フリーランス/個人事業主は最大50万円!事業復活支援金の差額給付、申請方法、必要書類まとめ【実際に申請してみたレポ】

事業復活支援金 アイキャッチ

新型コロナウイルスがはじまってから、まもなく2年。感染症が終息するどころか、過去最高の感染者数を記録するなど、先行きは不透明です。フリーランス/個人事業主のなかには事業面で苦しむ方も多いと思います。

その対策として、政府は新たな支援制度「事業復活支援金」を創設しました。今回の記事では、過去に「一時支援金」「月次支援金」などの解説記事を執筆した筆者が、事業復活支援金の対象者や給付額、申請方法などを解説します。

※情報は2022年5月27日時点のものです。最新の情報は事業復活支援金事務局のHPをご確認ください

事業復活支援金とは?

事業復活支援金の目的は、「新型コロナウイルス感染症の影響を受け、自らの事業判断によらず売上が大きく減少している中小法人/個人事業者などの事業継続および立て直しのための取組みを支援する」ことです。

申請期間は2022年1月31日~6月17日まで(申請期限が5月31日から延長されています)で、月次支援金とは異なり「1回」の申請で受給できます。

申請については、経済産業省が「月次支援金/一時支援金の既受給者は申請ステップを省略できます」と明記しており、基本的には月次支援金/一時支援金と同じです。そのため、過去にいずれかの支援金を受給した方は、比較的かんたんに申請できます。

事業復活支援金をスムーズに申請するために、月次支援金/一時支援金の概要を把握しておくのがおすすめです。

事業復活支援金の支給対象者

事業復活支援金の支給対象者をわかりやすく説明すると、「中小企業」「個人事業主(フリーランス)」のいずれかのうち、以下の2つの条件にあてはまる方です。

  1. 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて売上が減った
  2. 2021年11月~2022年3月のいずれかの月間売上が、2018年11月~2019年3月、2019年11月~2020年3月、2020年11月~2021年3月の同じ月の売上と比較して30%以上減少した
事業復活支援金 給付対象

▲出典:事業復活支援金事務局HP

月次支援金では「緊急事態宣言下の取引先との継続取引の有無」など細かい条件がありましたが、事業復活支援金では「新型コロナウイルス感染症の影響を受けたか否か」と大雑把な条件になりました。月次支援金では条件が細かすぎて、申請者が混乱してしまったのでしょう。

代わりに、事業復活支援金では「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた」とはどういった状態なのかを詳しく解説しています。

事業復活支援金 感染症の影響の具体例

▲出典:事業復活支援金事務局HP

資料を見る限り、直接的な時短要請などがなくても、「何かしらのコロナに関する影響で売上が低下した」ことを証明できれば対象となりそうです。

また、事業復活支援金では「どういった売上の減少は支給対象にならないか」も明記されています。

事業復活支援金 支給対象外の例

▲出典:事業復活支援金事務局HP

上記をまとめると、「わざと売上を減らす(=仕事をしない)」「コロナに関係なく売上が見込めなかった」場合などは、売上が減少しても支給対象にはならないということ。「コロナの影響による売上減少か」をよく判断する必要があります。

ただ、個人的に気になったのは、資料右下の「自主的な休業」や「商材の変更」といった記述です。この場合、たとえば「時短要請は出ていないが、コロナの影響を考えて自主的に休業した」「コロナの影響でビジネスが行き詰まり、商材を変更した結果、売上が下がった」といった場合は、支給要件からはずれるようにも読めます。このあたりの補足情報は確認できていないので、続報を待ちましょう。

もう一つの大きな変更点は、売上が「30%減」から対象になったことです。これまで、国の給付金の減少要件は「50%」からだったため、要件が大きく緩和されたことになります。国の月次支援金を補う形で行われた東京都の事業「東京都中小企業者等月次支援給付金」は開始当初から売上30%減の事業者も支給対象としており、この制度の影響で要件が緩和されたのかもしれません。

事業復活支援金の給付額、算定シミュレーション

事業復活支援金の給付額は、「基準期間の売上-対象月の売上×5=給付額」という式で算定できます。給付額の上限は、個人事業主で「基準月」と比べて売上が30%~50%未満減少の場合「最大30万円」、50%以上減少の場合は「最大50万円」となります。

