ビジネスの成長の鍵は「マイクロコンバージョン」にある!マイクロコンバージョンの考え方と最適化方法【保存版】

「コンバージョン」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

サイト訪問者が無料トライアルに登録する、無料会員が有料会員にアップグレードするなど、コンバージョンはビジネスによってそれぞれ異なると思います。

しかし、このような売上に直結する「マクロコンバージョン」だけにフォーカスして評価をすると、大事なユーザーデータやビジネスチャンスを逃すことになります。

ユーザーは最終コンバージョンにたどり着く前に、多くの小さなステップを踏みます。例えば、アプリ上の機能を使ったり、同僚に使うよう勧めたり、料金プランのページを見たりするでしょう。

このような小さなユーザー行動を「マイクロコンバージョン」と呼び、このマイクロコンバージョンをトラッキングして最適化を行うことで、最終的コンバージョンの伸びが大きく変わります。

今回はこの「マイクロコンバージョン」について、詳しく見ていきたいと思います。

「マイクロコンバージョン」とは?

マイクロコンバージョンとは、最終コンバージョン到達の手前に発生する特定の行動または一連の行動を指します。

最終コンバージョンである「マクロコンバージョン」は、売上に直結するページやサイト上での行動を指します。以下がその一例です。

  • 問い合わせフォームの送信
  • 無料トライアルへの申し込み
  • 有料アカウントへの申し込み

一方で「マイクロコンバージョン」は、ビジネスの形態によってさまざまな形でアクションが取られます。例えばSaaSツールを扱う会社では、マイクロコンバージョンは下記のようなアクションを指すでしょう。

  • 対面またはビデオでの体験デモ申し込み
  • 資料をサイト上でアップロード/ダウンロード
  • 最初のニュースレターを読んで行動する
  • 同僚にアプリを紹介して一緒に使う
  • 外部のアプリと連携する
  • 料金プランのページを見る

「マイクロコンバージョン」に似た言葉に、「マイクロアクション」があります。「マイクロアクション」という言葉は2001年にブライアン・アイゼンバーグ氏によって提唱され、最終コンバージョン到達までにユーザーがたどる小さな行動を指して使われました。

ウェブサイト上の全てのページでユーザーが何か行動ができるような仕掛けをします。ただ次のページに行くなどのプロセスであってもです。
ユーザーがマイクロアクションを取れず、最終コンバージョンまでの道をたどることができないようなサイト構成になっていると、コンバージョン率は下がっていきます。
最終コンバージョンまでの道のりを定め、その道中のマイクロアクションを明確にすることで、各ステップにおける効果的なユーザー行動を最適化できるのです。

逆三角形のコンバージョンファネルを見たことがあるかと思いますが、最終コンバージョンが逆三角の先のところだとすると、マイクロコンバージョンは下まで降りる道のりのことです。

このファネルは、下に進むにつれて穴がところどころ空いていると想像してください。そこからユーザーが離脱してしまうため、この穴を塞ぐような小さなアクションを取れば取るほど、下までたどり着くことができるユーザーが増え、売り上げが増えるという考え方です。

マイクロコンバージョンの種類について

前述した通り、マイクロコンバージョンとは、売上を生み出す最終コンバージョンにたどり着くまでにユーザーが取る行動を意味します。しかし、このマイクロコンバージョンは必ずしも売上に直結する訳ではありません。

コンサル会社のニールセン・ノーマン・グループは、マイクロコンバージョンは2つのカテゴリーに分けられるとしています。以下にそれぞれご紹介します。

1. プロセスマイルストーン

プロセスマイルストーンとは、最終ゴールであるマクロコンバージョンに直結するような行動を指します。自分のビジネスにとってのプロセスマイルストーンを特定し、その行動を観察することで、どういった改善を行うべきか見つけやすくなります。

今回はプロセスマイルストーンの一例を、AdRollの事例から紹介します。アドロールの成長チームリーダーのピーター・クラーク氏は、メール配信サービスの「MailChimp」をAdRollに連携する会社ほど売上に貢献するクライアントであることが多いものの、MailChimpと連携している会社がそもそも少ないことに気がづきました。

そこで下記の画像のような、Appcuesのモーダルウィンドウを導入したことで、MailChimpとAdRollを連携する会社が60%増加し、その機能の価値を多くの会社に届けることに成功しました。またAdRollの売上にも大きく貢献しました。

