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フリーランスが年金を払わないとどうなる?差押件数は2022年度に激増【FP解説】

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個人事業主として働くすべてのフリーランスに義務付けられている「国民年金」への加入。

しかし、会社員と違って給与から天引きされるわけではないため、「払わない」ことも可能です。では、フリーランスが年金を払わないと、どうなるのでしょうか。

結論から言えば、払わないと延滞金の発生や差し押さえのリスクがあり、さらに近年は強制徴収件数が増加しています。

本記事では、ファイナンシャルプランナーの筆者が「年金を払わないとどうなる?」というテーマを深掘ります。

執筆:齊藤颯人
執筆:齊藤颯人

FP事務所『トージンFP事務所』代表、ファイナンシャル・プランナー。Workship MAGAZINEのマネー担当として、フリーランスや副業にまつわる記事の執筆・監修を行う。自身もフリーランス経験豊富で、当事者ならではの情報発信に強み。

年金を払わないフリーランスが「差し押さえ」されるまでの流れ

はじめに、実際に国民年金を支払わなかったフリーランスがいたとして、そのフリーランスがたどる運命を順に解説していきます。

ステップ1. 「納付勧奨」の通知が行われる

フリーランスが年金を期限までに払わなかった場合も、「すぐ財産差し押さえ!」とはなりません。

まずは、年金事務所または外部の委託先から「納付勧奨(国民年金未納保険料納付勧奨通知書)」と呼ばれる、以下の書類が届くはずです。

▲出典:日本年金機構

文面や内容からもわかる通り、まだ表現などは柔らかめ。あくまで「○○円が未納だから、納付したほうがいいと思いますよ?」という案内です。

そのため、この段階で未納分を含めてキッチリ納付できれば、特にペナルティなどはありません。

ステップ2. 「特別催告状」が何通か届く

上記を無視した場合、年金機構の通知からも少しずつ「圧」が強くなっていきます。

具体的には、まず「特別催告状」と呼ばれる青い封筒が届きます。そしてこれを無視すると、次は黄色、最後は赤(またはピンク)の封筒が届き、いよいよ差し押さえ目前です。

ちなみに、納付勧奨は日本年金機構のHPからも確認可能ですが、特別催告状はデザインすら確認できません。ただ見た目からして「無視したらヤバい」ということはすぐわかるはずです。

▲赤色の特別催告状のイメージ

ステップ3. 「最終催告状」が届く

ここまでくると、文字通り「最後通牒」となります。デザインは最後の特別催告状と大きく変わりませんが、これを無視すればいよいよ「督促」へと入ります。

ステップ4. 「督促状」が届く

督促状は、もはや「年金を支払ってください」というお願いではなく、「●月●日までに支払われなければ○○円の延滞金がかかり、財産の差し押さえも行われることになります」という内容になってきます。

▲延滞金発生タイミング(出典:日本年金機構)

こちらは自分だけでなく配偶者や世帯主にも送られるため、同居の家族には確実に年金未納がバレます。

ただ、差し押さえスタートの合図ではないため、延滞金を払ったうえで年金を納付すればまだ間に合います。

ステップ5. 差し押さえ予告が届き、財産の差し押さえが行われる

そして、ついに「差し押さえ予告」が届き、財産の差し押さえが行われてしまいます。

ただ、ここまで見てきたように差し押さえ実行までにはかなりの猶予があり、「うっかりでの納付忘れ」で差し押さえになることはほぼありません。

差し押さえまでいく場合、「未払いだったけど、本当に差し押さえられるとは思ってなかった」というような、油断が命取りになっている印象です。

ぶっちゃけ、年金を払わないフリーランスは本当に差し押さえられるの?

さて、上記とも関連する部分で、私たちはつい「差し押さえって言うけど、実際は運の悪い人しか差し押さえられないんでしょ?」と思いがちです。

では、厚生労働省のリリースから実際に差し押さえや督促の割合を見ていきましょう。結論から言えば「納付率向上対策」はかなり強化されており、督促や差し押さえ件数も増加しています。

▲強制徴収件数の推移

まず、先ほど見た「納付勧奨」の実施状況は以下の通りです。

2020年度 2021年度 2022年度
文書による告知 3,531万件 3,657万件 3,875万件
電話による告知 2,089万件 2,102万件 1,944万件
戸別訪問(面談)による告知 1万件 229万件 423万件

電話告知以外は増加傾向にあり、コロナ禍の収束で特に面談が増加していることがわかります。また、外部委託している納付勧奨もやはり増加傾向にあります。

そして注目したいのは、次なる段階の「強制徴収」の実施状況です。

2020年度 2021年度 2022年度
最終催告状 42件 2,117件 189,009件
督促状 0件 15件 133,476件
財産差し押さえ 41件 46件 12,784件