「基準期間」「基準月」「対象月」という用語が少し分かりづらいと思うので、以下で説明します。

  • 基準期間:
    2018年11月~2019年3月、2019年11月~2020年3月、2020年11月~2021年3月のうち、「対象月」との比較に使った「基準月」を含む期間
  • 基準月:
    2018年11月~2019年3月、2019年11月~2020年3月、2020年11月~2021年3月のうち、「対象月」の売上減少割合を出すための基準とした月
  • 対象月:
    2021年11月~2022年3月のうち、売上が減少したことを申告する月

さらに具体的に説明します。

たとえば、筆者の「2018年11月~2019年3月」「2019年11月~2020年3月」「2020年11月~2021年3月」「2021年11月~2022年1月」の売上が以下の通りだったとしましょう。なお、「持続化給付金」「月次支援金」などで得た収入は、売上要件から除外されます。

11月 12月 1月 2月 3月
2018年11月~
2019年3月
300,000 350,000 300,000 250,000 300,000
2019年11月~
2020年3月
350,000 300,000 250,000 175,000 125,000
2020年11月~
2021年3月
150,000 125,000 200,000 250,000 200,000
2021年11月~
2022年1月
200,000 250,000 150,000

まず、2021年11月~2022年1月までの月間売上のうち、前3年分のいずれかの月間売上と比べて30%以上減少している月を探します。

事業復活支援金

この中では、枠線で囲った次の2つの月が該当します。

  • 2021年11月(2018年11月と比べて約33%、2019年11月と比べて約43%売上減)
  • 2022年1月(2019年1月と比べて50%、2020年1月と比べて40%売上減)

では、この中で「基準期間」「対象月」をどう選ぶのがベストでしょうか。推奨したい組み合わせは以下のとおり。

  • 基準期間:
    2018年11月~2019年3月(基準月2019年1月)
  • 対象月:
    2022年1月

理由は単純で、「売上が50%以上減少する基準月と対象月の組み合わせ」が「2019年1月と2022年1月」だけだからです。

売上が50%以上減少すると、給付額の上限が上がるので、基本的には一番減少割合の大きい組み合わせを選ぶべきでしょう。基準期間は基準月を含む必要があるので、自然と「2018年11月~2019年3月」になります。

基準期間と対象月を計算式にあてはめると、次のようになります。

基準期間の収入の合計ー対象月の月間事業収入×5=給付額

1,500,000-150,000×5=750,000

数値上の給付額は75万円となりますが、上限が50万円なので給付額は50万円です。

ちなみに、対象月は変えず、基準期間を2019年11月~2020年3月(基準月2020年1月)にしてみると、「1,200,000-150,000×5=450,000」となります。しかし売上減少率が40%しかないので、給付額は30万円になってしまいます。

なお、給付額は事務局HPの「給付額シミュレーション」から算出することも可能です。

事業復活支援金 給付額シミュレーション

▲出典:事業復活支援金事務局HP

事業復活支援金の差額給付

事業復活支援金は、「不確定な未来の売上(例:2月1日現在から見た、3月分の売上)」もある程度予測したうえで、申請は原則一度だけとしています。ただコロナの影響により予測がはずれ、「30%~50%未満」の売上減少で申請したのに、申請した月より後に売上が大きく減少し、実際は「50%以上」売上が減少した月が出てしまうケースが想定されました。

上記のような状況になった場合、申請者は本来受け取れる給付金を受け取れない事態が発生してしまうため、今回は「差額給付」という特例が用意されました。

差額給付が認められた場合、「30%~50%未満」の売上減少で申請し、実際に受け取った給付金「50%以上」の売上減少で申請できていた場合に受け取れるはずだった給付金差額を受け取れます。

……といってもイメージが難しいと思うので、先ほどの「給付金額」の項で見た具体例をもう一度使って説明します。

11月 12月 1月 2月 3月
2018年11月~
2019年3月
300,000 350,000 300,000 250,000 300,000
2019年11月~
2020年3月
350,000 300,000 250,000 175,000 125,000
2020年11月~
2021年3月
150,000 125,000 200,000 250,000 200,000
2021年11月~
2022年1月
200,000 250,000 150,000

先ほど説明したように、上記の事例で事業復活支援金の支給対象となる基準月と対象月の組み合わせは、

  • 2021年11月(2018年11月と比べて約33%、2019年11月と比べて約43%売上減)
  • 2022年1月(2019年1月と比べて50%、2020年1月と比べて40%売上減)

でした。

前回は50%以上の減少があった2022年1月を使いましたが、もしこの月の売上が200,000円だった場合、売上が50%以上減少している月がなくなるため、先ほど見た事例のように給付金上限は「30%~50%未満の売上減少」の場合の30万円になってしまいます。

