【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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「フリーランスのデザイナーに転身したら年収が倍に!」
インターネット上で見かけるこんな言葉に、「本当にそんなに稼げるの?」と疑問に思いますよね。フリーランスは案件次第で年収アップできても、税金がサラリーマンより多く、安定性に欠けるとも聞きます。
実際、フリーランスのデザイナーはいくら稼げるのか。会社員デザイナーと比較してどちらがよい選択なのか。独立の道が気になる方に、デザイナーの年収相場と単価を上げる方法をご紹介します!
目次
フリーランスのデザイナーはいくら稼げるのか。会社員デザイナーの平均年収や案件単価から、フリーランスデザイナーの年収を見てみましょう。
厚生労働省が毎年発表している賃金構造基本統計調査によれば、デザイナー全体の平均年収は439.7万円です。
対してWebデザイナー白書2014-15では、フリーランスで活動するWebデザイナーの平均年収は385.3万円となっています。
会社員デザイナー全体の平均年収 | 439.7万円 |
フリーランスWebデザイナーの平均年収(2014年~2015年) | 385.3万円 |
なぜ年収に差が出るかというと、厚生労働省の調査データには、Webデザイナーだけではなくファッションデザイナーやインテリアデザイナーなど広範囲のデザイナーが含まれているためです。
なおWebデザイナー白書には、2020年の最新平均年収が記載されていません。そのため、会社員とフリーランスの平均年収の差はもう少し縮まっている(あるいは広がっている)可能性があります。
フリーランスデザイナーの案件単価は、経験年数やスキルに左右されます。以下が単価の一例です。
週5日常駐の案件単価で経験年数1年 | 20万円前後 |
高いスキルや実績が求められる案件 | 80万円~100万円 |
また、ランサーズが行ったフリーランス実態調査によると、独立しているフリーランスで400万円以上の年収を稼ぐのは全体の42%です。
日本の平均年収から考えると、平均からそれ以下がフリーランスのボリュームゾーンになるものの、1000万円以上の年収を稼ぐのは会社員全体の1.5%なのに対して、フリーランスは全体の2.9%といったデータも。
年収1000万円以上の会社員デザイナー | 1.5% |
年収1000万円以上のフリーランスデザイナー | 2.9% |
つまり、実力と経験次第で大きな収入を得られる可能性があるのが、フリーランスのデザイナーです。
デザイナーを職種別に見た場合、2020年時点で平均年収が高いのは「UXデザイナー」です。
求人サイトの求人ボックスが行った調査によると、正社員UXデザイナーの平均年収は601万円。デザイナー全体の平均年収と比べ、高いことがわかります。
他のデザイナーに関連する職種の平均年収は以下のとおりです。
【デザイナー関連職の平均年収例】
- ゲーム/アミューズメント系のグラフィックデザイナー:531万円
- Webデザイナー:482万円
- グラフィックデザイナー、CGデザイナー、イラストレーター:476万円
- グラフィックデザイナー、CGデザイナー:453万円
(▲参考:マイナビ転職「職業別モデル年収平均ランキング」)
つまり、同じ「デザイナー職」といっても、スキルと分野次第で平均年収は大きく変わります。
フリーランスデザイナーは、厳しい環境で生き残り、年収を上げていく必要があります。その際に重要なのが「スキルを掛け合わせる」こと、「ポートフォリオを充実させる」ことです。
未経験からデザイナーになるなら、まず基礎スキルの習得が必須です。IllustratorやPhotoshopなど、目指す分野に欠かせないソフトウェアの知識を学びましょう。
ある程度スキルや経験を学んだフリーランスがステップアップするには、意識的にデザイン以外のスキルを磨く必要があります。
なぜなら、競争相手は「人」だけではないから。「技術」が人を超えてしまうケースもあります。コーディングスキルがなくてもWebサイトを作成できる『STUDIO』などのツールもそのひとつ。単に「Webデザインができる」だけでは、将来的に仕事がなくなるかもしれません。