2. セカンダリアクション

セカンダリアクションとは、売上に直結した行動ではないものの、長期的に認知度や信頼度を向上させ、最終コンバージョンに影響する行動を指します。

例えば、クリエイターのネット事業支援サービスのPodiaでは、商品の体験デモを提供すると売上に影響することが分かっていたため、ウェブサイトのTOP画面でウェブセミナーの宣伝をすることにしました。

この体験デモへの参加が必ずしもサービスへの申し込みに繋がる訳ではありませんが、デモを体験することでサービスへの信頼度が増し、最終的にサービスの利用につながります。

マイクロコンバージョンをトラッキングしよう

プロセスマイルストーンやセカンダリアクションに関わらず、マイクロコンバージョンをトラッキングすることは大切です。この小さなユーザー行動をトラッキングすることで、下記のような効果を得られます。

1. サイトの訪問者、集客、顧客を俯瞰して見られる

当たり前ですが、サイトに来る人全てが料金を払うつもりで来ているわけではありません。しかし、マイクロコンバージョンをトラッキングすることで、カスタマージャーニーの全体像を確認できます。

  • どんな人がサイトに訪れているのか
  • なぜサイトに訪れているのか
  • なぜアプリを利用しているのか
  • そこから何を得ようとしているのか

など、さまざまなことを顧客になる前から知ることができます。

2. ユーザーが離脱してしまう要因を見つけられる

プロセスマイルストーンをそれぞれ個別にトラッキングすることで、何がもっとも最終売上に貢献しており、またどこがコンバージョンまでのネックになっているかを見極められます。

これを知っているだけでも、優先的に取り掛かるべきことがすぐに分かり、その改善による結果をトラッキングできます。

3. 分かりやすいサイトのパフォーマンスデータを株主や役員に提示できる

具体的なデータほど、役員の人たちを説得させられるものはありません。

各マイクロコンバージョンが全体のビジネス戦略にどれほど影響しているかを見せることで、社内での決定で同意を得やすくなります。

少しづつの改善が成長の鍵

最終コンバージョン率は、小さなコンバージョンが積み重なった結果です。即座に無料会員が有料会員へコンバージョンする率を50%上げる……と夢見たいところですが、それはなかなか難しいでしょう。

しかし、そのコンバージョンを手に入れるために、各マイクロコンバージョンを見極め、トラッキングし、徐々に最適化することはできます。マイクロコンバージョンひとつずつはそこまで影響力はないかもしれませんが、時間が経つにつれ、そのちょっとした改善が最終売上に「継続的で大きな変化」をもたらしてくれるのです。

全体の目標に向かって最適化を図る

「マイクロコンバージョンをトラッキングすること」と「サイトを最適化してマイクロコンバージョン最大化すること」は、それぞれ別のことです。最終的な目標は、「マイクロコンバージョンをトラッキングしつつも、マクロコンバージョンを得るためにサイトを最適化する」ことです。

ウェブセミナー登録やSNSシェア数など、売上に直結しないようなところについ時間をかけすぎてしまうことはよくあることです。間違ったマイクロコンバージョンを最適化してしまい、売上に悪影響を及ぼすこともあります。

HubSpotの成長マーケティング部門代表のアレックス・バーケット氏は、それを「無料ビール」の現象として、ConversionXLの記事で語っています。

「体験デモを予約しよう」というCTAメッセージを「クリックして無料ビールを受け取ろう」に変えてみるとする。
クリック率は劇的に増加するが、それはただ次のステップまで問題を持ち越しているだけだ。
マイクロコンバージョンのために最適化を行っていると、改善していると感じるかもしれないが、ただ物の配置を適当に変えているだけで本当の問題の解決には至っていないことがよくある。

最適化のために変更やテストを行うときは、最終的目標を忘れずに行うことが重要です。

ビジネス成長のための無敵戦略とは?

