新しい市場または用途を開拓していく戦略です。これを「破壊的イノベーション」と呼びます。
しかし新興企業が新たな市場を開拓しても、大企業はなかなかそこに参入できません。それは以下の理由があるためです。
大企業にはこのようなジレンマが存在しているため、新市場への進出が遅れてしまいます。そして新たな市場が拡大してから、既存の大企業が慌てて新技術に乗り換えようとしても、シビアな新市場で競争力を鍛え上げてきた新興企業にはなかなか太刀打ちできません。その結果、大企業は市場からの撤退を迫られてしまうのです。
このように、大企業ならではのジレンマによって、新興企業に市場を奪われることを「イノベーションのジレンマ」と呼びます。
ここまで「イノベーションのジレンマ」について説明してきましたが、すべてのイノベーションが大企業に脅威を与えるわけではありません。
大企業を脅かすイノベーションは、大きく分けて以下の3種類です。
「能力破壊型イノベーション」とは、既存技術の根本的な転換を伴うイノベーションです。大企業が過去に培ってきたノウハウや知識が全く役に立たなくなるため、脅威をもたらします。
たとえばガソリンエンジン車から電気自動車への変換は、能力破壊型イノベーションにあたります。電気自動車の台頭というイノベーションが起こった際、大手自動車メーカーがガソリンエンジンで培ってきたノウハウや知識は、新たな市場で意味をなさなくなります。
「だったら大手メーカーも早く電気自動車にシフトすればいい」と感じる方もいるでしょう。しかし大手自動車メーカーにとって電気自動車へのシフトを進めることは、自らの強みを放棄することに繋がりかねないというジレンマが存在します。そのためすぐに新技術にシフトできる大企業はほとんどありません。
このように能力破壊型イノベーションが起こると、新興企業のほうが市場での競争に有利な状況が生まれるのです。
「アーキテクチャル・イノベーション」とは、ある製品を構成する要素(部品)のまとめ方を変えるイノベーションのことです。
たとえば、自動車の小型化がこのアーキテクチャル・イノベーションにあたります。オイルショックの影響で小型車の需要が増えた際、大型車を生産していたメーカーはすぐに小型車へのシフトを行えませんでした。部品技術にほとんど差はなくとも、そのまとめ方に大きな差があったためです。小型自動車用のデザイン設計、振動や騒音への対応、十分な室内スペースの確保など、細かな部分のまとめ方の調整が必要でした。
一般的に大企業は、業務を効率化するためにプロダクトのまとめ方をルール化しています。そのルールを変更し、全社に浸透させるのには時間も手間もかかります。そのためアーキテクチャル・イノベーションが起こった際に、大企業はすぐに対応できず、後発の企業に逆転されてしまうという現象が起こるのです。
日本の自動車メーカーが自動車の小型化/軽量化に成功し、世界の市場でのシェアを拡大できたのは、アーキテクチャル・イノベーションが既存の大手企業(アメリカの自動車メーカー)を上回ったためです。
「分断的イノベーション」とは、以下の3つの特徴に当てはまるイノベーションを指します。
ほとんどの場合、技術は一定のスピードで少しずつ成長していきます。たとえばハードディスクでの技術進歩を考えてみましょう。ハードディスクの性能で重視されるのは、「データ容量」「単位データ容量あたりのコスト」「アクセスタイム」などです。これらは技術進歩に伴い、それぞれ徐々に機能が高まっていきます。
しかし分断的イノベーションでは、これらの要素のパフォーマンス向上を狙いません。代わりに「サイズ」や「重量」といった、別の面でのパフォーマンス向上を目指します。ノートパソコンなどに内蔵されるハードディスクは、サイズや重量などを重視して設計されています。
この分断的イノベーションが生じた場合には、既存の大企業が市場からの退出を迫られ、新興企業が主役を奪い取る可能性が高いです。その理由は以下の3点にあります。
また旧技術にオーバーシューティング現象(市場で求められている以上の性能が提供されていること)が生じている場合には、新技術の性能が旧技術に追いつかなくとも、市場でのシェアを拡大できる可能性があります。オーバーシューティング現象は、要望の高い顧客ニーズばかりを汲み取りすぎて、普通の顧客が求める性能を上回って進歩してしまうために起こります。
以下の図は、既存の大企業と、分断的イノベーションをが起こった企業の技術進歩を比べたものです。
図から分かるように、市場で求められる以上の性能を大企業が提供している場合、市場で求められる性能にさえ到達すれば、旧技術の性能に追いつかなくとも技術代替(技術転換)が可能となるのです。
このように分断的イノベーションが起こった場合、もしくはオーバーシューティング現象が起こっている場合は、大企業と新興企業が逆転する可能性が出てきます。
ここからは「市場シェアを獲得していた企業が、イノベーションのジレンマに陥ってシェアを奪われてしまった」事例を3つご紹介します。イノベーションのジレンマへの理解を深めるのにぜひお役立てください。
JOYSOUNDやDAMに代表される通信カラオケ。いまでは当たり前となっていますが、ひと昔前は、LDカラオケ(レーザーディスクカラオケ)が業界の主流でした。このLDカラオケから通信カラオケへの交替は、イノベーションのジレンマの典型事例です。
レーザーディスクとは、直径30cmのディスクに最大2時間の映像を記録できる光ディスク規格のこと。演奏と映像の質は抜群に高かったものの、以下のようなデメリットもありました。