それを防ぐためにデザイナーが掛け合わせやすいスキルとしては、以下のものがあります。
デザイン以外のスキルも持つデザイナーは、差別化ができます。一見同じ「Webデザイナー」でも、「SEOに強いWebデザイナー」「マーケティングが売りのWebデザイナー」となれば、仕事を得やすくなります。
デザインは消費者の印象を左右するだけでなく、企業の経営課題や人々の日常生活における問題の解決にも役立つもの。「このプロジェクトは何のために行われるのか」といった課題解決の目線を持てるデザイナーは、下請けだけではなく上流工程にも関われます。
年収を上げるためには、ポートフォリオも重要です。なぜなら、ポートフォリオはあなたに初めて出会った人が、実績やスキルを確認するために「過去の作品」を見る場だから。
WebサイトやSNSのアカウントを見つけ、過去の投稿をさかのぼって作品をチェックするのは、忙しい発注者がもっとも嫌う作業。案件獲得のチャンスを逃さないように、ポートフォリオは見やすく端的にまとめて、あなたの売りポイントを明確にしておきましょう。
単に過去作品を列挙するだけでなく、魅せ方も重要です。自身の強みを打ち出せれば、あなたがやりたい仕事に近づけます。
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Workship MAGAZINE
経験を増やして年収を上げるために、たくさん仕事をすればいいと考える人もいます。確かに、フリーランス未経験の人や初心者にとって実績は重要です。作品がひとつポートフォリオにあるだけで実績になり、営業時に売り込めます。
しかしながら、やみくもに仕事を引き受け、長時間労働をこなすのはおすすめできません。
第一に、仕事のクオリティが低下します。一定期間に多くの仕事を受けると、ひとつの案件にかけられる時間が減ります。すると、70点程度の完成度で提出する必要が出てくるかもしれません。こうして納品した100点に満たない制作物がクライアントの期待を超えられない場合、次回の依頼はないでしょう。
また、自身のキャパシティを超えてしまう恐れもあります。多くの場合、フリーランスはひとりで活動しています。大量の案件をこなし、スケジュール管理をし、納品した制作物の請求書をつくり、あらたな営業活動も行う……。こうした雑務も欠かせないため、長時間労働で限界を超え、肉体的/精神的に辛くなってしまう恐れもあります。またオーバーワークが続き、ひとつでも納期に間に合わない案件が発生したら、あなたの信用にも傷がつきます。
自分がなぜ、フリーランスを目指そうと思ったのか。理想の仕事と生活のバランスは何か。初心を忘れず、なりたい自分に近づくための方法を冷静に判断しましょう。
では、稼いでいるフリーランスデザイナーはどんな点を意識して活動しているのでしょうか。3つのポイントで解説します。
マッチングサイトもポートフォリオも、案件獲得の窓口にはなってくれます。けれどもリアルでのつながりは、ときに想像以上の案件獲得に貢献します。
ただし、案件を得るべくむやみに人脈だけ広げようとするのはおすすめできません。あなたが何者なのか相手に伝わらない人脈では、仕事の受注に結びつく確率は低いからです。
人脈を広げるのであれば、いまある仕事でのつながりをまず大切にしましょう。一つひとつの仕事を丁寧に行うことが、新たなつながりを呼び込んでくれます。
もうひとつ、人とのつながりをつくるうえで重要なツールとなるのがブログやSNSです。リモートワークや在宅で仕事をする時間が多いフリーランスデザイナーは、SNSなどで外部に発信することで、人とつながり、仕事を獲得するチャンスを呼び込めます。
もちろん、SNSなどでの情報発信は中身が伴ってこそ。デザイナーとしてのスキル/実績を積み重ね、「何者か」を伝えることで、誰かの目に触れたときに仕事につながる可能性が高まります。
案件の獲得を目指すなら、ブログやSNSで発信する内容はデザイン業務に関連したものを中心にしましょう。それ以外に、孤独になりがちなフリーランス生活で人との交流を目的とする場合は、趣味や話題が合う人々とつながる楽しみ方があります。