ビジネス成長戦略において、多くの会社が陥るのが「数打てば当たる運任せ」状態です。他のビジネスで成功した戦略を次々に試して、自分のビジネスで大当たりするのを願います。

この戦略の欠点は、ビジネスごとにアプリの特性やユーザーが異なることです。他の製品やビジネスで成功した戦略であっても、自分のビジネスでも成功するとは限りません。全てに効く万能策はないのです。

ユーザーがコンバージョンをしていない理由はたくさんあります。ビジネスに大きな変化を起こすことは怖いことでもありますが、最終コンバージョンの道を邪魔する一つひとつの障害を取り除くことで大きな改善を期待できます。

大きな影響をもたらすような改善策を見つけるためには、まず問題を小さく分けて出来ることからひとつずつ対処することが大切です。マイクロコンバージョンを見るために集めたユーザーデータから、コンバージョン率を改善するためのアイデアを得られます。この改善を続けることで、ユーザーの離脱率を下げることができ、マイクロコンバージョンの真の影響力を見られるでしょう。

では実際にマイクロコンバージョンをどのように使えば、ビジネスを成長させられるでしょうか。ここでは6つの方法を紹介したいと思います。

1. マクロコンバージョン(最終コンバージョン目標)を定める

製品の戦略プランをあちこち変えてしまう前に、「チーム内で解決しようとしている問題は何であるか」を明確化することが大事です。鍵となる指標はビジネスの種類によっても変わりますが、例えばSaaSビジネスの場合であれば「無料トライアルへの申し込み」や「無料会員から有料会員へのアップグレード」などを指標として使えるでしょう。

そして、目標をできるだけ具体的で測定可能なものにし、何の目標を達成しようとしているか明確に理解する必要があります。それにより、ひとつずつの改善策において達成しようとする目標がブレることがなく、すべてのプロセスにおける最終点が同じものになります。

下記は目標の立て方の例です。

  • 第一目標:無料会員から有料会員へのアップグレード率を50%伸ばす
  • 第二目標:無料トライアルへの申し込み率を20%伸ばす

2. 逆算して、関連のあるマイクロコンバージョンを定める

ターゲットを定めた後は、その目標地点にユーザーがたどり着く前に取るであろう、重要なアクションが何であるかを特定しましょう。これを知るためには、既存顧客や営業チーム、サポートチームに聞いて深く調査をする必要があります。そこで得た情報から、最終コンバージョンに至るまでの鍵となるアクションを見つけましょう。

先ほどの例では、最終目標は「無料会員から有料会員へのアップグレード率を50%伸ばす」でした。この目標をベースにして、下記のマイクロコンバージョンをトラッキングできるでしょう。

  • 商品を利用する際の初回設定を完了する
  • 同僚に商品を紹介し、一緒に使う
  • 商品の重要機能を設定する
  • 商品の体験デモを申し込む
  • 料金プランページを見る

では、このアニメーション動画作成ツール「Vyond」のダッッシュボードを見て、最適化されているマイクロコンバージョンは何か推測してみてください。

一番すぐに目につくのが「Make a Video(ビデオを作成してみよう)」というCATボタンでしょう。これはVyond側が、実際に商品を試してビデオを作成した人ほど後ほどコンバージョンをする確率が高いと知っているからです。

その他にもプランや料金ページを見られるCTAも置いていることで、クオリティに満足したユーザーがすぐに有料プランにアップグレードできる仕様になっています。

マイクロコンバージョンを特定していく中で、有料アカウントにアップグレードさせるような、大きな影響力を持つマイクロコンバージョン地点があることに気がつくと思います。例えば、サブスクリプション管理ツールの「Chargebee 」では、コンバージョン率を点数付けするシステムを導入しています。このシステムを使って、点数が高い項目を優先的に改善し、無料トライアルからの有料プランへのアップグレード率を全体で87%向上できました。

3. 決めたマイクロコンバージョンのトラッキング設定をする

どのマイクロコンバージョンをトラッキングするべきか決めた後は、トラッキングを設定する必要があります。少なくとも、どのユーザーがどの行動を取っているかトラッキングできるようにしておくことで、長期的に改善の効果を測れます。

アプリ内のユーザー行動をトラッキングするためのツールや方法はたくさんありますが、特にSaaSビジネスには分析ツールの「Amplitude」がオススメです。Amplitudeを使ったトラッキングの設定は技術的知識を要するので、社内のITチームの助けを得る必要があるかもしれません。しかし設定さえ完了すれば、Amplitudeプラットフォーム上でマイクロコンバージョンの分析結果を簡単に確認できます。

4. マイクロコンバージョンを改善するために仮説を立てる

各マイクロコンバージョンをトラッキングして、最終目標にたどり着く助けになっているか確認できたなら、次はそのデータをもとに仮説を立てましょう。

仮説を立てると言っても、自分が良いと思ったことを何でも試すのではありません。仮説をもとに変更を加え、その結果を計測できなければ、その変更が商品の改善に繋がったかどうか把握できません。

