フリーランスから正社員へ。それ、本当にキャリアの正解ですか?

フリーランスから正社員へ。それ、本当にキャリアの正解ですか?

フリーランスになって、今年で8年目になります。

会社員を辞めてフリーランスになった当初は、「会社に依存しない働き方」「個人で稼ぐ力」といった言葉に、今よりもワクワク感があったように思います。

もちろん現実はそんなに甘いものではありません。仕事が途切れる不安もありますし、営業や単価交渉、税金まわりなど、会社員時代にはあまり意識しなかったことも全部自分で考える必要があります。

それでも、フリーランスという働き方には、どこか前向きな空気がありました。

しかし最近は、フリーランスから正社員になる、いわゆる「正社員化」の話題をよく目にするようになりました。

もちろん、正社員になること自体を否定したいわけではありません。むしろ、フリーランスとして積んできた経験やスキルを評価され、正社員として迎えられる流れがあるのは良いことだと思います。

ただ、働き方の選択肢が増えたはずなのに、また「正社員が正解」という空気に戻っていくようにも感じます。

それが、少しつまらないのです。

フリーランスをめぐる空気は変わってきた

▲ざっくり言えば、こんな空気の変化を感じています

昔は「フリーランスっていいよね」という空気があった

数年前は、フリーランスという働き方に対して、もう少しポジティブな空気があったように思います。

「会社に縛られずに働ける」
「自分のスキルで仕事を取れる」
「好きな場所で働ける」
「複数の仕事を組み合わせてキャリアを作れる」

こうした言葉には、どこか希望がありました。

ただ、私自身がフリーランスになった理由は、そうした前向きなイメージだけではありません。

会社員として働いていた当時は、仕事に追われる日々で、娘が0歳の頃にも家族と過ごす時間を十分に取れない感覚がありました。会社でも家でも余裕がなく、「このままの働き方を続けるのは難しい」と感じていたのが正直なところです。

つまり私にとってのフリーランスは、「自由に働きたい」という前向きな選択というより、まずは当時の状況から抜け出すための選択でした。

それでも実際にフリーランスになってみると、在宅で働けるようになり、会社員時代よりも妻や娘と過ごす時間を作りやすくなりました。もちろん大変なこともありますが、「働き方を変えたことで守れた時間があった」という実感はあります。

だからこそ当時の私にとって、フリーランスという働き方には、単なる理想論ではない切実な希望がありました。

「こういう働き方もあるんだ」「会社員以外にも道があるんだ」と思えること自体が救いでしたし、フリーランスの情報を追うことも楽しかったです。自分の働き方を自分で作っていく感覚にも、面白さがありました。

でも最近は、その空気が少し変わってきたように感じます。

最近は「やっぱり正社員のほうがいいよね」に寄っている気がする

最近は、「フリーランスもいいけど、やっぱり正社員化したほうが安定するよね」という話をよく見かけます。

言っていることは、とてもわかります。

実際、私自身もフリーランスとして働くなかで、「このままで大丈夫なのだろうか」と考えたことがあります。

以前、働きすぎによって身体を壊し、入院したことがありました。抱えていた仕事を思うように続けられなくなり、それまで受けていた案件や役割を大きく手放さなければならない状況になったのです。

当時は、仕事を失う不安だけでなく、クライアントや一緒に働いていた方々に迷惑をかけてしまった申し訳なさもありました。「自分で仕事を作れる」「自由に働ける」と思っていたはずなのに、自分の身体が止まってしまえば、その働き方は一気に立ち行かなくなる。その現実をかなり強く突きつけられました。

だから、収入や生活の安定を求めて正社員になりたいと考える人の気持ちは、よくわかります。

収入以外では、フリーランスとしていろいろな仕事を経験したうえで、「この会社で腰を据えて働きたい」「この分野を本格的にキャリアの軸にしたい」と思う方もいるでしょう。