フリーランスデザイナーとしてのステップアップや、活躍し続けるために大切な考え方が「仕事を選ぶ」ことです。「選ぶ」というと、上から目線に感じられるかもしれませんが、それは自らのキャリアと真剣に向き合うことを意味します。
フリーランスである程度の実績を積むと、市場にはたくさんの仕事があると気づきます。ある仕事は高単価、ある仕事はチャレンジング。何を選ぶかによって、その先のフリーランスのキャリアが作られます。
同じような内容・単価の仕事を続けていては、フリーランスの成長が止まってしまいます。どんなデザイナーになりたいのか、将来像を定期的に見直し、キャリアプランに沿った選択を続けましょう。
フリーランスデザイナーで稼げるかは実力次第。では同じ額面年収だった場合、フリーランスと会社員のどちらが最終的に「お得」なのでしょうか。
平均よりちょっと上の実績を積んだ年収480万円(税引き前)のデザイナーを基準に、手取りを計算してみましょう。
年収480万円の会社員デザイナーの場合、給与から天引きされる基本項目は以下の通り。
労働組合費や退職金の積み立て金が天引きされる会社もありますが、今回は省略します。
税金を年収から差し引くと、年収480万円の会社員の手取りは約350万円でした。
項目 | 金額 |
---|---|
年収 | 4,800,000円 |
健康保険 | 243,540円 |
厚生年金(国民年金+厚生年金) | 647,100円 |
雇用保険 | 14,400円 |
所得税 | 167,900円 |
住民税 | 208,800円 |
手取り合計 | 3,518,260円 |
※扶養家族なし、30代、東京都在住の設定です。
▲参考:日本年金機構 国民年金保険料、および保険料額表
▲参考:三井住友銀行 年金試算シミュレーション
▲参考:全国健康保険協会 平成31年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
▲参考:東京都練馬区 国民健康保険料試算シート(平成31年度版)
▲参考:特別区民税・都民税(住民税)税額シミュレーション
ここでは、フリーランスの年収(年商)を480万円、通信費や事業に利用した必要経費を50万円とし、さらに各種税金等を差し引きます。
フリーランスの場合、厚生年金は国民年金となり、雇用保険は加入不可のため、支払い金額が減ります。代わりに、会社員時代は会社が半分肩代わりしていた健康保険料が値上がりします。
年収480万円のフリーランスの場合、手取り合計は約300万円でした。
項目 | 金額 |
---|---|
年収 | 4,800,000円 |
経費 | 500,000円 |
健康保険 | 476,400円 |
厚生年金(国民年金) | 196,920円 |
雇用保険 | – |
所得税 | 364,000円 |
住民税 | 192,000円 |
個人事業税 | 70,000円 |
手取り合計 | 3,000,680円 |
同じ額面で単純計算すると、会社員のほうが50万円ほどお得という計算結果になりました。これは、フリーランスが事業経費を自ら負担しているためです。
オフィスに出勤していれば、ネットの通信費用や光熱費は発生しません。しかし自宅で作業するフリーランスはすべてが自己負担。コワーキングスペースを利用する金額なども同様です。
その他、取材や顧客訪問の交通費もフリーランスは自己負担です。そのため事業にかかる経費を意識した上で、案件の価格を見極めることが大切です。
ただし、仕事に関連する書籍購入やセミナー参加費用などを、スキルやキャリアを伸ばす投資として「経費」に計上し、最終的に所得税を抑えられるというメリットもあります。
上記の所得税の申告/納税はフリーランス個人が行うため、営業だけでなく税金の基本知識を押さえておくことが重要です。
個人事業主・フリーランスが知るべき"経費"一覧【税理士監修】。経費にできる、できないの基準も解説
Workship MAGAZINE
経費が発生するぶん、フリーランスは会社員よりも多く稼がなければいけません。
ただし金銭面での厳しさを知ってもなお、フリーランスの道を選ぶ人がいます。その理由には、収入だけでは測れないフリーランスデザイナーのメリットが関係しています。