下記の項目をベースに、仮説を実証するというアプローチで改善項目を考えることで、どの改善が最も優先されるべきか判断しやすくもなります。

  • 無料プランから有料プランへのアップグレード率に対する影響力
  • 成功する確率
  • その変更に必要なリソースと工数

実際に優先順位をつけたら、あとは実施するのみです。ここからがマイクロコンバージョンを使った実験の醍醐味となります。

5. 仮説をひとつずつテストしてその影響力を測る

まず初めに対応するべきものは、成功する確率が高いもので低リスク・時間をかけずにできるものです。すぐに実行でき、短期間で結果を生まなければなりません。達成する結果はそこまで大きなものでないかもしれませんが、積み重なれば大きな影響力を持ちます。

ひとつずつ改善を行うたびに、全体のコンバージョン率(有料アカウントへのアップグレード率)を見るだけでなく、マイクロコンバージョンレベルでどれくらい影響力があったかどうか測ることが大切です。マイクロコンバージョンレベルで影響度を測ることで、結果をすぐに把握できます。また、全体のマクロコンバージョンだけを見ていた時に比べて、自信を持って自分のアクションの効果を感じられるでしょう。

例えば、レビューツールの「Yotpo」の成長戦略チームが売上向上の方法を探していた時に気がついたのが、「ユーザーにもっとアクティブに製品を使ってもらってその効果を見てもらう」ことがも最も重要な目標であるべきということでした。マイクロコンバージョンを集めていたYotpoチームは「Yotpoをインストールしたユーザーはいつも同じ管理画面だけに止まってしまい、うまく使いこなせていない」ことが問題であると気がつきました。

オンボーディング最適化ツール「Appcues」を導入したYotpoチームは、マイクロコンバージョンとして設定した「製品を使った際の初回体験を完了する」率の70%以上の伸びを目にしました。最終的には2週間以内に離脱する新規ユーザーが60%減るという結果を生み出しました。データを集めて仮説を立てることで、 ちょっとした変化でも会社の成長に貢献するような大きな結果を出せることを示した例です。

6. プランを見直してテストを繰り返す

小さな改善を行うたびに、最終目標にどうやって近くか情報を得られます。

  • もし改善がコンバージョンの向上に繋がり、それ以上の改善を見込めると思った際には、その改善で得た新しい情報を元に仮説を見直し、その実験を再度繰り返しましょう。
  • コンバージョンに変化が見られない場合には、そのマイクロコンバージョンが売上に直結するものではないことを意味します。次の新しい仮説を選んで、実験をしましょう。
  • コンバージョンに減少が見られた場合には、先ほど説明した「無料ビール」現象に陥っており、次のステップに問題を後回しにしているだけの可能性があります。一歩下がって、違った改善策またはマイクロコンバージョンを試してみましょう。

持続的な成長のための仕組みとは?

これまで述べてきた通り、マイクロコンバージョンを測ることは大事です。しかし、マイクロコンバージョンを最適化することは簡単ではありません。

カスタマージャーニーが違えば内容も変わり、直球で解決できる方法はありません。マイクロコンバージョンの考え方を使うことで、カスタマージャーニーを細分化して確認でき、優先順位をつけ、計測し、テストできるようになります。ひとつずつのテストの影響力は大きくなくても、積み重なることで大きなビジネスの成長へと繋がります。

また同時に、堂々巡りにならないようにも気をつけてください。小さなことにとらわれ過ぎると、全体像を見ることを忘れてしまい、全体の成長を傷つけてしまったり、問題を後回しにすることになります。マイクロコンバージョンでの小さな増加は、必ずしも全体のコンバージョンの伸びに繋がっている訳ではないことを覚えておいてください。

最後のまとめとして伝えたいのが、マイクロコンバージョンをトラッキングすることはとても重要で、正しく行われれば会社の成長に繋がり、ユーザーにとって快適なカスタマーエクスペリエンスを届けられるということです。しかし、全体の大きな目標を忘れないように注意してください。間違ったものを最適化するのは結果を得られないだけでなく、ただの運任せにこねくり回しているのと同じです。

(原文:Marina Fileva 翻訳:Reina Onishi)

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