では、仮にこの条件で30万円を受け取った後、上の表では空欄だった2月、3月の売上が以下のようになったとしましょう。

11月 12月 1月 2月 3月
2018年11月~
2019年3月
300,000 350,000 300,000 250,000 300,000
2019年11月~
2020年3月
350,000 300,000 250,000 175,000 125,000
2020年11月~
2021年3月
150,000 125,000 200,000 250,000 200,000
2021年11月~
2022年3月
200,000 250,000 200,000 125,000 200,000

この場合、2022年2月の売上は2019年2月、2021年2月に比べて50%減少しています。つまり、2022年2月を使って申請していれば、給付上限の50万円をもらえたのです。タッチの差で20万円を逃すのはあまりにもデカすぎますよね……(計算式例:1,500,000-625,000=875,000。上限50万円なので給付額50万円 ※基準期間を2018年11月~2019年3月に設定した場合)

この場合に差額の20万円を給付してくれるのが、今回の差額給付です。

ただし、誰でも差額給付をしてもらえるわけではなく、以下の条件に全てあてはまった場合のみ差額給付の対象になります。

  • 初回給付の際、対象月の売上が基準月の売上と比較して30%~50%未満の減少だった
  • 対象月の売上が、基準月の売上と比較して50%以上減少している
  • 50%以上減収の理由が、初回給付の申請を行った時点で予測できなかった新型コロナウイルス感染症影響を受けたことにより、自らの事業判断によらないで生じた
  • 対象期間のうち、初回給付の対象月の翌月以降かつ初回給付の「申請日」を含む月以降のいずれかの月を対象月とする

いろいろ複雑な条件ですが、カンタンに言えば「コロナのせいで初回申請後に売上が50%以上減る月が出てしまい、申請時期によって損してしまった人」が対象になるということ。

ただし、対象者には自動で差額給付が行われるわけではなく、あくまで自己申告制です(対象者は、事業復活支援金のマイページに申請用ボタンが出現します)。申請は6月1日~6月30日までなので、対象者は忘れずに差額給付を受けましょう。

事業復活支援金の申請に必要な書類

個人事業主が事業復活支援金を申請するには、8つの書類が必要です。

  1. 本人確認書類
  2. 収受日付印のついた2019年、2020年の確定申告書類の控え(基準期間に2018年、2021年を用いた場合、その期間を含む確定申告書類も)
  3. 対象月の売上台帳など
  4. 通帳の写し
  5. 宣誓・同意書
  6. 基準月の売上台帳など
  7. 基準月の売上に関する1取引分の請求書/領収書など
  8. 基準月の取引が確認できる通帳などのページ
事業復活支援金 必要書類

▲出典:事業復活支援金事務局HP

ただ、6~8の書類に関しては、「月次支援金/一時支援金を過去に受給した」または「商工会や士業と継続的な付き合い(継続支援関係)がある」場合は省略できるので、原則全員に求められるのは5つの書類です。

また、2018年11月から対象月までの帳簿書類/通帳を7年間保存する必要があるほか、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことを証明できる追加書類の提出を個別に求められる場合もあるようです。

事業復活支援金のスケジュール

2022年5月20日現在、事業復活支援金のスケジュールについて以下のように公表されています。

事業復活支援金 スケジュール

▲出典:経済産業省

申請期限が6月17日までなのに対し、事前確認の終了が6月14日と少し早いので、ギリギリに申請予定の場合は締切に注意しましょう。

なお、肝心の受給までの日数は不明ですが、実際に「簡単申請」を利用して申請した筆者の場合は

  • 申請日:2月16日
  • 受給日:3月1日

と、約2週間で入金されました。審査が行われていることを考えると、入金速度はかなりスムーズでした。ただ、書類不備などがあれば再度書類を送り、審査を待つ必要もあり、この速さは「最速の場合」といえるでしょう。