その意味では、フリーランスから正社員になることは、とても前向きな選択肢だと思います。

ただ、その流れが強くなりすぎると、裏返しとして「やっぱりフリーランスは厳しいよね」「結局、正社員のほうが正解だよね」という空気に見えてしまうことがあります。

それが、少しつまらないなと思うのです。

AIの登場で、フリーランスへの不安も強くなっている

最近の「フリーランスから正社員へ」という空気には、AIの影響も少なからずあるように感じます。

生成AIが広まったことで、文章作成や画像生成、資料作成、リサーチなど、これまでフリーランスが担ってきた仕事の一部は、AIでも対応しやすくなりました。

実際にクラウドワークスなどでライティング案件を探していても、以前より案件が少なく感じたり、単価の低い案件が目立ったりすることがあります。なかには、AIを活用することを前提に、かなり低い単価で募集されている案件も見かけます。

また、ライティング以外でも同じような変化は起きています。たとえば、以前は外部のデザイナーに依頼していたアイキャッチ画像の制作を、AIで内製するようになった企業もあると聞きます。

もちろん、AIですべての仕事が置き換わるわけではありません。むしろ、AIをうまく使える人ほど、仕事のスピードや提案の幅を広げられる面もあります。

ただ一方で、「これ、AIでよくない?」という空気が出てきているのも事実です。

とくに、作業単位で切り出されやすい仕事ほど、AIとの比較にさらされやすくなっています。そのため、「このままフリーランスでやっていけるのか」と不安を感じる人が増えるのも自然だと思います。

だからこそ、正社員化に魅力を感じる人が増えるのもわかります。

とはいえ、AIの影響を受けるのはフリーランスだけではありません。会社員の仕事も、当然AIによって変わっていきます。

だからこそ大事なのは、フリーランスか正社員かではなく、AIを使いながらどう価値を出していくかではないでしょうか。

AIを使いながらどう価値を出すかが大事

実際に私自身も、AIを使いながら仕事の進め方を変えてきました。

たとえば、Workship MAGAZINEのニュース記事やメルマガ制作では、GPTsを使って原稿のたたき台を作っています。もちろん、そのまま掲載するわけではありません。元記事とのズレがないか、数字が正しいか、フリーランス・副業者向けの切り口になっているかは、必ず人間の目で確認しますが、仕事の効率が上がったのは事実です。

SEO記事の制作や編集でも、構成の抜け漏れを確認したり、タイトル案を複数出してもらったり、原稿の改善点を壁打ちしたりする場面でAIを活用しています。また、ライターさんへのフィードバックコメントを作る際には、音声入力で考えをざっと話し、それをAIで読みやすく整えることもあります。

こうした使い方をすると、単に作業時間を短くするだけでなく、提案の幅を広げやすくなります。早い段階で複数の案を出せるようになったり、改善ポイントを整理して伝えやすくなったりするため、仕事相手から「助かります」と言ってもらえる場面もありました。

AIによって、フリーランスの仕事の一部が変わっていくのは確かです。ただ、それだけで「フリーランスは終わり」と言い切るのは、少し早い気がします。

こういう時代だからこそ、フリーランスとしてどう働くか、どんな仕事を選ぶかがより大事になっているのだと思います。

フリーランスには、フリーランスの楽しさがある

フリーランスの良さは、やっぱり「選べること」だと思っています。

業務委託で複数の仕事を受けたり、関わる会社やプロジェクトを自分で選んだりできる。自分の興味がある仕事に挑戦したり、相性が合わない仕事からは少しずつ距離を置いたりすることもできます。

もちろん、これは簡単なことではありません。

仕事を選べるということは、自分で仕事を探さなければいけないということでもあります。選択肢があるぶん、迷うことも増えます。

「この案件を続けるべきか」
「新しい分野に挑戦するべきか」
「単価を上げるべきか」
「今の働き方を続けていいのか」

こういうことを、自分で考え続ける必要があります。

でも、その難しさも含めて、フリーランスの面白さなのではないでしょうか。

私がフリーランスになって「楽しいな」と感じるのは、自分の仕事が成果につながり、お客様に喜んでもらえたときです。

たとえば以前、難易度の高いビッグワードで上位表示を狙う記事のリライトを任されたことがありました。競合記事を見ながら足りない情報を補い、内部リンクを整理し、関連する小記事も作りながら改善を重ねたところ、最終的に検索順位が上がり、お問い合わせ数も大きく伸びました。