2022年度から「桁違い」に強制徴収が実施されており、実際に漫画家が年金未納による差し押さえを告白し、話題になったのも頷けます。

なお、厚生労働省年金局の資料によると、保険料の納付率も年々向上しており、未納者が増えたために強制徴収件数が増えたわけではありません。

たしかに、従来は「ぶっちゃけ差し押さえまでいくことはほぼない」とも言えましたが、時代は変わって「差し押さえがかなり身近になっている」と解釈できそうです。

フリーランスが「うっかり/めんどくさくて未納」を防ぐ方法

年金を払うのが好きな方は少ないと思いますが、それでも「確固たる意志で払わない」という方はまれでしょう。

「うっかり払い忘れちゃった」「払うのが面倒で放置してる」というパターンか、家計や事業が苦しく払うことができないパターンのどちらかだと思います。

まず「うっかりでの払い忘れ」や「払い込みの面倒さ」を防ぐための対策をまとめます。

方法1. 口座振替やクレジットカード払いなどの「自動化」を活用する

支払い忘れや面倒な支払いを回避する一番の方法は、支払いを自動化してしまうこと。

国民年金は口座振替やクレジットカード払いに対応しているため、自動で引き落とされれば問題は解決するでしょう。

なお、口座振替は日本年金機構の「口座振替申出書」を提出する、クレジットカード払いは「国民年金保険料クレジットカード払い申請書」を提出し、受理されれば利用できます。

方法2. リマインダーやオンライン秘書などを活用して未納を防ぐ

自動化できれば一番ですが、口座振替は大半のネットバンクが使えず、クレジットカード払いもクレジットカードを持っていない場合は利用できないため、それ以外の対策もご紹介します。

自分で払込書などを使って納付する場合、リマインダーやカレンダーなどを駆使して「通知が届き、忘れられない」状況をつくるのがベストでしょう。

支出が許せば、スケジュール管理などをしてくれるオンライン秘書に催促してもらうのも有効です。

方法3. 納付を忘れた後の通知を確実に受け取れる体制をつくる

最後は、うっかり納付を忘れてしまった後の対策です。

納付を忘れた場合、先ほど見たように「納付勧奨」を受け取った時点で納付できれば大丈夫です。ただ、「そもそも納付勧奨を受け取れず、見逃してしまった」場合は話が変わってきます。

日本年金機構は転居手続きを行えば自動で現住所も反映されますが、たとえば「多拠点生活をしていて、納付勧奨を受け取れなかった」ということは起こり得ます。

そのため、万が一納付を忘れた際の通知を確実に受け取れるよう、以下の対策をしておきましょう。

  • 郵便物の転送手続き、私書箱の利用などを行い、郵便の受け取り漏れをなくす
  • 知らない番号からの電話を無視しない(受電後、番号でググって発信元を特定するのがおすすめ)

フリーランスが年金を支払えない場合の対処法

最後に、家計や事業が苦しく払うことができない場合の対策を解説します。

結論から言えば、国民年金には「納付免除」「納付猶予」などさまざまな対策があり、きちんと手続きを行えば差し押さえになることはまずありません。

おもな年金の免除、猶予制度は以下の通り。

  • 納付猶予(学生納付特例)
  • 全額免除
  • 一部免除(4分の1~4分の3)

ただ、上記の制度を利用するには所得制限などがあるほか、未納扱いにはならないものの年金受給額が減るケースも多いため、以下の一覧表をよく確認してください。

受給資格期間への算入(老齢基礎年金) 年金額への反映(老齢基礎年金) 受給要件を満たすか(障害・遺族基礎年金) 所得制限(前年所得の上限)
納付猶予 × (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円*
*令和2年度以前は22万円
全額免除 全額納付した場合の年金額の2分の1(平成21年3月分までは3分の1) (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円*
*令和2年度以前は22万円
4分の3免除 全額納付した場合の年金額の8分の5(平成21年3月分までは2分の1) 88万円*+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
*令和2年度以前は78万円
半額免除 全額納付した場合の年金額の8分の6(平成21年3月分までは3分の2) 128万円*+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
*令和2年度以前は118万円
4分の1免除 全額納付した場合の年金額の8分の7(平成21年3月分までは6分の5) 168万円*+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
*令和2年度以前は158万円
未納(参考) × × ×

さらに、フリーランスとして事業の廃業や休止に追い込まれた場合、以下の書類を提出して失業状態を証明できれば、所得制限にかかわりなく納付猶予、免除制度を利用できることは覚えておきましょう。

  • 厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写しおよびその申請時の添付書類の写し
    (以下については、別途、失業の状態にあることの申し立てが必要です。)
  • 履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書
  • 税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し(税務署等の受付印のあるものに限る。)
  • 保健所への廃止届出書の控(受付印のあるものに限る。)
  • その他、公的機関が交付する証明書等であって失業の事実が確認できる書類

詳しくは、日本年金機構のこちらのページをご覧ください。

法人化して厚生年金を払うのも選択肢

フリーランスが年金支払いから逃れることは難しいですが、稼げるようになって法人化した場合、法人として厚生年金へ加入できるようになるのは注目すべきです。

厚生年金は国民年金よりも負担額自体は上がる一方、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受給できるようになり、老後への備えが一気に手厚くなります。

国民年金の「払い損」感が気になるようであれば、思い切って厚生年金加入を考えてもいいかもしれません。

なお、十分稼げているフリーランスは、法人化による税金のメリットと厚生年金のデメリットを比較して、トータルでお得になるケースは多いです。詳しいシミュレーションは税理士の先生などに依頼してみてください。

(執筆:齊藤颯人 編集:Workship MAGAZINE編集部 監修:トージンFP事務所)

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