万が一、受給までに手元の資金がショートしそうな場合は、既存のほかの支援制度もあわせて検討することをおすすめします。

事業復活支援金の申請方法

申請の流れは、大きく分けて

  1. 申請用アカウントの作成
  2. 「登録確認機関」の予約
  3. 「登録確認機関」での事前確認
  4. 申請

という4ステップです。

一時支援金/月次支援金の受給者は申請用アカウントの作成や事前確認が省略できるうえ、基本システムも過去のものとほぼ同じなので、かなり簡単に申請できます。

以下では、一時支援金/月次支援金を受給していない場合の手順を解説します。

ステップ1. 申請用アカウントを作成する

事業復活支援金事務局のページから、アカウントを作成して申請用IDを発行します。

事業復活支援金 申請仮登録

▲出典:事業復活支援金事務局HP

また、申請に必要な書類もこの時点で準備しておきましょう。

ステップ2. 「登録確認機関」の予約

事務局のHPに記載されている「登録確認機関一覧」から、事前確認を依頼する登録確認機関を探しましょう。

事業復活支援金 登録確認機関

▲出典:事業復活支援金事務局HP

「融資を受けている金融機関」「会員になっている商工会など」「顧問税理士など」が登録確認機関となっている場合はそちらの利用を推奨します。

それ以外の場合は税理士や行政書士など、登録確認業務を行っている人を探すことになります。ただし、月次支援金/一時支援金の申請では有償での対応となる場合が多く、無償で登録確認を実施している機関は予約が殺到し大混雑したので、無償での確認を希望する場合はSNSなどで根気強く探してみることが大切です。

月次支援金の記事でインタビューした行政書士の先生によれば、「有償の場合、適正な事前登録報酬は5000円くらい」とのことでした。

ステップ3. 「登録確認機関」での事前確認

登録確認機関の予約が完了したら、実際に事前確認を行います。オンライン会議や電話での事前確認も認められているので、感染対策を徹底したい方は登録確認機関と交渉してみましょう。

事前確認はあくまで形式的なものなので、資料のあらさがしや質問攻めにおびえる必要はありません。ただし、審査をするわけではないので、事前確認ができても給付が決まるわけではないことも事実です。

なお、筆者が過去に事前確認を行ってもらった際の様子は、月次支援金の記事でまとめていますので、詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご参照ください。

ステップ4. 申請

ここまでの手続きが完了したら、事務局HPより申請して作業は終了です。申請にあたっての注意事項が公開されているので、申請する前に一度チェックしておきましょう。

月次支援金の注意事項

▲出典:経済産業省

月次支援金/一時支援金をすでに受給している場合は、添付書類や入力事項を大幅に省略できる「簡単申請」を利用できます。

事業復活支援金 申請区分

▲出典:事業復活支援金事務局HP

なお、ここまでの申請の流れは、事務局の発行する資料でも確認できます。

事業復活支援金の申請を実際にやってみた!

この記事を執筆している筆者自身も、緊急事態宣言の発出による外出自粛要請で旅行系の取材が困難になり、事業復活支援金の支給対象者になりました。

そこで、以下では筆者が実際に事前確認~申請をやってみた体験レポをお届けします。

なお、申請にあたって、筆者の基本的な情報はこのようになっています。

  • フリーライター
  • 外出自粛要請の影響で収入50%減
  • 青色申告済で、主たる収入は事業所得
  • 月次支援金受給済み

今回は「簡単申請」を利用して申請してみます。

簡単申請では過去のアカウントや情報をほぼそのまま使いまわせるため、入力箇所は少なめです。

事業復活支援金 申請画面①

▲出典:事業復活支援金

申請に際しては、以下の6つの情報を入力/添付していきます。

  • 宣誓、同意事項への同意
  • 基本情報
  • 口座情報
  • 特例適用の有無
  • 売上情報
  • 必要書類の添付

基本的には月次支援金と同じですが、大きな変更点は「取引先一覧」を記入する必要がなくなったこと。

月次支援金の取引先一覧

▲月次支援金申請時の取引先一覧入力画面

取引先を明かすのはハードルが高いうえ、個人顧客の記入が難しいなど、月次支援金の申請時には「難所」とされていました。そのため、今回の変更は申請者にとってプラスになるはずです。

申請の完了後は、事務局の審査を待つことになります。

事業復活支援金関係の各種リンク

ここまで、事業復活支援金の概要から申請方法まで解説してきました。月次支援金に比べると、5か月分の減収分を一度に受給する仕組みになっているため金額の計算が少し煩雑です。しかし、事務局側も支援金の支給に慣れてきたようで、入力事項や申請画面が分かりやすくなった印象を受けました。

受給について分からないことがある場合、公式サイトに「よくある質問」がまとめられているので、まずはそちらをご確認ください。

それでも申請が難しい場合、申請サポート会場を利用しての申請も可能です(要事前予約)。受給対象と思われる場合、諦めずに申請してみてください。

最後に、申請に役立つ支援金関係のリンク、連絡先をまとめておきます。申請する際にぜひご利用ください。

(執筆:齊藤颯人 編集:mozuku)

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