“ジャンル特化型・専門メディア”ならではの戦い方教えます!【#オウンドメディア2020】

専門メディアの立ち回り方 #オウンドメディア2020

気づけばいつの間にか2020年代に突入。COVID-19の影響もあり、オンライン化が急速に進む昨今、いまでも注目を集めているのがオウンドメディア運用です。

ストック型のコンテンツマーケティングにより運用型広告以上の成果を上げる可能性がある一方で、「オウンドメディアはオワコン」なんて囁かれることもしばしば。

これからのオウンドメディアは、どう変化していくのでしょうか?

今回はフリーランスの羅針盤メディア『東京フリーランス』編集長の初芝賢さんと、副業/フリーランスが学べるメディア『Workship MAGAZINE』編集長のじきるうが、これからの「ジャンル特化型メディア・専門メディア」の立ち回り方について、座談会形式でお話していきます。

(本記事ではオンラインイベント『2020年代、これからの「ジャンル特化型・専門メディア」の立ち回り方 #オウンドメディア2020 ②』のレポートをお届けします)

初芝 賢(はつしば けん)
初芝 賢(はつしば けん)

早稲田大学在籍中からライターとして活動し、卒業後2016年に日本IBM入社。入社後はエンジニアとしてPJリーダーなどを務める他、文章力を活かして提案書やプレスリリース作成などに携わる。2019年に他メンバー3人とともに東京フリーランスを立ち上げ。同メディア『東京フリーランス』の編集長を務める。現在はメディアの編集、広告運用、YouTubeチャンネルの運営、新規事業の立ち上げなどを行っている。業務外では出版プロデュースも行っており、二冊の本の出版を経験。

じきるう
じきるう

早稲田大学および同大学院でメディア表象に関する研究に携わった後、2018年に株式会社GIG入社。編集者兼マーケターとしてクライアント企業のコンテンツ支援や採用支援を行うほか、フリーランス向けメディア『Workship MAGAZINE』の編集長を務める。業務外でも趣味でライター向けメディア『クレイジースタディ』を主宰するなど、根っからのメディア好き。趣味はダンス、作曲、イラスト制作など。

同ジャンルの専門メディアでも、ターゲットの考え方はさまざま

質問

じきるう:今回は事前に「ジャンル特化型メディア・専門メディア運営者に聞いてみたいこと」Twitterで募集したところ、たくさんの質問をいただきました。今回はその中から、多くの人が知りたいであろう8つの質問をピックアップしましたので、それを中心にトークしていければと思います。

じきるう:早速ですが、フリーランス向けメディア『東京フリーランス』は、メディアの目標やKPIをどのように設定していますか?

初芝:弊メディアは立ち上げ当初から、メディア単体やアフィリエイトで収益を出すのではなく、サービス全体のブランディングのために運営しています。そのためSNSでのシェア数や口コミなどをKPIとしてきました。ただ、立ち上げ当初はWeb系案件の受託を事業の中心としていましたが、現在では弊社で一番人気のコンテンツである『デイトラ』というオンラインスクールに集中しています。そのため直近では、Web制作やWebデザイン関連のコンテンツを中心に拡充しながら、それらに関心の強いユーザーが興味を持っているトピックは何かを探っています。

このようにフェーズに応じてKPIを変化させていますが、狙いどころは基本的に統一されています。SEOで面を取りにいくのではなく、SNSなどでのファン獲得を重視していて。クオリティにこだわった、ブランディングにつながるようなコンテンツを作り続けています。

じきるう:フリーランス向けメディア『Workship MAGAZINE』の場合、設立当初のKPIは「記事本数」のみでしたが、いまでは「SNSでの言及数」「PV」なども追っています。それらが積み重なった結果、最終的な目標である「Workship MAGAZINEの認知拡大」につながると考えているので。そして認知が広まった結果、指名検索が増え、フリーランスプラットフォーム『Workship』の登録者が増えると想定しています。

ただしWorkship MAGAZINEは、ブランディングを強烈に意識しているわけではないんですよね。SNSでの拡散のほか、検索も意識していて。というのも、「検索したときによく出てくるから覚えた」みたいな声も聞くんですよ。東京フリーランスさんとは逆で、面を広くとるようにしています。

じきるう:続いて、読者ターゲットについてはいかがでしょうか?

