【社労士解説】ジョブ型雇用時代におけるフリーランスの生存戦略とは?
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2018年9月某日。パリコレモデルである萬さんが、地元福岡で自身のトークショーを開催しました。
そこに訪れた観客は、間近で見る彼女の “パリ仕込みのランウェイ” に圧倒されたーーーだけにとどまりませんでした。
なぜならその日彼女が身にまとっていたのは、最新トレンドファッションでもなければ、有名デザイナーの新作ルックでもない、200年以上もの長い伝統を誇る綿織物「久留米絣(くるめがすり)」。
彼女がそれをまとう理由には、久留米絣の背景にあるストーリーが関わっていました。
今回は、伝統工芸とパリコレモデルのコラボレーションから、現代の価値観と「物<ストーリー」のブランディングの可能性を紐解いていきます。
久留米絣は1800年頃、井上伝によって考案され、福岡県筑後地方の久留米に根付いた伝統の木綿布です。
「伊予絣」「備後絣」とともに日本三大絣のひとつに数えられており、1957年に国の重要無形文化財に指定されています。
日本古来の伝統工芸である久留米絣を、モダンなイメージの強いパリコレモデルが衣装に選んだ理由は何だったのでしょうか。
それは、久留米絣が現代の価値観に意外なほどマッチしていたからです。
最近は”個”の時代と言われています。
インスタグラマー、YouTuberなどのSNSで多くのフォロワー抱える個人の影響力は、企業のそれを上回ることさえある昨今。そんな人気インフルエンサーに憧れてコンテンツを発信する人は多くいます。
しかし、似たり寄ったりのコンテンツを量産したところで、没個性の中に埋もれてしまうのも事実。
発信内容には、その人にしかできない「独自性」が大切です。
これはファッションに関しても同様です。人件費や原材料費を落として、高級ブランドの生み出す流行に乗った“廉価版”を出したところで、そこに独自性が無い限り価格競争に揉まれて消えてしまいます。
そこで、久留米絣です。
「この風合いと肌触りといえば、久留米絣。」200年以上続く久留米絣独自の特徴は、今なお圧倒的な個性を放っています。これは、“個”の時代と言われる現代こそ活きる要素ではないでしょうか。
現在はあらゆる分野で「パーソナライズ化」が謳われています。
久留米絣の織元では、図案からおこすオリジナル柄の製造をはじめ、ワンピース、スカート、もんぺ、作務衣など、さまざまなスタイルの久留米絣をオーダーメイドでを仕立てられます。
自分好みのデザイン、身丈、使用用途に合わせて仕立てられる一着は、自分専用のパーソナライズドされた衣服であり、”個”をアピールするには良い手段です。
しかしオーダーメイドというのは、自己分析を経て成立する作業です。自分には何色が合っていて、どんな柄を好み、どのような場でどんな服を着用したいのか、すぐに答えられる人はどれだけいるでしょうか。
オーダーメイドの製品を明確な目的を持って使わない限り、結局のところ既製品と変わりません。一方で、確固たる理由をもってオーダーメイド製品を利用する場合、それは自身にとって大きなブランディングとなるでしょう。
最新トレンドを低価格に抑えつつ、短い期間で大量生産されるファストファッション。
移り変わりの早いトレンドに追いつけずに売れ残った在庫は焼却処分され、安価で気軽に購入された洋服たちもまた、その流行と同時に気軽に捨てられてしまいます。大量生産の裏にあるこれらの代償を、私たちは見て見ぬふりをしていないでしょうか。
このような問題と対極にいるのが、久留米絣のような伝統工芸品です。
ひとつの反物に対し約3ヶ月間かけて丁寧に作り上げられる久留米絣。それぞれの工程を職人一人ひとりが手作業で行い、心を込めて織り上げます。製造の背景にあるストーリは、買い手の心を動かしています。
作り手・買い手の双方に想いが込められた衣服は、長く大切に使われ続けるでしょう。
捨てることを前提に購入するのではなく、自分だけの服を思う存分着こなして、なおかつ衣類の大量破棄という問題に一石を投じるのも良いのではないでしょうか。
実はいまの時代の価値観にマッチした伝統工芸品・久留米絣。では、今回はその久留米絣をどのようにブランディングしたのでしょうか。
今回の伝統工芸×パリコレモデルのイベントでポイントとなるのは、ふたつの「WOW」でした。
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パリコレモデルの萬さんは、何よりもまず実物を間近で見て、その質感やデザイン性の高さを多くの人に知ってもらうべきだと考え、自身のトークショーの衣装として久留米絣を採用しました。
そこで着用した久留米絣は、「伝統工芸品」という言葉のイメージを大きく覆す、現代的でスタイリッシュなデザインでした。
「パリコレモデルが伝統工芸品!?」
「これが久留米絣!?」
と2段階のWOWを巻き起こし、そこで撮られた写真や動画はSNSで多く拡散。
こうして、ふだん久留米絣に触れることのなかった人たちにその魅力を伝え、久留米絣が現代において通用することを証明してみせました。
製造工程から作り手の想いを知るため、久留米絣の織元を訪れた萬さん。
「作務衣だから作業着として着る」
「ストールだから首に巻く」
彼女はそんな固定概念を捨て、パリコレモデルならではの発想で久留米絣を着こなし、工房の方々を驚かせました。
「まるで違う服みたい……!」
こんな風に使う方法もあるのかと、久留米絣の新たなブランディングを提案してみせました。
このアレンジスタイルはまた、別の“作り手”にも波及効果をもたらしました。自身のInstagramへこの写真を投稿したその日、萬さんのもとに彼女の友人からこのようなイラストが届けられたのです。萬さんの久留米絣アレンジに感動し、思わず描いたのだそう。
製品へのアプローチを変えることで、作り手側の感情をも揺さぶった好例といえるでしょう。
物に溢れる現代において、私たちは物それ自体ではなく
といったストーリーに重きを置きはじめています。
そこにはSNSの普及によって見える化された「共感票(いいね!)」も少なからず影響しているでしょう。
今回のように、久留米絣の魅力やストーリーを知った萬さんが、自らの「久留米絣に対して抱いた驚き」を語ることで、次の消費者へその感動が広がっていく。このようにしてどんどんと形を変えながら、久留米絣にまつわる魅力やストーリーが伝播されていくのです。
まるで伝言ゲームのようなこの現象は、今後新たな形のストーリー・ブランディングとして活かすことができるのではないでしょうか。
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