1980年代におけるカラオケ機器の顧客は、スナックやバーの利用者が大半を占めていました。そこではカラオケ好きの中高年層に「いかに気持ちよく歌ってもらうか」を重要視していたため、演奏や映像の質を第一に考えていました。LDカラオケ業者は既存顧客のみを見ていたため、演奏や映像の質を向上させることを重視したのです。
したがって以下のような特徴を持つ通信カラオケが現れても、自分たちの強みを捨てられないというジレンマに陥っていました。
既存の業者は、「既存の評価軸上(演奏や映像の質)では、LDカラオケの方が優れているから大丈夫だろう」と思い込んでしまったのです。
しかし1990年代に突入すると、カラオケは娯楽として若者の間に浸透していきました。メインの顧客がスナックやバーにいる中高年層から、カラオケボックスにいる若者へと推移していったのです。若者は「流行りの曲が歌えるか」を重要視していたため、演奏や映像の質が多少悪かったとしても問題ありませんでした。
このように通信カラオケは、主要顧客が移り変わっていく流れに乗って、重視される評価軸を「演奏や映像の質」から「新曲/収録曲の多さ」へ転換させることに成功したのです。通信カラオケは、これまでの評価軸上にはない強みによって、新たな顧客層を手に入れることに成功。それにより既存技術を代替し、産業構造を一変するほどのイノベーションを巻き起こしました。
結果として、既存顧客のみを見て「当分の間はLDカラオケで大丈夫だろう」と過信していたLDカラオケ業者は、市場からの撤退を余儀なくされました。ジレンマによって新たな技術/顧客を取り入れることができず、技術革新に成功した新興企業に太刀打ちできなくなったのです。
「高価でデザイン性の高い服」から「低価格で機能性の高い服」への転換も、イノベーションのジレンマの事例です。
1985年〜1991年の間に、日本はバブル景気の時代を迎えます。この頃は欧米の高級ブランド品を持つことが、ある種のステータスとなっており、国内の百貨店やDCブランドに勢いがありました。よい物や流行の物、最新の物を手に入れるには、その分高いお金を出す必要があったのです。そのためバブル景気当時のアパレル業界では、「いかにデザインが優れているか/高価であるか」という評価軸で、衣服製造の技術を高めていきました。
そこにユニクロが突如として、「安くて機能性が高い服」を市場に提案します。それが、1998年に販売開始された「フリース」です。
このとき、ユニクロは「服に興味がない人」をターゲットに設定しました。その結果、2000年〜2001年秋冬シーズンに2600万枚を売り上げ、フリースブームを世に巻き起こすことに成功しました。
このように新たな価値を提供した服が市場で成功したにも関わらず、既存のアパレル企業はなかなか「安くて機能性が高い服」へのシフトを行いませんでした。それは一体なぜでしょうか。
アパレル業界における既存の大企業は、これまで「服にこだわりのある人」をターゲットとしていました。そのため、ターゲットが求める「高価でデザイン性に優れている服」を捨てられないというジレンマに陥ってしまったのです。結果、バブル崩壊後にはユニクロに市場を奪われ、「いかに安くて高品質か」という評価軸が主流となっていきました。
アパレル業界におけるこのような現象も、イノベーションのジレンマの典型的な事例です。
「5.25インチHDD」から「3.5インチHDD」への転換も、イノベーションのジレンマの事例として挙げられます。
5.25インチHDDの顧客は、おもにデスクトップPCを使う人々です。メイン顧客は記憶容量を第一に求めていたため、既存の大企業は容量を増やすための技術革新を進めていました。当時の5.25インチHDDは、40MB〜60MBの記憶容量が主流でした。
その後、より小型の3.5インチのHDDが発売されました。記憶容量はわずか20MB。容量あたりのコストも、5.25インチHDDに比べて割高だったのです。そのため多くの既存メーカーは、メイン顧客に向けた5.25インチHDDの製造にこれまでと変わらず注力し続けました。
一方で3.5インチHDDで新規に参入した企業は、小型軽量PC(ノートPCなど)にこれらを組み込んでいきました。小型軽量PCを使う顧客は、「重量」「大きさ」「消費電力」「耐久性」といった要素を重視していたのです。そのため3.5インチHDDは記憶容量が少なくとも、新たな顧客を獲得できました。
こうして徐々に市場のシェアを拡大していった3.5インチHDDは、新技術のさらなる改良へ投資が可能となりました。その結果、記憶容量の拡大やコストの削減にも成功。のちに3.5インチHDDは、デスクトップPCにも装着されるようになりました。
一方で、デスクトップPCの顧客ばかりに目を向けていた5.25インチHDDの既存メーカーは、3.5インチHDDを製造した新興メーカーに市場を奪われてしまいました。
既存の顧客がたくさんいる大企業では「既存顧客の求めるものを捨てられない」というジレンマが発生しがちです。それにより新たな市場への参入に遅れ、に市場からの退出を余儀なくされてしまうのです。
既存顧客の声や、今まで培ってきた技術はもちろん大切にすべきです。しかし既存顧客や技術ばかりに注目していると、市場の大きな変化に気づけなくなる恐れも。常に新たな視点を取り入れた製品開発を意識してみてくださいね。
(執筆:Kimura Yuumi 編集:Sato Mizuki)