初芝:東京フリーランスでは関心層をターゲットにしています。無関心層と関心層のどちらを想定読者とするかでコンテンツの中身も変わってくると思うんですが、フリーランスにそこまで興味がない人の興味を喚起するのではなく、フリーランスへの関心がそれなりにある人を想定読者として考えています。

というのも、無関心層へアプローチする場合、内容が薄くなったり、極論を言えば煽る内容になりがちな印象を持っていて。また、無関心層へのアプローチはビジネス系インフルエンサーがすでにやっているので、わざわざバッティングさせる必要性を感じていないのもあります。

じきるう:逆にWorkship MAGAZINEは、無関心層も含めてターゲットにしています。なぜなら上位サービスのWorkshipが、比較的ハイスペックなフリーランス向けのサービスなので、すでにフリーランスの人のみをターゲットにすると母数が狭すぎると感じていて。「今後フリーランスになる可能性がありそうな、ハイスペックな会社員」も含めて、間口を広く考えています。そのためフリーランスとは直接関係のない、ややレベルの高い技術系記事を出すことも多いです。

マトリクス図

初芝:なるほど! 関心層/無関心層の軸と、ハイスキル/ロースキルの軸で区切ったときに、ハイスキルかつ無関心を含めて狙っているということですね。それでいうと、東京フリーランスはロースキル〜ミドルスキルの関心層をターゲットにしています。これからスキルを身につけてキャリアチェンジをしたいという読者が多いため、「スキルはないけど今すぐ独立したい!」という人への発信はあまりしていません。

先ほど「無関心層へのアプローチは煽る内容になりがち」と申し上げましたが、御社のようなハイスキル層狙いなら問題ないと思います。「誰でも楽にイッセンマン」みたいな発信にはならないので(笑)。

競合ではなく、読者を見る。読者とともに成長する

じきるう:じつは今回のウェビナー開催にあたって、東京フリーランスさん以外にも何社かフリーランス系メディアにオファーをしたのですが……断られてしまいまして。初芝さんはなぜ、競合メディアのウェビナー登壇をOKしてくれたんですか?

初芝:弊社は同業他社とも仲良くしたいというマインドですし、どんどんコラボしていきたいです。それに競合とはいえ、完全に領域が被ったり、ユーザーを食い合ったりすることもないと思ってますしね。

じきるう:同じフリーランス向けメディアといっても、まだまだジャンルそのものがニッチですもんね。それこそ勢いのあるYouTuber同士がコラボして相互作用を生み出すような座組みは、ボクも見習いたいと考えています。

初芝:あえてメディアの差別化という観点で話すと4つあります。「①ソースは一次情報を大事にする」「②ポジショントークをしない」「③面白さや分かりやすさを大事にする」「④いわゆるSEOっぽい記事にしない」。これらは弊社のメディア運営において大切にしているポイントです。

じきるう:たしかにその4つが一貫していれば、キャラ立ちしそうですね。

Workship MAGAZINEの場合、読者が何を求めているかを大切にコンテンツ制作をしています。なので競合メディアはあまり意識しておらず、差別化も考えてないですね。競合を意識しすぎて、競合に寄ったコンテンツばかりつくってしまったら、それは読者のことを見てないことになるので……。

じきるう:続いての質問ですが、東京フリーランスさんはライターをどこから採用していますか?

初芝:弊社の場合は、信用している人からの紹介や、Twitterでの募集、イベントで知り合った人などがメインで稼働してくれています。本名や顔出し、資格は不要です。インタビュー記事がメインなので、バラバラに散らばった文脈を論理的にまとめあげる構成能力を重視して採用しています。文章力はテクニック面が大きいので直しやすいのですが、ロジカルシンキングは根本的な部分なので強制するのが難しいと思っていて。全体の記事構成のうまさなどは、依頼前にチェックしているポイントです。

じきるう:ライターの経験や文章力よりも、記事全体の構成スキルを重視して採用されているんですね。

Workship MAGAZINEの場合はちょっと違って、そのジャンルの経験があるかどうかを重視して採用しています。たとえばエンジニア向けの記事を作るなら、エンジニアとして実務経験のある人に執筆をお願いしますね。あとは、ライターさんが熱量を持って書けるテーマがあるかが大切かなと。

初芝:熱量は大事ですよね! 「育てる」という観点でいうと、フィードバックはしっかりしています。ただ、ある程度の水準を満たしているライターさんにお願いするケースが多いので、弊社でまったくのゼロから育てる……ということは少ないですね。

じきるう:ネタの枯渇問題はどうでしょう?