フリーランスで活動するメリットのひとつが、生活に合わせて仕事を調整できる点です。子どもが小さく、育児に手のかかる時期であれば仕事を減らせます。
ただし、デザイナーのようにスキルを求められる職種は常に知識のアップデートが必要。そのため、育休で数年間キャリアを中断することに不安を覚える人もいます。
そんなとき、フリーランスとして週1日や単発から仕事をするのもひとつの選択肢になります。フリーランスのデザイナーで生涯食べていくつもりがなくても、「いまの自分に最適な働き方」としてフリーランスを選んでもいいのです。
フリーランスで活動すると、やりたい仕事に挑戦できるのもメリットです。
会社員でWebデザインを担当していて、「もっとコーディングやUI/UXデザインの知識を身に着けたい」と思っても、会社の業務や組織体制の関係で実現できないケースはあります。
一方フリーランスなら、実力さえあれば実績とスキルのアピールでやりたい案件を獲得できます。
フリーランスのデザイナーは、業務内容次第では自宅から一歩も出ず、ひとり籠って仕事をする完全在宅ワークも可能。ひとりの時間を愛し、満員電車に乗らずに暮らしたいと願う人には理想の働き方です。
上司の愚痴を聞く、先輩同士のイザコザに巻き込まれる……といった人間関係の煩わしさから距離をおけるのが、ひとりで活動するフリーランスのメリット。
ただし、孤独で寂しくなるケースもあります。そんなときは、コワーキングスペースに出かけたり、フリーランス同士のつながりを持ってみるとよいでしょう。
スキルや実績で勝負するフリーランスの世界。独立してすぐに安定した稼ぎを得るのは簡単ではありません。経験を積むことはもちろん、経験を得るために案件獲得の窓口を設けることが大切です。自ら営業で売り込む以外に、案件を得る方法をご紹介します。
独立して活動する個人事業主が案件を獲得するには、営業活動が必須です。案件の開拓のみならず、プロジェクトの詳細な確認やスケジュール設定、価格交渉から納期の管理まで、基本はすべてひとりで担当することになります。
デザイナーとして会社員経験が長い方でも、営業から複数のプロジェクト管理、経理業務などすべてをこなすのは至難の業。独立直後に張り切って営業した結果、クライアントから無理難題をつきつけられるブラック案件を引いてしまったり、仕事を引き受けすぎて連日徹夜になってしまったり、という話も耳にします。
まずは、自分のスキルと容量を把握しながら、できる範囲で案件獲得のための窓口を準備することをおすすめします。
フリーランスのデザイナーが案件を獲得するには、いくつかの方法があります。
すでにデザイナーとしての実績と経験がある方は、営業活動を行わずとも、自分にマッチする案件を獲得できます。しかし、経験が浅くフリーランスになった方には難易度が高く、かつ経験がある方でも、いつまでも安定した仕事依頼が続くとは限りません。
売り込み営業は、案件の可能性を広げます。ただし、クライアントの詳細がわからず営業してしまったり、蓋を空けてみたら低単価のプロジェクトに当たってしまったり、案件獲得に結び付かなければ営業活動だけで一日が終わってしまうなど、労力に見合わないマイナス面も。
ある程度実績を持っているフリーランスであれば、おすすめなのがマッチングサービスの利用です。経歴やスキルを登録し、面談を済ませれば、豊富な案件からすぐに開始できる仕事を見つけられます。高単価の案件もそろっており、経験を積みながら年収をアップさせたいフリーランスにはぴったりの案件獲得窓口です。
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得意分野 | IT/Web系 |
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勤務スタイル | 常駐、長期中心 |
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得意分野 | Web/ゲーム系 |
案件数 | 約1000件 |
勤務スタイル | 常駐、長期中心 |
単価感 | 55万円~80万円 |
(執筆:サトウカエデ 編集:Workship MAGAZINE編集部)