その結果、お客様からも喜んでいただけて、「自分の仕事がちゃんと事業の成果につながったんだ」と実感できたのは、かなり嬉しかったです。

もちろん、フリーランスは不安定ですし、常に成果を出し続けなければいけない難しさもあります。それでも自分で仕事を選び、自分の工夫で価値を出し、その結果が相手の役に立つ。この手触りのある面白さは、フリーランスならではの魅力だと思います。

正社員になると、基本的には会社の方針や業務に沿って働くことが前提です。もちろん、正社員でも裁量のある働き方はありますし、フルリモートや副業OKの会社も増えています。

ただ、フリーランスのように「どの仕事を受けるか」「誰と働くか」「どのくらい関わるか」を自分で調整できる働き方とは、また別の魅力があります。

通勤せずに働けること。
複数の収入源を持てること。
いろいろな会社や人の考え方に触れられること。
ひとつの肩書きに縛られず、仕事の幅を広げていけること。

こういう部分は、やっぱりフリーランスならではの良さです。

フリーランスの面白さは、単に自由に働けることだけではなく、「自分はどう働きたいのか」を何度も見直しながら進められるところにあると思います。

安定したいなら、正社員になるしかないわけではない

正社員化の話でよく出てくるのが、「収入の安定」です。

たしかに、安定という意味では正社員のほうがわかりやすいです。毎月決まった給与があり、社会保険や福利厚生もあり、有給休暇もあります。

フリーランスの場合、収入が月によって変動することもありますし、案件が終了すれば次の仕事を探す必要があります。

ただ、フリーランスでも収入を安定させる方法はあります。たとえば、以下のような方法です。

フリーランスでも収入を安定させる方法

具体的には、時給制・月額固定の案件を持つ、継続案件を複数組み合わせる、単発だけでなく長期案件を増やす、メイン収入を確保しながら新しい仕事に挑戦する、といった方法が考えられます。

こうした形を作ることで、フリーランスでもある程度の安定は目指せます。

時給制や月額固定の案件を探すなら、フリーランス・副業向けのマッチングサービスを活用するのもひとつの方法です。たとえばWorkshipのようなサービスで案件を見てみると、「フリーランスでもこういう働き方ができるんだ」と選択肢を広げるきっかけになるかもしれません。

もちろん、正社員ほど守られているわけではありません。仕事がなくなったときのリスクもありますし、すべて自己責任で動かなければいけない場面もあります。

それでも、「安定したいなら正社員になるしかない」とまでは思いません。

フリーランスのままでも、案件の組み方や働き方次第で、現実的なキャリアは十分作れるはずです。

正社員化はゴールではなく、行き来できる選択肢のひとつ

一方で、フリーランスから正社員になること自体はとても良い選択肢だと思います。

フリーランスとしていろいろな仕事を経験したうえで、「この分野をもっと深くやりたい」と思うこともあります。業務委託で関わっていた会社と相性が良く、「ここで腰を据えて働きたい」と感じることもあるでしょう。

そういう場合の正社員化は、かなり自然で前向きなキャリアの選び方だと思います。

フリーランスとして外側から関わるよりも、正社員として中に入ったほうができることが増えることもあります。たとえば、事業の深い部分に関われたり、チームの一員として長期的な成果を追えたり、意思決定に近い場所で仕事ができたりすることもあるはずです。

だから、正社員化そのものを否定したいわけではありません。

ただ、それが「フリーランスの次の正解」や「フリーランス卒業」のように語られると、少し違う気がします。

フリーランスを続けるのも選択肢です。
正社員になるのも選択肢です。
業務委託で関わりながら、相性が良ければ正社員化を考えるのも選択肢です。
正社員になったあと、またフリーランスに戻るのも選択肢です。

働き方は一方通行じゃない

働き方は、一度決めたらずっと固定しなければいけないものではありません。

生活を安定させたい時期もあります。
新しい仕事に挑戦したい時期もあります。
ひとつの会社や事業に深く入りたい時期もあります。
少し距離を取りながら、複数の仕事に関わりたい時期もあります。

そのときどきで、自分に合う働き方を選べること。
必要に応じて、フリーランスと正社員を行き来できること。
それこそが、本当の意味での自由なキャリアなのではないでしょうか。

この記事が少しでも誰かの心に刺さり、今後のキャリアを考える参考になったら嬉しいです。

(執筆:猫宮しろ 編集:夏野かおる)

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