初芝:たしかに、キーワードを軸にしてネタを探していたときは、ネタが枯渇する感覚はありました。ただ、ユーザーさんからの悩みを元にネタ探しをするようになってからは、枯渇することは少なくなってきています。

じきるう:ボクもそれは同感で、ユーザーさんの声に耳を傾けていたら、ネタは無限に出てくると思っています。また記事に対する読者の反応やコメントを見ていると、新たな視点が発見できたりすることも。

初芝:それでいうと、これからのメディア運営にはコミュニティがとても大事ですね。読者やユーザーという垣根を超えて一緒にスケールさせていける仲間がいると、メディアも育ちやすいと思います。

「人」起点なのか「こと」起点なのか、見極められてる?

じきるう:専門メディアはターゲットが狭いと思いますが、そのような中で「バズは必要なの?」という声もありました。

初芝:既存の読者さんを超えて認知を取る意味では、バズは必要だと思います。ファンが固定化されてくると、それ以上の層に広がり辛くなるので。ただ、広く一般に届けるというよりは、「一部の人に深く刺さり、社内SlackやLINEで周りの人におすすめしたくなるような記事」が作れればいいかなと思ってます。

じきるう:ボクもバズは必要だと考えています。広く一般に届いた先に、Workship MAGAZINEの継続的な読者となりうる人たちもいるでしょうし。もちろん、バズを狙いすぎて、バズるテーマばかりを扱うのは本末転倒ですけどね。あくまでメディアの軸からズレない範囲での、バズを狙うというか。

初芝:極端な話、バズだけ狙うなら芸能人のゴシップみたいな刺激的な記事を書いたほうが伸びやすいんですけどね(笑)。でも、それを私たちがやる意味はないですよね。

じきるう:そういえば、東京フリーランスさんはYouTubeも積極的にされてますよね。

初芝:そうですね、ありがたいことにチャンネル登録者も4万人近くいます。その他にも、他媒体にPR記事を出稿したり、書籍の企画を行ったりなど、多岐にわたって施策を打ち出しています。弊社は運営メンバーの2人がインフルエンサー的な立ち位置という特殊な会社のため、すでにSNSでリーチしたい人たちには届き切ってしまっている感覚があるんです。新しい層にリーチするための施策は、これからも挑戦し続けていきたいと考えています。

じきるう:Workship MAGAZINEは、正直にいうとあまりできていないのが現状です。ただ東京フリーランスさんと同じく、書籍制作を進めてたりします。YouTubeやInstagramも……検討していきたいです(笑)。タッチポイントを拡大するためのチャネルは、積極的に増やしたいですね。

じきるう:最後の質問になりますが、ニッチジャンルのインタビューで気をつけていることってありますか?

初芝:めちゃくちゃたくさんありますね(笑)。その中で一番役立ちそうなことを話すとすれば、「人」フォーカスなのか「こと」フォーカスなのか、線引きをはっきりさせることですね。「もの」や「こと」にフォーカスした方がいいのに、「人」にフォーカスしすぎている記事が世の中には多すぎると思っていて。

じきるう:具体的にはどういうことでしょうか?

初芝:取材対象が著名な方なら「人」にフォーカスしても良いと思うのですが、ニッチジャンルの場合は「みんなが知ってる著名人」って少ないんですよね。最前線で働いていたり、現場ならではの知見がある人は、必ずしも有名なわけじゃないので。

それなのに人にフォーカスしてしまうと「読者から興味を持ってもらえない」問題があると思っていて。興味を持たれないだけならまだしも、「なんだこいつイキりやがって!」というネガティブなイメージを読者に持たれてしまう恐れもあるんです。

じきるう:あああ〜。確かに、記事のタイトルに知らない人の名前が入ってても「誰だこいつ」「俺には関係ないな」って思われてしまう恐れがありますよね。著名人ならそれでもいけますけど。

初芝:それを回避するためにも、「人」ではなく「こと」にフォーカスして、ノウハウや現場の知見を中心にしています。そしてその中で、人柄が見えてくればいいかなと思ってますね。

(執筆:岡田隆太郎 編集:じきるう)

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